Photo:INDYCAR |
ポートランドでのダブルヘダーで今シーズンのインディー・ライツは閉幕。その1レース目でパトリシオ(パト)・オーワード=アンドレッティ・オートスポートからのエントリー=が優勝した。シーズン8勝目で獲得ポイントを460点に伸ばした彼は、初のインディー・ライツ・タイトル獲得を決めた。パトはレース#2の予選でアクシデントを起こしてグリッドは7番手だったが、おかげでスタート直後のアクシデントに巻き込まれることなく、まんまと潜り抜け、先行するベラルディ・オート・レーシングの2台を18周目までにパスしてトップに立ち、シーズン9勝目で有終の美を飾った。ちょっと出来過ぎの週末になっていたとも言えるが、2レースとも彼の相手をできるライバルはいなかったと評することもできる。
アンドレッティ・オートスポーツ
ヒルデブランド以来の3回目のインディー・ライツタイトル
メキシコ出身でまだ19歳のオーワード。インディー・ライツ参戦は実は昨年始めていた。しかし、4レースを終えたところでIMSAのプロトタイプ・チャレンジ・シリーズに専念するよう方針変更。そちらでキッチリとタイトルを獲った後、エントリーをチーム・ペルフレイから体制も歴史も実績も上のアンドレッティ・オートスポートに変更し、チームメイトのコルトン・ハータ(エントリー名はアンドレッティ・スタインブレナー・レーシング)とチャンピオン争いを繰り広げ、それに勝ってみせた。アンドレッティ・オートスポートにとっては2009年のJR・ヒルデブランド以来となる3回目のインディー・ライツ・タイトルとなった。因みに初タイトルは2008年、ラファエル・マトスによるものだった。マトス、どこ行ったぁ?
チャンピオン候補だったコルトン・ハータ
パトに完敗のシーズンに
マツダが魅力的なスカラシップ制度を提供し(今年限りらしいが)、ダラーラ製の新シャシーも導入したインディー・ライツだが、参戦経費が高騰し過ぎ、エントリーは激減した。今年のレギュラーは7台しかいない寂しさだったが、コンペティションのレベルはそこそこ高かった。オーワードが競い合ったのは、前述のハータと、サンティアゴ・ウルティア(ベラルディ・オート・レーシング)。まだ才能をフルに開花させていないが1勝したルーキーのヴィクトール・フランゾーニ(フンコス・レーシング)なんてドライバーもいる。
開幕前にチャンピオン候補の最右翼と目されていたのは昨年のインディー・ライツで2勝してランキング3位だったブライアン・ハータの息子のコルトンだった。彼を走らせるチームはアンドレッティ・オートスポートが母体だが、ニューヨーク・ヤンキースのオーナーとして有名だったビジネスマン、ジョージ・スタインブレナーの孫ジョージ・スタインブレナーIV(四世)が共同経営者となっている。しかし、ハータ二世はパトに完全に打ち負かされた。シーズン半ばに5連勝があったが、その頃すでにパトはタイトル獲得モードで無理をしてまで勝ちに行っていなかった。
レース・ストラテジーに欠けたウルティア
もう一人のタイトル・コンテンダーはウルグアイ出身のウルティア。過去2年続けてインディー・ライツでランキング2位で、「3年目こそタイトルを!」と意気込んでいたが、チームがベラルディ・オート・レーシングというのが弱点である上、彼の才能はほぼ出尽くした感がある。チームが弱体な分、ドライバーば無理をして……という状況だったとも考えられるが、レースをゴールまでのトータルで考え、いかに上位でゴールするかというストラテジーが常に欠如していた。
フンコスはフランゾーニが1勝
昨年カイル・カイザーを、2015年にスペンサー・ピゴットをチャンピオンにした新興勢力のフンコスは、今年はタイトルを狙っていなかった。2017年プロ・マツダ・チャンピオンのブラジル人=フランゾーニに経験を積ませるシーズンと考えていたからだ。そんな状況でも1勝したのは大きい。フランゾーニは資金不足で、シーズン終盤は「絶対にクラッシュはできない」というプレッシャーとも戦っていた。
パト、シーズン最多ポール・ポジションも達成
パトはシーズン中にも大きく成長し、最終的に他を圧倒するパフォーマンスと成績でチャンピオンの栄冠に手を届かせた。ポートランドでのレース#1では今季9回目のポール・ポジションを獲得し、1シーズンの最多PPレコードも樹立。これまでのレコードはブライアン・ハータ、タウンゼント・ベル、チアゴ・メデイロス、エド・ジョーンズによる8回だった。
開幕戦で優勝する先制パンチを繰り出して以来、2018年シーズンはパトがイニシアチブをほぼ握り続けた。インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースでのシーズン第5戦目からハータが5連勝して反撃したが、アイオワ、トロント、ミッド・オハイオでの5戦で今度はオーワードが3勝し、逃げの体勢を固めた。ハータの優勝は連勝となった5回のみ。ゲイトウェイでの第15戦でオーワードとは別のチームメイト、ライアン・ノーマンにレース終盤のパスを許し、勝利を逃したのもハータにとっては痛かった。
最終的にウルティアは2勝、ルーキーのフランゾーニが1勝。前述の通り、ノーマンも1勝。5人が2018年シーズンのインディー・ライツでは勝利を記録した。ハータとしては、ノーマンに負けたゲートウェイも悔しい内容だった。
気になるパト・オーワードの来シーズン
チップ・ガナッシの10号車? はたまたハーディング??
将来のスターだとアメリカの一部のメディアがちやほやしていたコルトンだが、インディー・ライツでの戦いぶりを見る限り、パトの方が器は断然大きい。インディー・ライツでの形勢がインディーカーに上がってから逆転する例も多く見て来ているが、パトにはアドリアン・フェルナンデス以上のポテンシャルが感じられる。
そのパトとすれば、アンドレッティ・オートスポート内でインディーカーへとステップ・アップするのがベストだった。今、マイケルのチームは間違いなくシリーズのトップ・レベルにある。しかし、4人のドライヴァー残留がほぼ確定しているだけに、シート獲得は難しい。父親がチームの重要メンバーであるコルトンでさえアンドレッティのシート確保は不可能というのが厳しい現状だ。
ということで、彼らを起用するチームがあるのか不安になるが、パトにはチップ・ガナッシ・レーシングの10号車も噂に上がっている。悪い話じゃないが、ポートランドではパト、コルトン揃ってハーディング・レーシングでインディーカーにデビューという噂が流れていた。実績ゼロ、体制脆弱なハーディングは正しいチョイスとは考えにくいが……。そして、この噂が本当なら、コナー・デイリーとギャビー・シャヴェスはインディーカーでの活躍の場を失う。厳しい世界だ。
以上
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