最終ラップ、0.0669秒差でマクロクリンを逆転! ニューガーデンはペンスキーのエースらしい存在感を見せつけた Photo:Penske entertainment クリックして拡大 |
開幕戦に続き、テキサスでも手遅れ気味だったニューガーデン
若いマクロクリンの台頭が大きな刺激に
ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)のテキサスでの予選順位は7位。チームメイト二人はスコット・マクロクリンが2位、ウィル・パワーが4位だったから、やや出遅れ気味だった。
開幕戦セイント・ピーターズバーグではマクロクリンがポール・トゥ・ウィン。パワーも予選2位、決勝3位と良いシーズン・スタートを切った。それに対してニューガーデンは予選がファイナルに進めずの9位で、決勝は早目のピット・インという作戦が展開にマッチせず16位に沈んだ。
ニューガーデンは表情こそいつもにこやかだが、内に秘めた闘志はかなりのものがある。まだインディー500での優勝はないが、タイトル獲得2回は歴代チーム・ペンスキー・ドライヴァーたちの中でも誇れる成績。若いマクロクリンの台頭はニューガーデンには良い刺激となっているはずだ。”チームを引っ張って行くのは自分”というプライドも彼にはあるだろう。予選後のプラクティスでマシンの仕上がりを確信
決勝では最初のピットストップを早めとしたことが奏功
スタート後10位あたりを走行したいたニューガーデンは56周目にピットイン。その後ニュータイヤでポジションアップを果たしていく Photo:Penske entertainment クリックして拡大 |
予選後にレース・モードのセッティングを試すプラクティス2が行われ、ここでニューガーデンは最速ラップをマークした。そのベスト・ラップは平均時速が223.108mphで2番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)=222.726mphにちょっとした差をつけてみせた。
今年はダブルヘダーではなく、375マイルの一発勝負。ニューガーデンはレースでの自分たちのパフォーマンスに自信を持っていたが、序盤戦でコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)、マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)にパスされて9番手まで後退。最初のイエロー後のリスタートではパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)にも先行を許した。
速めのピットインのチームタクティクスが見事にはまった(こちらの写真は103周目、アンダーイエローでの2回目のピット) Photo:Penske entertainment クリックして拡大 |
スタートより3つ下がった10番手でニューガーデンは最初のピット・イン。全員が1回目のピット・ストップを終え、最初のイエローで燃料をトップ・オフしていた面々が少し遅れて2回目のピット・ストップを敢行。それが終わるとニューガーデンのポジションは……マクロクリンの後ろの2番手に浮上していた。3ストップで走り切るために60周ぐらいは走りたい状況下、ニューガーデンは56周でピットに向かったが、そこで早目にフレッシュ・タイヤに交換したことが良い方に作用したのだ。ストレッチしたライヴァルたちがペースを上げられない中、ニューガーデンはハイペースで走行。後に長いイエローが2回出されたことで燃費の心配も要らなくなった。
マクロクリンの速さに優勝を諦めていたが
「最終ラップのターン3でその考えが変わった」
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「レース序盤は右フロント・タイヤに負担をかけるマシンになっていたが、我慢強く走り続けて2番手に上がることができた。しかし、前を行くスコット(・マクロクリン)はトラフィックでも速かった。終盤には彼の後ろにつけてずっと走り続けていたが、パスは難しいだろうと考えていた」とニューガーデンは振り返った。
前を走っているのはマクロクリン。チームメイト同士のアクシデントは御法度。2017年のゲイトウェイでシモン・パジェノーと接触した時のことがニューガーデンの脳裏を横切ったかもしれない。「そうこうしているうちに残り2ラップとなった。その時もまだ優勝は無理と思っていた。2位でゴールするつもりになっていた。ところが最終ラップのターン3でその考えが変わったんだ。勝つために何かをしようと」。ニューガーデンは自らも予想していなかったことだが、ここで闘志が体の中から湧き出してきた。
「ターン3ハイサイドは去年までなら走れなかったライン!
自分のキャリアの中で最もエキサイティングな勝利だ」
レースフィニッシュ後、マクロクリンとニューガーデンの話を聞くロジャー・ペンスキー。開幕2戦の結果に手ごたえを感じていることだろう Photo:Penske entertainment クリックして拡大 |
「それでハイサイドにトライした。リスクを取ったんだ。瞬間的な判断だった」。マクロクリンのは前方にはトラフィックがあった。彼はインサイド・ラインを守る走りを選んだ。
ターン3からの勢いを保ってターン4へと飛び込んだニューガーデンは一気にマクロクリンに並びかけた。スピード差は明確だった。
「ゴール・ラインを横切る前からもう大声で叫んでいた。そんなこと普段なら絶対にしないのに。あのラインは去年までなら走れなかった。クラッシュする可能性をわかっていてトライした」と話すニューガーデンはその時の興奮が蘇って来て体を身震いさせていた。「最終ラップの最終ターンでの逆転なんて、これまでに経験したことのない勝ち方だ。自分のキャリアの中で最もエキサイティングなバトルだったと思う」。
「ジョセフがアウトに行くのは見えた」と振り返るマクロクリン
「自分はここから学び、さらにレヴェルを上げていくだけだ」
マクロクリンは苦しんだルーキー・シーズンから一転、セイント・ピーターズバーグのストリートで完璧なポール・トゥ・ウィンを飾った。そしてテキサスでの第2戦も186周をリードして優勝にまっしぐら、という感じだった。しかし、あと一歩で手に入るはずだった開幕2連勝は実現しなかった。
ゴール直後は敗戦を受け入れがたい様子だったマクロクリンだが、気丈に前を向く Photo:Penske entertainment クリックして拡大 |
「がっかりだ。でも、これもレース。これが現実だ。ジョセフ(・ニューガーデン)がアウトに行くのは見えた。自分もそこでリスクを冒し、アウトに行くという手はあった。しかし、そうしていたら自分がクラッシュし、ジョセフを巻き添えにしていたかもしれない。ここから学び、さらにレヴェルを上げて行くだけだ。自分のマシンはずっとトラフィックの中でもハンドリングが良かったが、最後の方はそうでもなかった」。
開幕2戦で好調を維持するペンスキー勢
その中でリーダーシップを模索するニューガーデンに注目ペンスキー勢はハイスピードオーバルでもアドバンテージがあることをこのテキサスで実証! Photo:Penske entertainment クリックして拡大
3度目のタイトル獲得に意欲を燃やすニューガーデンが、先輩チームメイトとしての意地を見せ、開幕2戦目にしてシーズン1勝目を挙げた。エリオ・カストロネヴェスやパワー、パジェノーといったヴェテランがいたチームは、昨年からニューガーデンの下にマクロクリンを迎えた。インディーカー参戦11年目、ペンスキーでの活動が6シーズン目になるニューガーデンの立ち位置はリーダーシップを発揮すべきものに変わっている。彼がその思いをさらに強くしたマクロクリンとの勝負、そして勝利だった。
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ハイ・スピード・オーヴァルのテキサスでペンスキー勢は予選2、4、7位、決勝1、2、4位という好成績を残した。今年の彼らはインディー500でも強そうだ。「500で勝つまでは本当のペンスキー・ドライヴァーではない」。そう言ってきているニューガーデンの戦いぶりに今年は特に注目すべきだろう。
以上
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