エアロ・スクリーン、順調にテスト中
NTTインディーカー・シリーズは、2020年シーズンに全レースで装着義務付けとなる”エアロ・スクリーン”のテストを行っている。どのコースでも走るのはホンダ、シボレーから1チームずつだ。
最初がインディアナポリス・モーター・スピードウェイ=スーパースピードウェイ(全長2.5マイル)で、10月2日。走ったのはチーム・ペンスキーのウィル・パワーとチップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソンだった。暑い1日だったが、コクピットを強制空冷するダクトも装備され、ドライバーたちは問題がなかったことをレポートしている。真夏のストリート・コースでイエローが出た時とかは、スピードも遅く暑いだろうが……。
2番目のテストは10月7日、バーバー・モータースポーツ・パーク=常設ロードコースで行なわれ、この時にはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)とシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が走行。偶然だが雨も降り、ウェット走行でもスクリーンが問題にならないことが確認された。
3番目のテストは、2020年シーズンにカレンダー復活を果たすリッチモンド・レースウェイ=ショート・オーバル(全長0.75マイル)で、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)とディクソンが10月15日に走行を重ねた。
テストはさらに続く。11月5日、今度はセブリング・インターナショナル・レースウェイがその舞台になる。常設ロードコースの一部を使うが、バンピーなコースでストリートを想定してのテストとなる。こちらのテストを担当するのはセバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)とジェイムズ・ヒンチクリフ(アロウ・マクラーレン・SP)だ。これでインディーカー・シリーズがレースを開催する4パターンのコース=スーパースピードウェイ、ショート・オーバル、常設ロードコース、ストリート・コースでテストが行なわれたことになる。ウィンドウ・スクリーンはクリスマス休暇前までに全チームにデリバリーがなされる予定だ。
ペンスキー、現行トリオで5シーズン目に
次に、2019年シーズンから2020年シーズンへのインディーカー・シリーズ出場チームの参戦体制などについて。
ジョセフ・ニューガーデンをチャンピオンの座に着けたチーム・ペンスキーは、2019年と同じドライバー・ライン・アップで2020年シーズンを戦う。現トリオは来年で4年目だが、その4シーズンで3回チャンピオンになっており、順風満帆と見えるが、問題がないわけでもない。2度目のタイトルを獲得したニューガーデンに対し、二人の先輩チームメイトはいずれも一度しかチャンピオンになっていない。本来ならリーダーであるべきなのはウィル・パワーだが、これまでずっとチーム・ペンスキーは彼をそのように待遇して来なかった。そして、2019年シーズンを振り返ると、パワーにはもう以前のような迫力がなかった。スピードへの執着心、勝利に対する貪欲さが失われているように映っていた。2020年は彼の今後のキャリアを左右する重要なシーズンになるだろう。シモン・パジェノーもインディー500優勝はもちろん見事だったが、他のコースでの存在感は、2016年のタイトル獲得時と比べても、まだまだ弱い。
チップ・ガナッシは3台体制、AAは5台体制
強豪チームがさらに大型化へ
チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)がたった1年で2カー体制を脱出、3カーに拡大するのは喜ばしいニュースだ。元F1ドライバーで、インディーカーも1シーズン経験したマーカス・エリクソンと人選も非常に手堅い。今回の体制変更は戦力補強で、チームの経営を安定させるための台数増ではないということがわかる。エリクソンを働くエンジニアには、このところずっとデイル・コイン・レーシングで働いて来ていたマイケル・キャノンが起用される。
ペンスキーは3台体制を保ち続け、4カーでやって来ているアンドレッティ・オートスポート(AA)が2020年には5カーへとさらに1台増やす。トップ3チームが3台以上の体制で実戦データを収集し、レースウィーク・エンドの現場でも豊富なデータを使ってマシンを仕上げて行くのだから、中堅、新興チームが2台、もしくは1台だけを走らせて対抗して行くのは難しい。上位チームと下位チームの差が広がって行き、競争のレベルが下がってしまうのが心配だ。
AA移籍で注目されるハータの2020シーズン
AAは上記の通りにコルトン・ハータを迎えての5台体制で2020年シーズンを戦う。2019年には本家のAAより速いことの多かったハータだが、大所帯の一員となって、2019年と同じか、それ以上のパフォーマンスを見せることはできるだろうか?
チーム・リーダーは大ベテランのライアン・ハンター-レイが引続き務めることになるだろう。2019年に1勝もできなかった彼のモーティヴェイションは非常に高い。また、2年続けてチャンピオンになり損ねた、2019年のAAでのナンバー・ワン・ドライバー=アレクサンダー・ロッシも初タイトル奪取に燃えている。ザック・ヴィーチはルーキー・イヤーに見せた輝きが2年目の2019年には失われていたので、2020年には優勝争いへと絡んで行ける走りを実現しようと意気込んでいる。19歳のハータ二世を純粋なチームメイトとして受け入れる2020年、先輩ドライバーたちには大きなプレッシャーがかかっている来る。その点で最も心配されるのが、8シーズン勝利のないマルコ・アンドレッティ。2020年も成績が振るわない場合は、引退するか、スポーツカーなどへの転向など、自らのキャリアについて決断を下すべきだろう。
レイホールとデイル・コインは2020も同一ドライバー継続
AJフォイトもカナーン残留!
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング、デイル・コイン・レーシング(DCR)は、2019年と同一ライン・アップで2020年に臨む。AJ・フォイト・エンタープライゼスはトニー・カナーンを来年も起用=3シーズン目。チームは2カー体制を維持する計画だが、資金面の目処は立っているのか……。マテウス・レイストが残留するのかもわかっていない。同じく不明なのは、カーリン、フンコス・レーシング、ドラゴンスピードの動向。
エド・カーペンター・レーシングは、2019年のインディー・ライツでタイトルを争いシリーズ2位となったオランダ人ドライバー=ライナス・ヴィーケイを20号車のロードコース要員として起用するとの噂あり。ただし、多額の資金を持ち込むヴィーケイはオーバルも含めたフル・シーズンに出場したい意向。そこで期待されるのが、オーナー兼ドライバー=エド・カーペンターのオーバル出場は継続のまま、スペンサー・ピゴット(21号車)とヴィーケイの2人をフル・シーズンでエントリーさせる……という結論になることだが、どうなるか。
注目のマクラーレンにオーワード加入か?
ヒンチクリフも2年契約2年目で残留濃厚
パトリシオ・オーワードがアロー・マクラーレンSPからインディーカーへ、という噂がある。オーワードのアメリカン・レーシング復帰は歓迎だが、マクラーレンはどこまでのチーム体制を開幕までに用意できるのか?
ヒンチクリフはチームとの契約が残っているということで、2020年はシボレー・エンジンで走ることになる可能性が高まって来た。彼を受け入れるホンダ・チームがないのだ。経験豊富なヒンチと、若いオーワードというコンビは悪くない。そこにインディー500ではフェルナンド・アロンソが加わる。マクラーレンがイニシアティヴを握るチームは、果たしてどこまでの戦闘力をシーズン開幕時に整えることができるのか。将来有望なオーワードだが、2019年に続いて難しいシーズンを過ごすことになるかもしれない。
マイケル・シャンク・レーシングは、アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツと技術的提携を2019年シーズンは結んでいたが、IMSA
GTDでのアキュラNSXでの活動など、ホンダとの結びつきの強い彼らは、2020年もインディーカー・シリーズに出場するのであれば、シボレー陣営に移ったASPMとの関係は解消することになる。そして、ASPMに替わる提携チームを見つけられない場合(可能性があるのはRLLかDCR)、新興チームで1カー体制という彼らのようなチームが好成績を記録するのは非常に難しいだろう。
以上
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