Photo:INDYCAR (Walter Kuhn) クリックして拡大 |
走り出しから心配なくスピードに乗せられました
Jack Amano(以下――):最初のプラクティスから220mph台のいいスピードが出ましたね? トウ利用を含めると16番手でしたが、トウなしでは2番手の好位置でした。
佐藤琢磨:うん、そうですね。テストを1日走っているから、新しいエアロのクルマでインディアナポリスのオーバルを走るのは2回目で、今日はある意味、走り出しから心配もなく、スッとスピードに乗せられましたね。
「プラクティスのスケジュールが1日切られたので、今日は忙しい
午前でイニシャルのセットを出して、そのデータをもとに午後走り込みます」
――1日テストをした後の今日、プラクティス1日目のプログラムは?
佐藤琢磨:今までのインディ500って”マンス・オブ・メイ”って呼ばれてたり、2週間半のプログラムだとか言われてたけど、今年は月曜日の走行が切られちゃって、走るのは火曜日から。火、水、木曜って3日間テストしたら、もうファスト・フライデイでその次の日は予選なんですよ。全然走れないなって思って、結構今日のプログラムは、ある意味、予選に向けたクルマ作りと、それから当然グループ・ランも今日したいので、決勝を見据えたクルマ作りと両方やらなきゃなんない。ちょっと忙しんですけど、まぁリフレッシャーとルーキー・オリエンテーションの時間が2回のプラクティスの間に今日は入っているスケジュールなので、まずは最初の1時間でイニシャルのセットというか、今日のコンディションへの合わせ込みをして、そのデータを基に午後3時から走り込むっていう計画ですね。
――午後は雨の予報も出てますが?
佐藤琢磨:そうなんですよ。降水確率は午前中に比べて上がるので、午後3時からすぐに走れるようみんな準備をしていると思います。
「今年のエアロキットは、リヤウィングが小さすぎる
ダウンフォースもつかないし、トリムしようにもトリムしようがない」
――午前11時からのプラクティスはスピードもトウなしで2番手のものが出たし、ちゃんと走れたわけですよね?
佐藤琢磨:いや、それがちゃんと……っていうほどプログラムは順調じゃなかったんですよ。確かにチームメイトに比べて周回数は多くて、すでに20周を超えてるから多い方だと思うんだけど、ちょっと気になる、クルマとして気に入らない部分が出て来ているんですよ。そこが”あれ? このあいだのテストと違うな”って感じがありますね。
――考えられる原因は?
佐藤琢磨:本来だったら、その数字がズレてないはずのところに違う値が出て来ているので、それを今、解明してもらっています。今年のエアロキットを装着したクルマは見た目はカッコいいんだけど、リヤ・ウィングが小っちゃ過ぎるんですよ、コレ。で、ダウンフォースを付けようにも付かないし、トリムしようにも、今度はダウンフォースが減ってくれない。ものすごくセッティングのできる幅が狭い。もちろん、ディフューザーのフィンを取っ払ったりってとかっていう技はあるんだけど、それで失うダウンフォースの量が、ドラッグの低減よりも遥かに、遥かに大きいので、セッティングの最後になって、もう何やってもクルマは大丈夫だよってぐらい行ったらそこまで行きますけど……。去年までは、トリムし過ぎると曲がり切れなくなって……って感じになってたけど、今年はそこまで行かない感じですね。逆に、レースではダウンフォースが足りない。予選はダウンフォースがあり過ぎるけど……。ちょっと難しい。
――合同テストと今回でのセッティングに違いは?
佐藤琢磨:変わってないです。テストを終わったままのマシンを走らせたんですよ。
――それなのに違う感じが出ていたから、おかしい、と?
佐藤琢磨:そうなです。クルマは組み替えて来てますけどね。セッティングは同じもので走り出したんです。
「レイホールとオリオールと3人で一緒にやることがすごく楽しみ」
――オリオール・セルヴィアの加入はどう評価していますか?
佐藤琢磨:嬉しいです。まずひとつに、このAK18(2018年仕様エアロキット)の開発に携わり、マニュファクチャラーによるテストから乗って来たドライバーで、インディのスーパースピードウェイも経験している。だからって、そのことがすごく大きなプラスになるワケじゃないけれど、少なくともマシンに慣れる時間とかは要らない。彼は僕がインディカーに来た時に一緒に走ったドライバー。特に2010年に関しては僕のオーバルの先生だったから。関係が近いんですよね、彼とは。ツインリンクもてぎまでわざわざ来てくれたりとかもしてたので。オリオールはいいドライバーだし、とても付き合い易いというか、人懐こいし、かつ経験も豊富で、技術的なフィードバックもレベルが高いし、グレアム・レイホールとオリオールのコンビっていうのは、ここ数年のインディでずっと強かったので……というかうまく働いていたコンビなので、すごくこの2人のチームメイトと一緒に3人でやるっていうのは楽しみです。今まで一緒だったチームメイトの中で誰よりも、どこよりも一番荒波も立たず、仲良くやれそうな感じがします。
――今日はチームでのトラフィック・テストをやる予定ですか?
佐藤琢磨:3人でグループ・ランをやるつもりです。オリオールがどれだけスピードを上げてくるかにもよるんだけれど、一応4時半からチームでグループ・ランをやるって予定しています。他のチームの人たちもそこに入って来るかもしれないし、楽しみですね。
「夕方のトラフィック・ランで、午前の気になるところを確認します」
――去年のアンドレッティ・オートスポートは4台も5台もいるチームでしたが、今年は3台のチーム。プログラムに違いは?
佐藤琢磨:そんなに大きくは違わないです。でも、今年はクルマが新しくなっていますよね。去年の場合、一昨年からエアロのルールがフリーズされたので、走り出しが前の年のわかり切っているとこからのスタートだった。それでいきなりグループ・ランが始められた。それが今年は新しいエアロキットのクルマに対する理解度を深めなきゃいけないので、グループ・ランの開始は少し遅れますよね。でも、チーム・ペンスキーやアンドレッティ・オートスポートは今日の最初のプラクティスからグループで走り始めてるし、本当はウチらももうちょっとグループ・ランをやるか、トラフィックを走りたいなって感じです。でも、テストの最後に自然とみんなで大きなパックになって走ることとができた際に、自分たちはなかなかうまく上がって行くことができなかったんですよ、トラフィックの中でのクルマの動きがあまり良くなくて。だから、その対策を今日のプラクティスでやって来て、夕方のトラフィック・ランでどれだけ効果が出るかっていうのをやるつもりです。
「去年と同じだけのダウンフォースがつけられないかもしれないので
タイヤマネージメントが重要になってくるかもしれないです」
――今年のマシンでもタイヤ・マネジメントがとても大事になりますか?
佐藤琢磨:なりますね。今年のクルマは去年のクルマと同じダウンフォースを生み出すことができるんですけど、ドラッグがすごく大きいんですよ。だから、スリップの効果が大きい。自分がドラッギーだから、誰かのスリップに入ればスピードが伸びる。ドラッギーなクルマっていうのは後ろに大きなホールを作るので、相乗効果でトウに入った時の吸い込まれ度がすごい。
――ていうことはオーバーテイクがし易い?
佐藤琢磨:いや、ストレートでは追いつくんだけど、コーナーでは去年みたいに近づけない。それから、今年のウィングにはガーニー・フラップが付けられない。決勝レースは、去年の決勝と同じだけのダウンフォースは多分確保できないかもしれないね。そうなって来るとタイヤの持ちがさらに悪くなるので、タイヤのマネジメントは去年以上に必要になるかもしれないですね。
――しかし、そういう状況で、ある意味ニュー・カーになっているのにプラクティスを1日減らすというのは不可解な理論ですよね?
しかも、今年は今のところいい天気だけれど、先週まで出てた予報ではプラクティスはずっと雨だった。
佐藤琢磨:今年のスケジュールは不評ですよ。1日無くなった分を他の日に1時間ずつ足したんですよね?
だけど、それって意味ないんですよ。そこで1時間増えたって、クルマを分析、解析する時間が1日無くなっちゃったんだから。ニュー・マシンだから、ロードコース用からスーパースピードウェイ用の変換に1日じゃなくて2日くれたみたいなんですけど、メカニックたちだって11時から6時までじゃお腹も持たないので、どっかに昼休みを作らなきゃいけない。去年は12時スタートだったから昼休みは要らなかった。
――去年は食べてから走行開始だった。そういう意味でもスケジュール変更はロジカルじゃない。
佐藤琢磨:そう。あんまり。僕は良くない変更と思いますね。プラクティスが3日間しかなかったら、1日雨でレインド・アウトになったら大変。2日走れなかったら、他のロードレースとかと変わらなくなっちゃう。
――ほとんど走れない状況だったらファスト・フライデイはブースト圧上げないでレース用セッティングをやりたくなっちゃう。
佐藤琢磨:そんな状態でブースト上げるの怖いよね。
――合同テストではブースト圧はレース用だけだったんですよね?
佐藤琢磨:上げてない。だから高いブーストで走るのは、みんなファスト・フライデイが初めて。
「トウなしで5番手にはいきたいですよね
でも、トラフィックの中の動きを重視したいので今日は気にしません」
――今朝のプラクティスではシモン・パジェノーがトウを使って225mph台を出してましたが、あの数字はどうですか?
佐藤琢磨:速いね。それだけトウについてアクセルを踏んで行けているっていうのは、クルマがかなり高いレベルにあるっていう証拠です。
――今日のプラクティスを終えて、何番手ぐらいに付けていたらハッピー……とかってありますか?
佐藤琢磨:トウなしでトップ5に行きたいですよね。だけど、どうかな?
ロウ・スピード(トウなしの単独走行での速さ)よりも、トラフィックの中の動きの方を重要視したいので、スピードと順位は今日は気にしないです。
――とにかくトラフィックでの感覚を見て、良いと感じたい、と。
佐藤琢磨:はい。そうですね。クルマはもう、1人で走るには結構いいところまで安定して来ているので。でもね、今までの経験から行くと、単独で良かったのにトラフィックに入ったらエライことになった……と言いうのが何度もあったので。アンドレッティ・オートスポートの時はその点が良かったんだよね。トラフィックでの動きが凄く良かったから。自分ひとりで走っている時の方が怖かったぐらいだったから。その経験値があるというか、そういう体験をしているので、クルマは去年と違うけど、トラフィックでのいい動きっていうのを再現したいですね。最初のプラクティス、僕のベストが単独で220.9mphでしたよね? グレアム(・レイホール)が221.1mph。この最初のスピードが実は結構大事なんですよ。チームメイトと差があるところは少し気になるけど……。
――そのトウなしでのスピードはグレアムがセッション・トップで、2番手が琢磨選手だった。今年のインディ500に向けては、その事実が明るい展望を持つための材料ですね。
(その2に続く)
天野さん、取材おつかれさまです。琢磨選手、まずまずの感触のようですね。セルビアが、琢磨選手のオーバルの先生なんてすごいなって思いましたしそんな話が知ることができてすごくうれしいことです。グレアムとセルビアでうまくやってるなんて、インディ500に向けていい方向にいくでしょう‼セルビアは、ファンやドライバーの対応を見ても優しいなって思いますもんね。セルビア、さすがにペースカードライバーはお休みですね。セルビアは、テストもしていて情報はあるでしょうから琢磨選手も心強いでしょう。やっぱり、ベテランに目がいってしまいます。ブルデーが、目立ってないのが気になりますが…。日本は、今日は真夏並みの暑さかと思ったら明日はかなり気温が下がるみたいです。温度差が激しいので、体調をくずしがちです。天野さんも、忙しいでしょうから体に気をつけて取材してくださいね。
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