カークウッドの予選タイヤタクティクスが初ポール奪取の大きな要因だった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski) クリックして拡大
プラクティス1&2で最速だったパト・オーワード(アロウ・マクラーレン/シヴォレー)が予選で6位にしかなれなかった。コンディションは前日のプラクティス1とほぼ同じ気温17〜18℃/路面が40〜43℃。マシン・セッティングを合わせ込み損ねたはずはなかった。アンドレッティ・オートスポート/ホンダとチップ・ガナッシ・レーシング/ホンダというライヴァル勢の方が予選に向けてもう一段セッティングを進歩させ、ドライヴァーたちがオルタネート・タイヤの性能を引き出していた……ということなのだろうか。
オーワード、オルタネート2セット目投入しQ2でフルアタックの誤算
予選を終えたオーワードは、「Q2の最初のアタックがうまく行かなかったため、セッション終盤に2セット目のオルタネート・タイヤで走り、Q3で使える新品のオルタネート・タイヤは無くなった。ライヴァル勢に対して不利な状況に置かれたということだ、特にカイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)に対して。Q3での自分は良いラップを進行させていた。カークウッドほど良いものではなかったが……。彼に勝つにはユーズドのオルタネート・タイヤで驚くようなラップを完成させるしかないと思った。レーシング・ドライヴァーとして全力でその達成を目指したが、ターン9でちょっとばかり欲をかいてしまい、僅かながらタイムをロスした」とコメントしていた。若きメキシカン・ドライヴァーは予選進行中の状況認識を誤っていたようだ。
Q2ではルーキーのマーカス・アームストロング(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)がクラッシュして赤旗が出されたが、その時点でオーワードの出していたベスト=1分06秒3993はQ3進出に十分なものと見えていた。しかし、彼らはもう1セットの新品オルタネート・タイヤをセッション終盤に投入することとした。Q3進出を確定させるためだ。
オーワードはその前に行ったアタックに満足していなかった。それは予選後のコメントが表している通り。より速いラップを刻む必要性を彼は感じていた。彼を取り巻く環境もそれを促していた。
ライヴァル勢の中にはセッション再開後に1ラップのみ許されたアタックでベストを更新した者もいたが、実際にオーワードの赤旗以前のベストを上回れたのはロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)だけだった。これは結果論だが、多くのライヴァル勢のアタックがうまく行っていない状況をチーム・スタッフはタイム・モニターから知ることができていた。彼らは無線で、「タイヤをセイヴせよ」という司令を複数回出した。しかし、オーワードは全力アタック・モードにマインドをセットしており、100パーセントの走りをフル・ラップに渡って敢行した。
途中でスロー・ダウンしても問題のない状況だった。しかし、オーワードはアタックを続け、Q3を戦うタイヤを必要以上に摩耗させてしまった。
Q3でもオーワードはアタック・ラップをパーフェクトにまとめることができず、予選結果はファイナルでの最下位である6位となった。
カークウッド以外の4人もユーズド・オルタネートでファスト6
今回の予選でオーワードは精神的安定を失っていた。自分たちのパフォーマンスを実際より低いと捉え、焦りのようなものが生じていたから、Q2でピットから出された指示を聞き入れずにアタックを続けてしまった。若いドライバーの精神状態を理解し、それを安定させる術が今回のマクラーレン陣営にはなかった。
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Q3でフレッシュ・オルタネート・タイヤを使ったのはカークウッドだけだった。オーワードと同じように、Q2の最後でフレッシュ・オルタネートを多くのドライヴァーたちが投入していたのだ。フレッシュ・オルタネート・タイヤのアドヴァンテイジを使い、カークウッドは見事にキャリア初ポール・ポジションを獲得したわけが、オーワードより速かったカークウッド以外の4人は、オーワードと同じくユーズド・オルタネート・タイヤでのアタックだった。この点をオーワードは誤って理解していた。
Q2を終えてQ3が始まるまでのインターヴァルでチーム・スタッフとオーワードの間でどんな会話がなされたかは知る由もないが、Q2終盤のフル・アタックに関して叱責を受けた可能性はある。それによって”自分がミスを冒した”と感じた若いドライヴァーの精神状態は更に安定を欠き、Q3で持てる力をフルに発揮できなかったということだったのかもしれない。コクピットにいるドライヴァーは、速く走ることに強くフォーカスしており、自らの戦っている予選の全体像を俯瞰するように把握することが難しい。ドライヴァーがパフォーマンスを発揮するためには、チームのスタッフが的確な情報をフィードし、自信を持って走ることのできる環境を整える必要がある。
主催者のオペレーション・ミスが誘発した
カルーム・アイロットとリナス・ヴィーケイのアクシデント
朝のプラクティス2開始早々にカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング/シヴォレー)がタイヤ・バリアにノーズから激しくクラッシュ。その処理が終わって走行が再開されると、またすぐに今度はリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー)がクラッシュした。どちらもターン5で発生したアクシデント。コースのイン側にボルト止めされている縁石に乗り上げてマシンがジャンプ(!)
着地後に減速し切れずにタイヤ・バリアに突っ込んでいた。
金曜日のプラクティス1開催時、ターン5イン側にそれらの縁石はなく、コーナーをカット気味に走ることが可能になっていた。しかし、土曜日には縁石が復活(木曜日のトラック・ウォーク時には設置されていたという)。その変更をドライヴァーたちは知らされておらず、アイロットとヴィーケイのマシンが大きなダメージを受けたことで全エントラントの知るところとなった。シリーズ主催者のオペレーション・ミスだ。しかし、マシンの修理代を彼らが支払うことはないだろう。フンコス・ホリンジャー・レーシングもエド・カーペンター・レーシングも決して裕福なチームではないというのに……。ドライヴァーたちに怪我が無かったのは不幸中の幸いだった。
以上
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