Photo:Masahiko Amano |
トップタイムはカーリンのチルトン!
3月3日、フロリダ州セブリングにあるセブリング・インターナショナル・レースウェイのショート・コースでインディーカーによるテストが行われた。プライベート・テストだが、7チームが集結し、13台ものインディーカーが朝8時30分から夕方6時過ぎまで走り込んだ。気温は27〜29℃と、非常に暖かい1日だった。
最速ラップとなる52秒1126をマークしたのはマックス・チルトン(カーリン)。
「サーキット・オブ・ジ・アメリカスでの合同テストも良かったし、今回のセブリングでもマシンのフィーリングは上々。セント・ピーターズバーグでの開幕戦、そして新しいシーズンに向けて勇気づけられる思いだ。ただし、有頂天になってはいないし、そうなるべきでもない。昨年、僕らはラグナ・セカでの合同テストで最速だったのに、セント・ピーターズバーグの開幕戦では予選で最後列だった。テストで良くても、同じようにシーズンに入ってからも良いとは限らないからね。それでも、今年の2回のテストで得られた感触からすると、シーズン・インしても良い走りができるものと期待ができる」とチルトンと笑顔を見せた。速さの秘密を聞くと、「エンジニアたちがオフの間にデータを徹底的に見直し、ショック・アブソーバーに関する研究を行った。その成果が出ている。マシンの動きは昨年と比べ、間違いなく良くなっている」。
ルーキーのナサール、2番手につけてカーリン1−2!
今日の2番手はチルトンとチームメイトになる可能性が高まっているフェリペ・ナサールの52秒1750だった。まだカーリンと契約を結んでいないナサールは、前日の3月2日にも走っていた。前々日にチームから突然呼び出され、ブラジルから飛んで来たその日の午後だけの走行となったにも関わらず、52秒1361のベストを出して15台中での最速となった。今日チルトンが速かったのは、ナサールが前日に走ったデータにも助けられてのものだが、1日目にはチップ・ガナッシ・レーシングとアンドレッティ・オートスポート、2日目にはチーム・ペンスキーと一緒に走りながら、両日ともトップ、しかも2日目は1-2。チームにとっても、ドライバーたちにとっても大きな自信に繋がるテストとなった。
ナサールはIMSAシリーズでチャンピオンになっていることもあり、セブリングのコースは12時間レースで何度も走っている。コースに関する知識ではインディーカー・ドライバーたちに対してアドバンテージを持っている。それにしても、2日続けての好パフォーマンスは高く評価されるべきだろう。
まだシートを確定できていないナサール
「ぜひともこのマシンで開幕戦に出場したい」
「まだ開幕戦で乗れるかはわかっていないんだ」と走行後のナサール。速さは見せているが、チームから最終決断は聞かされていないという。
3月2日のテストについては、「ブラジリアにいたが、電話がかかって来て、セブリングに来てくれ……というので飛行機を探した。でも、やっと見つけた空席はエコノミークラスで乗り継ぎもあって11時間。ほぼ一睡もせずにマイアミに着いて、そこからクルマを走らせてランチタイムにセブリング到着。サンドイッチを食べてすぐ走り出した。そんな状況でトップ・タイムを出せたんだから、今後はあまり寝ないでレースに臨むことにした方がいいのかもね」とナサールは笑っていた。
2日間の走行を終えて充実した表情を浮かべていたナサール。「サーキット・オブ・ジ・アメリカスはハーフ・ウェットだったし、カーリンのインディーカーの実力を試すことができたのは昨日、今日が初めてみたいなもの。テストのチャンスをくれたカーリンの役に立てれば……と全力で走り、多くのアイテムをテストできた。その結果、とても良いセッティングを見つけることができた」と彼は喜んでいた。そして、「カーリンはそろそろインディーカーで活躍する頃だよ。それができるチーム。実力高さはヨーロッパで証明済み。このオフの間のエンジニアたちが頑張ってセッティングのレヴェルが上がったようだし、是非ともこのマシンに乗ってセント・ピーターズバーグの開幕戦に出場したい」と彼は目を輝かせていた。
カーリンはサーキット・オブ・ジ・アメリカスでの合同テストではナサールと共にセルジオ・セッテ・カマラも走らせ、今回のテストでもラルフ・ボシュングを走らせる話があった。実際に走ることはなかったが……。ナサールが呼び出されたのは、ボシュングを走らせる予定が、何かの理由で急にそうできなくなった……などの理由が考えられる。もう開幕戦までテストの計画はない。カーリンのカー・ナンバー31に登録されるドライバーは、今の状況ではナサールになると見るのが自然だ。チルトンだけの1カー・エントリーになる可能性もゼロではないが……。
ルーキー奮闘、ECRのヴィーケイが3番手に!
3番時計はエド・カーペンター・レーシングからエントリーするルーキーのリナス・ヴィーケイ。タイムは52秒2078と、カーリンの2台に迫るものだった。チームメイトのコナー・デイリーは52秒4556のベストで7番手だった。
デイリーはカー・ナンバー20のストリート/ロードコース要員。カーリンのチルトンはストリート/ロードコースとインディー500のみの出場。そこで、チルトンのカー・ナンバー59にインディー以外のオーバルではデイリーを乗せる……というアイディアはどうだろうか?
両方ともシボレー・エンジン使用チームでもあるし。
チーム・ペンスキーは昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデンによる52秒2550がトップ。シモン・パジェノーは6番手、ウィル・パワーは8番手と目立たなかった。5番手はアロウ・マクラーレンSPのパト・オーワード=52秒3076だった。
ホンダ陣営唯一の参加となったレイホール・レターマン・ラニガンレーシング
レイホール10番手、佐藤琢磨は12番手のタイムにとどまる
シボレー・チームばかりの中、唯一ホンダ・チームで今日のテストに参加したのがレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。佐藤琢磨とグレアム・レイホールの二人が走った。ベスト・ラップはレイホールが52秒7867で10番手、琢磨は53秒2469で12番手だった。
長い1日を終えた琢磨は、「用意して来たいろいろな項目を試すことはできました。しかし、それによってラップ・タイムが上がって来なかった点が気になりますね。他のチームと同じ時間帯でフレッシュ・タイヤを入れたのだけれど、自分たちは好タイムが出せなかった。自分たちのマシンは純粋にスピードが足りてないです。それでも、サーキット・オブ・ジ・アメリカスでの合同テストの時と比べ、マシンの感触は大分わかりましたね。COTAではコンディションが完全にドライにはならなかったし、エアロ・スクリーンを装着して初めての走行だったこともあって、いろいろやることがありました。今日は完全にドライのコンディションで走り続けることができて、自分たちのやりたいと思っていたことのうちの7割ぐらいはできたかな?
それを今度はスピード、パフォーマンスに繋げて行かなければならない。開幕戦まで1週間、どれぐらいキッチリとデータを解析できるかってことですね。今回のテストでは2019年のタイヤを2セット、2020年用のタイヤを3セット使い、両者に大きな違いがありました。バランスもフィーリングも違ってました。グリップは2020年用タイヤの方が全体的に上がっているので、それがセッティング、ラップ・タイムなどに及ぼした影響は大きかったと思います。今回のテストで良かったセッティングがそのままセント・ピーターズバーグの開幕戦に投入するってことはできません。ストリート・コースのセント・ピーターズバーグでは今回ほど路面のグリップが上がって行くはずはないし。今回良かったものがセント・ピーターズバーグで必ずしも良いとは限りません。今回悪かったものがセント・ピーターズバーグでは良いということもあります。今日のテストが良くなかったことで悲観的になる必要はないんです。ただ、同条件の中で他のチームがタイムを削ることができた中で、僕らはちょっと苦しんだので、そこはやっぱり気になりますよね」と話した。
COTAでテストをこなせなかった影響に直面する佐藤琢磨
COTAでの合同テストで今シーズン向けのベースになるセッティング・アイテムを幾つも試す計画だった琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。それが悪天候のために、2日間走り込むつもりが半日の走行に終わってしまったことで、予定が大きく狂ってしまっている。1日半のテストで開幕戦を迎える……と言っても良い状況だ。「準備不足で開幕を迎えるのは、どのチームも同じだと思います。厳しい状況です。でも、こればっかりはしょうがない。セント・ピーターズバーグは嫌いなコースじゃないし、これまでにも良い走りをすることができているので、楽しみにしています。不安もあるけれどね」と琢磨。明日インディアナポリスに戻るという彼は、これから1週間、チームのエンジニアたちと開幕に向けて議論を重ねることになる。
(*記事内のラップ・タイムは非公式)
以上
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