終始安定した走りを見せたマクロクリンが混乱のレースを制し、開幕戦以来のシーズン2勝目を挙げる Photo:Penske Entertainment 【Chris Owens】クリックして拡大
レース中盤のパロウの追撃も寄せ付けず
予選2位からスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)が勝った。シーズン&キャリア2勝目は喜ばしい。複数勝利は彼と3勝のジョセフ・ニューガーデン(同じくチーム・ペンスキー)だけでもあるし。ところが、マクロクリンのランキングは2勝目を挙げても7番手と高くはない。2連勝しかけた開幕2戦の後にピリッとしないパフォーマンスが続いていたためだ。
今回のマクロクリンにはミスがなかった。レッド--ブラック--ブラックというタイヤ戦略も正解で、特にレース終盤のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)を相手にした走りが素晴らしかった。
ラストスティントのリスタートも完璧にこなし、その後のパロウのチャージもマクロクリンははねのける Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大 |
シヴォレーエンジンの燃費とドライバビリティを評価するマクロクリン
ウォームアップ後のセッティング変更もプラスに作用
「今週末は両親がサーキットに来ているので是非とも勝ちたかった。オデッセイ・バッテリーという新スポンサーのためにも勝つことができて嬉しい。今日のレースは厳しいものだった。燃費も重要なファクターだった。シヴォレー・エンジンは燃費が素晴らしく、ドライヴァビリティも高かったのでリスタートでホンダ・エンジンで走るパロウとのギャップを保つことができていた。レース終盤はコースのコンディションが変わったためかハンドリングが少し悪くなっていたけれど、勝てるマシンを用意してくれたチームを誇りと感じている。もうちょっと簡単に勝てた方が自分としてはありがたかったけれどね。今朝のウォーム・アップ後に施したセッティング変更が大きなプラスに作用していた」とマクロクリンはコメントした。
恣意的なタイミングでのフルコースコーションに助けられた
マクロクリン、ハータ、エリクソン
マクロクリンの勝利にケチをつけるつもりはさらさらない。しかし、カイル・カークウッド(AJ・フォイト・エンタープライゼス)がコース・アウトした時、トップ3だった彼とコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)とマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はまだ1回目のピット・ストップを終えてなく、フル・コース・コーションが出てたら最後尾近くまで下がってしまう可能性が高かった……という事実は指摘しておかないとならない。インディカー・オフィシャルは彼らのピット作業が終わるまでイエローを出すのを待った。この判断は疑問……を通り越した、納得の行かないものだった。またしてもインディーカーは自ら火種を創り出してしまったということだと思う。次にまた似た状況になった時、その判断で世間は揉めることになるのだろう(溜息)。イエローのタイミングが悪かったために優勝争いから奈落の底へ……というのは本来レースの一部のはずだ。イエローを出すタイミングをオフィシャルがコントロールするなんて神様に対する冒涜だ。傲慢かつ無見識。どういう基準で、どういう状況の時にどれだけ遅らせるかをインディカーはキッチリ明文化できないと思う。そして、できないんだったら、その領域に手を出すべきではない。今回、カークウッドのマシンがストールした時に普段通りにイエローが出され、ピット・クローズになっていたら、マクロクリンたち3人はピット・オープンを待って作業を受けるしかなくなって最後尾近くまで後退させられていただろう。そして、パロウかスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がトップに立っていた。まさかインディカー・オフィシャル、シリーズの新オーナーであるロジャー・ペンスキーに忖度したんではないでしょうね?
それからもうひとつ。今回のレースではコース・アウトしたマシンの除去にやたらと時間がかかっていたのも不可解だった。
見ごたえあったパロウのドライビングとレースタクティクスファスト6進出を逃し、予選7位となったパロウは、スタートタイヤにユーズド・レッドをチョイス。フレッシュ・レッド温存のチーム戦略もはまり、2位表彰台 Penske Entertainment (Matt Fraver)クリックして拡大
パロウは結局2位。またしても勝てなかったが、表彰台が4回目というのはさすがだ。予選7位から優勝まであと一歩の2位へと躍進したのは彼、そしてガナッシならではの”ワザアリ”な仕事によってだった。スタート時、ユーズド・レッドを装着していたのは彼らだけ。フレッシュ・レッドを温存したのは、1回目のピット・ストップはアンダーカットにしてセカンド・スティントにそれを投入=レッド--レッドと繋げば大幅なポジション・ゲインが可能との目論見だったからでは?
最終スティントではブラックの方が優位になる、というところまで予測できていたとしたら、それはすごいことだ。
残り20周を切ってからのリスタート、そしてゴールまで続いたマクロクリンとのバトル。勝利に手は届かなかったが、その攻撃には昨年とは違った迫力が備わっていた。「今日は楽しかった。プッシュしてプッシュして、彼をパスしようトライし続けた。今年表彰台に上がったレースは、セイント・ピーターズバーグ、バーバー、そして今回と、いずれも前を行くドライヴァーを最終ラップまで思い切りプッシュし続けたものとなっている。どのレースも楽しかった。今日彼をパスできなかったのは残念だった。でも、我々はこれからもプッシュとトライを続け、いつか必ず勝利をこの手で掴んで見せる」とパロウは語った。ランキングを4番手へとひとつアップさせたパロウ。2年連続タイトルは十分にあり得る。
パワー、予選での失敗を跳ね返すビッグエスト・ムーブ、
21番スタート→スピンで最下位からの3位表彰台!オープニングラップに無理やりインを差してコースアウト!最後尾まで後退という大ミスを挽回しパワーは2位に。ポイントスタンディングでも首位エリクソンに20ポイント差の2位と迫った Photo:Penske Entertainment (Matt Fraver)クリックして拡大
そして、3位でゴールしたのがウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。第4戦バーバーは予選19位から4位フィニッシュし、デトロイトでは予選16位から優勝。“グリッドが後ろの方が決勝で頑張れちゃうのが今年の彼”……などと言われもしたが、予選15位だったロード・アメリカでは近くのポジションからスタートした無鉄砲なルーキーに小突き回された挙句に追突されて19位に沈没。ポイント・リーダーだったのに……。ミッド・オハイオでのパワーは予選で進路妨害をやったために21位にしかなれず、決勝はスタート直後にチョイと暴れて27位まで転落した。そこから鬼神の追い上げで表彰台に到達。これこそが今年から見られるようになっているニュー・ヴァージョンのパワーだ。ペナルティがなければポール・ポジション獲得の可能性まであっただけに、中団以上のグリッドからのスタートであったら優勝できていたかもしれない。実に勿体無いが、そんなところも彼らしいと言えば、彼らしい。
パワーが予選でペナルティを課せられることになった一因は彼のピットに陣取るエンジニアやストラテジストが緻密さに欠け、集中力も十分に発揮していなかったところにあった。常勝時代のペンスキーでは考えられなかったことだ。しかし、そんなチームが今シーズンの9戦ですでに6勝も挙げているんだから世の中わからない。もっとも、それだけ勝っているのにポイント・リーダーは彼らが走らせるドライヴァー3人のうちのひとりではなく、ガナッシのマーカス・エリクソンだ。まだ総合力では彼らの方が上か?
シヴォレー、今シーズン9戦目にして7勝!
エンジン性能向上の一方、今大会では4人のドライバーにトラブル発生
ポールシッターのオーワードは序盤快調にレースをリードするが最初のピットストップ時にトランスミッションに異常が発生。その後完全にスピードを失い52周でレースを終えた Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大 |
シヴォレーは7勝目。ただし、ミッド・オハイオでの彼らはフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)、タティアナ・カルデロン(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、カルーム・アイロット(フンコス・ホリンジャー・レーシング)にトラブルが発生していた。
ローゼンクヴィストは3位走行中にエンジンがら白煙を噴き上げて8周でリタイア Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大
全部が全部エンジン自体のトラブルではなかったようだが、エンジンに関連した部分に問題は生じていたようだ。ドライヴァビリティの向上、ドライバーの好みに合わせてカスタムメイドするマッピングなどによって戦闘力が高まっているのは間違いないシヴォレーV6ターボだが、高温などコンディションが過酷になった時に信頼性が下がってしまっているのかもしれない。
アンドレッティ・オートスポートのチームメイトバトルが異常加熱
ロッシがグロジャンを弾き飛ばし、グロジャンはハータ、
パジェノーにもヒット!
今日のレースではアンドレッティ・オートスポートで内部紛争が勃発していた。アレクサンダー・ロッシとロマイン・グロジャンは複数回接触し、最終的にグロジャンがクラッシュした。
これまでも、ロッシ、グロジャン、そしてルーキーのデフランチェスコと、AAのドライバーの走りはコース上で様々なコンフリクトを生み、非難の声も上がっていたが、ついにミッド・オハイオではチームメイトに同士でラフプレーを応酬するような状態に Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大 |
グロジャンはコルトン・ハータとも、技術提携先であるメイヤー・シャンク・レーシングのシモン・パジェノーとも接触していて、レース終盤にルーキーのデヴリン・デフランチェスコをコースから弾き出したロッシの走りは八つ当たりと見えたほどだった。
望む成績を残せずにイライラが募るとドライヴァーたちの本性が顔を出してくる。グロジャンはもはや去年のような”ナイス・ガイ感”を漂わせてはおらず、予選後にはファイアストンのエンジニアに苦情をぶちまけ、レース後のインタヴューではロッシのことを“愚かなチームメイト”と呼んで非難していた。
一方のロッシは負けず嫌いが悪い方に出てしまった意地の悪いドライヴィングをチームメイト相手に行った。これを彼は以前にも見せたことがある。チーム・オーナーのマイケル・アンドレッティと、彼のチームのマネジメント・スタッフたちは次のトロントまでの1週間のインターヴァルでドライヴァーたちを説得し、協力し合う関係に戻すことができるだろうか?
以上
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