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IMSAが創立59周年を迎える2019年シーズンの開幕戦、デイトナ24時間レースがフロリダ州デイトナ・ビーチで開催され、ウェイン・テイラー・レーシング(WTR)のコニカ・ミノルタ/キャディラックDPi-V.Rが優勝した。
予選で活躍したのはマツダ・ヨースト・レーシングと、アキュラ・チーム・ペンスキー。PJ・ジョーンズ(AARトヨタ/イーグル・マークIII)のレコードを26年ぶりに塗り替えたのは、オリヴァー・ジャーヴィスの乗ったマツダRT24-Pだった。2、3位がアキュラARX-05。4位がまたマツダと日本ブランドがトップ4を占めた。マツダは一昨年途中からスポーツカー最強チームと言っていいドイツのヨーストと、アキュラはアメリカの伝説的レーシング・チームのペンスキーとタッグを組んでIMSA DPiにチャレンジしている。
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小林可夢偉が4スティント連続走行で首位キープ
しかし、「24時間の耐久レースで予選の重要性は低い」とでも言うように、予選6位だったWTRキャディラックがレースを制した。スタートは午後2時半だったが、それか葯3時間後、2番目のドライバーとしてマシンに乗り込んだアロンソが前を行くDPi群を1台ずつクリア。最後はエリオ・カストロネヴェスの乗るアキュラをバトルの末に下し、彼をパスしてトップに躍り出た。
アロンソからマシンを引き受けたのは小林可夢偉。ピット・タイミングの違いでキャディラックの31号車をトップに出すこともあったが、4スティントを連続して走った彼はトップの座を守ってレンガー・ヴァン・ダー・ザンデにマシンを渡した。
キッチリと与えられた仕事をこなした可夢偉
「マシンが良いとわかったし、落ち着いて走れていた」
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「プッシュするのはゴール前4時間を切ってから」と、彼らのスタート・ドライバーを務めたジョーダン・テイラーは話していた。元ドライバーの父ウェインがオーナーのチームでは、序盤からリスクを冒して走ることは強く禁じられている。縁石を利用するなどのマシンにストレスを加える走りも御法度だ。小林はWTRに耐久スペシャリスト、優勝請負人として迎えられている。合同テストでもレース・ウィークエンドのプラクティスでもチーム内で最も少ない走行時間しか与えられていなかったのが小林だったが、任せられた仕事をキッチリ遂行した。
朝6時前からの雨で長いイエロー
そして史上初の2度目のレッドフラッグでレース終了
3時間プラスアルファでトップに躍り出たWTRキャディラックは、そのままトップ争いのイニシアチブを握り続けた。彼らと戦ったのは2台のアキュラと昨年度デイトナ・ウィナーでシリーズ・チャンピオンともなったアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)。彼らは2カー・エントリーだが、1台は序盤にトラブルで大きく後退した。
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光ったアロンソ、小林のドライビング
レッド・フラッグが提示された時、WTRキャディラックはトップに立っていた。少し前に雨の中のバトルではフェリペ・ナサール(AXR)がレースリーダーだったが、彼はターン1の水に足をすくわれてその座を明け渡した。ゴールに直結するレッド・フラッグが出される僅か6分前のことだった。
とは言うものの、WTRの勝利が幸運に頼ったものだったのではない。チームのフィロソフィと準備の良さが勝利を手繰り寄せた。雇い入れた二人のプロ、アロンソ小林はプロフェッショナルに任務をこなした。
F1もWECもトヨタで走っている小林が、WTRからの要請を受けてキャディラックで走行。このチャレンジが実現したのは嬉しい。チームが彼に対して抱いた大きな期待に小林は見事に応えた。
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WTR、チームフィロソフィーの勝利
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WTRは自分たちのフィロソフィーに合ったドライバー2人を起用し、彼らにも自分たちの戦い方を徹底したことで勝利を掴んだ。一昨年にキャディラックDPiのデビュー戦だったデイトナ24時間で優勝し、シリーズ・チャンピオンにもなったWTR。ところが、兄弟ドライバーの長男はチーム・ペンスキーに移籍。ファミリー・チームは昨年、ザンデを迎え入れた新体制に変わった。そして、連覇を狙ったデイトナでは、コンチネンタル・タイヤの扱いを誤ってタイヤ・バーストを連発させた末にリタイアを喫した。その後のIMSAシリーズでも勝てなかった彼らだが、シーズンを戦う中で競争力を徐々に高め、最終戦のプティ・ル・マンで、最終ラップの大逆転劇によって唯一の勝利を記録した。
まだ24時間を勝ち抜く力がなかったアキュラ
しかし、パフォーマンスは確実に向上!
2シーズン目のデイトナで3位フィニッシュ(リッキー・テイラー/エリオ・カストロネヴェス/アレクサンダー・ロッシ)。カストロネヴェスは相変わらず走りがシャープで、DPi初登場となったロッシもヘヴィ・ウェットでの長時間走行を任せられるほど順応能力の高さを見せていた。しかし、アキュラ・チーム・ペンスキーも、アキュラARX-05というマシンも、まだ耐久のビッグ・イベントで勝つレベルにはあと一歩足りていないということのようだ。ハードウェア面で見ると、2年連続で2台のうちの1台がトラブルにより優勝のチャンスから遠ざかった。昨年は電気系、今年は潤滑系にガレージでの修理が必要なほどのトラブルがでた。そこに至るまでの走行時間は昨年よりずっと長くなっていたが……。走行面は、昨年は1台だけだったアクシデントが今年は双方に発生と悪くなっていた。どちらもダメージは小さく、走行を続けることができていたとはいえ、彼らのリスク・マネジメントがWTRほど徹底していなかったことだと思う。耐久レース復帰2シーズン目のチーム・ペンスキーは今回、ダウンフォース仕様のフロント・カウルへのスイッチというウェット・コンディションへの対応でキャディラック勢に遅れを採った。それがトップを明け渡す結果に繋がった。作戦力、現場での様々な場面への対応力は、耐久レースでの経験をさらに積み重ねることで磨きをかけるしかないのだろう。
それでも、アキュラARX-05のパフォーマンスは全体的に昨年を上回っており、耐久マシンとしての実力が向上しているのは明らかだった。新カラーリングのせいもあってか、贅肉を削ぎ落としたかのような印象を受けた。
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以上
流石のレポート。
返信削除長谷見さんの、「デイトナは、やすむところがないがらルマンの3倍の難易度」と併せて、デイトナにシンパシーを感じました。
ありがとうございます!!&お疲れさま!!