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ブルデイの予想どうりのレース展開に
今年のインディー500では抜きつ抜かれつのバトルが少なかった。トップ交代のオーバーテイク・シーンは数えるほどしかなかった。リスタート以外だとほとんどなかったと言えるぐらいだった。セバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)がレース前に話していた通り、「パスするドライバーよりも、(ミスを冒したり、タイヤを摩耗させ過ぎて)パスされるドライバーが多い」レースになっていた。特に最初のスティントでだったが、2.5マイルのコースに33台を均等に割り付けたかのように、誰も誰とも接近をしていない、パスのチャンスがほとんどない状況に陥っていた。
果敢なオーバーテイクでポジションアップを果たしたロッシ Photo:INDYCAR (Mike Young)クリックして拡大 |
それでもレースが進む中で、パスを可能としたドライバーが何人か現れた。アレクサンダー・ロッシがその筆頭で、リスタートではオリオール・セルビアやライアン・ハンター-レイがアグレッシブに走ってポジションを上げていた。トニー・カナーンもコールド・タイヤでの巧さを武器に、お得意のアウトサイド・パスを見せ、AJ・フォイトのマシンでリード・ラップを重ねた。
レース・デイの例外的な高温を逃げ道にすることはできるかもしれないが、インディーカー主導でダラーラが作り出したユニバーサル・エアロ・キットのスーパースピードウェイ仕様を評価するなら、オーバーテイクを前年より大幅に減らしていた点で、おおいに反省すべきものになっていた。その開発にはエンジン・サプライヤー2社も協力していたわけだが、彼らはいわばボランティア。圧倒的に大きな責任がインディーカーにはある。今年のインディで最も優れた技術として、ルイス・シュウィッツー賞の受賞までしていたユニヴァーサル・エアロ・キットだが……。
狭いエアロセッティングの選択肢
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)はレースの後、「ダウンフォースが少なくてコーナーで近づけない。それでフロント・ウィングを立てて行った人たちがグリップを突然失ってスピンしていた。エリオ・カストロネヴェスやトニー・カナーンまでもがクラッシュしていた。個人的にはエアロ・キット改善の必要があると感じている」と話していた。「タイヤももっとソフトにするべきだと感じた」とも話していた。そしてインディーカーは、今年のレースを高く評価しつつも、エアロ改善の必要性も感じているということのようだ。
琢磨がプラクティス中から訴えていたのは、「去年までならその高さにもバリエーションが幾つもあったガーニー・フラップがウィングなどにつけられない」、「リヤ・ウィングは何をやっても変わらない」など。セッティングの選択肢が少ないのだ。それでもチーム間に差が生じたのだから、速く走る秘密を見つけたところと、そうでなかったところはあったのも事実だ。
「今年のマシンは空気抵抗が大きく、2台での走行ではトウの大きさからスリップ・ストリーム効果が大きく得られて吸い寄せられるが、コーナーでは前のマシンに近づきにくい」と琢磨は話し、どのドライバーからも同じ話が聞かれた。そして、「2台以上が前を走っているとタービュランスが酷く、マシンのグリップが減る」という感想も皆同じだった。
パック走行でのシミュレート不足が原因?
テキサスの1.5マイルオーバルでは接近戦が実現するのか?
ユニバーサル・エアロ・キットの開発はインディカーとダラーラの主導の基、ホンダとシボレーそれぞれが1台ずつを走らせて行われた。ホンダはセルヴィア、シェビーはファン・パブロ・モントーヤをテスト・ドライバーに起用。ベテランからのフィードバックは上々だった。2台だけで走っている間は、確かにそのとおりだったのだろう。2台でのテストでは、2台以上の走行で空気の流れがそこまで変わることをシミュレートできなかったのだ。
インディーカーの技術部門には速やかな対策実施を期待したい。デトロイトでのダブルへダーの次はテキサスでの第9戦。そこで使用されるエアロ・キットはスーパースピードウェイ・バージョンなのだ。昨年までだとインディとは異なるテキサス特別仕様とされていたが、果たして今年はどんなパッケージを指定してくるのか。インディ500以上に暑くなっても不思議はないのが6月のダラス。ハイバンクの1.5マイル・オーバルでは手に汗握る接近戦が今年も見られるといいのだが……。
Jack Amano
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