ポディウムで観客に応える佐藤琢磨。手ごたえある3位だ Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大 |
予選9番手から3位でフィニッシュ。価値あるポイントを獲得した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。どんなレースを戦っていたのか、彼の言葉で振り返る。
スタート前に早くも1ポジション・アップ!
さらに1周目開始直後に7位に浮上
スタート前のフォーメイション・ラップでザック・ヴィーチ(アンドレッティ・オートスポート)がスピン! それを避けた琢磨は難なく8位に上がった。
「あれはラッキーだったね」。
そしてグリーン・フラッグ。すぐさまルーキーのパト・オーワード(カーリン)の前に出る。ところが、直後のターン2で琢磨のマシンがスライド! 真横を向きかけた。
「ハンドルが一回転しちゃったよ。でも、ぶつかってないよ。レース後にみんなにそれを聞かれたけど、彼を抜いて、あのコーナーのちょっと盛り上がったところを越えてパッとミラーを見たら、彼は後ろにいたので…………。ぶつかってたら彼は壁に行っちゃってたでしょ」
琢磨のマシンがまっすぐターン3方向に向けたのは、オーワードにぶつかったおかげでのラッキーではなかった。
「こっちは何も感じなかった。でも、ぶつかってたら、ゴメン」。
1周目が始まった直後に琢磨の順位はすでに7番手に上がっていた。
「今日ずっとドライだったら僕らはノー・チャンス
せっかくいただいたお恵み、もう行くしかない」
予選でトライしたマシン・セッティングはチームメイトのグレアム・レイホールが仕上げたもの。自分たちはプラクティスでミスがあり、ほとんどマシンを仕上げることがほとんどできなかったためだ。予選を戦って、自分たちが厳しい立場に置かれたことを確認。得意な雨を琢磨は期待していた。
ウェット・コンディションはマシンの性能差を小さくする。あとはドライバーがどれだけ経験を活かし、勇気を持って走れるか。時にはリスクにチャレンジすることも必要になる。
ウェット・スタートに臨むにあたり、琢磨はどんな意気込みだったのか?
「もう行くしかないでしょ。だって、せっかく頂いたお恵み(雨)なので。今日、もしずっとドライ・コンディションだったら、僕らはノー・チャンスだったよね。終盤、1ラップで1秒も離されちゃってたでしょ?
だから、序盤のウェット・コンディションで戦った、レースのあのパートはとても楽しかった」
路面はどんどん乾いて行き、そのラインで走る相手をパスするには、自らは濡れたサーフェイスへと飛び出さなければならない。リスクkは大きい。しかし、琢磨は何度もそういうトライをし、パスを実現した。
ハンター-レイをウエットでもドライでもパス!
「リスタートはいつもチャンスだから、ウェットでもドライでも。今日はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)をウェットでもドライでも両方抜いたんだよね? でも、彼はレース後に握手しに来てくれた。ウェットでもレースが膠着状態に入っちゃうと、抜くのは本当に難しくなる。よっぽど速いペースを持っていないと。今日だとウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がそうだったよね。彼に僕は抜かれちゃった」。
ウェット・コンディションで進んでいたレース序盤、最も速かったのは、おそらく12位スタートだったパワーだ。琢磨を抜いた走りは、少々アグレッジヴに過ぎ、琢磨の左サイドは芝生にまで乗っていたが……。
「あれはちょっとね……。ウィルだったら、もう15センチ内側にいて欲しかったけど、しょうがない。彼に悪気はなかったはずだし、止まれなかったんだと思う」。
ニューガーデン、ウエットでトップ2に離されたが故の
奇跡的タイミングでピット・インしたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がトップに立ち、その1周前にピットしていたハンター-レイも一気に4番手までジャンプ・アップ。彼らのように早めのタイヤ交換というリスクを後ろ半分の順位のチームが少なかったことが幸いし、琢磨はピットしても6位をキープできた。しかも、パワーは左フロント・ホイールがしっかり装着されないままピット・アウト。勝てるチャンスも大きくあったレースだったというのに三輪でコースを1周したために最後尾近くまで順位を下げた。
ニューガーデンのあのピット・タイミングは、、経験豊富なチーム・ペンスキー社長のティム・シンドリックによる計算されたギャンブル。大成功で彼はヒーローとなったが、大きな幸運に恵まれた結果でもあった。ウェットでトップ2に大きく引き離されていた彼は、スリックに交換するタイミングの早さでアドヴァンテージを得たかった。彼のすぐ後ろまで上がって来たチームメイトのパワーに抜かれるのも時間の問題だった。そのような状況になると、シンドリックのコールには”社長”としての立場も絡んで来る。”レースをリードしている強敵2人=アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)とスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)を追うのはパワーに任せ、ニューガーデンには違う作戦でチャンスを見出させよう”というのが彼の思考パターンのはずだ。今回はその結果としてニューガーデンが勝つことになったが、失敗に終わる作戦を背負わされる時もある。
ローゼンクヴィストにインディーカーの洗礼をお見舞い
最後のリスタートでローゼンクヴィストをパスし、佐藤琢磨はニューガーデン、ロッシに迫る Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大 |
ディクソンがクラッシュして出たフルコース・コーションの後、琢磨はハンター-レイをパスして4番手に上がり、ローゼンクヴィストを仕留めてついにトップ3入りを果たした。あのターン3のパスもスリリングだった。琢磨のマシンは内側の縁石に半分乗り上げており、ステアリングを反対に切りながらマシンをコントロールし、接触することなく前に出て見せた。
「アレはちょっと強引だったかな? でも、アレは洗礼だね、インディカーの。僕的にハイライトだったのは、やっぱりリスタートでハンター-レイをターン1で抜いたのでしたね。ライアンは僕が壁に突き刺さると思ったらしいから。レース後、”よくアレで行ったな”って話してたから。自分のホイールもロックしてたし、確かにギリギリでリスキーなマニューヴァーだった。でもアレはライアンが相手だからできた。やっぱり、あの状態の時に押し出して来るドライバーはいるから。昔のハンター-レイだったらわからないけど、今の彼なら大丈夫だと思った」。
トップ2には引き離されたが、琢磨はレース終盤のリスタートからの11周、ローゼンクヴィストのアタックを跳ね除け続けた。ヴェテランならではの走りでルーキーの逆転を許さなかった。
「確かに、あのポジションを守り通すのは大変でしたね。みんな、僕の後ろに数珠繋ぎで、レース・スクール、SRS-Fになっちゃってた。自分のペースが、路面がドライになってからは足りていなかった。プッシュ・トゥ・パスを誰よりも多く残してたので、小出しにして使ってた。あとはポイントを押さえて、抜かれそうなコーナーの前は確実なダッシュで、その前のコーナーで絶対にミスをしないようにっていう走り方でした。多少ラップ・タイムが、0.5秒とか犠牲にしても、絶対に抜かれない走りっていうのはあるので。それによって、後ろにがみんな詰まっちゃったんだと思う」。
奇しくも再びロッシとの2-3位争いに
「今日もポール・シッターは速かった」
Photo:INDYCAR (James Black) クリックして拡大 |
「もちろん狙ってましたよ。やっつけたかったよ。もうちょっとだった、今日は……。いや、今日もか。ポール・シッターは全然速かった。あっという間に消えちゃった」。
琢磨はデトロイトでも冷静にレースを戦い切り、2戦連続の3位にフィニッシュを達成した。ポイントを確実に稼ぐレースを続けて披露して来れているということだ。チームの士気を向上させるパフォーマンスだ。
ウィナーこそ違うペンスキー・ドライバーとなったが、先週のインディ500と偶然にも同じ2人、ロッシと琢磨が2、3位でゴールした。そして、どちらのレースでも、琢磨はロッシに近づき、アタックを仕掛ける一歩手前まで行った。ポイント3番手でデトロイト入りした琢磨は、3位フィニッシュをしたが、ニューガーデンが優勝してトップまで一気に浮上したためにランキングがひとつ下がって4番手になった。ロッシはポイント2番手をキープした。今シーズンの後半戦、シリーズ・ポイントを争う間柄ともなってい琢磨とロッシは、コース上でのポジションを巡ってドッグ・ファイトを見せるレースもあるだろう。
以上
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