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開幕戦で望んだパフォーマンスを発揮できず
予定より1ヶ月半ほど遅れて、ついにNTTインディーカー・シリーズの2021年シーズンが開幕した。
プラクティス2回と予選を土曜日に、ウォーム・アップと決勝レースを日曜日に行うスケジュールとされた週末、インディーカー参戦12年目となる佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、プラクティス2回がともに20番手、予選が19位、ウォーム・アップは19番手というスロー・スタートを切った。今年のフル・シーズン・エントリーは24台となりそうで、開幕戦の琢磨は後ろから数えた方が早い順位でのパフォーマンスが続き、望んでいたパフォーマンスをほとんど発揮できずにいた。
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コース再舗装で、まったく違うサーキットに
2年前のアドバンテージを生かせず
2020年の4月は全米に緊急事態宣言が出ており、バーバー・モータースポーツ・パークでのレースは行なわれなかった。その前年の2019年にバーバー・モータースポーツ・パークで勝ったのは琢磨。それも、ポール・ポジションからレースをリードし続けての圧勝だった。チームメイトのグレアム・レイホールが予選2位で、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはフロント・ロウをスウィープしてもいた。残念ながらグレアムはレースでリタイアを喫したが、アラバマのツィスティでアップ&ダウンの多いコースでRLLのマシンは速かった。
ところが、今年のバーバーはコースの舗装が新しくされたことでラップタイムが2019年より2秒以上も速くなっていた。前回レースをした時とは全然違うコースになってしまったのだ。2年前に最強だったRLLのセッティングは新舗装にマッチせず、アドヴァンテージは霧消。逆に苦しんでいたライヴァル勢が競争力を手に入れた。見事なまでの形勢逆転が起こった。
オフの間にテストに来たRLLは、状況がガラッと変わっていることに気づき、セッティングの方針を変更。琢磨は今年からコンビを組むレース・エンジニア、マット・グリースリーとマシンのパフォーマンス向上を目指すこととなった。マットにとっては厳しい環境での船出となっていた。
プラクティス2、ウォームアップとマシンを進化させるも
いかんともしがたいイニシャルセッティングの差
2回のプラクティス、さらには予選も使って可能な限りの手を尽くした琢磨陣営は、少しずつだがマシンを望むものに近づけて行くこととなった。しかし、飛躍的な進歩を遂げたわけではなかった。苦境に止まり続けた彼らはレース・デイのウォーム・アップでもグレアムともども新セッティングをトライした。
たゆまぬ努力が実り、RLLはもう一段の進化をマシンにもたらすこととなった。琢磨とマットの仕事は、レース・ウィークエンドを初めて一緒に戦うことで、オフのテストよりレヴェル・アップしたということだろう。しかし、だからと言って、彼らが一気にトップ・コンテンターのエリアまで競争力を高めたワケではなかった。毎年言っていて信憑性が無くなっているかもしれないが、インディーカー・シリーズの戦いは今年またレヴェルを上げ、空前絶後の激戦になっている。
今シーズンについて言えることは、開幕直前に決まった常設ロードコースでの2デイ・スケジュールが、出場チームのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすであろうことだ。週末の走り出しで躓いたチームは、失地を挽回できる可能性がとても小さくなるはずだ。予選前にプラクティスは2回あるものの、そのインターヴァルが短過ぎるからデータの解析を十分に行なうことなど不可能で、大がかりなセッティング変更も難しい。
RLLは琢磨もグレアムも経験豊富なドライバーだ。エンジニアリング・スタッフも、テクニカル・ディレクターのトム・ジャーマン、グレアムとコンビを組むアレン・マクドナルドという二人がインディカーで長年働いて来ていて、多くの成功を納めて来ている。今年の琢磨はマットといインディーカー経験はあまりないエンジニアと新コンビを組み、それを成功させるタスクを背負っているが、チームのエンジニアリングの方針はヴェテラン・エンジニアたちがベースを作るので、そこからの味付けの部分でマットと二人で良いものを見つけらるようになることを期待したい。
決勝レースですぐさま12位まで浮上!
しかし、マシントラブルで2ピット作戦をチョイスできず!ニューガーデンが起因となったマルチクラッシュを巧みにかわして琢磨は12位まで一気に浮上する Photo:INDYCAR(Joe Skibinski)クリックして拡大
ウォームアップでヒントを掴んだ琢磨は19番グリッドからレースに臨み、スタート直後のターン5手前で起きた多重クラッシュを巧みに回避、7ポジション・アップの12番手にまで浮上した。中団まで大きく順位を上げたことで、琢磨陣営はトップ・グループと同じ作戦で行くか、彼らの裏をかいてピット・シークエンスをずらすか、難しい決断を強いられることになった……と見えていたが、実際の彼らは3ストップしか選べない状況に陥っていた。スタート時からテレメトリーが作動しておらず、ピットは琢磨の燃料消費量の詳細を把握できなかったのだ。燃費走法ではエンジンを壊す心配もあるため、彼らは3ストップでゴールを目指す道を選んだ。
しかし、ユーズド・レッド装着のシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)に追突され、パジェノーだけでなくセバスチャン・ブルデイ(AJ・フォイト・エンタープライゼス)にも先行(パジェノーも追突されての玉突き事故だったという話)を許すなど、なかなか思い通りのレースを戦わせてはもらなかった。
テレメトリーのトラブルさえなければ、燃費セイヴの巧みさではシリーズ・トップとも言われる琢磨は大きなアドヴァンテイジを与えられていて。パジェノーやブルデイ、スコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)とポジション争いをする必要などなく、彼らよりずっと上位を走ることができていたはずだ。開幕前にインディアナポリス・モーター・スピードウェイで行なわれたオープン・テストでも琢磨はトラブルに見舞われ(2回も!)、思う存分ラップを重ねることができなかった。走行時間が短くされる今シーズン、トラブルは絶対に避けなければならないものになっている。チーム全体を今一度引き締める必要がある。
「ペンスキーの2台と同レベルに走れるところまでは来ました
トラブルがなければ2ストップ作戦でトップ5は狙えた」
決勝に至るセッティングで苦悩した上に、テレメトリーのトラブルまで出てしまったパナソニック/シールド・クリアランス/ダラーラ・ホンダ。シーズン初戦での13位フィニッシュは決して悪い結果ではなかったのかもしれない。「スタートでポジションを幾つも上げることができ、レースでのマシンはハンドリングが今週末でのベストになっていました。そこまでマシンのレヴェルを上げることができたのは良かったですね。レースの前半はパジェノーと、終盤はマクロクリンとバトル。チーム・ペンスキーの面々と同レヴェルのラップ・タイムを刻めるマシンにできていたということです。トラブルがなければ2ストップ作戦で戦い、トップ5か、それに近い成績を残せていたのではないでしょうか。プラクティスからの苦戦状態から、それだけの戦いができるところまでマシンを向上させることができたのは良かったと思います」とレース後の琢磨は語った。
インディーカー・シリーズは休む間もなくフロリダ州へと移動し、第2戦セイント・ピーターズバーグを開催する。決勝は4月25日。バーバー・モータースポーツ・パーク同様に琢磨が得意とするコースだが、今シーズン初のストリート・レースで彼とグレアム、二人のRLLドライヴァーがどんな走りを見せるのか、おおいに楽しみだ。
コメント: 佐藤琢磨 予選19位/決勝13位
「タフなレースでしたが、悪くない週末にすることができました」
「2021年最初のレースは13位での完走でした。大きなアクシデントが起きたあとも、うまく切り抜けて懸命に戦ったことを考えれば、少し残念な結果でした。スタートは完璧で12番手まで順位を上げましたが、その直後に起きた多重アクシデントによってフル・コース・コーションとなり、それを利用して2ストップ作戦で戦うこととしたチームが大きく順位を上げ、我々3ストップ作戦の面々は苦戦を強いられました。シモン・パジェノーやスコット・マクラフリンと好バトルを繰り広げ、たくさんのオーヴァーテイクを実現でき、トップ10にあと少しのところまで行けました。トップ10に入れなかったのは少し悔しいですが、週末を通じてパフォーマンスが不足していた我々が、19番手からのスタートで13位でゴールできたことを喜んでいます。今回のセッティングの問題が何だったのかを解明し、次のロードコースでは良いパフォーマンスを見せたいと思います。第2戦はストリート・レースですから、今回とはまったくの別物です。今回はタフなレースでしたが、悪くない週末にすることができました。セイント・ピーターズバーグでの第2戦では良いレースができると思います」
数年前に入れてましたが再度見させて頂きます
返信削除色々な所を見せて頂き楽しんでおります
どうぞ宜しくお願い致します<(_ _)>