2023年9月5日火曜日

2023 INDYCAR レースプレビュー R17 ファイアストン・グランプリ・オヴ・モンテレー

チャンピオンはすでに決定
しかし、ランキング争いは未決着


 先週のポートランド戦で今年のインディーカー・チャンピオンはアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)に決定。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)は最終戦に出場しさえすれば年間ランキング2位で2023年シーズンを終えることができる。

 最終戦を残してチャンピオンが決まってしまったのは、2007年以来。ニューマン・ハース・レーシングとセバスチャン・ブルデイの一強時代が続いていたチャンプカーの方でそれは起きた。後発ながら本家になったインディーカー・シリーズ(元インディー・レーシング・リーグ)の方でそういうことがなかったのは、最終戦までチャンピオン争いが必ずもつれ込むように、“最終戦はダブル・ポイント”なんてルールを採用していたことも、かなり影響している。最初はオーヴァル・レースの歴史も絡めて魅力をアピールしたかったのだろう、ポコノ、インディー、フォンタナの500マイル・レースを“新トリプル・クラウン”と称してダブル・ポイントにした(2014年)。そして、翌2015年からは「インディー500と最終戦をダブル・ポイント」と変更。ソノマのロードコースでのレースがダブル・ポイントという時代がしばらく続いた。しかし、2020年のパンデミックでレース数の減少を余儀なくされ、“最終戦の重みが大きくなり過ぎるのは良くない”という、以前から多くの人々が指摘していた点にインディーカーが気付き、最終戦のダブル・ポイントは廃止になった。そして今年、ついにインディー500も他のレースと同ポイントになった。めでたし、めでたし。

 いきなり余談になってしまって、すみません。
 では、ランキング3番手以下の16戦終了時点でのポイント状況を見て行く。

3 ジョセフ・ニューガーデン     470
4 パト・オーワード         461
5 スコット・マクロクリン      448
6 マーカス・エリクソン       423
7 ウィル・パワー          393
8 クリスチャン・ルンドガールド   362
9 アレクサンダー・ロッシ      349
10 コルトン・ハータ         348
11 カイル・カークウッド       347
12 フェリックス・ローゼンクイスト  311
13 ロマイン・グロジャン       276
14 グレアム・レイホール       271
15 リナス・ヴィーケイ        265
16 デイヴィッド・マルーカス     255
17 カルーム・アイロット       236
18 サンティーノ・フェルッチ     201
19 エリオ・カストロネヴェス     200
20 マーカス・アームストロング(R)   190
21 デヴリン・デフランチェスコ    169
22 アグスティン・カナピーノ(R)    164
23 ジャック・ハーヴィー       146
24 コナー・デイリー         134
25 スティング・レイ・ロブ(R)     129
26 ベンジャミン・ピーダーセン(R)   115
27 ライアン・ハンター-レイ       111
28 シモン・パジェノー        88
29 佐藤琢磨             70
30 エド・カーペンター        46
31 リヌス・ルンドクイスト(R)     35
32 トニー・カナーン         18
33 マルコ・アンドレッティ      13
34 ユーリ・ヴィップス(R)       12
35 トム・ブロンクイスイト(R)    11
36 キャサリン・レッグ          5
37 RC・エナーソン(R)        5

 

途中から省略……というワケにも行きにくく、出場者全員の掲載となったこと、ご了承ください。

 すでにタイトル争いは決着しているので、ラグナ・セカでの注目は、

1 誰が勝つのか?
2 シリーズ・ランキングの最終決着
3 ルーキー・オヴ・ザ・イヤーは誰に?

といったところになる。

 去年のラグナ・セカはパロウの圧勝だった。今年もそうなる可能性……は高い。チャンピオンシップ獲得を決定している彼は思い切って、のびのびレースに取り組める。リラックスしている分、実力を発揮し易いだろう。ディクソンも状況は似ているので、AJ・フォイトの勝利数に更に近づくべく全力を投入して来ることだろう。

 過去2勝のコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン/ホンダ)も有力な優勝候補だ。今年の彼は未だ一度も勝てていないが……。地元カリフォルニアで優勝し、悪いイメージを断ち切ることができるか?

 ハータ同様に今年は未勝利……というドライヴァーをランキング上位から並べる。結構な数がいる。
パト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)
ウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)
アレクサンダー・ロッシ(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)
フェリックス・ローゼンクイスト(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)
グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)
リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー)
エリオ・カストロネヴェス(メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ)
ライアン・ハンター-レイ(エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー)
 二度目のタイトルを去年獲ったパワーが未勝利とは(!)。もっとも、彼は去年も1勝だけだったか。ディクソンはシーズン終盤に2勝した。それに刺激を受けたパワーが最終戦で一矢を報いる可能性は? ゼロではないが、ポートランドでも覇気のないレースをしていた印象。去年のラグナ・セカで彼、ポール・ポジションを獲得しているんだが……。
 マクラーレンはチームの成長スピードが鈍化し、オーワードをもってしても勝てないシーズンになっている。勝てばジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)に代わってランキング3位となることもできるかもしれない。それをモーティヴェイションに全力を尽くして欲しいところだが、今年の彼からは勝利に対する執着心や貪欲さがあまり感じられていない(特にシーズン後半戦)。

 初勝利はさまざまな事情から難しくとも、ラグナ・セカでの好パフォーマンスに期待がかかるのは、シリーズ最小規模チームからの出場ながら何度か好走を見せて来ている二人。デイヴィッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD/ホンダ)とカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング/シヴォレー)。アイロットは昨年のラグナ・セカで予選2位になっている。
 それから、ロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)。彼の場合は、「アンドレッティで2シーズン戦っても勝てないのか?」というネガティヴな視点からの注目になってしまうが、元F1ドライヴァーという肩書きにそぐわない成績しか残して来れていないのだから仕方がない。

 次に、ランキング絡みで見て行く。最終戦をポイント・スタンディング3番手で迎えるのはニューガーデンだが、オーワードが逆転可能な11点差の4番手につけている。そのオーワードと、すぐ後ろのマクロクリンの間にも差は13点しかない。こちらも入れ替わる可能性アリ。3人のシヴォレー・ドライヴァーたちのラグナ・セカでの戦いはシヴィアなものになる。

 ランキング・トップ10入りができるか否か?
非常に際どい状況にあるのが現9番手〜11番手にいるロッシ、ハータ、カイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)の3人。ここはロッシが349点、ハータが348点、カークウッドが347点という超の字がつく接近ぶりだ。

 ルーキー・オヴ・ザ・イヤーの栄冠は、ニュージーランド出身のマーカス・アームストロング(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)が獲得することとなりそうだ。ストリート&ロード・コースのみの出場=フル・エントリーより5戦少ないレース出場数=ながら、アルゼンチンのツーリング・カー・キング=アグスティン・カナピーノ(フンコス・ホリンジャー・レーシング/シヴォレー)に34点の差をつけて最終戦を迎える。


参考資料:過去のウィナー@ラグナ・セカ
2022 アレックス・パロウ
2021 コルトン・ハータ
2020 コルトン・ハータ

Jack Amano

 

1 件のコメント:

  1. 夢で、琢磨選手の移籍先が決まったと見ました!どことかはわからないけど…正夢にならないかな。

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