2023年5月1日月曜日

2023 INDYCARレポート R4 チルドレンズ・オヴ・アラバマ・インディー・グランプリRace Day 決勝:バーバー優勝はスコット・マクロクリン

Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

オーソドックスな2ストップ作戦のグロジャンに対して3ストップのマクロクリン
90周のレースは異なるピットストップ戦略の戦いに


 アップ&ダウンに富む全長2.3マイルのコースを使った90周のレースは、2ストッパーとするか3ストッパーとするか、作戦が大きくものを言う戦いとなった。予選4位という好ポジションからのスタートながら3ストップ作戦を採用したスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)が、ポール・ポジションからセオリー通りに2ストップで走り切ることとしたロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)を倒し、今季初優勝、キャリア4勝目を挙げた。マクロクリンにとってはバーバー・モータースポーツ・パークでの初勝利。シヴォレーはホンダとイーヴンになる今シーズン2勝目をマークした。

ポールシッターのグロジャンは、オープニングラップで、オーワード、パロウから激しいチャージを受けるもこれを退け、2ストップながら燃費走行していると感じさせないスピードでトップを快走していった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 アウトラップでマクロクリンがグロジャンから首位を奪取

グロジャンはプッシュ・トゥ・パス多様でマクロクリンをオーバーテイク

 2023年のインディーカー第4戦の決勝日は快晴に恵まれ、気温が21℃と絶好のレース日和となった。ポール・ポジションからのスタートだったグロジャンはスタートからレースをリードし続け、30周で1回目、60周で2回目のピットストップを行い、キャリア初勝利に向けてラップを重ねて行った。

2回目のピットインを終えてもなおグロジャンがトップを堅持する Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 63周目にマクロクリンが3回目のピットイン。グロジャンはその3周前にピットアウトをしてからプッシュ・トゥ・パスを40秒も使ってトップを守ろうとしていたが、マクロクリンが彼の前へとピットアウトして来た。
 相手はコールド・タイヤで、自分はもう暖まり切っているタイヤという状況で、グロジャンはマクロクリンをパスしようとトライしたが、そのチャンスを掴めず。しかし、彼は諦めずにアタックを続け、さらにプッシュ・トゥ・パスを大量投下。ついに65周目の最終コーナーでマクロクリンに対して大胆なパスを仕掛け、相手に軽く接触しながらもトップを奪ったのだった。しかし、そうするために彼はプッシュ・トゥ・パスを多用し過ぎ、残されていたのは僅かに4秒。対するマクロクリンは40秒近くを保有しており、彼はゴールまでの残り周回で相手をじっくりと追い詰めて行く戦いを展開した。

グロジャン、下りのターン5で痛恨のブレーキングミス
プッシュ・トゥ・パスに余裕あるマクロクリンがそのままチェッカー

プッシュ・トゥ・パスに余裕があるマクロクリンは、じっくりとグロジャンにプレッシャーをかけ続けた Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 72周目、ターン5でグロジャンの走行ラインが少しアウトに流れた時、マクロクリンはすかさすインから並びかけ、ターン6へと続くストレートで一気に抜き去った。

 トップを奪還したマクロクリンは勝利を確信し、自信に満ちた走りでリードを広げ、ゴールまで悠々と走り切った。F1を9シーズンも戦った37歳のフランス人ドライヴァーだが、今日のレースではニュー・ジーランド出身の29歳の方が100戦練磨のヴェテランのような戦いぶりを見せ、ウィナーとなった。グロジャンは今回がインディーカーでのキャリア5回目の2位。初勝利にはまだ手を届かせることができていない。

ホンダ勢の多くが2ストップ作戦をチョイスするも
3ストップ勢に対抗できる速さがあったのは結局グロジャンだけ

マクロクリンとグロジャンはフェアなバトルを称えあう Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

  結果論になるが、今日の正解は3ストップで、グロジャンのチームは2ストップを選んだ。ドライヴァーのパフォーマンスによって落としたレースではなかった。彼と同じ作戦で戦ったライヴァルの中での最上位は、パト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)の4位で、グロジャンより18.7秒も遅れてのゴールだった。チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ勢もエントリーしている4台すべてを2ストップで戦わせ、オーワードの0.4秒後ろでゴールしたアレックス・パロウの5位がベスト・リザルトとなった。しかし、ファイナル・スティント開始直後のプッシュ・トゥ・パスの多用はどこまで効果的だったのか……疑問が残る。

プライマリー・タイヤでスタートする3ストップを確信していたペンスキー
マクロクリン勝利、そし21位まで後退していたてパワーは驚異的な追い上げで3位

予選では精彩がなかったパワーの走りが決勝3ストップ作戦で復活! ファステストをマークするキレあるドライビングで3位に Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 チーム・ペンスキーは3台すべてが3ストップだった。チーム内で作戦を敢えて分けることもある彼らだが、今日は3ストップが有利であることに確信を持っていたということなのだろうか。しかも、3人ともブラック・タイヤでスタート。ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー/シヴォレー)は1周目のフェリックス・ローゼンクイスト(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)との接触でリヤ・サスペンションに何らかのダメージがあったのか、セカンド・スティントではトップを走ったが、ファイナル・スティントで大きくペース・ダウン。最終的に15位まで順位を下げてのゴールとなったが、予選までで最も厳しい状況に置かれているように見えていたウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)は第2、第3、第4スティントにレッド・タイヤを3連続投入し、11位スタートから表彰台に上る3位までポジションを上げる見事なレースを戦った。

 

マクロクリンを称えるパワー。ペンスキーのレース戦略の勝利でもあった Photo:Penske Entertainment (James Black)クリックして拡大

 予選までの苦悶が嘘のようにレースでのパワーはファステスト・ラップも記録。彼らしい切れ味鋭い走りでレース終盤にグロジャンに迫った。ゴールまで10周となった時点で彼とグロジャンの間には2秒以上の差があったが、残り5周となるまでにそれは1秒以下に縮まっていた。しかし、パワーのタイヤはすでに悲鳴を上げており、3位でのゴールを受け入れることとなった。

ファーストスティントのスローペースを読み切ったペンスキー

 スタートでレッド・タイヤを装着したドライヴァーが大半だった。彼らは2ストップで走り切る作戦で、燃費セイヴも考えて序盤のペースは遅くなっていた。チーム・ペンスキーにはそうしたレース展開になることが読めていたからこそ、スタート・ポジションが悪くないのに3ストップを選んだということなのだろう。今回の彼らの作戦力は、ライヴァル勢より一段上だった。マクラーレンはオーワードとロッシで作戦を分けた。しかし、マクロクリンは4番手スタートだったから優勝できたが、ロッシは8位まで順位を上げてのゴールが精一杯となった。

パロウ、オーワード、ディクソンは2ストップ作戦選択するもグロジャンには対抗できず、淡々としたレース運びとなってしまった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 5位は予選2位だったアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)。6位は予選も6位だったクリスチャン・ルンドガールド(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)は予選5位から7位でのゴール。8、9、10位はアレクサンダー・ロッシ(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)、ローゼンクイスト、マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)だった。
 これで2023年シーズン全17戦のうちの4戦が終了。ポイント・リーダーはエリクソン(=130点)で変わらず。2番手はオーワード(=127点)、3番手はパロウ(=121点)、4番手が今日のウィナー=マクロクリン(=119点)。5番手がグロジャン(=115点)。
以上

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