今年もデイトナ24時間には
インディーカードライバーが大挙出場
今年もスポーツ・カーの耐久イヴェント=ロレックス24・アット・デイトナ(=デイトナ24時間レース)には多くのインディーカー・ドライヴァーたちが出場し、優勝メンバーにはアレクサンダー・ロッシとエリオ・カストロネヴェスが含まれていた。1月末から2月初旬に開催されるのが恒例のアメリカ伝統の耐久レースは、インディーカーが完全にシーズン・オフの間に行われるもので、3月半ばのセブリング12時間よりも、スケジュールを気にせずエントリーができるイヴェントとなっている。
得られる経験と、対応能力
今のインディーカーは車重がだいたい771gkg(ロードコース仕様)で、エンジン・パワーは700馬力プラス・アルファ。アメリカン・スポーツ・カーのトップ・カテゴリーであるデイトナ・プロトタイプ・インターナショナル(=DPi)は、870kg程度でパワーは600馬力ほど。パフォーマンスはインディーカーの方が高い。しかし、DPiマシンで長時間のレースを戦うことで、インディーカー・ドライヴァーたちは価値ある経験を積むことができる。
近頃のモータースポーツはテストのできる機会が非常に少ない。その点、スポーツ・カーの耐久レースなら各ドライヴァーが長時間の走行を強いられる。しかも、近頃はダブル、トリプル・スティントが普通なので、自分の担当する時間帯の中でもコンディションの変化が大きい。雨が降ることもあるし、風の吹く強さ、その向き、気温も変わる。路面に乗るタイヤ・ラバーの状況も終始同じではない。ドライヴァーたちは変化を感じ取る力、変化に対応した走りが求められる。
更に、耐久レースではカテゴリーで速度差が大きい。今のIMSAシリーズならトップ・カテゴリーはデイトナ・プロトタイプ・インターナショナルで、LMP2、LMP3、さらにはGTLM、GTDというカテゴリーとの混走だ。上位カテゴリーの速いマシンに乗るケースなら、遅いクラスのマシンの特性を理解して動きを読み、安全な場所でタイムをロスしないようにパスする必要があり、遅いマシンで走るのなら、バトルの最中に速いマシンに道を譲る状況も出てくるため、そのタイミングを利用してチャンスを掴む戦い方も必要になる。
耐久レースでは3~4人がマシンをシェアするため、セッティングは100パーセント自分の好みとならない。今ひとつ自分にマッチしないハンドリングであっても、そのクセを理解して可能な限り速く走り続けることが必要。こうしたレースを経験することで、トップ・カテゴリーであるインディーカー・シリーズで走るドライヴァーでもスキル・アップを果たすことが可能なのだ。
セブリングに多数のマシンが集結してテスト=その2
チーム・ペンスキー/シヴォレーの4台、アンドレッティ・オートスポート/ホンダの4台、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダの2台、エド・カーペンター・レーシング/シヴォレーの2台。そしてアロウ・マクラーレンSP/シヴォレーの2台がセブリングのショート・コースをシェアし、風の強く吹くコンディション下でテストを行なった。アンドレッティ・オートスポートの29号車は今回はジェイムズ・ヒンチクリフではなく、オリヴァー・アスキューがドライヴした。
午前中はアンドレッティ・オートスポートのコルトン・ハータ、アレクサンダー・ロッシが1、2番手のタイムをマークし、午後にそれをアロウ・マクラーレンSPのパト・オーワードが上回るラップ=51秒79を記録。この日の2番時計はロッシの51秒93で、3番手はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)とコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)による52秒06だった。5番手はアスキューの52秒24。オーワードの新チームメイト=フェリックス・ローゼンクヴィストは52秒26がベストだった。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は52秒30のベストをマーク。コナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)の最速ラップは52秒31で、グレアム・レイホールは52秒36が自己ベストだった。
ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は昨年のルーキー・オヴ・ザ・イヤー=リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)と同じ52秒36。シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は52秒38がベスト。ライアン・ハンター-レイは52秒46をマークし、今年からフル・エントリーを行うスコット・マクロクリン(チーム・ペンスキー)のベストは52秒47だった。
デイル・コイン・レーシングはレギュラー2カー、レースによっては3カー
ジミー・ヴァッサーとジェイムズ・サリヴァンのタッグと運営するデイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァンは、サンティーノ・フェルッチがNASCARにスイッチしたため、後釜にエド・ジョーンズを迎え入れることになった(既報)。
昨年のデイル・コイン・レーシングは、日本のチーム・ゴーとのジョイントでカー・ナンバー51をエントリーさせていたが、そのプロジェクトのインディー500で新たなパートナーとして迎えていたリック・ウェア・レーシング(RWR)との協力体制を、昨年のチーム・ゴー並に引き上げ、フル・シーズン・エントリーを行なうことになった。エントリーはデイル・コイン・レーシング・ウィズ・RWRとなるようだ。
グロジャン、インディーカー3人目のフランス人ドライバーに
そのドライヴァーとして、昨年まで10シーズンもF1グラン・プリで走っていたフランス人、ロマイン・グロジャン(34歳)が選ばれた。彼はロードコース/ストリート・コースでのレースに出場する。オーヴァルにもチャレンジする予定だったが、昨シーズン終盤にバーレーンGPで瀕死の大事故に遭ったため、オーヴァルはとりあえず初年度はパスすることに決めたという(……そう言いつつ、ショート・オーヴァルのゲイトウェイ戦には出場の可能性があるとか……)。彼の左手はまだアクシデントで負った火傷のダメージから90パーセントの回復という。開幕が1ヵ月と少し遅れたことで、彼はバーバー・モータースポーツ・パークで行われる最初のレースには万全の態勢で臨めることと期待をしている
それにしても、まさかインディーカーがセバスチャン・ブルデイ、シモン・パジェノーに続く3人目のフランス人レギュラー・ドライヴァーを誕生させることになるとは!
自らインディーカー参戦を熱望した初のF1ドライバー!
グロジャンはアクシデントの前から自分のF1キャリアが2020年で一段落するとわかっており、2021年からはインディーカーで走りたいと考えた。アメリカのトップ・オープンホイール参戦に情熱を持った彼はその実現に向け、F1ドライヴァーとしての活動をしながら着々と話を進めていた。こんなF1ドライヴァーはおそらく初めてだ。彼は多くの優秀なライヴァルたちと、性能差の小さいマシンで競う合うことを心から楽しみにしており、このポジティヴな姿勢もプラスに作用して初年度から活躍する期待が持てそうだ。
チームの共同オーナーとなるリック・ウェアの息子、スポーツ・カーとストック・カーでレースをして来ているコーディ(25歳)が、このカー・ナンバー51に乗ってオーヴァル・レースに出場する計画があるようだ。しかし、まだその詳細は明らかにされていない。さらに、彼らにはレースによってはもう1台をエントリーさせるプランもあるという。
フェラーリがインディーカーに参戦……という噂は現実とはならず
インディーカー参戦を検討していたフェラーリだが、2023年からNTTインディーカー・シリーズが導入する新スペック・エンジンでの戦いに加わらないことを明らかにした。
スクーデリア・フェラーリの責任者を務めるマッティア・ビノットが、「社内での協議の結果、近々インディーカーに参戦することはないと決まった。中長期的に見れば可能かもしれないが、今はF1での活動に投資を集中することとする」とコメントした。
ホンダとシヴォレー、インディーカー・シリーズへのエンジン・サプライヤーが2社になってもう10年近くが経つ。第三、第四のメーカー登場が期待される。
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