トロント戦中止、その代替レースは??
GMRグラン・プリが終わった。もう5レースが終了。2021年シーズンは4分の1が終了したということだ。早い。早過ぎる。
第11戦ホンダ・インディ・トロントがキャンセルに。予想されていたこととはいえ、アメリカ国外でのレースが2年連続でナシというのは残念。カナダはCOVID−19対策をかなり厳重にやって来たのに、その効果があまり得られていなかった。ワクチンも思うように手に入っていない様子で、国境解放、人々が自由に行き来して……というのはまだまだ先になりそうだ。
トロントがなくなってもレース数はキープ!というのがインディーカーの意向だと聞いている。しかし、いまの時点では、どこのレースがダブルへダー化されるのか……など、どうやってレース数を回復するのかは未定だ。ただし、トロントの週にどこか別の場所で急遽レースを行うのは、時間的にも難しいだろう。やれるとしたらシリーズのオーナー、ロジャー・ペンスキーが所有するインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースだが、今年もあそこで3レースというのはあまり歓迎したくない。一つのコースの重要性が高くなり過ぎるのは問題だ。その案をいま歓迎するのは先日勝ったリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)ぐらいか。
インディアナポリスでのレースとすれば、大多数のクルーが自宅から通えるので、チームにとっては遠征費が軽減されて助かる。インディアナポリス以外に本拠地を置いているレギュラー・チームもあるが。チーム・ペンスキー(ノース・キャロライナ州)、AJ・フォイト・エンタープライゼス(1台がテキサス州)、デイル・コイン・レーシング(イリノイ州)、カーリン(フロリダ州)、メイヤー・シャンク・レーシング(オハイオ州)。そんな彼らでも、カナダ遠征よりインディーの方が遥かに少ない経費で1レースをこなせるのは確かだ。
もっと経費を節約できるのが、すでにスケジュールにあるイヴェントのどれかをダブルヘダー化するパターン。トロントと同じプロモーターのミッド・オハイオ、ポートランドにその可能性があるのか? ショート・オーヴァルのワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイも候補に挙がっているようだ。ウェザー・テック・レースウェイ・ラグナ・セカの可能性はないんだろうか?
スケジュール変更で最終戦となっているロング・ビートのストリートがダブルヘダーになる可能性は低いだろうが。
毎戦異なる5人のウイナーが誕生した序盤戦
しかも3人がインディーカー初勝利!
5戦を開催して、優勝者が5人! インディーカー・シリーズは今年もチーム間の実力が伯仲し、ドライヴァーたちのレヴェルも高い。
開幕戦のバーバー・モータースポーツ・パークで優勝したのはアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)で、第2戦セイント・ピーターズバーグではコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)が優勝。テキサスでは第3戦ジェネシス300をスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、第4戦エクスペル375はパト・オーワードが制した。そして、第5戦GMRグラン・プリはリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)がビクトリー・レーンへ。パロウ、オーワード、ヴィーケイの3人はいずれもキャリア初勝利だった。
開幕5レースのウィナーがすべて違う……というのは2019年にも2015年にもあった。インディーカー・シリーズの混戦はもう何年にも渡って凄まじい状況にあり続けていて、2017年には開幕7レースで7人の異なるウィナーが誕生していた。しかし、開幕5戦でポール・シッターも5人というのは近年では例がない。
いよいよ現実のものとなった感ある世代交代
3位内入賞も5戦で11人!
今年の場合は世代交代の波も感じる。第3戦ウィナーこそ40歳のベテラン、ディクソンが勝ったが、それとは対照的に開幕戦ウィナーのパロウは24歳、第4戦のオーワードは21歳(勝った4日後に22歳になった)、第5戦ヴィーケイは20歳だ。一昨年にコルトン・ハータがフル・シーズン最初の年にし2勝して昨年も1勝し、フェリックス・ローゼンクヴィストもデビュー2年目での勝利を挙げたが、彼らを含め、若い世代の台頭が急激に進んでいる。
各レースでのトップ3の顔ぶれをチェックしてみると、5戦なのでのべ15人が表彰台に上った(実際には、テキサスはウィナーしかビクトリー・レーンに呼ばないが)が、そのメンバーは11名と多かった。3回登壇した者はなく、2回がディクソン、オーワード、ニューガーデン、パロウの4人。1回がパワー、ハータ、パジェノー、マクロクリン、レイホール、ヴィーケイ、グロジャンだ。
チーム別で見ると、優勝こそないがペンスキーが4人全員表彰台に上がっていて、その合計が5回。ガナッシは4回。マクラーレンが2回。あとはアンドレッティ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング、エド・カーペンター・レーシング、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWRが1回ずつだ。
予選結果にも混戦ぶりがよく出ている。PPは開幕戦はオーワードで、第2戦はハータだった。テキサスのダブルへダーは悪天候で予選が流れ、ポイント・スタンディングによってグリッドが決定。レース1はパロウ、レース2はディクソンがPPからスタートする権利を与えられた。そしてインディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースでの第5戦、35歳のルーキー(!)=F1出身のロマイン・グロジャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)がデビュー3戦目(今年はオーヴァルを走らないので)にしてキャリア初PPを獲得した。予選があった3戦で3人のポール・シッター誕生。ポイントで決まったテキサス2戦も違う二人がPPからスタート。5戦で5人のポール・シッターという事態になっている。
ロードレース3戦全戦ファスト6進出達成者ゼロ!
ロードコース/ストリート・コースでは3セグメント制の予選方式が採用されているが、3戦全部でファイナルに進んだドライバーはいない。2回進出している者でもオーワード、パロウ、ハーヴィー、ニューガーデンの4人だけ。ここにもインディーカー・シリーズの競争の激しさがよく現れている。1回のみファイナルを戦っているのがアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、ディクソン、マーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、ハータ、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)、セバスチャン・ブルデイ(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、グロジャン、スコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)、コナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)。
予選のパフォーマンスをチーム別で見ると、ペンスキーが4人全員1回以上ファイナルに進出していることもあって、5回と最多の合計を誇る。ルーキーながらすでに1回ファイナルに駒を進めている辺り、マクロクリンは奮闘している(決勝でも1回2位になっている)。2番手はのべ4回ファイナル進出のガナッシ。アンドレッティとマクラーレンSPが2回ずつ。AJ・フォイト・エンタープライゼス、デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR、エド・カーペンター・レーシングが1回ずつ。ファイナルを戦えていないのはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとカーリンだけだ。
この状況下でもポイントスタンディングトップはディクソン!
ということで、ポイント・スタンディングがどうなっているかと言うと、トップは176点を獲得して来ているディクソンだ。第3戦で優勝して以来トップをキープしている。トップ3入り2回、開幕4戦連続でトップ5入り、5戦目もP9とさすがの安定感”(PPは今年はまだない)だ。7回目のタイトル獲得も可能性十分、といった感じ。この時点でシリーズのイニシアティヴを握っちゃっているところがいかにも彼だ。このまま逃げ切り、史上7回目のタイトル獲得を果たし、AJ・フォイトと並ぶことになるだろうか?
シーズン序版はライヴァルがもたついているので、そうなる可能性は十分にある。
ポイント2番手はパロウ。6度チャンピオンになっている先輩チームメイトとの差は13点しかない。セイント・ピーターズバーグでサスペンション・トラブルもあって1ラップ・ダウンの17位だったが、優勝1回、3位1回、テキサスでのダブルヘダーも4位/7位と悪くない結果にまとめ、インディーのロードコースでは3位で今年2度目の表彰台に。
ポイント3番手はニューガーデン。優勝はないが、ディクソンより28点、パロウより15点少ないだけの142点を稼いで来ている。もし今年彼がタイトル獲得を逃したら、開幕戦のバーバー・モータースポーツ・パークでの1周目をミスを後悔することになるだろう。ターン5へとアプローチするストレート部でグリップを失って、まさかのスピン!
多くのマシンを巻き込むアクシデントを引き起こした。マシンを修理してレースに戻ったニューガーデンだったが、このレースでの彼の成績は24位。それでも、2戦目からは2位、6位、2位、4位と手堅いゴールを重ねる粘り強さを見せている。
ペンスキー、いまだに勝利なし
興味深いことに、5戦も終わったのにペンスキー勢が一度も勝てていない。ポイント・スタンディングの4番手はオーワード=146点。5番手はレイホール=137点で、6番手はヴィーケイ=135点。7、8、9番手にパジェノー、マクロクリン、パワーとペンスキー勢が並んで、10番手はハータだ。ペンスキーの初勝利はいつに?
インディー500で勝つだろうか? それとも、インディでも勝てずに開幕6戦勝利ナシとなるんだろうか。
佐藤琢磨は常設ロードコースでのパフォーマンス不足
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はポイント12番手=98点(すぐ上の11番手=エリクソンとも、すぐ下のハーヴィーとも1点差)。バーバーは予選19位/決勝13位という悔しい戦いとなり、セイント・ピーターズバーグでは予選15位から6位まで大きく順位を上げてゴールしたものの、テキサスの2レースは12位/9位、11/14位と振るわなかった。インディのロードコースも17位/16位という結果で、チームの常設ロードコースにおけるマシン・パフォーマンスが低い印象。全体的に予選のパフォーマンスが悪く、それより気になるのがトラブルの多さだ。レースではピット作業で遅れを取る事態にも何度か起こっていて、ランキング12番手に止まれているのが不思議なぐらいでもある。昨年2勝目を挙げたインディー500で流れを変えたいところだ。
今年も強いのはガナッシとペンスキー。そこに絡んで行くのが今年はアンドレッティではなく、マクラーレンとなっており、カーペンターもなかなかのパフォーマンスを見せている。
チャンピオン争いとインディー500優勝以外に興味はないロッシは、昨年同様に安定感に欠けている。ハンター-レイとヒンチクリフといったヴェテランがチームにはいるが、彼らのフィードバックをもってしても、エンジニアリングが迷走中といった印象。ハータが速いとロッシが遅い……という苦境に嵌まり込んでいる。
今年はロードコース、ストリート・コースのレースにしか出場しないドライヴァーが2人いる。グロジャンとNASCARのトップ・シリーズで歴代最多タイの7回もチャンピオンになったジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。グロジャンの順応性の高さは素晴らしく、デビュー・イヤーの優勝もあり得そうな勢い。対するジョンソンはインディーカーに慣れるのにかなりの苦労をしており、NASCARファンを歓喜させる走りを見せるまでには長い時間がかかりそうだ。
以上
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