2021年10月6日水曜日

2021 INDYCARレポート 10月5日:シモン・パジェノーはメイヤー・シャンク・レーシング……ほか

メイヤー・シャンク・レーシングへの移籍が決まったパジェノー。チーム・ペンスキーの7シーズンで優勝10回、2年目の2016年にシリーズチャンピオン。2019年にインディー500優勝 Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大 

ペンスキー4台体制に終止符!
ニューガーデン、パワー、マクロクリンの3台体制に

 2016年インディーカー・チャンピオンで、2019年インディー500ウィナー(ポール・トゥ・ウィン)のシモン・パジェノーが、2021年限りでチーム・ペンスキーを離れることになった。7シーズンの在籍で11勝、12ポール・ポジションという素晴らしい結果を残してきたが、チーム・オーナーのロジャー・ペンスキーは3カー推進派=4カー反対論者で、2022年に向けては体制を縮小することになり、シートを失うのが2021年に1勝も挙げることのできなかったパジェノーに。この結論は正解だったのか?
時が教えてくれることになるだろう。

マシンセットアップ能力が高いパジェノーをリリースした穴をいかに埋めるかが2022シーズンのペンスキーの課題だ Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大 

改めて問われるペンスキーのチームマネジメント

 2022年のチーム・ペンスキーは二度チャンピオンになっているジョセフ・ニューガーデン、タイトル獲得1回でインディー500で1勝のウィル・パワー、今年のルーキー・オヴ・ザ・イヤーとなったスコット・マクロクリン(未勝利)という布陣になる。正直な感想として、あまり凄味はない。
 ニューガーデンは、今年も最終戦までチャンピオンの座を争った。結果はランキング2位。健闘をしたと評価していいだろう。しかし、彼のチーム内での扱いはいつになってもエースとされていない印象。インディー500で勝っていないから?
だとしたら、1勝している上にインディーでのパフォーマンスがチーム内でダントツ高いパジェノーの放出には説得力がない。
 チーム・ペンスキーといえば、実績が充分となったドライヴァーを他から引っこ抜くパターン。パジェノーもニューガーデンもそうやってチーム入りして来た。しかし、それを敢えて変えてのマクロクリン起用。そしてパジェノー放出。この裏には、結局のところ、キャラクターが正反対のパワーとパジェノーがお互いを完全に信頼し、力を合わせて闘う境地にまでは至らなかった、ということ。彼らドライヴァーたちの力をフルに引き出させるために、ニューガーデンの処遇も含め、チーム・ペンスキーにはマネジメントを改善する余地がある。


3人体制となる2022年はパワーにとっても正念場
マクロクリンも若手の中での存在感発揮が必要


40歳で2021年シーズンを迎えたパワー。一発の速さはいまだに光るが、レースになると余裕のないドライビングが目立ち、しばしばアクシデントを誘発 Photo:INDYCAR(Chris Jones)クリックして拡大

 今年のパワーは辛うじて1勝。ランキングは9位(パジェノーは8位)で、キャリアや参戦体制を考えれば極めて不本意な成績。レース中にチームメイトを弾き飛ばす“御乱心”が複数回あっても、諦めの早いレースが多くても、通算40勝、PP獲得63回という”レジェンド”は優先されたということ。彼にはチーム内での技術的、精神的牽引力の発揮が望まれるが、リーダーシップは持ち合わせておらず、2022年に今年以上の個人成績を挙げることもあまり期待はできない。

オーストラリア・スーパーカー・シリーズ出身という異色のルーキー、マクロクリン。堅実な走りを見せたルーキ・オヴ・ザ・イヤーに輝いた。現在28歳で年齢的にも来年の飛躍が求められる Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 マクロクリンはライヴァル不在でルーキー・オヴ・ザ・イヤー獲得がなったが、ここ数年でデビューした若い面々=アレックス・パロウ、パト・オーワード、コルトン・ハータ、リナス・ヴィーケイらと比べるとインパクトは弱かった。ランキングは14位。こちらもチーム体制を考えるとかなり物足りない。来シーズンが勝負だ。

メイヤー・ジャンク・レ―シングの2022年シーズンは
カストロネヴェス、パジェノーのインディー500ウイナー2人!


 パジェノーは2022年、メイヤー・シャンク・レーシングからフル・シーズン出場する。マイケル・シャンクとジム・メイヤー率いるオハイオのチームは、初めての2カー体制でのフル・エントリーを行うと決めたが、レギュラーのジャック・ハーヴィーが離脱表明。チームは今年のインディー500で史上最多タイとなる4勝目=メイヤー・シャンク・レーシングにとっての初勝利=を挙げたばかりのエリオ・カストロネヴェスをレギュラーに起用することを決め、そのチームメイトにパジェノーを選んだ。来年のインディー500では、このチームが大活躍することがほぼ間違いないだろう。ただし、他のコースでのパフォーマンスには、やや不安アリ。カストロネヴェスは46歳で、パジェノーは37歳という高平均年齢コンビとなるからだ。しかし、彼らはチーム・ペンスキーで一緒に戦っていた仲なので、お互いの仕事ぶりを知っているし、チームが技術提携しているアンドレッティ・オートスポートのエンジニアリングという武器があるので、好パフォーマンスを発揮する可能性もある。


グロジャン+エンジニア加入で
アンドレッティ・オートスポートは大補強に成功!?

F1ドライバーの実力をいかんなく発揮したグロジャン。2022年はいよいよオーバルを含めてのフルエントリーとなる Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大

 パジェノーには、シュミット時代の2012年からコンビを組んでいるエンジニア、ベン・ブレッツマンがいる。チーム・ペンスキー連れて行った彼を、今回の移籍でも彼はMSRに帯同するだろう。 デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRからアンドレッティ・オートスポートに加わるロマイン・グロジャンもまた、彼のルーキー・イヤーの活躍を支えてエンジニアのオリヴィエ・ボアッソンを連れてチームを移る。アンドレッティ陣営は、来シーズンに向けてペンスキーとコインのデータ&ノウハウをプラスする。彼らの戦闘力は大幅に向上するかもしれない。

ハンター‐レイはエド・カーペンター・レーシング入りが有力
ヴィーケイとのコンビネーションでチーム力大幅向上へ

Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大

 今年限りで12シーズンを共にしてきたアンドレッティ・オートスポートを離脱する2012年チャンピオンのライアン・ハンター-レイも、ずっとコンビを組んできたエンジニア、レイ・ガスリンと一緒に他チームへ移籍することになりそうだ。パジェノーのところと同様、ハンター-レイとガスリンの結びつきも非常に強い。2014年のインディー500ウィナーでもあるハンター-レイの行く先は未発表だが、エド・カーペンター・レーシングになるとの噂がある(AJ・フォイト・エンタープライゼス説も)。コナー・デイリーが務めてきたカー・ナンバー20のロードコース/ストリート・コース要員に加えてインディー500には3台目で出場というパターンだ。
 ヴィーケイは2021年にキャリア初優勝を記録したが、シーズン後半戦では良いところをほとんど見せることができなかった。シーズン中のマシンのレヴェル・アップでライヴァル勢に引けをとったためだろう。ヴィーケイとデイリーの若いコンビでは、そうした苦境からの脱出が叶わなかった。
 ヴィーケイは2022年もECRで走る。最終戦で彼らの契約延長が明らかになった。2人起用するドライヴァーのうちの1人を経験豊富なヴェテランとすることで、エンジニアリングの強化を図りたい、RHRにならインディー500での戦闘力も期待ができる……ということではないだろうか。21歳のヴィーケイが素晴らしいスピードを秘めているのは明らか。ヴェテランと組んでマシンを作り上げていくことを経験すれば、ヴィーケイの才能がさらに伸びることとなるかもしれない。インディーでコンスタントに速いECR。RHRとガスリン獲得なら、アンドレッティのセッティングやノウハウも獲得できるため、IMSにおけるパフォーマンスがさらに向上することが期待できる。

RLLはジャック・ハーヴィー獲得のうわさ
佐藤琢磨はリリース濃厚に

マシンのイニシャルセットが悪いため、グリッド後方から追い上げるレースが続いた今シーズンの佐藤琢磨。インディー500でもチームの詰めが甘く優勝の可能性を逃すなど、RLLチームの力量がドライバーの奮闘に応えられなかった Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 ハーヴィーはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍すると言われている。シーズン中の発表はなかったが……。彼にはRLLに持ち込めるビッグ・スポンサーがあるんだろうか? もしそれがないとしたら、RLLがハーヴィー起用に踏み切る理由は何なんだろうか? ”ペイド・ドライヴァー”となれるだけの実績を挙げてきてもいないのに。
 

RLLがハーヴィーにご執心というのは、まったく理解しがたい Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大 

 ハーヴィーを獲得して佐藤琢磨をリリース……といった話が既成事実化しつつあるが、RLLに復帰して4シーズンを過ごしてきた琢磨はインディー500での2勝目を含む5勝を挙げ、ポール・ポジションも3回記録してきた。この間、チームメイトのグレアム・レイホールが1勝もできず、1PPも記録できていない「二代目よりも好い成績を4シーズンも続けて挙げてはいけない」ということなんだろうか?
 最終戦での琢磨は、「まだ何も決まっていません」と言っていたが、パドックを流れる噂では「移籍が濃厚」とされている。

Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 RLLが琢磨にリリースの意向を伝えたのか、琢磨がチームを出て行く決意表明をRLLに対して行なったのか? いったいどっちなんだろう?
琢磨は来年のインディー500でも優勝候補に数えられるドライヴァーだというのに。チーム側の意向だというなら、それはまったく納得が行かない。2017年に初優勝して、2019年に3位フィニッシュ、2020年にまた優勝し、2021年も優勝を狙えるポジションで最終スティントを迎えていた琢磨は、インディー500で勝つために何が必要かを知っていて、それらを手に入れるノウハウもほぼ確立している稀有な存在だ。グレアム・レイホールとハーヴィーに同じことを期待するのはかなり難しいだろう。

佐藤琢磨+デイル・コイン・ウイズRWRの可能性
相方はジョーンズではなく、ライツ出身のル―キーか!?


コース上での奮戦が際立った今シーズンの琢磨 Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大

 琢磨の行く先としては、グロジャンの抜けるデイル・コイン・レーシング・ウィズRWRが候補に挙がっている。彼らはグロジャンと担当エンジニアがセットでいなくなってしまうので、どこかから新たにエンジニアを連れてくる必要があるが……。
 デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァンは、近い将来にDCRと離れて独立する意向だが、それは2022年にではなく、2023年以降となりそうだ。彼らの今年のドライヴァー=エド・ジョーンズは決して悪いパフォーマンスではなかったが、残留はなさそう。代わりに、インディー・ライツでチャンピオンになった(先週末が最終戦だった@ミッド・オハイオ)カイル・カークウッド(フロリダ出身/22歳)が起用されることとなるかもしれない。昨年インディー・ライツがパンデミックのために開催されなかった間、カークウッドはヴァッサー・サリヴァンのIMSA GTDチームで走っていた。両者の関係は良好で、インディーカー・チーム入りがなる……ということなのか。ただ、ヴァッサー・サリヴァンはメイン・スポンサーのシールマスターが今年限りという噂があり、カークウッドに期待できるのはインディー・ライツ・チャンピオンに出る奨学金=130万ドルのみ(現状)。インディー500を含む3戦に出場することはできるが、それ以外のレース全てに出るための資金を確保する必要がある。

2022年インディーカー・ライン・アップ

チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ
スコット・ディクソン
アレックス・パロウ
マーカス・エリクソン
ジミー・ジョンソン(フル・シーズン出場?? ロード・コース&ストリート・コースのみ??)
トニー・カナーン(オーヴァルのみ? JJがフル・シーズン出場だと出番を失う?)

チーム・ペンスキー/シヴォレー
ジョセフ・ニューガーデン
ウィル・パワー
スコット・マクロクリン

アロウ・マクラーレンSP/シヴォレー
パト・オーワード
フェリックス・ローゼンクヴィスト

アンドレッティ・オートスポート/ホンダ
コルトン・ハータ
アレクサンダー・ロッシ
ロマイン・グロジャン
デヴリン・デフランチェスコ(R)??

メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ
エリオ・カストロネヴェス
シモン・パジェノー

エド・カーペンター・レーシング/シヴォレー
エド・カーペンター(オーヴァルのみ)
ライアン・ハンター-レイ?? (ロード・コース&ストリート・コース+インディー500??)
リナス・ヴィーケイ

レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング
グレアム・レイホール
ジャック・ハーヴィー??
サンティーノ・フェルッチ?? オリヴァー・アスキュー??

デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR
佐藤琢磨??

デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン
カイル・カークウッド(R)??

AJ・フォイト・エンタープライゼス
セバスチャン・ブルデイ??
ダルトン・ケレット??

フンコス・ホリンジャー・レーシング
カルーム・アイロット(R)

カーリン
マックス・チルトン(ロード・コース&ストリート・コース+インディー500)??
コナー・デイリー?? (オーバルのみ))??
以上
 

2 件のコメント:

  1. 琢磨選手のこと、みんなが思っていることを文章化してくれてありがとうございます。ただ最後もお互い礼儀正しく尊敬を持って離脱発表が行われたので、年齢やらスポンサーを考えれば、仕方のないところとも思います。デイルコインで心機一転、エースの活躍をして欲しいですね!

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  2. 天野さん、琢磨選手の去就がないのが気になります。
    契約に難航してるのでしょうか?
    気になって、気になって仕方ありません。
    来季も、琢磨選手の走りに期待してます。
    年齢に反する、若々しいレースにはまだまだ期待してます。
    早く琢磨選手もファンも、決まって安心したいものですね。

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