2018年5月29日火曜日

2018 INDYCAR 佐藤琢磨コメント 第102回インディアナポリス500 Race Day 決勝:「あの次の次のスティントぐらいまでにマシンが持つ力を引き出せるところに行けるかな、と感じでした。それだけに早々のリタイアになったのは本当に残念でした」

16位走行中の47周目、スロー走行していたディヴィソンを避けきれずにクラッシュしてレースを終えたPhoto:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
「クルマがすごい曲がりづらい状況で、スタートから苦労していました」

Jack Amano(以下――):予報どおりに暑くなったレースでした。まだ1回目のピット・ストップを終えたところで、マシンやコンディションを見極めて行っている段階でアクシデントとなってしまいました。

佐藤琢磨:そうでしたね。自分たちはスタートからものすごく苦労していました。クルマがすごい曲がりづらい状況だったので。ひどかったです。予想以上にアンダーステアが強かった。トラフィックに入るとダウンフォースが無くなってしまっていました。コクピットで使えるツールも全部使い切っても、それでも曲がらない状況になっていました。

――新エアロキットに暑さ、前のクルマに近づけない戦いになっていましたね?

佐藤琢磨:みんな抜けなかった。ダウンフォースが足らな過ぎて。みんなトラフィックでのアンダーステアに苦しんでいましたね。

――琢磨選手の1回目のピット・ストップでの変更は?

佐藤琢磨:フロント・ウィングの角度を上げました。それでマシンは大分良くなったんだけど、それでもまだまだ足りてなかった。あの次の次のスティントぐらいまでにマシンが持つ力を引き出せるところに行けるかな、と感じでした。それだけに早々のリタイアになったのは本当に残念でした。

Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
「コーナーの出口なんだから、彼には加速をして欲しかった
僕は逆にすごく近づいてしまったのでハンドルも効かなくなっていました」


――ジェイムズ・デイヴィソン、ちょっとコース上にいるには遅過ぎでした。

佐藤琢磨:アレは危ないですよね。

――前のスティントの後半からあんな感じでした。

佐藤琢磨:ピットに入れば良かったのに。でも、それを今話してもしょうがないですよね。

――デイヴィソンのことは、あのコーナーに入るところで見えていましたか?

佐藤琢磨:見えていたというか……彼との間にはかなりの距離がありましたよね。で、ロバート・ウィッケンズが彼を抜いた。それでジェイムソンはグレーの方へ行っちゃったから、僕はそのままコーナーを抜けられると思ったんですよね。どう見てもあのアクシデントは感覚的に言っておかしい。彼はラインの方へ戻って来ちゃったので。速度が遅いから戻って来たのか……。コーナーの出口なんだから、彼には加速をして欲しかった。僕は完全にバック・オフしてて、逆にすごく近づいちゃったから、ハンドルも効かなくなって来ちゃってた。ダウンフォースもない。それで、ブレーキも踏んだけど間に合わなかったですね。

「みんなどんどんフロント・ウィングに角度を付けて行ってましたね
だから、あれだけあの後も単独クラッシュが続いたと思います」


――今日は単独のアクシデントがすごく多かったですよね。スナップするようにスピンしていました。

佐藤琢磨:今年のクルマはダウンフォースが去年のクルマに比べて少なく、かつドラッグ・レベルはすごく高いですから、クルマの後ろについた時のグリップの失い具合が大きいんですよ。去年のように近づいて走ることができない。フロント・ウィングのダウンフォースが足りなくて、ものすごくアンダーステアになってしまう。それでみんな各スティントを終えて、どんどんフロント・ウィングをつけて行っていたと思います。今日はプラクティスや予選で一度も走ったことのない暑さでしたから、みんな前のクルマにもっと近づこうとしてウィングを立てて行ったけれど、それが今月一度もトライしたことのないレベルにまで行ってたってことだと思います。だけど、それでも全体的なダウンフォースが少ないので、乱気流の中で一瞬でダウンフォースを失う状況が起こっていた。その時にリヤの方が特にグリップを大きく失って、スナップするようにスピンしていたんだと思います。そんな傾向が見受けられました。でも、みんなトラフィックでのダウンフォースがないからと、それを嫌がってどんどんとフロント・ウィングに角度を付けて行ってましたね、スティント毎に。だから、単独ではもうナイフ・エッジの状態。だから、あれだけあの後も単独クラッシュが続いたと思う。全員がオーバーステアでしたよね。ちょっと、このスーパースピードウェイ用エアロキットに関しては、見直す必要があるかなって個人的には思いますけども、そんな中でもマシンをうまく仕上げえたチームもありました。僕らは完全に課題山積みですけど。

「今年はタイヤコンパウンドがかなりハード
それでダウンフォースが少ないから多くのクルマが苦しんでいた」


――今日のレースでは、雲がコースの半分を覆うって時間帯が結構長くありましたが、陽の当たり続けている路面と、そうでない路面があるのって、どんな影響を走りは受けるんでしょう?

佐藤琢磨:陽が当たると路面温度が上がる。その影響は確かにあるんですが、今年の場合はタイヤがかなりハードでした。今回供給されていたものは。30周のスティントが終わっても、摩耗って意味では全然問題がなかった。ダウンフォースが低いクルマなら、ソフト傾向のタイヤで足回りでグリップを得るという風になっている方が良かったかな、と思います。かつて僕がインディーカーに出場し始めた頃は、まだ路面のできていないプラクティスの最初の頃とかだと、20周もしないうちにコードが見えちゃってたぐらいだった。今はそれと真逆。なんでこんなに硬いコンパウンドを使わなきゃいけないのかがわからない。そんな中でダウンフォースが少ないので、多くのクルマが今年は苦しんでいたと思いますね。

――来年はエアロキットもタイヤも、何らかの改良が必要になる?

佐藤琢磨:タイヤは今年のものより全然柔くていいと思うんですけど、そこは僕らの決められるところではないですからね。もちろん、安全にも関わることであればドライバーは声を上げますけど。少なくとも、ドライバーからのフィード・バックとしては、この話はファイアストンやインディーカーに伝わっているはずです。

「今日は戦略面ではオリオールとグレアムが行けそうな雰囲気がありました
しかし、やっぱり純粋なスピードという面で、僕らはまだまだでした」


Photo:INDYCAR (Tim Holle) クリックして拡大
 ――オリオールとグレアム、2人のチームメイトが粘ってましたね。
佐藤琢磨:そうなんですよね。燃料の残量などをチェックしながら応援していました。今日はちょっとしたイエローのタイミングでグレアムにもチャンスがあったと思います。僕のアクシデントでのイエローでピットしたドライバーの中で彼はトップを走っていましたからね。そしてオリオール。彼も本当に素晴らしい走りを見せていました。最後は燃料切れになっちゃいましたけライバーのどちらかが優勝していもおかしくない展開でしたね。だから、思いっ切り応援していました。

――リタイア後、レースはどこで見ていたんですか?
佐藤琢磨:トレーラーでエンジニアと一緒に色々なデータをチェックしながら見ていました。レース後半のグレアムの走りは良くなっていたと思います。クルマも僕のものよりかは少なくとも曲がっているように見えていましたね。スタート時にどんなフロント・ウど、うまくシークエンスが合えば、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのドィングの角度だったのかなど、細かなデータがわかっていないし、まだ彼とレース後に話をしていないので、正確なところはわからないですけど。でも、また最後のところで彼は苦労をしていたので、トラフィックの走りって意味ではまだ課題は多いと思います。今日のコンディションでもポジションを上げて行ってるドライバーはいましたから。

――このレースでレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは何かインディー500以降のシーズンを戦う良いきっかけを掴んだでしょうか?

佐藤琢磨:はい。僕らとしては、課題がまだ幾つか残ってますけどね。今日は戦略という面から、オリオールとグレアムが行けそうな雰囲気がありました。しかし、やっぱり純粋なスピードという面で、僕らはまだまだでした。自分たちでその部分を解決し、スピードを伸ばさないといけないですよね。テキサスはこのパッケージで走りますから、そこまでにできる限りの分析、解析を進めて頑張りたいです。

「ウィルが勝ったことはすごくうれしかった」

Photo:INDYCAR (Karl Zemlin) クリックして拡大
――トレーラー、ガレージと琢磨選手を探していたら、ヴィクトリー・レーンに行ったって聞きました。

佐藤琢磨:はい。自分がリタイアしてしまった本当に残念なレースでしたけど、唯一誰に勝って欲しかったかと言えばウィル(・パワー)だったので。彼の勝利を心から祝福したいです。ウィルと僕は非常に仲が良く、僕としてはものすごく彼のことは尊敬していて、彼の方でも同じように思ってくれています。実は今日、レース前に彼と色んなことを話したんです。その時にウィルは、”去年のはすごい優勝だったよ”って言って、僕は”今年ウィルは調子良さそうだし、勝てそうじゃん”なんて話をしていたので、彼が勝ったのはすごく嬉しかった。ビクトリー・レーンは大騒ぎになってて、そこで”今日話した通りになったね”みたいな感じで大興奮でした。

――前年度ウィナーに祝福してもらい、ウィルも嬉しかったでしょう。

佐藤琢磨:すごく喜んでくれました。僕も去年、ビクトリー・サークルにダリオ・フランキッティやAJ・フォイトら、伝説のドライバーたちを含めた色んな人が来てくれ、祝福してくれ、すごく嬉しかったですから。あの瞬間を一緒に分かち合うっていうのは、同じレースをする仲間としても大変気持ちがいいことなので。自分のレースは今日は本当に残念なものになりましたが、ウィルもこれまで散々不運に遭って来た。今日の彼は王者に相応しい走りをしていたと思います。

――もう次の週末はデトロイトです。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングも、琢磨選手も得意とするコースですから、期待値が高いでしょう。

佐藤琢磨:その通りです。僕自身もデトロイトでは良いレースを多く戦って来ていますし、チームも好成績を挙げて来ているのでね。今年はエアロ・パッケージも変わってますから、去年のデータなどがどれだけ通用するかはわからないですけど、もちろん、ここでの悔しい気持ちを早く切り替えて、デトロイトで一生懸命に頑張って、いいリザルトを目指したいですね。
以上

0 件のコメント:

コメントを投稿