近年のスーパースピードウェイではほとんど見ることができないような圧倒的な独走でテキサスを制してディクソン。通算43勝目となるこの勝利で、インディーカー個人優勝回数ランキングで単独3位となり、チップ・ガナッシと喜びを分かち合う Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 |
テキサスの予選ではチーム・ペンスキーが強かった。エド・カーペンター・レーシングはマシン・セッティングが出し切れなかったのかエド・カーペンター=14位、スペンサー・ピゴット=18位と振るわなかったが、ジョセフ・ニューガーデン、シモン・パジェノー、ウィル・パワーの順でトップ3スウィープしたペンスキー軍団=シボレー・ユーザーたちがレースでもイニシアチブを握ると考えるのが妥当だった。
しかし、決勝で最も強かったのはチップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソン=ホンダ・ユーザーだった。周回を重ねる中でジワジワとポジションを上げて行き、一時的にだが10秒以上の差を持つまでの、近頃としては珍しいほどのぶっちぎりのレースを彼らは見せた。その裏には幾つかポイントがあった。
序盤はレースをリードしたペンスキー軍団だったが、タイヤトラブルに苦しみ、ペースが上がらなくなってしまった。予選の好調ぶりからは想像できない苦境に Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
レース序盤に十分な情報収集とタイヤトラブル対策
「マシンのハンドリングは最初から良かった。スカッフィングをヘビーに行ったタイヤで走っていたんだ」とレース後に話したディクソン。ライバル勢より多い周回数を走り、タイヤ内部をより高い温度にまで一度上げる事でタイヤのトレッド剥離を防ぐことに成功していた。そうしたタイヤを何セットも用意し、まだ暑いコンディションのうちに投入していたのだ。
このスクラビングだけでアドバンテージを得ていたわけではないだろう。ディクソンならではの熟練の走りが効果をさらに大きくしていたと考えられる。彼のマシンは暑さが残っていたレース序盤にまずまずのスピードを保ち、レース半ばに一気にスピードアップした。レース序盤はポジションアップに汲々としない、ディクソンならではの余裕ある走りで情報収集に努めていたのだ。
「スタートとかピット・アウトの後は8~10周をかけてタイヤに問題が出ないかをチェックしていた。驚いたのは、最初のスティントが考えていたより長くできたところ。燃料が空になるまで走るのは無理だと思っていた。ここでライバルたちがどれぐらいの周回数を走れるのか、タイヤの持ちはどうなのか、スティント終盤のラップ・タイムの落ち込み具合はどの程度かをチェックした」。
日が落ちて気温が下がるにつれてスピードを増すディクソン。130周目にトップに立ち、そのまま独走態勢を固めていく Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
そして、最後の決め手はタイヤ・トラブルがなかった所。
「タイヤ・トラブルはほぼなかった、と言っていいと思う。少しブリスターは出たセットがあったけど、スピードにもスティントを通した安定性にも何も影響を及ぼしていなかった。ファイアストンはいい仕事をしていると思う」とディクソンはコメントした。そんな戦いができたのは、ファイナル・プラクティスの最後の最後で大ベテランの、4度もチャンピオンになっているドライバーだからこそ気づいた点があったのだという。「僕らのマシンはとても仕上がりが良く、スティント内でペースがあまり落ちなかった。それがゴールまで続いた。テキサスでのレースは難しいんだ。プラクティスが日中で、夜とは大きくコンディションが異なるから。路面温度が下がるとグリップが高くなる。昨日のセッションの最後で、その大きな変化を感じた」とディクソン。
チームを讃えるディクソン
通算43勝で、インディーカー歴代単独3位に
ピットストップもスピーディーで、レース終盤のアンダーイエローでの上位陣一斉ピットインでも首位を譲ることはなかった Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 |
ディクソンが大きく逃げたその後方では、パジェノーとロッシが激しく2位を争った。追うロッシはたびたびパジェノーに並びかけるところまでは行くものの、パスするまでには至らず、パジェノーが2位を死守。ホンダ勢に対して一矢を報いた Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大 |
最後にディクソンは、「マイケルの勝ち星を超えたことは嬉しい。マイケル、マリオ・アンドレッティ、AJ・フォイト、そしてアンサー・ファミリー、みんな僕はとても尊敬しているから。彼らと同じ場所にディクソンという名前がリストされているのにはまだ奇妙な印象を受ける」と話した。
佐藤琢磨、粘りの走りで7位に
「予選順位を考えるともっと上位でフィニッシュしたかった」
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、9番手スタートから7位でゴールした。
「ダウンフォースが少ないから前のマシンに近づけない。タイヤにブリスターができるのもダウンフォースが少ないから。僕らは残念なことに第2スティントで右リヤ・タイヤにブリスターができ、早めのピット・ストップを行った。それで2ラップ・ダウンに。しかし、チームの頑張りもあって最終的にリード・ラップに復活し、ポジション争いが行えた。7位はソリッドなリザルトだけど、スタートしたポジションを考えると、もっと上位でのフィニッシュがしたかったと感ずる」と語り、「もっとマシン同士が近づけるレース、もっとテキサスのオーヴァル・レースらしいレースを戦えるようにした方がいいでしょう。ダウンフォースが小さく設定され過ぎ。リヤ・ウィングの角度、アンダー・フロアのサイド・ウォールなど、ダウンフォースを大きくできる部分は残っているのだから。ドライバーとしては、前のマシンに近づけない、パスのできないフラストレーションの溜まるレースになっていた」とも話した。
以上
0 件のコメント:
コメントを投稿