レースタクティクスの的中、そしてすべてのコンディションで圧倒的なマシンコントロールを見せたハータがホンダに今シーズン初優勝をもたらした Photo:Penske Entertainment クリックして拡大 |
ウエットレース宣言の下、全車レインでスタート
「夕方に雷雨の可能性があるので」とスタート時刻を予定より40分ほど早めると発表したインディーカーだったが、そのスタート時刻よりも前に雨雲が到来。ほぼ元通りの時刻に2022年シーズン第5戦GMRグラン・プリは始まった。全車がウェット・タイヤを装着してグリッドに着いた。”ウェット・レース”の宣言がなされ、規定の85周かスタートから2時間か、先に来た方でチェッカー・フラッグの出される戦いが始まった。
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雨はスタート前に止み、短時間で路面が乾いて行くであろうことは明白だった。いつウェット・タイヤに見切りをつけるか。そこが重要なポイントとなった。
ハータと佐藤琢磨、2周目にピットインしてレッドに交換!
予選14番手スタートのハータは一気にトップに浮上!
非常に大胆な判断を下したのはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)と佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)の陣営で、彼らはまだコースのほとんどがウェットだった2周目を終えたところでピット・ロードへと飛び込んで来た。
コースに戻った彼ら二人のスピードを見て、この後の2周で全員がピット・インしてレッド・タイヤへと換装した。
全員のピットが終わってみると、ハータは14位スタートの不利を軽々と吹き飛ばしてトップに立っていた。13番手スタートだった琢磨は最初のスタートでポジションを落としていたこともあり、2番手まで一気に浮上……ということにはならなかったが、7番手までと十分に大きなポジション・アップをやってのけていた。
全面ドライになりかけたころにまたも雨
ハータ、いったんスリックを装着も再度のピットでレインに
ハータ、2回目のピットでレッド→レッド。しかし雨が強まり、トップの座を明け渡してレインを選択することに Photo:Penske Entertainment (Walt Kuhn)クリックして拡大 |
曇り空の下、レースはコース全域が完全ドライになろうか……という頃に雨が降り出し、ゴール前のバトルは本格的なウェット・コンディションで繰り広げられる可能性すら漂い始めた。しかし、57周目にジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)のスピン&ストールで出されたフルコース・コーション中にハータを先頭にしたリード・ラップ上のチームがピット・ストップを行った際、どのチームもウェットかスリックかタイヤ選択で悩みに悩んだ結果、トップのハータに右に倣え、でレッド・タイヤを装着した。
そして、この直後に雨は強くなった。まだフル・コース・コーションは継続中。ここでハータはトップの座を明け渡すことを受け入れ、レイン・タイヤに交換するためのピット・トップを行った。ここでも大半のドライヴァーたちがハータと同じ行動に出た。
ステイアウト組のマクロクリン、オーワード
リスタート前のペースカー・ランでスピン
ウエットの中、レッドタイヤで驚異的な速さを見せていたオーワードだったが… Photo:Penske Entertainment (Joe Skibinski) クリックして拡大 |
レッドのままステイ・アウトしたのはスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)、パト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)、ロマイン・グロジャン(アンドレッティ・オートスポート)の3人。雨が弱まって路面が乾く方向なら彼らの判断が正解となるところだった。しかし、そうはならず、マクロクリンもオーワードもリスタート前のペース・カー・ランの間にスピンを喫して優勝のチャンスを失い、グロジャンは17位、オーワードは19位、マクロクリンは20位と、タイヤ選択の失敗によって大幅に順位を落としてレースを終えることとなった。
ハータ、天候に翻弄されたレースを制す
2位にはパジェノーが入り、ホンダ1-2!
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ウェットでも乾き出した路面でも他を圧倒する速さを保ち続けたハータが今季初、通算7回目の優勝。2位でゴールしたのは20番手スタートから粘り強く戦い続けたシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)だった。そして、3位はポール・スタートだったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。
ホンダはシーズン5戦目にして初勝利を1−2フィニッシュで飾った。
14番スタートから手応えある優勝を果たしたハータ
「これまでの人生でもっとハードなレース」Photo:Penske Entertainment (Travis Hinkle)クリックして拡大
「これまでのレース人生で最もハードなレースだった。ウェットからドライになり、またウェットへとコンディションは変わって行った。インディアナのファンは最後までレースを見続けてくれた。こういう天候に慣れているってこともあるのだろうけど、最後まで応援してくれてありがとう!」と表彰台から彼は感謝の辞を述べた。
パワー、忍耐のレ―スで3位フィニッシュ
ポイントリーダーに浮上!ペンスキーの他の2台が順位を落とす中、粘りのレースを走り切ってパワーは表彰台を得るPhoto:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大
多くのパスを許しながらも、パワーは最終的に表彰台に上ってみせ、第5戦終了時点でポイント・リーダーの座に躍り出た。開幕戦セイント・ピーターズバーグが3位。第2戦テキサス、第3戦ロング・ビーチ、第4戦バーバー・モータースポーツ・パークの3戦で4位、そして今回のインディアナポリス/ロードコースが3位と表彰台2回、5戦すべてでトップ4フィニッシュという”らしくない”安定感が発揮されてのことだ。
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「レース終盤のタイヤ・チョイスは難しかった。インディというのは本当に不思議なところで、メイン・ストレート側では雨が降っているのにバックストレッチ側は完全にドライ・コンディションになっている時があった。あそこからのレースで何が起こるかなんてまったく想像のつかない状況だった」とパワーは振り返った。ポイント・リードについては、「今日のレースではパロウとニューガーデンが早々に脱落した。そうなると、こちらとしてはシリーズ・ポイントのことを当然考えながらの戦いになる」とパワーはコメント。難しいコンディションでも冷静さを保ち続けてゴールを目指したことを語った。今年のパワーは去年までと大きく違うようだ。
パロウ18位となりランキングトップから後退
2位マクロクリン、3位ニューガーデンにかわり
ペンスキーがトップ3独占状態に
ポイント2番手はマクロクリン。3番手はジョセフ・ニューガーデン。この二人のインディ・ロードコースでのパフォーマンスは決して良くはなかったが、ペンスキー・トリオがランキングのトップ3独占状態を作り出した。第4戦終了時点でポイント・リーダーとなっていた昨年度チャンピオンのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)は、ウェット・コンディションだったレース序盤にコース・オフして周回遅れに陥り、そこからの挽回が思うように行かなかった。18位でレースを終えた彼のポイント・スタンディングは一気に4番手まで後退した。
上位で奮戦したデイリーが5位フィニッシュ
デイリーは予選ファスト6進出を果たして4位、決勝でも難しいコンディションの中で5位フィニッシュと結果を出したPhoto:Penske Entertainment (Joe Skibinski)クリックして拡大 |
コナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)の5位フィニッシュも讃えられるべきパフォーマンス。フェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)もスピンしたチームメイトにヒットされるなどの紆余曲折の末、6位フィニッシュを勝ち取った。「今日のようなレースはこれまでに一度も経験したことがない。雨が降って、空が晴れて、また雨が降り出し、前が全然見えない状況で戦わねばならなかった。レース序盤にレッド・タイヤを履いた時は、本当にグリップが低かった。タイヤの表面に何かくっついてしまったのかと考えたぐらいだった。しかし、次のレッド・タイヤにスイッチするとスピードを取り戻すことができた。5月の良いスタートとなった。マシンは速く、予選の成績も良く、週末を通してやるべき仕事をやり抜くことができた」とデイリーはインディー500に向けた勢いを手に入れたことを喜んでいた。
佐藤琢磨、レースタクティクス的中と
コース上での多数のオーバーテイクで今季ベストの7位に
そして、琢磨が7位。2周目のピット・ストップという作戦が見事に当たった上、レッド・タイヤで速かった彼はパワーをはじめとする多くのトップコンテンダーたちをコース上で鮮やかにパスし、上位へと進出して行った。不運だったのはターン1でのオーワードとローゼンクヴィストのチームメイト同志による接触が目の前で起こったため、コースから押し出されてスピンに陥り17番手まで後退。そこから7番手まで盛り返したのはウェット・コンディションを得意とする琢磨ならではの走りによってだった。
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「波乱のレースになりましたね。ウェット・タイヤでスタートをした直後にフロント・ウィングに誰かのマシンがぶつかって来てダメージを受けました。最初のピット・ストップは自分の独断でした。そこでレッド・タイヤに替えてからはどんどん順位を上げて行くことができましたね、かなりの数のオーヴァーテイクをして。ペンスキー勢を抜いて4番手に上がれました。その後、マクラーレンの2台が接触して道を塞いで、避けた自分は濡れた芝生の上に出てスピン。そこからウェット、ドライ、ウェットと路面が二転三転したこともあって、最後にコース上で多くのバトルを戦いながら順位を上げて今季の自己ベストとなる7位でゴールできました」と琢磨は語った。スピードを見せ、不運に見舞われながらも、そこからまた挽回劇を見せてのゴールはチームを活気づかせ、次戦インディー500に向けた勢いをもたらすものとなった。
以上
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