2022年9月11日日曜日

2022 INDYCARレポート R17 ファイアストン・グランプリ・オヴ・モントレー Day2 メールマガジン:ウィル・パワーがチャンピオンに大きく近づくポール・ポジション

マリオ・アンドレッティを超えた! マリオの祝福を受け、パワーも感無量の表情Photo:Penske Entertainment クリックして拡大

 パワー、生涯獲得回数で1位となる68回目のPP!

 ポイント・リーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が最終戦ラグナ・セカのレースをポール・ポジションからスタートすることになった。今年の第15戦ゲイトウェイで自身67回目のPPを獲得し、マリオ・アンドレッティとPP回数で歴代トップに並んだパワーは、今日の今シーズン4回目のPPによってインディーカーでのPP獲得数で単独トップに躍り出た。

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Q1同組のニューガーデン、ディクソンがともにスピン!
Q2は余裕をもって3番手でクリア


 Q1のグループ2に組み入れられていたパワーは、タイトルを争う強敵2人、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)とスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がグループ1で敗退するのを目の当たりにした。この時に彼は何を思っただろうか。プレッシャーが一気に軽減されたのは間違いないだろう。
 グループ2のトップは1分11秒3471を出したフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)が手に入れ、パワーはベストが1分11秒3496。0.0025秒の僅差でトップは逃したが、悠々とQ2に進んだ。精神的にはかなり大きな余裕を持って臨めた予選となっていたのではないだろうか。
 Q2ではラグナ・セカを得意とするアンドレッティ・オートスポート勢が上位を占めた。トップはアレクサンダー・ロッシによる1分11秒4238。2番手はロマイン・グロジャンの1分11秒4793だった。パワーは1分11秒4871で3番手と、ここでも危なげなく、ファイナル進出を決めた。


ファスト6では最後にアイロットのタイムを0.193秒更新!

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 最終戦のファイアストン・ファスト6は、上記の3人とパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、アレックス・パロウ(Iチップ・ガナッシ・レーシング)、そしてルーキーのカルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)が1分11秒6320でトップに立った。そして、イギリス人ルーキーのキャリア初PPがなるか……と思われた時、パワーがアイロットを0.0193秒上回り、キャリア68回目のPPを奪取した。

68回目のポール・ポジションに感激をあふれさせるパワー
「自分がマリオと同じ場所にいる事実に自分自身が圧倒されている」


 「今日、自分たちは素晴らしい記念碑を打ち立てた。マリオ・アンドレッティのようなアイコンと並び称されることになれるなんて自分としては驚きでしかない。マリオの現役時代を考えると、レースは非常に危険で、リスクはいまよりも格段に大きかった。そんなマリオと同じ場所に自分がいるという事実には自分自身が圧倒されてしまうほどだ。今日、この場所にマリオがいてくれたのは、本当に素晴らしいことだ。私はマリオを大変尊敬している。子供時代の私は彼の大ファンだったんだ。マリトとのヘルメット交換をお願いしたい。もし彼が私のヘルメットを彼のコレクションに含めてくれるのであれば」と歴代最多PPウィナーとなったパワーは感激ぶりを語った。

「明日のレースをどう戦うか、ゆっくり考えたい
長い1日になるだろうが、自分はベストを尽くす」


 「今年の私たちはPPが狙えるレースを考え、そこでは予選に強くフォーカスすることとしてきた。それで今年はこれだけのPP獲得を果たせたのだと思う。こうしてPPを獲得したことで、明日のレースではリード・ラップのボーナス1点を獲得する大きなチャンスを得たし、最多リード・ラップを記録して、さらなるボーナスをプラスすることさえ可能となるかもしれない。タイトルを争うライヴァルたちはタイヤのストックで自分たちより優位にある(レッド・タイヤの新品を2セット所有)が、自分たちには走行順位でのアドヴァンテイジがある。今晩レース展開や戦略についてよく考え、どのように明日戦うかを考えたい。長い1日となるだろうが、自分はベストを尽くす」とパワーは話した。


マリオ・アンドレッティもパワーを絶賛
「記録は、素晴らしい人物によって破られる
パワーにはこの記録を達成する資格が備わっていた」

 PP表彰式に姿を見せたマリオ・アンドレッティは、「ウィルは素晴らしい男だ。私は予選が大好きだった。だから、彼が自分と同じであることがよくわかる。予選のアタックというのは、ベストに手を届かせようと全力でトライするもの。二度と同じラップは実現できない……という走りを行うこと。それがPP獲得につながる。今日のように、私の記録が破られる日が来ることはわかっていた。インディーカー・シリーズにとっても、モータースポーツにとっても、こうして新記録が打ち立てられることは素晴らしい。記録は破られる宿命にある。素晴らしい人物によってそれは達成される。ウィル・パワーは彼のキャリアを通して、ずっと優秀な予選アタッカーであり続けてきている。彼にはこの記録を達成する資格が備わっていた。彼はこの記録のために奮闘、努力を続けてきた。彼は本当に予選で速いドライヴァーだ。予選でPPを獲得できるか否か。それはそのドライヴァーがどれだけPPを欲しているかにかかっている。PPを獲得するための何か特別な秘密が存在するなら、それを私は瓶詰めにして売っている。PPが獲りたいとどれだけ強く欲し、繰り返すことが不可能なラップを完成させようとはアタックする。その積み重ねで記録は作られる」とパワーを絶賛していた。

アイロット、1台体制のハンデを跳ね返すフロント・ロウ獲得
「チーム無スタッフは驚くべき仕事を成し遂げてくれた」


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  前述のタイムによって予選2位はアイロットのものとなった。ルーキーでのフロント・ロウ獲得は大きな賞賛に値する。それも、1台体制で戦う小規模チームのフンコス・ホリンジャー・レーシングからのエントリーでのこの成績は素晴らしい。

限られたリソースでベストな仕事を成し遂げ、アイロットの予選2位を支えたエンジニアたち。左がレース・エンジニアのスティーヴン・バーカー=イギリ出身。右がテクニカル・ディレクターのイグナシオ・ロメロ=スペイン出身 Photo:Masahiko Amano クリックして拡大

 「自分たちに何ができるのか。それを今日証明できた。私たちのチームは、今シーズンが始まった時にダンパーを2セット半しか持っていなかった。しかも、そのうちの1セットはオーヴァル用だった。最終戦での私たちが所有しているのは3セット半のはず。最初の1セットとそれらは大きく変わらない。最初のセットと同じものを購入し、それに少しの調整を加えただけだ。私たちの今シーズンの開発プログラムは、開幕時に持っていたものをレヴェル・アップしていくもの。つまりはファイン・チューニングするというものだった。私自身、私のドライヴィング、積み重なっていった経験、それらによって私たちは少しずつ実力を高めてきた。常にベストの仕事をしようとトライを続けてきた。とても難しい戦いになっていた。特に、チームメイトがいないことは、そのドライヴァーを活用したり、学び取ることができないという点で厳しかった。現在のレヴェルに達し、今日のような結果を残せたことをチームのスタッフ全員が喜んでいると思う。彼らは驚くべき仕事をしたと言っていいと思う。今日のことは、たった1周だけのことかもしれないが、それを成し遂げることができた点が素晴らしい。最終戦でこのような結果を手にして、このオフに働くための大きなモーティヴェイションが得られた」とアイロットはコメントした。

シヴォレー、最終戦でもフロント・ロウ独占
アンドレッティ勢はロッシとグロジャンが2列目スタート


 エンジン・マニュファクチャラーとして久しぶりのタイトルを獲得することとなったシヴォレーが、最終戦でもフロント・ロウを独占した。
 

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  アンドレッティ勢はユーズド・レッドでの戦いでパワーとアイロットの後塵を拝し、明日のレースはロッシが2列目イン側、グロジャンがその隣りからスタートすることとなった。彼らのファイナルでのベストは、ロッシが1分11秒7698、グロジャンが1分11秒7858だった。予選5位は1分12秒1625のパロウ。6位はオーワードと決まった。
 コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)はラグナ・セカでの2年連続、3回連続のPP獲得を果たせなかった。Q1のグループ2を戦った彼は一度コース・アウトし、次のアタックでもタイヤをコースからはみ出させ、ベストは1分12秒2720止まり。予選結果は18位だった。

Q1でのスピンに落胆するニューガーデン
「自分たちは最速のマシンを仕上げていたのにとても悔しい
ただまだ戦いが終わってしまったわけではない」


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  ニューガーデンのQ1グループ1での脱落は意外だった。まだブラック・タイヤでの走行中だというのに、彼は名物コーナーのコークスクリュー入口で縁石に左前輪を引っ掛け、スピンしてコース外側のグラヴェル・ベッドにスタックした。赤旗を出した彼はベスト2ラップを剥奪され、セッション再開後にアタックのチャンスが得られなかったことからスターティング・グリッドは最後列の25番手に決まった。
 「私がミスをした。とても残念だ。自分たちのマシンは最速のものに仕上がっていたと思う。そのことを考えると、とても悔しい結果となった。チームのみんなにとって腹立たしい予選となってしまった。まだ戦いが終わってしまったわけではない。しかし、自分たちにとって状況が好ましいものでないのも確かだ。今日起きてしまったこと、その現実を受け入れるだけだ」とニューガーデンはコメントした。


ディクソン、1周のみ許されたアタックで6番手タイムを出すも
直後にパジェノーに更新されてQ1敗退


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  ニューガーデンのマシンがコークスクリューから除去された後、Q1のグループ1を戦っていた全車に1周のみのアタックが許された。もちろん全員がレッド装着でピットからダッシュして行った。ここでニューガーデンと同点のランキング2位から7回目のタイトル獲得を目指しているディクソンは、1分12秒1722をマークして6番手にランクされた。ところが、彼より後に計測ラインを横切ったシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)のラップ・タイムが1分11秒8874で、彼が3番手に飛び込み、ディクソンのQ2進出は阻まれたのだった。


佐藤琢磨、自己ベスト更新するもQ1敗退で予選22位

 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)はQ1をグループ2で戦い、今週の自己ベストとなる1分12秒4489をレッド・タイヤでマークしたが、Q2進出はならず、予選結果は22位となった。

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 「2回のプラクティスでの自分たちは、ちょっと行ったり来たり感がありましたね。昨日走ってだいたいの方向性を定めて、そこからマシンを良くしようとプラクティス2を走ったんですが、ちょっと行き過ぎてしまっていたので、そこから戻さざるを得なかったんです。二歩進んで一歩戻るのならいいんですが、今回の自分たちは一歩進んで一歩戻ったような状況で、もともとのセッティング・フィロソフィから大きく変更することもできないので、”これをやればいいかも”という机上の計算でのアイディアを盛り込んだセッティングで予選は戦いました。しかし、結果から言うと、それはうまく機能しませんでした」
 ただ、それをやって良かった、あるいはダメだったということは残りました。それは確実にセッティングをこれから絞り込むのに使うことができます。明日のレースでのコンディションに合わせ込むことができれば、良いレヴェルのマシンにすることができるんじゃないかな、と考えています」


「予選はタイミングが悪く、うまくいかなかったです」

「今回の予選ではトップ10入りを目指していました。プラクティス2が終わった時点では、自分たちは結構良いマシンにできていたと感じていたんです。セッションの半ばでニュー・タイヤを入れた時、コースの一箇所でミスをしていたんですが、その部分を普通に走れていたら、まともなタイムになっていたからです。オーワードが飛び出してレッド・フラッグが出されましたが、それでコースに土埃が出て汚れたのと、直前に走ったインディー・ライツでオイルが撒かれたことによって路面がプラクティス2の最初は悪かったんです。それが時間とともにどんどんと良くなって行って、ユーズド・タイヤでも区間タイムが良くなったぐらいでした。自分たちは最後にニュー・タイヤを入れませんでしが、最後にニューで走ったところが多くて、好タイムが次々出されていました。予選ではタイミングも悪かったですね、トラフィックに関しても、コルトン・ハータがコース・オフして土を引っ張り出した直後にそこを走ることになったことに関しても。うまく行かなかった予選でした。レースではよくあることですが、コンマ1秒で大きく順位の変わるインディーカーの予選では、そういうのはとても痛かったですね。それ以上に、今日の自分たちはプラクティスと予選でクルマがガラっと変わっちゃっていました。タイヤの内圧が結構バラバラでした。それがなぜ起きたのか? コンディションに合わせることがどうしてできなかったのか? ブラックでも左リヤだけがものすごく内圧が上がっちゃっていました。結構異常なほどに上がっていたんです。もしかしたら、そのタイヤだけの問題だったのかもしれない……とも考えたのですが、レッドでも同じように左だけ大きく内圧が上がってしいました。そういう事態が予選で起きた。今までにはなかったことです」


「もう少し18号車の情報をうまく取り入れてみるべきでした」

「とはいえ、昨日からタイヤの内圧については苦労をしてきていたんです。1回目に走ったときは全然足りず、空気を入れて走ったら今度はオーバーシュートしてしまっていた。その後に使ったレッドでは内圧に関しての調整が行われていたはずなのに、オーバーシュートして1周もタイヤが持たなかった。今日は昨日の反省点を踏まえての内圧セッティングになっていたはずなんだけど、うまく行かなかった。コンディションに対する読みが合っていなかったっていうことだと思います。もう少しチームメイトのカー・ナンバー18の情報もうまく取り入れるべきでした。今回のレッドは新しいコンパウンドになっているので、誰にとっても新しい状況なのですが、あちらは昨日も3周目にベストを出すことができていたので。
多くの面から今日の予選はフラストレーションの溜まるものになってしまいました」


「明日はレッドの新品が2セットあるアドバンテージを
生かせる戦いになるとよいですが、どうなるかわかりません」


「明日のウォーム・アップ・セッションは、朝早くて気温などのコンディションが今日までのプラクティスと予選、そしてレースとは異なるものになりますが、タイヤの内圧をどう設定するべきかの答えを見つけなければなりません。今回のレッドはそもそも持ちの悪いタイヤになっているようですから、内圧が上がり過ぎて持たない……という事態は避けないとなりません。レースは2ストップでも燃費的には行けますが、タイヤが持たないでしょうから、3ストップが主流になると思います。去年はレッドの方が良いレース・タイヤでしたが、今年はどうなるか……。レッドもブラックも2セットずつという組み合わせか、レッド1セットとブラック2セットとなるのか……。自分たちにはレッドの新品が2セットあるので、それを使うのが有利という戦いになればいいのですが、まだどうなるかはわかりません」と琢磨は話した。

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