2021年6月1日火曜日

2021 INDYCARレポート 第105回インディアナポリス500 プレゼンテッド・バイ・ゲインブリッジ Race Review:連覇に向けて追い上げたかった佐藤琢磨

 

Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

暑いコンディションでのマシン作りに苦戦

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の第105回インディアナポリス500は14位という結果となったが、その順位以上に悔しいレースとなった。
 目標は2連覇。しかし、昨年3位だった予選で、今年は15番手にしかなれなかった。
 トップ5入りに自信を持っていたが、おおいに苦戦を強いられたのは、暑くなったコンディションにマシンをフィットさせ切ることができなかったため。琢磨は気持ちを引き締め直し、予選2日目の夕方に行われた2時間のプラクティス、さらにはカーブ・デイにマシンの実力アップを目指すこととした。
 カーブ・デイのファイナル・プラクティスでは最高気温が17℃と”極寒”のコンディション。レース・デイも、そこまでではないが、寒くなる予報。「気温が低いことでみんなマシンが安定していた。周回を重ねてもタイヤがほとんど悪くならない。だからと言って、ウィングを寝かせると今度は前について行くのが精一杯になっていた。どんなレースになるのか……」と琢磨はコメントした。決勝前最後の走行で一気に自信を回復したいところだったが、そうは行かなかった。
 アンドレッティ軍団の8台体制までは行かないが、今年もレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは3台をエントリー。豊富なデータを収集できていた。それらを基にマシン・セッティングを再討し、琢磨は決勝に臨んだ。

気温が高くなった決勝、ファーストスティントでは8位に浮上

 スタート前に気温がカーブ・デイの最高気温に並び、陽の当たった路面はどんどん上昇して行くコンディション。琢磨はピット・ストップ1回目を終えた時点で8番手まで大きく順位を上げていた。最初のフルコースコーションが出された時にピット・インする予定だった面々が給油だけの”緊急ピット・ストップ”を余儀無くされたチームが後退したためだ。タービュランス真っ只中の中団を走り、燃費を大きくセーヴできていたおかげだった。


レース中盤を過ぎてトップ5目前まで前進!
アンダーカットするライバルを尻目に燃費作戦をチョイス

 セカンド・スティントでの琢磨はイエローで7周、グリーンで34周を走ったが、ここで順位を上げられなかった。ピットするタイミングを早める”アンダー・カット”で活路を見出そうとするチームも出始めた。
 118周目にグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)がクラッシュし、コーション・ナンバー2。琢磨は7番手でリスタートを迎えた。もう折り返し点は過ぎていたが、トップ5は目前という状況。シナリオ通りの戦いに近づくことができていた。
 サード・スティントの戦い方はチームによって大きく分かれた。より多くのチームがアンダー・カットアドヴァンテージを得ようとした。アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)は148周目、エリオ・カストロネヴェス(メイヤー・シャンク・レーシング)とシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は150周目にピット・インしたが、琢磨は157周目まで引っ張った。
 琢磨はここでも7番手をキープしていたが、すぐに18番手までドロップ。燃費をセーヴし、ライヴァル勢より1回少ない給油で走り切れば大逆転の優勝……という作戦が採用されていたため、ペースを大幅に落として走っていたのだ。


フルコースコーションは出ず、ラスト6周でピットに

 同じ作戦のフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)は、琢磨よりピットが1周遅く有利かも思われたが、トウを得る状況に恵まれなかったのか、シヴォレー・エンジンのせいなのかはわからないが、ゴール前7周でピットに向かった。琢磨はこれでトップに立ったが、イエローが出てくれれば……というチームの願いは天に届かず、ローセンクヴィストの翌周に琢磨もピットに向かい、連覇の夢は絶たれた。
 7番手から上位へすっと上がれなかったことで、チームは奇手を思いついた。それは非常に可能性の小さい作戦だった。

「2スティントをニュータイヤで思い切り走りたかった」

 レース後のピットで琢磨とチームは長いこと話し合っていた。それは選ばれた作戦についてだったのだ。
 「自分たちはかなり燃料をストレッチさせることができていました。だけど、最終ピット・ストップの後、40周近く(実際には43周)もノン・ストップで行かなきゃいけないっていうのはとんでもないストラテジーで、そこに行くまでにチームと話して”不可能だ”って伝えたんですよ。僕がピットに入る前に223mph、224mphっていう、あの時点で一番速いラップが出せて、カストロネヴェスのすぐ後ろを走っていましたが、みんなあと2回ピットしないといけない状況でした。自分も同じように2回ピットに止まってセッティングの調整をして、2スティントをニュー・タイヤで思い切り戦いたかったですね」。
 琢磨は穏やかな表情で話したが、無念さを強く感じていた。
 「ピットとの交信では2回”不可能だ”って言って、5回”無理だ”って言ったんだけど……」。


佐藤琢磨というドライバーの力を信じるべきだったRLL

インディー500史上最多の4勝目を挙げたカストロネヴェスを祝福する琢磨。自身の3勝目への挑戦は来年に持ち越された Photo:INDYCAR(Joe Skibinski) クリックして拡大

 ドライヴァーは着々と戦う気持ちを高めて行っていたが、チームは違う方向へと舵をきった。
 「自分としては、まだ一度もフル・アタックをしてなかったんですよ。最後にそれをやりたくて、そこに行くまでのクルマ作りをずっとやっていた。そこでチームが1ストップに切り替えてしまった。ユーズド・セットで35周以上走った状態で224mphを出して前を追いかけて、オーヴァー・カットをしようとしてました。あのペース、あの勢いを維持すべきでしたよね」。
 琢磨が順位を上げられなかったのは、マシンが悪かったせいではなかったのだ。彼はまだ力を出し切っていなかった。隠していたわけはない。勝負のタイミングはまだ先だと見ていた。少し前方で急減速した者がいて、そのリアクションがアコーディオン式に大きくなって順位を落としたことが何度かあった。それによって、昨年あまりにも見事な優勝を飾ったチームは”今年の自分たちのマシンは去年のような戦いのできるものになっていない”と急いで結論を出してしまった。苛立ちが作戦を切り替えさせた。最もディフェンディング・チャンピオンらしくない作戦を選んでしまった。浮足立った対応だった。もっと自分たちのドライヴァーの力を信頼して欲しかった。世界最大のレースで2勝している、いま“500”の勝ち方、勝てるマシンを最も深く理解しているドライヴァーと、自分たちのエンジニアリング能力に自信を持って欲しかった。
 ”レーサー”、”ファイター”ではない消極的に過ぎる選択だった。RLLがワン・ステップ上がるためには、この経験から多くを学ばなければならない。

以上

7 件のコメント:

  1. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除
  2. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除
  3. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除
  4. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除
  5. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除
  6. 放送では琢磨の意思でってなってませんでしたっけ?
    まあ、チームがなぜそんな戦略を取ったのか未だしんじられません

    返信削除