二挺拳銃をぶっ放し、吠えるニューガーデン。ピット・シークエンスを変えるペンスキーのレース戦略の勝利だった Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 |
チーム・ペンスキーが見事な作戦でジョセフ・ニューガーデンを優勝させた。しかし、なぜ、あのタイミングで同じ作戦を採ったチームは、マーカス・エリクソン(アロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)とセバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)しかいなかったのか……。
序盤、集団の中でのマシンはあまりよくなく、苦戦を強いられていたことが早めのピットインにつながった Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
ニューガーデンのピットでコールをしているチーム・ペンスキーのプレジデント=ティム・シンドリックは、自分が担当しているドライヴァーを勝たせることよりも、チームが走らせる3台のうちの1台で勝とうとする作戦を採ることが多い。今回も結局はそれ。ウィル・パワーが勝負の権利に程遠いスピードしかなく、シモン・パジェノーとニューガーデンもトップ5でのフィニッシュさえ怪しいパフォーマンスしか見せることができていなかったから、イエロー中の137周目、ニューガーデンをピットに呼び入れた。
燃費の心配がなくなり、タイヤも新しくできたニューガーデンはハイ・ペースで走っと。ライヴァル勢は燃費セーブもしなければならず、ペースを上げ切れない時間帯が長くなっていた。最後のピット・ストップにもニューガーデンはトップ・グループの中で最も遅く入れたため、タイヤの一番フレッシュな状態で終盤のバトルを戦うことができた。まさに、良い事尽くめ。
彼と同じ作戦を採ったエリクソンとブルデイには同じだけのスピードがなかった。ニューガーデンは作戦で手に入れた優位を最後まで守り通した。それは見事な作戦勝ちと評価すべきなのだろう。ゴール間際、ロッシは何度も真横まで並びかけたが、とうとう攻略はできなかった。ニューガーデンにはそうできるだけのスピードもあったのだ。
ロッシ、ニューガーデン攻略ならず、またも2位に
ディクソンとハータのターン1進入でのクラッシュを間一髪で回避したロッシは、その後ニューガーデンをあと一歩まで追い詰めるが、抜き切ることができずまたもランナー・アップに Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
ニューガーデンのドライビングは果たしてフェアだったか?
229周目のリスタート時、ターン1進入でニューガーデンと接触したディクソンは、その後、同じターン1進入で員を差してきたハータと接触してクラッシュ Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
「ボトムにマシンをキープしようと全力で頑張った。リスタートでトップを走るのは大きな不利。あの時にディクソンに完全に前に出られていたら、ゲーム・オーバー。こちらの負けだった。しかし、彼は僕をクリアすることができなかった」と自分の正当性を主張していたが、”抜かれたら終わり”とハッキリわかっていたからこそ、彼は相手を路面の汚れているアウトへ……という計算づくの行動に出たのでは? そういう接触だったように見えた。
リスタート時のブレーキチェックにも疑問の声が
ニューガーデンには似た状況での前例がある。インディカー・チャンピオンになった2017年、ゲイトウェイのショート・オーヴァルでタイトルを争っていたチームメイトのパジェノーを弾き飛ばした。そうして得た勝利がタイトルに繋がったと言ってもいいものだった。多少の接触は厭わない。それはオーヴァルでも変わらない。そういうのもレースの一部だから……という考え方の持ち主なのだ。
最後のリスタートに関しても不満が聞かれた。「間違いないよ。レースリーダーのブレーキ・チェックはえげつなかった。リスタート・ゾーンに入ってからもブレーキ・チェックはまだ行われていた。あれは注意がされるべき。加速してブレーキ、加速してブレーキを繰り返して。アレは馬鹿げていた」と3位でゴールしたグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)もニューガーデンを強い調子で批判していた。
序盤快走したチームメイト佐藤琢磨に比べて、中団で苦戦していたレイホールだったが、粘りの走りで3位フィニッシュ Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
佐藤琢磨、レース序盤を完全に支配したが
最初のピット・インで痛恨のミス
周回遅れのカーペンターを追い詰めるファーストスティントの佐藤琢磨 Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
フェルッチが自己最上位の4位に
ハンター-レイ、90周トップを走るも5位に
ルーキーのサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)がキャリア・ベストとなる4位でのゴールを今回果たした。ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はレース序盤から90周トップを走ったが、スピード追求での4ストップ作戦は今回は正解ではなく、終盤のイエローでタイヤを新品に替えて狙った大逆転も叶わず、5位でのゴールとなった。
以上
今回のピットミスは琢磨選手にとっても痛いレースでした。本当に残念でなりません。
返信削除これまで好調だったのが今回のミスで下降線にならなければいいのですが…………。
ただチームにとっては、グラハム君が久々の表彰台が唯一の救いでしたね。
次戦ロードアメリカでの琢磨選手の巻き返しを期待してます。
S-MATさん、コメントありがとうございます。
返信削除一瞬、ピットを見落としてしまったという原因は、いろいろ考えられますが、次のナイトオーバルのアイオワでは、ピット側のサイン(ピット位置を示す棒)などが改良されているかもしれません。ドライバー側のミスは通り過ぎちゃうのを嫌って、
止まれない距離で止まろうとしたこと。今回は悪い連鎖が起こってしまいましたが、マシンセットアップはチーム全体として向上してきているので、ミッド-オハイオでの巻き返しを期待したいところです。