2020年8月31日月曜日

2020 INDYCARレポート 第9戦 ボマリート・オートモーティブ・グループ500 Race2 決勝:ジョセフ・ニューガーデンがシーズン2勝目

ポール・ポジションの佐藤琢磨を先頭に序盤のレースは展開する Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大

シヴォレー、1位から4位をスウィープ

 ゲイトウェイでのレース2は暑さの中での戦いになり、予選4位からスタートしたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が優勝した。2位は予選3位だったパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)のものとなり、3位は予選2位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。4位でフィニッシュしたのはルーキーのリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)。インディー500からのホンダの2連勝の次は、シヴォレーの1−2−3−4による勝利が記録された。ホンダ最上位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の5位。ポイント・リーダーは今日も速く、手堅くポイントを重ねた。


Photo:INDYCAR (Joe Skibiski) クリックして拡大
「まだチャンピオンシップはあきらめてない」
 「今日勝ったのは僕じゃなくチーム。クルーの素晴らしいピット作業のおかげで勝つことができた。ピットロードでのオーワードとサイド・バイ・サイドでバトル。あれはエキサイティングだった」とニューガーデンは喜び、「まだチャンピオンシップは諦めていない。昨日は衝撃的だった(ポイントリーダーのディクソンが優勝)けれどね」とタイトル争いに踏みとどまったことに安堵もしていた。

ストックカーのコンパウンドと高い路面温度で
Race1とは全く違ったコンディションに


レース2でも安定した走りを見せたオーワード。早いピットストップが功を奏し、レース中盤をリード Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
 昨日行われたレース1の後にはジェネラル・タイヤ使用のARCAシリーズ、今日のレース2の直前にはグッドイヤー・タイヤ使用のNASCARトラック・シリーズのレースがあり、路面のコンディションがレース1からは大きく変わっていた。気温は昨日とほぼ変わらなかったが、朝から強い日差しが照りつけたことで路面の最低温度、最高温度ともに今日の方が10℃ほど高くなっていた。路面に乗ったストックカーのタイヤ・コンパウンドと路面温度の高さからか、レース2はレース1よりも遥かに単調なレースとなった。レコード・ライン以外はグリップが低く、オーバーテイクが昨日より大幅に難しくなっていたためだ。
 その状況を味方につけることができるか否かは、ピット・タイミングにかかっていた。バック・マーカーや周回遅れの背後に引っかからず、コースの空いているところをどれだけ走れるかが大きなポイントになった。

最初にピット・ストップを行った者勝ち⁉
序盤トップを改装した佐藤琢磨は作戦が裏目に


 オーワード、ニューガーデン、パワーの3人はそれぞれ46、47、48周目にピット。この中で最初に入ったオーワードがトップに躍り出た。リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)に至っては、18番手スタートから42周目という早いタイミングでピットし、一挙に3番手にまでポジションアップを果たした。
 逆に佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、ポールスタートからトップを守り、2番手以下を引き離してさえ見せたが、上記ペンスキー軍団2名により10周以上、ヴーケイとの比較だと18周も長く走った結果、1回目のピットストップを終えてコースに復帰すると順位は8番手にまで下がっていた。
 長い一列渋滞の8番手では、前を行くマシンを1台ずつ抜いて行くことですら難しくなる。路面コンディションが悪く、レコードラインを外れるとグリップが低く、オーバーテイクはさらに難しくなっていた。

シヴォレー勢は燃費のディスアドバンテージを逆手に

 ゲイトウェイでのレース2は燃費の悪さが何の不利にもならないレースになってもいた。前日のレース1で燃費の不利を見せつけられたシヴォレー・ユーザーたちは、それを逆手に取る作戦を考え出し、見事結果に繋げた。ホンダ勢の多くがロングスティントにして来ると読み、対抗策で勝負。イエローの出ないレース展開も彼らの作戦に味方した。
 1回目のピット・ストップを終えた時点でのトップ3はオーワード、ニューガーデン、パワーの順。レースの最終順位はニューガーデン、オーワード、パワーとなった。ファースト・ピットを早くした者がアドヴァンテージを得て、そのままレースはゴールまで進んだということだ。

結局、コース上ではなく最後のピット作業での勝負に
オーワード、ニューガーデンに逆転を許す


Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
  トップ3の二人の順位が入れ替わったのは、最後のピット作業によってだった。オーワードはセカンド・スティントからトップを走ったが、最後のピット・ストップが僅かに長くかかったのか、ニューガーデンのクルーたちがとてつもなく速かったのか、順位は逆転された。そして、前に出たニューガーデンはオーワードに付け入る隙を与えなかった。あるいは、オーワードにはトップを奪う力が残されていなかった。
 レース1でもオーワードはトップを走った。しかし、ディクソンに最後のピットストップで先行され、ゴール前20周のコース上では琢磨に豪快にオーバーテイクされ、結果は3位となった。「あれだけのスピードで来られては……」と琢磨のアタックにオーワードは驚いていた。あの場面、二人のマシンにはそれだけの違いがあったということだ。

ヴィクトリー・レーンでニューガーデンと言葉を交わすオーワード Photo:INDYCAR (Chris Owens)クリック
 レース2でも中盤戦にトップを走ったオーワードだが、今度はニューガーデンに最後のピットストップで逆転された。レース1ではチップ・ガナッシ・レーシング、レース2ではチーム・ペンスキーと、シリーズの2トップにクルーたちのピット作業の差で打ち負かされたのだ。アロウ・マクラーレンSPの今シーズンのパフォーマンスには目覚ましいものがある。シュミット・ピーターソン・モータースポーツにマクラーレンが加わった新体制は、トップ争いを行なえるチームとしての地位を確立しつつある。オーワードはこれで表彰台は3回目。あと少しで勝利を掴めるところに来ているように見える。しかし、まだパズルの最後のピースが発見できていない。最終スティントの終盤での速さが不足している。今日のレース2でも最後にニューガーデンにアタックする気配はまったくなかった。それだけの余力を残してはいなかったからだ。
 「最後に逆転するチャンスはあった? その質問に”イエス”と答えられたら嬉しいが、正直に言って、あの時点での僕はかなり苦しんでいた。残り10周を切ると、僕はいつでもプッシュしてプッシュしてパスをするために前のマシンに近づこうとしているんだけど、近づけないんだ。今日のレースは昨日よりプッシュもオーバーテイクも難しかった。コースのアスファルトが硬く、マシンが1列になって連なっている状態になり、走りを困難にしていた。集団の後ろについた状態で僕らはその場から動きが取れなかった」とオーワードは自己分析していた。勝つために何が不足しているのか、彼にはわかっている。それをチームとともに見つけなくてはならない。

ヴィーチのアン・スポーツマン・ライクな走りで
佐藤琢磨はポジション挽回のチャンスを喪失


Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
 琢磨のレースは、ザック・ヴィーチ(アンドレッティ・オートスポート)による執拗なブロックによって台無しにされた。4周も遅れていて、しかもポジション争いをする相手が同一周回にいない状況で道を譲らないのは、どう考えてもフェアではない。しかし、「オーバルレースでは遅いマシンには進路を譲ることは、オフィシャルも提案はできても強制ができない」というのが琢磨陣営の受けたインディカー・オフィシャルからの説明だった。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのアピールによって、ビーチが道を譲る事はとうとう起こらなかった。ヴィーチにはピットから「カーナンバー30を絶対に前に出すな」という指令が無線で出されていたという。若く、2シーズン続けて納得の行く結果を出せていないドライヴァーとすれば従わないわけには行かなかったのだろう。
「あれではもうモータースポーツではない」と怒る佐藤琢磨
問われるアンドレッティオートスポーツの姿勢


 琢磨のチームもビーチへの無線での指示は聞いていたという。琢磨はコルトン・ハータ(アンドレッティ・ハーディング・スタインブレナー・オートスポート)とポジション争いを行うチャンスを奪われ、残り3周でターン2で壁にヒット。7位からふたつポジションを落とした9位でのゴールとなった。「あれではもうモータースポーツではない」とレースを終えた琢磨はヴィーチとアンドレッティの行為に憤慨していた。当然のことだ。アンドレッティ・サイドは、「自分たちはルールを守って戦っている」との主張なのだろうが、4周遅れでリードラップのマシンの前を走り続けるのは非礼。インディーカー・オフィシャルにもルール改正の必要がある。
以上

0 件のコメント:

コメントを投稿