Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
今日のレッドは今年製造の未知のタイヤ
Jack Amano(以下ーー)::今日はファイナルでもブラックで走行と、かなり多くのラップをこなした予選3セッションになっていましたね?
佐藤琢磨:そうなんですよ。昨日トライしたレッド・タイヤは昨年作られたもので、今日から使うのものは今年作られたものということで、今日、レッドでどれだけ行けるかがわかっていなかったんですよ。今年のレッドのゴムの硬度を調べると、今年のの方がずっと柔らかかった。だから、ラップ・タイムは今年のレッドの方が絶対に良いだろう、という前提で予選に臨みました。ただ、昨日のことがあったんで、ユーズドのレッドって2回目の使用だとグリップが落ちるでしょう? だから、そういう状況ではブラック・タイヤのニューの方がいいのかな? とも考えていて、Q3まで行けたら、そっちで行こうって話していました。それで無事にQ3に進めたので、ブラックで行ったんです。ただ、Q2でユーズド・レッド、フレッシュ・レッドで走ってみて、ユーズド・レッドが結構パフォーマンスが良かったので、もしかしたらユーズド・レッドの方が良いのかも……とも思った。でも万が一のことを考えてブラックのニューで行った。そうしたら、もうズルッズルッで全然グリップしなかった。タイヤが硬いと感じた。あの時はちょっと焦ったけれど、最後にまだ使えるユーズド・レッドが1セット残してあったので、そっちで行きました。
――ギリギリのタイミングで決断して……というファイナルだったんですね?
佐藤琢磨:そうでした。最初にユーズド・レッドで行って、次にブラックで連続アタックしようとも話してたんだけど、このQ3ってセッション中の燃料の再給油が認められていないんですよ。そうなると、最初にレッドを使っちゃうと、アウト・イン・ラップ入れて4周とかをレッドで、マシンが重い状態で走らなきゃならない。だから僕がそれを変えてもらって、最初にブラックで行って、最後の最後にもしレッドを使うのなら、使えばいいかなって考えでした。そういう意味では作戦通りに行って良かったかな? と思います。
ファスト6は本当はセオリー通りでもよかった
――作戦は2パターンを用意していて、もう残り2分でコース・インしての逆転だった、と。
佐藤琢磨:あの時、グレアム(・レイホール)がP1だった。彼も急に調子を上げて来ていて、こっちとしては結構キツイなって思ってた。あそこまで行けるかはわからなかった。でも、とりあえずチャレンジしました。
――今日の琢磨選手はブラックよりレッドで確実に速く走れていて、最後はユーズドのレッドでも速く走れていた。Q1はブラックで走ってレッドへ。Q2はユーズド・レッドで走り出して、フレッシュ・レッドへとスイッチ。Q3はブラックで走ってから最後にレッド……と、このタイヤ・マネジメントをうまく機能させていましたね?
佐藤琢磨:本当はグレアムたちがやったみたいな方がセオリー通りで良かったと思います。ドライヴァーも勘違いをしないで済むし、自信も付く。僕らはQ3はブラックで行こうって先に考えちゃってたので、そうして、実際にはQ3の前半は危ない状況だったんですけど、逆に色々と経験ができて、明日に向けて非常に良いデータが取れました。
昨日、マシンが悪かったポイントは分かっていた
コンディションも味方してくれたと思います
――Q3でのブラックでのラップタイムも良かった。
佐藤琢磨:P4だったからね。ただ、クルマは本当にドライヴィングが難しいもので、コクピット内は忙しくて、いつスピン・アウトするかわからないぐらいだった。それがレッドでは治ってましたけどね。
――今年、みんなステアリング操作が去年までより忙しいように見えていますが?
佐藤琢磨:なんだろうね? 冬の間に路面にダメージがあったのかわからないんだけど、サーフェイスのグリップ感がなくなっていますね。去年よりすごくラップ・タイムも遅い。タイヤはどんどん柔らかい方向に行ってるはずなのにラップ・タイムが遅いのは、サーキットの路面そのものが劣化して来ているってことなんじゃないですかね?
それによって、かなり滑り易い。だから、いつも以上にイエロー、レッドが多くなっている。
――昨日はセッティングが悪い方向に向かってたと思うんですが、今日、修正できたのは嬉しいですね?
佐藤琢磨:そうですね。ただ、昨日悪かったポイントっていうのはわかっていたので。それはもちろん、どうやって悪いポイントを直すのかっていうのは、いつも難しいんだけれども、今回は手放しで分からなってて……という状況ではなかった。そこでエンジニアたちがすごく頑張ってくれましたね。あと、今日のコンディションも僕らに味方をしてくれていたと思います。いつもだったら、初日がダメでもペンスキー勢はレースまでにまとめて来る。今日はウィル・パワーがQ2まではトップ4、5に入ってたけど、最後はダメになっちゃっていた。なんだろう、今日は多少そういうところがあったと思う。クルマというかチームの傾向に合っていたか、合っていなかったか、みたいのが。今日だと僕らレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとシュミット・ピーターソン・モータースポーツが凄くパフォーマンスが上がったけど、アンドレッティ・オートスポートとペンスキーのは落ちていた。ガナッシはある意味で常におしなべて常に好いところにいる。もしかしたら、そういう勢力図があって、今回はたまたまラッキーでこうなったのかもしれないけど、ただ、昨日から大きくコンディションが変わっていないんですよ。だから、ヒンチクリフは昨日も今日も速やかったじゃない?
その中で僕らは何とかまとめ上げられた。それは嬉しいですし、チーム全体としての達成感も凄くある。みんな、本当に頑張ってくれましたねよね。
グレアムとはクルマの骨になる部分は非常に似てるけど
カタいクルマかやわらかい車かという部分では真逆の傾向にある
――今週、特に2カー体制がうまく行ってるなって感じるところ、ありますか?
佐藤琢磨:グレアムが記者会見でちょと話してたと思うんですけど、僕らのセッティングって今、結構違うんですよ。クルマの骨となる基本のセッティングは非常に似たようなところにいるんですけど、何て言ったらいいのかな? 例えば硬い傾向のクルマとか柔らかい傾向のクルマっていう話をすると、2人は今は真逆の方向に行っていて、それがチームにとっても新しい発見で、わざわざ二つにセッティングを分けて今回は2台のマシンを持ち込んだんですけど、二人とも良いポイントも悪いポイントも一緒だったんです。それは何でだろう? って話になって、さらに解析を進めて行って、今日は二人とも予選のスピードっていう意味ではうまくセッティングができていたんだけれども、明日に向けては、もしかしたらコンディションが大きく変わる場合もあって、片方のマシンがすごく良くなってっていう可能性もあります。非常におもしろい。
――ロング・ランで差が出たり……ということですか?
佐藤琢磨:そうそう。ま、でも二人ともフィロソフィの良い部分ていうのはお互いに取り入れているんで、そこはシェアできているので、良いと思います。
――いよいよボビー・レイホールの目指す強い2カー体制ができつつある?
佐藤琢磨:まぁ、これだけで終わらないようにもちろんしたいですね。力強いレースを見せたいです。まずは明日、ウォーム・アップがまだあるので、そこで良いクルマ作りをしたいと思います。そして、今週の後にはストリート・コース、次にインディーのロードコースがあって、またインディー500が始まります。良いクルマ作りをずっとして行きたいですね。
ロードは何年間もうまくいってなかったので
今回パフォーマンスが上がって自分たちも相当興奮してました
――第2戦サーキット・オブ・ジ・アメリカスまでの感じだと、次のバーバーでポール・ポジションが獲得できるとは……?
佐藤琢磨:そう。誰も思ってなかった。僕もそんな風なことは思ってなかった。ただ、昨日、今日とプラクティスを走ってみて、そこそこコンペティティヴだった。トップ10、トップ8、それで今日のプラクティス3が終わった時点でトップ5に入ってたので、これならファイアストン・ファスト6を狙いたいなっていう気持ちはありましたよね。いつも気持ちはあるんだけど、できるとは限らないし、まぁ、2010年にインディーカー来て、最初の年はほとんどのロードコース、9割、8割ぐらいは予選でトップ6に入ってたんだけど、ポール・ポジションまでは届かなかった。ロードコースはこの何年間もずっとうまく行かないのが続いてて、ストリートはいいんだけれどロードコースは駄目だった。それが今回、ロードでパフォーマンスが上がって来ていたので、自分たちも相当興奮してましたね。だから、Q3では絶対にミスをしないようにってことと、あと、攻めないとポール獲れないから、そこら辺で今日は非常に疲れましたね。
――KVレーシング・テクノロジーで走った最初のバーバー、非常に良かった。あれから10年かかるとは思いませんでしたね。
佐藤琢磨:まぁね。ちょっと長かったですけど、それだけコンペティティヴなシリーズなんですよ、インディーカーは。まぁ、ポールが獲れれ良かった、良かった。スピードは衰えていない!
ってことで。
決勝は二人でキッチリと後ろを守って
そこからペースを安定させていきたい
――久しぶりに後ろの方からじゃなく、前からのレース・スタートになりますが?
佐藤琢磨:うまくできないだろうね、だから(笑)。どうしていいのかわからない。まぁ、少なくともフロント・ロウを同じチームメイトで獲ったっていうのは凄く大きい。グレアムはアグレッシヴだから、最初から来るだろうけど、でもバカなことはしないじゃない。だから二人でキッチリと後ろを守って、二人で先ずはパッといい感覚を開けて、それからペースを安定させたいなって思ってますね。二人のどっちが前に出るかわからない。このコースは最初が左、右のコーナーだから。フロント・ロウの左右はあんまり関係ないって言うか……。ポール・シッターは最初のスタートでの加速を始めるタイミングで権利を持ってるんだけど、ひとつめのコーナーに入っちゃったら、もう左、右とスイッチ・バックするので、ヘアピンまでで先に出られた方がリードできると思う。そこら辺はボビーも明日、言いに来ると思うよ、さすがに。絶対に当たるなよって。明日、ウォーム・アップがあるから、そこでコケないようにクルマ作りをしたいですね。
――エンジニアリングの強化が実りつつありますね。
佐藤琢磨:実ってますよ、もう、完全に。アレン・マクドナルドの加入は大きいね。今日の骨になったのは彼のセッティングだから。それで僕の方がPP獲っちゃったけど(マクドナルドはグレアム担当エンジニア)。
――彼の置き土産で今日、スペンサー・ピゴットは速かったのかな? その前に彼はシュミット・ピーターソン・モータースポーツにいたから。ヒンチクリフたちの速さもそこに?
佐藤琢磨:そうでしょうね。
――では、明日のレース、頑張ってください。期待しています!
以上
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