2018年4月29日日曜日

2018 INDYCARレポート 4月28日:今シーズンのインディー・ライツ序盤戦 パト・オーワードが4戦で3勝目

バーバーのダブルヘダーをスウィープしたオーワード。今シーズンのインディー・ライツはこの弱冠18歳のメキシカンを中心に展開している Photo:INDYCAR
強力な顔ぶれが上位に並ぶ今年のインディー・ライツ
その中で抜きんでたメキシカン、パト・オーワード


 2018年マツダ・ロード・トゥ・インディーのレポートその1。
 今年のインディー・ライツ・チャンピオンシップはすでに2イベント、4レースが終了している。フル・エントリーが少ないのは気になるが、上位陣の顔触れは強力だから見応えあるバトルがシーズンを通して期待できそうだ。

 セント・ピーターズバーグでの開幕戦で優勝したのはメキシコ出身、アドリアン・フェルナンデスに続くインディカー・スターとなりそうなパトリシオ(通称”パト”)・オーワード(アンドレッティ・オートスポート)だった。去年シーズン序盤のインディー・ライツ4戦にだけ出場。その後はIMSAのスポーツカーに出てブッチギリでチャンピオンに。そしてインディー・ライツ・フル・シーズン・エントリーに漕ぎ着けると、最初のレースでいきなり優勝した。

これからのオーバルでのパトの走りに注目


 パトはバーバーでのダブルへダーでさらに強さを見せた。レース1はドライ、レース2はウェットと完全に異なるコンディションで争われたが、両レースを制圧。ドライで1.3秒、ウェットでは5.8秒もの差を2位につけての見事な2レース・スウィープでライバル勢に大きな衝撃を与えた。
 開幕2イベントの4戦で3勝を挙げたパトは当然ポイント・リーダー。今後のシーズンに登場するオーバル・コースでも速さを維持できれば、チャンピオンまで一気に行く可能性は十分ある。

ウルグアイ出身のサンティアゴ・ウルッティ
3年目の正直でチャンピオンを目指す


 セント・ピーターズバーグでのシリーズ第2戦で勝ったのはサンティアゴ・ウルッティア。通称”サンティー。ベラルディ・オート・レーシングから出場する彼はウルグアイの首都モンテヴィデオの出身。でも名前はチリの首都と一緒。南米に疎い私にはなかなかややこしい。”サンティー”はもうインディー・ライツ3年目。過去2シーズンともランキング2位の彼は、「何としても今年はチャンピオンとなり、奨学金100万ドル持参でインディーカーに上がりたい!」と意気込んでいる。ウルグアイといえば1998年にファン・パブロ・モントーヤがチャンピオンになった国際F3000でランキング3位に食い込み、1999年にチーム・ペンスキーからCARTシリーズ終盤戦のラグナ・セカに出場、そのレースで事故死してしまったゴンザロ・ロドリゲス。サンティーはロドリゲスの夢も受け継ぎ、インディーカーで成功することを目指している。

パトの台頭傍らでチャンピオン候補のハータJrは現在苦戦中
 パトのシーズン3勝で一番の影響を受けているのは、彼の先輩チームメイトのコルトン・ハータだろう。ブライアン・ハータの息子は昨年7ポール・ポジション+2勝で、今シーズンの開幕前からチャンピオン候補に挙げられているが、新参チームメイトに押されて今のところ勝利なし。ウェット・コンディションのバーバーではトラウマにならないか心配になる35秒もの大差をパトに付けられ、2位にも30秒ほど遅れてのゴールだった。それでも表彰台だったが……。アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアンでインディーカーのシートを与えられる……というのが彼らのプランのはずだが、前途は険しい。

第2のカイル・カイザーを目指すフンコス・レーシングのフレンツォーニ
 これら3人以外だと、昨年度プロ・マツダ・シリーズ・チャンピオンのブラジリアン=ヴィクター・フレンツォーニが有望か。髪型が現アメリカ大統領級にユニークな彼はプロ・マツダにフンコス・レーシングからエントリーしており、マツダ・ロード・トゥ・インディーからの奨学金:約80万ドルをもらってインディー・ライツへのステップ・アップをチーム内で行なった。昨年度インディー・ライツ・チャンピオンのカイル・カイザーは、フンコス内でインディーカーへとステップ・アップ。このパターンがあるフンコスには近頃熱い注目が集まっている。

インディーカーへの登竜門であることは間違いないが
ダブルヘダーの多いスケジュールは育成にとって果たしてプラスか!?

 インディー・ライツは年間17戦。そのうちの7イベントがダブルへダーだ。チームとしての遠征数を年10回に抑えつつレース数は多めに確保する参戦経費抑制がメイン・コンセプトなワケだが、プラクティス時間が少ないままレースを迎えることは、ステップ・アップ・カテゴリーにとって肝心要のドライバー育成という目的に対しての悪影響がないのか心配になる。経験を積むべき段階のドライバーたちにはプラクティスの時間をサーキット毎にできる限り与え、マシンをキッチリ仕上げる力を磨かせるでは? 昨年は14台ほどのレギュラーがいたが、今年のセント・ピーターズバーグは9台、バーバーは8台と出場台数が減っている。10イベントで17レースというコスト抑制策は少なくともエントリー台数確保には繋がっていない。
 今年のインディーカー第4戦までに出場した27人のドライバーのうち、インディー・ライツ経験者は14人。そのうちインディー・ライツでチャンピオンになっているのはバーバー・ウィナーとなったジョセフ・ニューガーデンを含め7人。インディー・ライツにはインディーカーへの登竜門として機能して来た実績がある。
せっかくだからチャンピオンの名前、全員挙げましょう。


トニー・カナーン(1997)
スコット・ディクソン(2000)
ジョセフ・ニューガーデン(2011)
ギャビー・シャヴェス(2014)
スペンサー・ピゴット(2015)
エド・ジョーンズ(2016)
カイル・カイザー(2017)
 インディアナポリス500出場予定:
オリオール・セルヴィア(1999)
ジェイ・ハワード(2006)
JR・ヒルデブランド(2009)
セイジ・カラム(2013)
 

アメリカのテレビ解説陣:
ポール・トレイシー(1990)
タウンゼント・ベル(2001)
ヨン・”プロフェッサーB” ・ビーカス(1988)


 チャンピオンになってないドライバーでもエリオ・カストロネヴェス、カルロス・ムニョス、マテウス・レイスト、マックス・チルトン、チャーリー・キンボール、ザカリー・クラマン・デ・メロ、ザック・ヴィーチ、ステファン・ウィルソン、ピッパ・マン、コナー・デイリー、ジャック・ハーヴィーにインディー・ライツ出場経験あり。


おまけ:
 アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン共同オーナーのブライアン・ハータは1993年チャンピオン。コルトンがタイトルを獲ると史上初のインディー・ライツ二世代制覇がなる(!) びっくり・マークつけるほどのインパクト、ないかもしれないけど。
以上

3 件のコメント:

  1. 天野さん、おつかれさまです。5月になりました‼インディ500が近づいてますね。私も、ワクワクしてます。本音は、6月のデトロイトが待ち遠しいのですが‼最近、2015年のインディカーシリーズを観てます。私の大好きなライアンブリスコーがヒンチクリフの代わりに走っていたので。モントーヤもエリオも、なつかしいとしみじみしながら観てます。今は、ドライバーがガラッと変わりましたもんね。ブリスコーが、インディカーを走らないのはすごく残念です。インディ500に参戦してほしいな…。オリオールセルビアが、インディ500にレイホールから出るのですごく楽しみにしてます。ブルデーも、去年は大ケガしてるので今年は頑張ってほしいですね。インディ500は、あんまり目立ってないから…ブルデーに期待してます。天野さん、寒暖が激しいみたいですからお体には気をつけて取材してくださいね。関係ないコメントして、すみません。

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  2. プロフェッサーB氏、元ドライバーだったなんて知らなかった( ̄▽ ̄;)

    マシンに詳しいから、元エンジニアかと思ってた( ̄▽ ̄;)

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  3. 天野さん、取材で忙しいときにコメントすみません。今日、別のニュースでウインドウス保護デバイスでニューガーデンが走行テストをしたというのを見ました。ドライバーの命を守るためのものですし、ニューガーデンも好感触だったのでしょうか。透明にして視界を見やすくしたりとまだテストみたいですが将来的に導入されればドライバーのけがも防げますし更なる向上を願っています。ジャスティンウィルソンが亡くなって3年になりますね。私は、レースで観てましたしショックでした。あれから、大きな事故はありませんが去年のディクソンのクラッシュもありましたしいつ起こるかわからない世界で戦ってますもんね…。ドライバーは、すごいなってつくづく思います。私が、大好きなブルデーもインディ500の予選でクラッシュして大ケガでも懸命なリハビリで復活して今でも活躍してることはすごくうれしいことです。これからも、安全第一ででも見応えのあるレースを願っています。天野さん、長々とすみません。取材、頑張ってください‼

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