2022年7月25日月曜日

2022 INDYCARレポート R12 ハイヴィー・サリュート・トゥ・ファーマーズ 300 Race Day 決勝:アイオワのレース2はパト・オーワードが優勝

第4前戦アラバマ以来の今シーズン2勝目を挙げたオーワード。レース1で後塵を拝したニューガーデンの単独クラッシュ後は盤石な走りで後続を寄せ付けなかった Photo:Penske Entertainment (Chris owens)クリックして拡大
 オーワード、落ち着いた走りでチャンスを待ち
つかんだ今シーズン2勝目

 パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)はまだ23歳と若く、勝つことに飢えているが、年齢に似合わぬ冷静さを保ってレースを戦う能力を備えている。レースで勝者となるのは最後の1周をリードしている者で、早い段階でトップに立つ必要などない。トップ走行にはタービュランスを浴びないアドヴァンテイジなどがあるものの、オーワードがトップを奪おうと焦る様子は今日もまったく見られなかった。

パワーは3回目のピットの直後の195周目にオーワードにパスされて3位に後退。そのままオーワードに迫ることができず Photo:Penske Entertainment (ChrisJones)クリックして拡大

ペンスキーVSオーワード
レース1で感じたニューガーデンの強さに挑む


 しかし、3番手、あるいは2番手を走っていたオーワードに優勝できる自信があったかというと、そうでもなかったようだ。予選から1ランク上の速さを見せていたチーム・ペンスキーは、土曜日のレース1でも優位を維持していた。オーワードはニューガーデンにほとんど太刀打ちができていなかった。アロウ・マクラーレンSPのマシンにはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)と同等に近いスピードが備わっていると考えることはできたものの、相手を一騎打ちの末に打ち倒して勝利を掴めるかというと、それは難しそうに見えていた。

前日のレース1に続いて、ニューガーデンは84周目にパワーをパスしてから会長にレースをリードしていった Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 オーワードは今日もチャンスを待つ作戦だった。チャンスは必ず訪れる。そう信じてニューガーデンに食らいついて行った。レース2ではパワーが2番手に粘り続けたが、3回目のピットタイミングでオーワードは彼の前に出て、アイオワでのレースは2日連続で彼とニューガーデンによる真っ向勝負になった。

Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 「ペンスキー勢は明確に速い」と話していたオーワードだったが、彼が”手強い”と考えていたのはニューガーデンだけだったかもしれない。スコット・マクロクリンはまだオーヴァルでの経験が十分でなく、ウィル・パワーに対してオーワードはもはや畏怖の念を抱いていないように見えている。

236周目、トップ走行中にニューガーデンのリアが突如ブレーク

 Photo:Penske Entertainment (ChrisJones)クリックして拡大

  パワーの前に出たオーワードはニューガーデンに照準を合わせた。しかし、勝負に持ち込むことができるのか? その場合はどこでどう勝負を仕掛けることになるのか、プランはできていなかったという。そのタイミングでニューガーデンはクラッシュした。右リヤサスペンションの何か壊れたようだった。
 チーム・ペンスキーは3台をエントリーしているが、ニューガーデンのマシンだけがアイオワでの2レース目の終盤戦で壊れた。なぜ壊れたのか。他チームの23台は壊れていないリヤサスペンションが。パーツの使用マイレッジ管理が最も短く、最も徹底されているであろうペンスキーのパーツだけが破損。何か独特な使われ方をしている? あるいは、実際に異なるパーツであるとか……。パワーとマクロクリンのサスペンションが持ったということは、ニューガーデンのマシンだけ当該パーツは違っているのだろうか?

「すべてが順調と感じていた……」と語るニューガーデン
クラッシュのダメージか、レース後に倒れ、ヘリコプターで病院に

 「痛い一撃だった。泣きたいぐらいだ。チームのことを思うと悲しい。何が起こったかわからない。自分たちは好い走りをしていた。ひとつのレースを失っただけともいえるが、本当に残念だとも感じている。シヴォレーもチームも最高の仕事をしていたが、何かがトラブルを起こした。少し前にピットに報告していた振動と関係があるのか? それもまだわかっていない。アクシデントが起こるまですべて快調だったんだ。確かにあのスティントの最初に振動を感じたが、それは特に異常なことではなかった。タイヤのバランスはいつも変化するものだからだ。あのセットにミスマッチになっていた可能性もある。しかし、何かが酷い状況にあった……とかではまったくなかったと思う。実際にすべてが順調と感じていたのだから。アクシデントはまったく予期していなかった。自分にとって驚きだった。何が起きたのか、壁にぶつかるまで何わからなかった。これはレースであり、ペンスキーはベストのチームだ。そして、今日のようなことが自分の身に起こったことはこれまでにはなかった。いつかは起こることだった……ということなのかもしれない。今シーズンの自分たちにすれば、こんなトラブルは受け入れ難い。これからも自分たちは闘い続ける。素晴らしいチームが自分の背後にはついてくれている。ウォールにぶつかった衝撃はかなりのものだった。ちょとくらくら来たが、自分は大丈夫だ。インディカーの安全性は高い。マシンは衝撃にしっかり耐えていた」とリタイア後にニューガーデンは話していた。その様子も普段を変わらなかった。しかし、ニューガーデンはアクシデントの後、インディーカーのルールに従ってインフィールドのメディカル・センターに向かい、チェックを受けて解放され、その後暫くしてから倒れてしまい、後頭部に裂傷を負った。大きな病院はクルマで40分かかる距離にあり、レース後で交通渋滞も起こっていたため、ニューガーデンはヘリコプターで病院へと運び込まれた。精密検査を受け、一晩を病院で過ごすこととなった。週末のレースに出場できるか否かは木曜日の診察で決定される。突如転倒したということは、脳震盪があったからに違いない。次のレースに出場できない可能性は十分に考えられる。そうなったらチャンピオン争いに対する決定的ダメージとなり得る。

執念を感じなかったパワーの走り
しかし、ポイントスタンディングではエリクソンに肉薄

2レースともにポール・ポジションからスタートしながら優勝できなかったパワー。表彰台での妙に穏やかな様子には何か原因があったのだろうか?? Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大

 パワーは今日もポール・ポジションからのスタートだったが、アイオワ・スピードウェイで初勝利はまたしても果たせなかった。2番手に落ちた後のパワーには逆転トップになる可能性がほとんど感じられなかった。レースが終盤戦に入ろうという時点で彼の順位は3番手に後退した。オーワードに抜かれてのことだった。パワーには2位を取り返す意思があっただろうか? 若きチームメイトのマクロクリンに抜かれる心配は一切抱いていなかったように映っていたパワーだったが……。

Photo:Penske Entertainment (Karl Zemlin)クリックして拡大

 レース1終了後の会見でのパワーは、「明日もジョセフが勝つかもしれない。自分は勝てなくてもいい」ぐらいのコメントをしていた。もはやパワーの体の中に勝利を求める熱い炎は燃えたぎっていないのでは?
チャンピオンシップ獲得が目標……と彼はいうが、例えば最終戦での一騎打ちとなった時への備えてはできているんだろうか。ずっと使わないでいる剣は、肝心な時に錆びてしまっている……という事態にならないことを祈る。本当の勝負の瞬間を迎えたとき、パワーは勝利への執着心を迸らせることができるのか。目の前に突きつけられた課題をクリアできるのか。体の中に”炎”は今もあり、それをどのように最終戦まで保っていくのだろうか。一気に力を放出させるつもりが、そうできずに勝利を逃すことにならないかと心配だ。
 レース1終了後のオーワードは、会見でのパワーの態度を不思議がっていた。勝利への情熱を見せないパワーを彼は理解できず、苛立っていた。効率良く戦ってチャンピオンになる。パワーは昨年までとは違うアプローチで二度目のタイトルに狙いを定めているが、熱量がどんどん下がっていってしまっているようにも見える。

 パワーは2連続表彰台でアイオワ入り前と同じランキング2番手に戻った。しかも、アイオワ入り時点よりトップのマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)との差は小さくなっている。

終盤戦にさらに意欲を掻き立てるオーワード
「残り5戦であと2勝上げたい」

Photo:Penske Entertainment (Chris Owens)クリックして拡大

 オーワードはランキングが6番手から5番手へとひとつ上がり、トップのエリクソンとのポイント差は37点になった。「願わくばあと2回勝ちたい。シーズンはもう残り5戦。今後の自分たちは勝ちを重ねるしかない」とオーワードはパワーとは対照的に勝利に対する貪欲さを隠さずに語った。

佐藤琢磨、タクティクスは見事的中!
フルコースコーションのタイミングに恵まれず10位に


 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は予選5位だったが、スタート位置は4番手だった。序盤はその順位を保っていた琢磨だったが、前日のレース1でフロントウィングに不具合を抱えていた彼は、そのレースで豊富な情報を得て、レース2に向けたマシン造りに活用することができなかった。

ピット作業でポジションを落としたことも痛かった Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 「自分たちのマシンは突貫工事だった。昨日のレース終盤で良い走りができた、その続きという面はあったけれど……」と琢磨は話した。「カーナンバー18の昨日のデータから良いところをもらったりもしてマシンを作った。問題は自分のマシンでちゃんと合わせ込めていない点。荒削りなままレースに臨んだ。ちゃんとしたチューニングをやって良いところに落とし込んでないから、満足の行くマシンになっていたわけではなかった。アイオワなどのショート・オーヴァルで良いときの感じっていうのは自分でわかってる。そういうマシンになってはいなかった」。

チームメイトのまルーカスとも接近戦を演じた Photo:Penske Entertainment (Chris Jones)クリックして拡大

 そういう状況でも考慮し、燃費で自分だけうまく行く作戦を選んだ。「僕らが一番燃費良く走れていた。それでもギリッギリだった。ニューガーデンのアクシデントがなかったら、あの後にみんな大幅にスローダウンしてたでしょう。もちろん、タイヤが悪くなってくるとペースが落ちるので、結果的にみんな燃費は良くなるわけだけど、あの時点でみんなアクセルを踏んで行っていたから、燃料的には全然持たなかったはず。あのままグリーンでレースがゴールまで続いていたら、ほとんど全員がスプラッシュ&ゴーの必要な状況に陥っていたと思う。自分たちもアンダーカットをしたかった。でも、最初の段階で4位を走っていたし、そうはできなかった。イエローが出ないでレースが進む、アンダーグリーンで行くことを計算するしかなかった。そういう僕らの作戦は間違いじゃなかったと思う。もちろんリスクはあった。実際、燃費走行している間にどんどん抜かれていって、ピットに入る度に順位を落とした」と琢磨。レース終盤に二度目のトップに立った琢磨には勝算があった。それがまさかトップを快走中だったニューガーデンのアクシデントで否定されることになるとは……。
 ミッド・オハイオ、トロント、アイオワでのレース1と不本意な戦いとリザルトが続いていた琢磨だったが、アイオワのレース2で存在感を示した。
以上

 

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