カーブ・デイはカナーンがトップタイム。好調を維持するチップ・ガナッシ勢だが、カナーンは「プラクティスでトップになることに意味はない」とあくまで冷静 Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 |
雨でキャンセルも心配されたカーブ・デイ
開始2時間遅れ、90分に短縮してセッションをコンプリート
カーブレション・デイ=通称カーブ・デイは伝統的にはレース前の木曜日だった。それが金曜になったのはつい最近だ……と思っていたが、調べたら2005年からだった。今年でもう17年目か。ついでなので、2004年、最後の木曜カーブ・デイを経験したことのあるドライヴァーでまだ走っている人っているのか? と資料を見たら4人*いた。トニー・カナーン、エリオ・カストロネヴェス、スコット・ディクソン、エド・カーペンターだ。*注:2004年以前にはモントーヤも体験。
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今日のインディアナポリスは朝からどんよりとした曇り空だった。午前中に弱いものだが雨も降った。
キャンセルの心配もされていた。今日の走行なしで決勝を迎えるって可能なんだろうか? 明日の土曜日は走れそうもない……などなど考えていたが、幸いなことに天候は回復。予定から2時間遅れの午後1時から、2時間が90分間に短縮されたセッションとなって開催された。
本人にけがはなかったが、カーブ・デイでマシンを壊してしまい、ハータはますます苦境に Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 |
ターン1でアクシデントが2度発生!
次の雨雲がスピードウェイに来たのは、もう夕方のことだった。とは言うものの、33台の決勝出場マシンが90分間フルに走り回れたわけではなかった。2016年のピッパ・マン以来となるアクシデントが発生したためだ。それも2回。
最初のアクシデントはルーキーのデイヴィッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)。しかし、やらかしてしまったのは彼ではなく、サンティーノ・フェルッチ(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)の方だったのではないか。スポッターから声がかかったたんだろうか?
インサイドにマルーカスがガッツリ入っているのに、一旦外に振ったマシンをインサイドのラインに下ろしたから2台は接触した。不運なことにマルーカスの方だけがスピン。救いはぶつかったのがSAFERウォールだったことか。
次なるアクシデントはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)が起こした。こちらもターン1で、佐藤琢磨(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)の背後を走行中だった彼が突然グリップを失い、SAFERウォールにリヤからヒットした。さらに宙に舞い上がってサウス・シュートにノーズから着地。マシンのリヤが突然スライド……したのは、今年はかなり苦戦気味のアンドレッティ軍団なので、一発逆転を狙うダウンフォース軽めのセッティングにトライしていたのかもしれない。
どちらのアクシデントもマシンには大きなダメージがあったが、両ドライヴァーにけがはなかった。
カナーン、227マイルに乗せてトップタイム!
2位エリクソンとチップ・ガナッシ勢依然好調
このセッションで平均時速227.114mphの最速ラップを記録したのは2013年インディー500ウィナーで、2005年にポール・ポジション獲得も成し遂げているカナーンだった。今年の全セッションのトップ・スピード記録者を見ると、
プラクティス1 スコット・ディクソン
プラクティス2 佐藤琢磨
プラクティス3 雨天によりキャンセル
プラクティス4 佐藤琢磨
プラクティス5 佐藤琢磨
プラクティス6 エド・カーペンター
予選1日目 リナス・ヴィーケイ
プラクティス7 スコット・ディクソン
予選2日目 トップ12 スコット・ディクソン
予選2日目 トップ6 スコット・ディクソン
プラクティス8 アレックス・パロウ
プラクティス9 トニー・カナーン
今年11回あった走行の機会でチップ・ガナッシ・レーシング勢が6回トップだった。しかも、予選2日目からこっちは5セッション連続でガナッシ勢が最速。予選は1-2で、月曜は1-2-3。そして今日も2番手がマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)=227.004mphだったから、ガナッシの1-2。決勝が近づくに連れて彼らの強さにさらに勢いがついていっている印象だ。
「トラフィックでのハンドリングを確認しただけ」と語るカナーン
最速など目指していないがクルマが良いのでスピードが出た」
スポット参戦とは思えない速さをキープするカナーン。インディー500で優勝もPPも経験しているベテランの決勝での走りが注目される Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 |
「我々のマシンが5月を通して非常に良い仕上がりになっているのは、もう誰もが知っていることだ。今日の私はトラフィックで走ることを心がけた。ハンドリングの確認をしただけ。試さないとならない項目が幾つもある状況ではなく、正直に話せば、セッティング変更を一切しなかった。ファイナル・プラクティスで速くても意味っはない。最速を目指してなどいなかったが、クルマが良いからスピードが出た。それだけのことだよ」とカナーンは話していた。カナーンはスポット参戦なのでピット・クルーが弱点かもしれない。エリクソンも”500”での経験値はまだ低い。しかし、カナーンと同じハイ・レヴェルなマシンを与えられた強力なドライヴァーが彼らの陣営にはスコット・ディクソンとアレックス・パロウのふたりいる。オーヴァル・ルーキーのジミー・ジョンソンも、NASCARでの経験が長距離レースでは活かされ、上位で戦い続けることが可能かもしれない。
佐藤琢磨、3番手タイムをマーク!
ガナッシ軍団を相手に孤軍奮闘
佐藤琢磨は着々とマシンを仕上げてきている。Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 |
3番手につけたのは佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)。ポール・シッターのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は4番手。琢磨はガナッシのトップ3独占を阻む226.839mphを記録した。月曜のプラクティスでも琢磨は4番手に食い込んでガナッシのトップ5スウィープを阻止していた。小さい方の部類に入るDCRというチームからの参戦ながら、最大規模でエントリーしてきているガナッシ軍団を相手に孤軍奮闘を見せている。
「予選前までのプラクティスでトライをしていたセッティングで、今日是非試したいと考えていたものを試すことができました。得られた感触は期待通りに良かったので、決勝用セッティングに取り入れることになると思います。今の走行データを見直して、マシンが自分たちの狙っている通りに動いていることを確認します」と琢磨は語った。45周を走り込み、トラフィックの中も先頭も走って手応えをつかんだのだ。
「自分たちの持っている力を出し切れているのかわからないが
連日トップ5にいるので完成度は高いのではないかと思います」
「レースに向けた準備の整い具合は間違いなく去年より良いです。自分の中でプログラムを組み立てて、最大限の準備をしたつもりですが、何もかもチームがわかっている中でベストのものをピックアップした……というアンドレッティ・オートスポート時代と今年はだいぶ違います。今年のチーム、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRでは、いろいろな面に不明確な部分を残したままプログラムを進めてきています。だから、自分たち自身で、持っている力を全てを出し切れているのかがわからないところがあります。だけど、少なくともライヴァルたちと走ってのスピードというものは力を測る指標になるので、そういう意味で毎日トップ5に入っているっていうことは、完成度としては非常に高いところにいるんじゃないかな、と考えています。だた、自分たちは新しいセッティングなど、いろいろな面で狙って、頑張って、その結果としてようやくガナッシ勢の中に割って入っていっている状況です」
「決勝用マシンの基本プラットフォームはRLLのもの
そこにデイル・コインのスパイスを加えた感じです」
「楽な戦いにはならないでしょうね。今年は1日プラクティスが雨で流れましたが、ここまで来れた。その点ではレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで組んでいたエンジニアのエディー・ジョーンズに感謝します。彼からたくさん得たことがあったので。僕らの決勝用マシンは、基本のプラットフォームがレイホールで去年走ったマシンになってるんです。そこにデイル・コイン・レーシングのスパイスを加えた感じです。予選用セッティングはデイル・コイン・レーシングのものが基本になっていました。そちらの方が純粋なスピードというものがありますから。アンドレッティで走っていた時にタイヤの使い方、レースの組み立て方を学んで、レイホールでは2020年にはライヴァルたちに対して自分たちのマシンを良いレヴェルに上げられた。そのレヴェルを2021年は継続できなかったですよね?
それに比べれば、今回はすごくいろいろなことが見えながらクルマを作っていくことができている感じです」
「デイル・コインレーシングは本当にすごくやりやすい」
「デイル・コイン・レーシングが、本当に僕を中心としたチーム作りをしてくれているおかげです。カー・ナンバー18のエンジニアたちも僕のことばにすごく耳を傾けてくれています。完全にナンバー・ワン・ドライヴァーとなっているので、本当にすごくやり易いです。デイル・コイン・レーシングというチームが持つやり方をリスペクトしつつ、”僕はこう思うんだけど”と言うと、それをすぐにトライしてくれるんです。むしろ、こちらが”最初にチームのやり方でやってみて、それから僕のアイディアを試して欲しい”と抑えているぐらいです」と琢磨は話した。
決勝日の暑さへの対応にも手ごたえ
ハーフウエイの100周でトップ5が琢磨のシナリオ
今日も気温は低めだった。2日後の決勝日は一気に真夏のような気温になるとも言われている。マシンのセッティングの調整が大きな鍵を握ることとなる。その点について琢磨は、「決勝日が暑くなれば、タイヤの使い方が難しくなるので自分の経験を活かせることになるかもしれませんが、暑くなり過ぎたら自分たちが良いと考えている空力セッティングが使えなくなるんです。暑くなったコンディションに対してのフィルターのかけ方は、自分の経験からいってうまく行かせることができるだろうとは考えています」とも琢磨は語った。はっきりとは言わないが、今日のプラクティスで彼がかなりの手応えを掴んだのは間違いない。
ただし、スタート直後から次々ライヴァルをパスして……という戦いにはならなさそうだ。琢磨自身がそれは何度も言ってきている。1台ずつ確実に仕留め、ピット・タイミングを早める作戦を使う面々を相手に、ロング・スティントを通して安定したスピードを保つ走りでポジションを守り、ハーフウェイの100周でトップ5に入っているというのが彼の考えているシナリオだ。ダウンフォースをできる限り小さく設定し、ゴール前の勝負でスピードのアドヴァンテージを持っていたい。琢磨はそう考えている。トラフィック内でのハンドリングが厳しくなるのは承知の上。苦しい走りとなっても、オーヴァーテイクはこれまでの経験とテクニックを総動員して実現するつもりだ。勝負ができるポジションまで上がって最終2スティントを迎える。そんな戦い方ができたら、琢磨の3勝目を懸けたレース終盤のバトルを我々は見ることができる。
以上
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