2021年5月31日月曜日

2021 INDYCARレポート 第105回インディアナポリス500 プレゼンテッド・バイ・ゲインブリッジ 決勝:4人目の4タイム・ウィナー誕生

インディー500出走21回目にして歴代トップに並ぶ4回目の優勝をカストロネヴェスが遂げた! 3度目の勝利から実に12年を経ての快挙! Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

ペンスキー放出翌年に達成したインディー500キャリア4勝目

 2年前? 1年前? チーム・ペンスキーが少しだが道から足を踏み外したと思う。それは正確にはいつ頃だったのか?
 スポーツ・カーのアキュラ・チーム・ペンスキーのレギュラー・ドライヴァーとなっても、エリオ・カストロネヴェスのインディー500参戦はチーム・ペンスキーから続けられていた。しかし、ロジャー・ペンスキー率いるチームは、スコット・マクロクリンをインディーカーのシーズン・レギュラーとして起用することを決定。
“インディー500で走らせるのは4台まで”という内規を定めている彼らとしては、20年を一緒に過ごしたカストロネヴェスを自動的に放出することになった。
 まさか、その翌年にカストロネベスはインディー500でキャリア4勝目を挙げることになるとは! 移籍先のチームで戦う最初の“500”での優勝。2009年の3勝目からは10年以上が経過していた。

スパイダーマンがインディアナポリスに戻ってきた! Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大

「勝因はこれまでの経験」と語るカストロネヴェス
MSRインディーカー初勝利がインディー500!

 勝因を尋ねられたカストロネベスは、「素晴らしいチームでずっと戦っていた。彼らの経験や知識が、チームを離れても私を助けることとなった」と答え、昨年まで所属していたチームを真っ先に讃えた。そして、「スポーツカーでの経験もおおいに役に立った。インディーカーとは違うマシンでチャンピオンになるためには、そのマシンを理解することが必要だった。そこでの経験が、今年の新しい空力ルール下でもマシン・セッティングを良くするのに有効だった」とも話した。

Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 メジャー・チームを離れ、カストロネベスは謙虚になった。インディーカーにはジャック・ハービーの1台のみをエントリーし、IMSAのスポーツカーシリーズにもアキュラのプロトタイプを1台エントリーしているのがメイヤー・シャンク・レーシング。「2台をキッチリ走らせて勝てるチームになりたい」という目標を掲げる彼らが、その土台を作るために呼んだ。もちろん彼らは、彼のインディー500での活躍にも期待した。そして、それらにいきなり100パーセント応えるビッグ・ウィンを彼は記録した。この勝利はMSRにとってのインディー500初勝利……どころか、NTTインディーカー・シリーズでの初勝利となった。

 昨年の佐藤琢磨を彷彿とさせたカストロネヴェスの走り
最後はバックマーカーをうまく利用してパロウを突き放す

ホンダエンジンは2年連続14回目のインディー500制覇 Photo:INDYCAR(Chris Owens)クリックして拡大

 今年のエリオの勝ち方を見て、去年の佐藤琢磨のそれに似ている、と感じなかっただろうか?
スタートからトップを狙うことにはまったく興味を見せず、トップ5、悪くてもトップ10にポジションを保つという考え方を持っていたのは明らかで、その通りの戦い方を実践していた。レースが後半に入ってからトップ走行の感触も確認して、常に燃費セーヴを心掛けて走ることも忘れていなかった。
 最後は3番手に食い下がるパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)を突き放すため、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)を敢えて抜かずにすぐ後方にステイし続けた。
 さらには、ファイナル・ラップではなく、その前の199周目にパロウをパス。バックマーカーの列に接近していることに気づいていた彼は、追いつけばドラフティングが利用できる上、強くなるタービュランスによってパロウは前車、すなわち自分をパスすることが難しくなる。そうなる前にトップに出るのがベスト。その読みは正しく、カストロネベスは勝利。若いパロウは完敗を喫した。

2年ぶりに待望の有観客となったインディー500。カストロネヴェスの歴史的勝利によって、IMSはレース後もしばらく興奮と感動に包まれた Photo:INDYCAR(Doug Mathews)クリックして拡大

 予選後のプラクティスでマシンの良さを確信したカストロネベスは、余裕を持ってレースを戦っていた。昨年の琢磨と一緒だった。強力なマシンを手にした時、クレヴァーな戦いができるのがヴェテランたち。来年、カストロネベスは前人未到の5勝目に挑戦する。実現不可能な目標ではない。連覇2回目というのもインディーの歴史で初めてとなる。

3位は予選26位からスタートしたパジェノー

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 3位はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)。26番手からのトップ3フィニッシュには拍手喝采を贈りたい。作戦もマシン作りも見事だったからこそ掴み得た結果だ。宣言通りに”ダウンフォース少なめのセッティングでスタート”……したらファースト・スティントはチームメイトのウィル・パワーと25番手争い(!) しかし、ピットストップでの調整と、コクピット内のツール・フル活用でパック内での速さを獲得していた。
 予選結果の悪かった彼らとしては、目指せたのはあそこまで……だったとも考えられる。「トラフィックで速く走れるよう、オーヴァーステアのマシンになるよう調整し、最後の最後でパト・オーワードをパスして3位になれた」とパジェノーはレース後に話していた。豪快なパスを幾つも見せていたが、先頭に出たらドライヴィングが非常に難しいマシンとしていたのだ。後方スタートからひとつでも上のポジションを狙うクルマとしては上々の出来だったのだと思う。しかし、それは勝てるマシンにまではなっていなかったように思える。2018年ウィナーのパジェノー。チーム・ペンスキーで最もインディー500を得意とする男(そう認定しているのは私だけ?)。そんな彼でも、あと2台をパスしないと優勝には手が届かない。それだけ難しいインディーで今日、カストロネベスは4勝目を飾った。おめでとう!

 

Photo:INDYCAR(Karl Zemlin)クリックして拡大

以上


1 件のコメント:

  1. エリオは、すごいな!
    琢磨選手も、おつかれさまでした。
    私は、細かいルールはわからないけど燃費作戦ではなくエリオとパロウと戦ってほしかったし琢磨選手もそれを望んでいたと思います。
    グレアムのクラッシュも、ショックでした。
    琢磨選手も、残念だったけどシーズンはまだ中盤なので気持ちを切り替えて頑張ってほしいです!

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