テスト走行開始後わずか10分でヴィーケイがクラッシュ!
雨という天気予報は外れ、午前11時に予定通りにグリーン・フラッグ。多くのマシンが一斉にピットからコースへとダッシュした。インディー500のディフェンディング・ウィナーである佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)もライヴァル勢と共にコース・インし、インストレーション・ラップを行った。空は曇り。気温は17℃と肌寒い。
この約10分後、2020年のルーキー・オヴ・ザ・イヤー=リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)がターン1でクラッシュした。アウト・ラップを終えてスピードを上げ、217.539mphを出した次の周、彼のマシンはターン1で突如としてバランスを崩し、スピンしながらウォールに激しくヒットした。マシン・セッティグに問題があったようだ。アクシデントを近距離で見ていたスポッターの中には、「すぐ前のラップでかなりオーヴァーステアで、”次のラップにクラッシュするぞ”と思ってたら、本当にそうなった」と話す者もいた。
ヴィーケイはセイファー・バリアの一番端にぶつかった。ノーズから突っ込まなかったことも幸いだった。それでもマシンへのダメージは非常に大きく、オフの間にクルーたちがコツコツと作り込んだマシンがアッという間に無惨な姿になった。明日、彼らはこのマシンを直して走ることができるんだろうか?
ヴィーケイはこの事故で左手人差し指を骨折したが、このテストでドライヴィングを続けることをインディーカーから許可された。
走行再開後に降雨でヴェテラン勢の初日の走行はいきなり終了
コースの清掃が済んで走行は再開されたが、午後1時30分に雨が降って来てイエロー・フラッグが出された。午後3時を前に強い雨が降り、今日のヴェテラン勢の走行は終了となった。ルーキーとリフレッシャー勢は夕方に走行のチャンスが与られることになった。天候が許せば……だが。
せっかく設けたオープン・テストだというのにヴェテラン勢が1日目に走れた時間は非常に短かった。風の強いコンディションが多くのチームを慎重にさせ、周回数は最多のパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)でも23周。多くのドライヴァーたちが10周にも届かなかった。
エド・カーペンターレーシングの2人が1-2!
そんな中で最速ラップとなる222.714mphをマークしたのはコナー・デイリーで、2番手はエド・カーペンター=221.296mph。いずれもエド・カーペンター・レーシングのドライヴァー。エンジンはシヴォレー。チームにとってヴィーケイのクラッシュは大きな痛手だったが、他の2人がトップ2だったことは喜べる成果だった。ただし、どちらのベスト・ラップも他のマシンのトウを利用してのものだ。
「そんなに大きなトウじゃなかったが、明確に影響は受けていた。それでもマシンの速さは確認できた。走り出しでマシンのフロントが鋭く切れ込み過ぎる印象だったのでセッティングを調整。今回のテストはとても重要なので、こうして参加できていることを喜んでいる」とデイリーは話していた。
ディクソンが3番手タイム! 4,5番手はアロウ・マクラーレン
しかし、トウなしでの最速はハータ以下アンドレッティが1-2-3
3番手は220.575mphをマークしたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。昨シーズンのチャンピオン、そして、昨年のインディー500で2位だったディクソンはテストの最初の走行から速さを見せた。彼らの使用エンジンはホンダだ。
4、5番手はフェリックス・ローゼンクヴィストとパト・オーワード(どちらもアロウ・マクラーレンSP)。スピードは220.575mphと220.233mph。トップ5はシヴォレー2チーム、ホンダ1チーム、シヴォレー・ユーザーが4台、ホンダ・ユーザーが1台という結果になったが、これら上位陣のスピードはどれもトウ利用でのものだった。ところが、トウなしのデータだとトップはコルトン・ハータで、2番手はアレクサンダー・ロッシとホンダ・エンジンで戦うアンドレッティ・オートスポート勢が1−2。3番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シヴォレー)だった。
佐藤琢磨は16番手「たくさん走りたかったけど
今日はクルマがシェイクダウン的なのでこのぐらいでいいです」
琢磨は13周を走り、16番手にランクされる218.392mphのベストを記録した。これはトウなしでのスピード。チームメイトはグレアム・レイホールが9周して219.291mphのベストをマークし、サンティーノ・フェルッチは7周してベストは214.063mphだった。
「たくさん走りたかったのは勿論だけれど、今日はクルマのシェイクダウン的なものだったので、これぐらいでもいいです。去年のセッティングがベースラインとしてどうなるかを確認したかったから、それができて、手応えとしては良かった」と琢磨はコメント。「明日は多分天気が良いと思うので、今シーズンに向けてエアロのオプションが広げられているので、パーツ類を付け足してのテストを重ねます」。こう話す彼の表情は明るかった。
走行時間延長で、ルーキー・リフレッシャーズがたっぷり周回
43周を走行したブルデイがこの日のトップタイムをマーク
取材初日から残業。6時終了のはずが、7時15分まで走行時間が延長になった。インディーカーのこの判断は大正解で、ルーキーやリフレッシャーたちは多くの周回を行なうことができた。しかも、昼間の雨が嘘のように青空が広がり、気温も19.4度まで上昇。路面温度は22.3度で、風も昼より穏やか……とスピードの出易いコンディションになった。1時間12分のセッションはアクシデントもなく、参加した11人全員が40周以上を走り込んだ。そして、43周を走ったセバスチャン・ブルデイ(AJ・フォイト・エンタープライゼス/シヴォレー)が224.427mphでセッション最速、テスト初日の最速ともなった。
カストロネヴェスは3番手、モントーヤは6番手
シモーナ・デ・シルベストロは7番手で初日を終える
2番手はセイジ・カラム(ドレイヤー&レインボールド・レーシング/シヴォレー)の222.048mph。セッション終盤には多くのマシンがコース上に一斉に走る状況となっていたため、多くのラップがトウを受けて速くなっていたのだが、こちらでも1−2はシヴォレー勢。3、4、5番手にはエリオ・カストロネヴェス(メイヤー・シャンク・レーシング)=221.097mph、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)=219.974mph、エド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)=219.612mphとホンダ勢が並んだ。ファン・パブロ・モントーヤ(アロウ・マクラーレンSP/シヴォレー)はその後ろの6番手。唯一の女性ドライヴァー=シモーナ・デ・シルヴェストロ(パレッタ・オートスポート/シヴォレー)は7番手だった。
*AJ・フォイト・エンタープライゼスがインディー500に3台目をエントリー
今日の最速だったAJ・フォイト・エンタープライゼス。そのオーナーは言わずと知れたインディー500最多の4勝を史上初めてマークしたAJ・フォイト。今年は彼のインディー500初優勝から数えて60年目。それを記念して、以前に長年スポンサーを務めたABCサプライがエントリー3台目をフル・スポンサーすることが決定。カー・ナンバーは1勝目にちなんで「1」。そのドライヴァーにはJR・ヒルデブランドが選ばれた……少々重荷かも……(失礼)。
ヒルデブランドといえば、2011年にルーキーながらゴール前2周でトップに立ち、あとはゴールまでマシンを運べば優勝……というところまで行ったが、200周目=最終ラップのターン4=このレース最後のコーナーで周回遅れの処理を誤ってクラッシュ!
メイン・ストレートでダン・ウェルドンに抜かれて2位となったアメリカ人ドライヴァーだ。近年はインディー500だけの出場をエド・カーペンター・レーシング、そしてドレイヤー&レインボールド・レーシングから行なって来ていたが、今年はフォイトからインディー出場を果たすこととなった。
以上
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