2023年9月2日土曜日

2023 INDYCAR レースプレビューR16 ビットナイル.com グランプリ・オヴ・ポートランド

 2023年のNTTインディーカー・シリーズも残すところ2戦。最後が3週連続という、なぜか過酷なスケジュールの第2戦目がオレゴン州ポートランドで今週末に開催される。
 エド・カーペンター・レーシングのメイン・スポンサーでもあるビットナイル.comを初めてタイトル・スポンサーに迎えてのレース=ビットナイル.comグランプリ・オヴ・ポートランドは、コロンビア・リヴァー沿いに作られたフラットな常設ロードコース、全長1.964マイルのポートランド・インターナショナル・レースウェイを110周して争われる。



 チャンピオン争いはチップ・ガナッシ・レーシングのチームメイト同士による一騎討ち。今シーズン4勝のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)がポイント・リーダーで、ポイント2番手には今シーズン2勝=現在2連勝中のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がつけている。ふたりのポイント差は74ポイント。彼らふたりだけにタイトル獲得の権利は残っている。

 パロウは2021年にポートランドで優勝しており、その年にキャリア初めてインディーカー・チャンピオンとなった。まだインディーカーに参戦して2年目のことで、チップ・ガナッシ・レーシングからエントリーした初めての年でもあった。
 ポートランドのレースを終えた時点でディクソンに対して55ポイントの差をつけていれば、パロウが二度目のタイトルを手に入れる。スペイン出身、現在26歳の彼はプレッシャーを跳ね除け、そのタスクを達成できるろうか?

 「ポートランドでは優勝経験があります。また、ポートランドで私はインディーカーでの初ポール・ポジションを獲得したので、自分にとって特別なコースであると言えます。チャンピオン争いをしているふたりのドライヴァーのうち、どちらが勝ってもドライヴァーズ・チャンピオンシップはチップ・ガナッシ・レーシングが獲得する。私たちのチームにとって素晴らしいシーズンとなっています。
 チップ・ガナッシ・レーシングのドライヴァーがチャンピオンになる。それが最も重要なこと。私自身にとっては、今週タイトル獲得を決定できる可能性があります。最終戦を残して、少し早めにそれが実現されることが望ましいですね」とパロウはコメントしている。

 1レースで獲得できる最大が54ポイントであることを考えれば、74ポイントのリードはかなり大きい。しかし、パロウが相手にするのは6度のシリーズ・タイトルを誇るディクソン。キャリア55勝でインディーカー歴代2番手の勝利数を誇り、すでに伝説の域に到達しているニュージーランド出身ドライヴァーは、シーズンの終盤になって一気にポイント差を縮めて来た。インディアナポリス・モーター・スピードウェイ/ロードコース、ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ(1.25マイル・オーヴァル)の2戦を連続で制覇し、タイトル争いに生き残ったのだ。

 「パロウと彼のクルーたちは、ほぼ完璧と言っていいシーズンを送って来ています。彼らのパフォーマンスは賞賛に値します。彼らがやって来たことは、すべてが正しかった。
 スピードの上がらない週末でも、レースでは作戦をうまく使って好成績を残すことに成功して来ています。悪いレースというものがありませんでした。そういうシーズンを送ることができている時は、ライヴァルのことが気になる……ということもありません。私にもそういう経験があります。触れるものすべてが金に変わるような、すべてが自分の望む方向に進むようなシーズンです。
 自分たちが特別だと感ずることができるのは、シーズンが残り2戦となった時、チャンピオンになる権利を有しているのがチップ・ガナッシ・レーシングのドライヴァーふたりだけだという点です。とてもクールで、チームにとって素晴らしいことです」とディクソンは話している。

 チャンピオン獲得の権利を持たないドライヴァーたちの間でも、シーズン最終2戦ではポイント・ランキング争いが激しさを増す。ポイント3番手は今シーズン4勝のジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)=440ポイント。その後ろのポイント
 番手は今シーズン未勝利のパト・オーワード(アロウ・マクラーレン)。彼とニューガーデンと間にある差は11点と小さい。そして、ポイント5番手は今シーズン1勝で、昨年のポートランド・ウィナーのスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)=426ポイント。彼とオーワードの差は僅か3点。ニューガーデンとの差も14点と逆転は十分に可能だ。
 もし彼がニューガーデンを上回るランキングでシーズンを終えたら、彼がフルシーズン出場3年目にして初めてチーム・ペンスキー内でシーズン最上位のドライヴァーになる。タイトルもインディー500での勝利も未だのマクロクリンは、今シーズンの勝利数も「1」と少ないが、そのパフォーマンスの安定ぶりは高く評価されるべきものだ。
 なお、自身二度目のタイトルを昨年獲得したディフェンディング・チャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、今シーズンは未だ勝利がなく、ポイント・スタンディングも現在7番手=388点なので、チームメイトふたりを上回るのは難しい状況だが、今年インディー500ウィナーとなったニューガーデンと、チーム内で最も若いマクロクリンのプライドを賭けたポイント・バトルがポートランド、そしてラグナ・セカでは展開される。
 オーワードは3カーへと今年から拡大したアロウ・マクラーレン内でナンバー・ワン・ドライヴァーであることをパフォーマンスと成績で証明して来ているものの、チームにとってもシーズン初となる勝利を15戦を消化しても手にすることができていない。ラスト2レースでの彼はアグレッシヴな戦いぶりを見せることだろう。一矢報いたい彼のチームメイトたち、フェリックス・ローゼンクイスト(来シーズンもマクラーレンで走れるか未定)、アレクサンダー・ロッシの走りにも注目したい。

 今回のレースではエストニア出身の23歳、ユーリ・ヴィップスがレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからインディーカー・シリーズへのデビューを果たす。2019年マカオ・グラン・プリ・ウィナーで、FIA F2出場経験を持ち、レッド・ブル・ホンダF1のテスト・ドライヴァーを務めたこともある彼は、昨シーズン・オフにRLLでテスト走行を経験している。今年の最終2レース出場は、来シーズンのフル・エントリーが内定しているということなのかもしれない。

 ミッド・オハイオで大きなクラッシュをしたシモン・パジェノーは、今週末もレースに出場しない。彼らのカー・ナンバー60には、来年レギュラーとしてそのマシンを委ねられることになっているトム・ブロンクイスト(イギリス出身/29歳)が今週末は乗る。トロント以来となる二度目の出場だ。突然実現したインディーカー・デビューとなったトロントでの彼はスタート直後のターン1で多重クラッシュに巻き込まれ、0周リタイアだっただけに、今週末はで少しでも多くの周回をレースで経験したいところだろう。
 ブロンクイストはMSRのスポーツ・カー・プロジェクトのドライヴァーであるため、トロント以降の5レースには出場ができなかった。アイオワでのダブルヘダーで空席を埋めたのはコナー・デイリー。その後の3レースは2022年インディー・ライツ・チャンピオンのリヌス・ルンドクイスト(スウェーデン出身/24歳)が起用されて来た。
 彼はデビュー戦だったナッシュヴィルのストリート・コースと、ショート・オーヴァルのワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイでのレースでファステスト・ラップを記録し、ポテンシャルをアピールしていたが、ポートランドを前に来シーズンのチップ・ガナッシ・レーシング入りが決定、発表された。複数年契約をした彼は、今年の最終2レース(ポートランドとラグナ・セカ)はガナッシのピットで過ごし、来るシーズンに備えるという。

ポートランド/過去のウィナー
2022 スコット・マクロクリン
2021 アレックス・パロウ
2019 ウィル・パワー
2018 佐藤琢磨

 アメリカ北西部にあるポートランドは9月初旬でもすでに秋めいた気候。予報では金曜日の最高気温は摂氏28度。土曜日は30度まで上がるが、日曜は25度と涼しい中でレースは行われる見込み。3日間の降雨確率予報は15〜17パーセント。

Jack Amano
 

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