2022年6月6日月曜日

2022 INDYCARレポート R7 シヴォレー・デトロイト・グランプリ Race Day 決勝:ウィル・パワーがデトロイトで圧勝

冷静なドライビングで、最終スティントでロッシの追撃を封じたパワー。今シーズンは今までの力で勝負するレーススタイルを一変させ、沈着な戦いぶりで目を惹く Photo:Penske Entertainment (James Black) クリックして拡大

 Q1敗退、グリッド8列目からのスタートでも
決して諦めなかったパワー、円熟の走りでの勝利


 予選のQ1をクリアできなかったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。結果は16位。かなりの幸運に巡り合わない限り勝つのはなかなか難しいスタート位置だった。しかし、インディーカー出場18年目のパワーは勝利のチャンスがあると考えていた。“勝てる!”と確信していたわけではなかったが、”上位進出は可能”と見ていた。
 このあたりが今年のパワーは以前と違っている。達観しているというか、リラックスしてレースに臨んでいる。だからと言って、今年のレースすべてで彼が驚異的パフォーマンスを見せてきているわけでもないが、何やら見たことのない強さを発揮することがあるのだ。デトロイトでの今日の強さは、以前の勝ちまくっていた頃とはまったく違うパワーのものだった。

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スタートタイヤにブラックをチョイス
レッド装着車を次々パスして14周目にトップ浮上


 「エンジニアが完璧なセッティングを用意してくれた。走り出してすぐにこのマシンは速いとわかった。自分と同じブラック・タイヤでスタートしたドライヴァーたちをパスすることにフォーカスした。レッド装着組を次々とパスして行くのは楽しかったよ」とパワーは笑っていた。
 スタートにブラック・タイヤ。これが勝因その1。レッドを履いた上位陣は序盤の激しいポジション争いでタイヤのライフを縮めてしまったようで、10周を終える前からラップ・タイムが大幅に落ち込んだ。3ストップ作戦を選んだ者がパワーの前からピットロードに消えて行くケースも助けとなって、パワーはたった14周でトップに上り詰めた。7周目に同じブラックを履くスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)をパスしたことも大きく、1回目のピットストップを迎える前にレースの主導権を完全に握ってみせた。


ブラック→ブラックとつないだセカンドスティントでは
レッドを装着したガナッシ勢を突き放し独走態勢に

 パワーはセカンド・スティントに向けてもブラックを装着した。この時に2、3番手につけていたディクソンとアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)は、いずれもレッドをチョイス。パワーは安定感ある走りでガナッシ・コンビを突き放した。
 パワーの心配は、最終スティントをレッドで走らねければならないこと。ディクソンらのライヴァル勢がブラックで追い上げてくることは当然考えられた。
 ハイペースでリードを広げ続けたパワーは2番手以下に40秒以上の差を49周目を終えたところでピットイン。1982年のインディー500で苦い思いをしているチーム・ペンスキーは、パワーのマシンに残り周回数を走るに足るだけの燃料を入れ、タイヤをレッドにスイッチしてコースへと送り返した。パワーはここでトップを維持した。ピットストップをしてもトップをキープ……というシーンは近頃のインディーカーではほとんど見られないものだが……。

レッド装着の最終スティントでクレバーな走り
ブラック・タイヤで追い上げるロッシにスキを与えず

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  51周終了。2番手に上がって来ていたロッシにパワーは15秒もの差を持っていた。ブラック装着のロッシはパワーより確実に速かったが、差はなかなか縮まって行かなかった。パワーは1分17秒台にラップ・タイムを保ち、淡々とゴールを目指した。
 残り周回数が5周を切ってからパワーのラップ・タイムが1分19秒台にダウンしたが、それはバックマーカーに近づき過ぎないようパワーが注意をしていたからだった。「インディカーではバックマーカーに近づくと色々あるんだよ。ブルーフラッグは振られているが、それはルール上では何の意味もないんだ。ドライヴァーたちからは意味あるものにして欲しいとリクエストが出されているが、ルールが変わる気配はない」とパワーは苦笑いをしていた。ペースの遅いマシンに近づいて、空力的悪影響からタイヤを傷めてしまうことをパワーは嫌った。後続との差をステアリングに表示させ、バックマーカーとの距離と、追いかけてくるロッシとの距離をコントロールしながら彼はゴールを目指していた。久々に見るパワーの完勝だった。そして、その勝ちっぷりはスピードで押し切る以前のパワーのものではなく、成熟したドライヴァーとして戦い抜いたパワーによるものだった。

昨年、デトロイトで味わった悔しさを晴らす勝利
「シヴォレーのためにシリーズタイトルを目指す!」

今シーズン限りの開催となるベルアイルの噴水に、パワーは歓喜のダイブ Photo:Penske Entertainment (James Black) クリックして拡大

  「去年はレースを悔しい形で失った。レースをリードしていたのに、レッド・フラッグが出されて中断になり、自分のマシンだけがリスタートできない憂き目に遭った。それだけに、今シーズンに是非とも勝ちたいレースとしてシーズン・オフからマークしてあった。それだけに、今日の勝利は本当に嬉しい」とパワーは微笑んだ。見事な勝ちっぷりには大きな御褒美もついて来た。今回の彼の勝利はシヴォレーの2.リッター・ツインターボV6エンジンのインディーカー・シリーズにおける100勝目だったのだ。その記念すべき優勝をシヴォレー・グラン・プリで、シヴォレーのお膝元であるデトロイトで飾ることとなった。

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 「シヴォレーは我々にとって素晴らしいパートナー。彼らのためにシリーズ・タイトルも今年は獲得したい。それが自分たちの目指すゴールだ」とパワーは締め括った。オーストラリア出身ヴェテランは、二度目のインディーカー・タイトル獲得に向けた戦いで、さらに進化した一面を我々に見せてくれるかもしれない。
以上 

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