2018年3月20日火曜日

2018 INDYCAR レポート 3月20日 IWSC Mobil 1 12アワーズ・オブ・セブリング:スコット・シャープがオーナーのニッサンDPiが優勝

陽光の下、セブリング12時間がスタート! セカンド・グリッドからスタートしたカーナンバー2のESMニッサンDPiを駆るオリビエ・プラは、この直後、とんでもない事態に!! Photo:©2018, Jake Galstad クリックして拡大
フロリダらしい好天の下、12時間レースがスタート
 
 3日続けて快晴。そしてさらにありがたいことに決勝日だけは朝から暖かく、レース中には「フロリダに来てる!」と感じさせる気温=29℃。しかも嬉しいことに適度な風が吹き続け、1日中快適そのものだった。木、金曜は早朝だけだけど、3℃とか4℃の極寒だったけど。

これがピット上にあるプレスルームからの眺め。素晴らしい青空でしょ? お客さんがたくさん入ってるのもわかると思います Photo:Masahiko Amano クリックして拡大


レーススタート直後に2号車を失ったESMだったが、予選4番手スタート22号車がレースの主導権を握った Photo:©2018, Jake Galstad クリックして拡大
フロント・ロウ・スタートのオリヴィエ・プラ
1周目のターン1でレース終了!
 
 第66回セブリング12時間レースは午前10時40分にグリーン・フラッグ。出場の3クラス43台がローリング・スタートを切った……直後のコーナーでフロントロー・アウト側スタートしたニッサンDPi(エクストリーム・スピード・モータースポーツ=ESM)がスピン。やたらと広いコーナーだから壁へのヒットは免れたものの、ギヤボックスをやっつけてしまったとのことで0周リタイア。オリヴィエ・プラ、あまりに勿体無いミス。これで乗るもののなくなってしまったのがオーナー兼ドライバーのスコット・シャープだが、彼はインディー500ポール・ポジションからのスタートで1ラップ目のターン1を曲がり切れずにレースを終えた実績の持ち主(IRL時代の2001年)。
 彼はあの時、ピット・レポーターの「どんぐらい恥ずかしいアクシデント?」というストレート過ぎる質問(これをした方も偉い)に、「本当に恥ずかしいミスだよ」と堂々と答え、スポンサーやチームへの感謝の辞を添えた。"ノット・ソー・シャープ”とかのニックネームをつけられてもいたけど、有名プロフェッショナル・レーサーの家に育った彼は根っからのスポーツマンでもあって、そういうところがデルファイとかパトロンとかビッグ・スポンサーに長く愛される理由なんだと思う。

1台態勢となったESMニッサンDPi、ニッサン車として94年以来となる優勝!


Photo:© 2018 Michael L. Levitt LAT Images クリックして拡大
 そして12時間後、シャープはオーナーとして喜びに浸ることに。予選4位だったもう1台のESMニッサンDPiが優勝を飾ったのだ。ESMとしては一昨年の2016年以来となる2回目のアメリカン・クラシック制覇だ。ニッサンは……と歴史を遡ると、なんと1994年のカニンガム・レーシング300ZX(スティーヴ・ミレン/ジョニー・オコーネル/ジョン・モートン)以来! 300ZXの前に1989年と1990年にZX-T GTPで、1991年にNPT-90で優勝しているニッサン=これで4勝目だ。私がアメリカに来る1年前の89年はジェフ・ブラバム(インディー500に一昨年出場したマシューの父=F1チャンピオンのジャックの息子)/デレック・デイリー(コナーの父)/アリー・ルイェンダイク(1990年インディー500ウィナーで、現インディーカー・レース・スチュワード)のトリオだった。私のセブリング初取材だった90年はブラバム&デイリーで勝ち、91年はジェフとゲイリーのブラバム兄弟とデイリーで3連勝。懐かしい。

ニッサン300ZXが勝った1994年のWSC"クラス・ウィナー”=ル・マン24時間5勝&デイトナ24時間3勝のデレック・ベルをパドックで発見! 後ろにパパ・モントーヤ  Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
  92、93年はAARトヨタが勝ってGTP時代が終わり、300ZXの勝った94年はWSCってオープン・コクピット・マシンがトップ・カテゴリーだったんだが、GTSに敗れる総合2位が最高位だった(ジェイムズ・ウィーバー/デレック・ベル/アンディ・ウォレスのブリトン・トリオの乗ったスパイスSE89/シボレー)。

EMSニッサンがスタート3時間経過あたりからレースをリード
追うマツダの55号車とキャディラック31号車との戦いに


快走するマツダ・チーム・ヨーストの55号車。77号車と2台そろって完走、トップ10フィニッシュを果たす。前戦デイトナから大きな進化を遂げた Photo:©2018, Jake Galstad クリックして拡大
……昔話が長くなってしまった。今年のレースに戻ります。
 ESMニッサンはスタートから3時間経過ぐらいからレースのペース・セッターになった。戦った相手はマツダ・チーム・ヨーストの55号車とアクション・エクスプレス・レーシング(デイトナ24時間ウィナーのカー・ナンバー5とチームメイト)のキャディラック31号車。その後1時間半ぐらいから、ESMニッサン22号車がレースのイニシアティブを握った。

レースで大健闘を見せたヨースト・マツダだったが、朝のウォームアップで55号車のオルタネーターにトラブル発生で交換作業開始。続いて77号車も念のため交換……で2台がガレージに。グリッドに並べられるか! 緊迫したが、無事に作業完了。レースでの55号車のトラブルはこれとはまた違った電気系トラブルだった Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
 スタートから8時間が経過した後に出たイエローでキャディラック31号車がトップに立ったが、コース上でのバトルでトップをキッチリ奪い返すと差を広げてゴールまで突っ走った。31号車はペースが落ち、マツダ55号車は電気系トラブルに見舞われた。その結果、2番手にはウェイン・テイラー・レーシングのキャディラック10号車が浮上して来た。昨年デイトナとセブリングの両方で勝ってシリーズ・チャンピオンになったチームだ。しかし、彼らにESMニッサンを脅かすスピードはなかった。
 ジョハネス・オーヴァービーク(アメリカ)/ピポ・デラー二(ブラジル)/ニコラス・ラピエール(フランス)のトリオがウィニング・クルー。2016年に続いてフィニッシュを担当したデラーニは、「3回目のセブリング出場で2勝目。信じられない! この勝利はブラジルで病気と戦っている父に捧げたい。彼は今日、このレースをライブで見てくれていた。勝つところを見せることができて本当に嬉しい。それを実現してくれたチームに感謝する」と喜んだ。この人、インディーカーに来ないかな? まだ24歳。

キャディラックが2位、3位に
終盤まで奮闘したマツダ55号車は4位、77号車は8位完走


 2、3位はキャディラック=10号車(ライアン・ハンター-レイが搭乗)、31号車(マイク・コンウェイがドライバー3人のうちの1人)の順。4台エントリーして2台がトップ3のしぶとさ。

カーナンバー31、アクション・エクスプレス・レーシングのキャディラックDPiが夕陽の中を攻める Photo:© 2018 Michael L. Levitt LAT Images クリックして拡大

LMP2クラス優勝……じゃなくPクラス4位のオレカ=リヤウィングのとこから手を振ってるクルーチーフのスティーブ・レーガンは半分日本育ちで2輪のヨシムラにいたこともある人。インディカーで松浦のクルーチーフだったこともアリ Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
 4位はコア・オートスポートのジョナサン・ベネット/コリン・ブラウン/ロメイン・デュマス組オレカLMP2。5位はユナイテッド・モータースポーツのリジェLMP2(フィル・ハンソン/ポール・ディ・レスタ/アレックス・ブランデル組=デイトナ24時間でフェルナンド・アロンソが乗ったチーム)だった。

 マツダは55号車が1ラップ遅れの6位、序盤にブレーキトラブルで遅れた77号車(スペンサー・ピゴットが乗っていた)が10周遅れながら8位と2台とも完走。デイトナでは2台ともトラブル続きでリタイアだったので、大きな進歩を遂げた。しかも、77号車はレース中のファステスト・ラップ記録!

 アキュラ・ペンスキーは2台ともにリタイヤに

 
まさかアキュラDPiが2台とも明るいうちにリタイアするとは!
デイトナ24時間では12時間経過時点で1-2だったし、ポルシェ・ワークスで戦っていた2008年にLMP2ながら総合優勝しているんですよね、チーム・ペンスキーは  Photo:Masahiko Amano

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  逆にアキュラ・チーム・ペンスキーは、デイトナでは2台とも完走だったというのに、今回は2台ともリタイア。ペンスキーらしくない結果と言える。エリオ・カストロネヴェス/リッキー・テイラー/グレアム・レイホール組の7号車は油圧低下、ファン・パブロ・モントーヤ/デイン・キャメロン/シモン・パジェノー組6号車は他車との接触でドライブ・トレインを壊してのリタイアだった。 
 
決勝に向けて万全のクルマ作りができていたペンスキーだったが Photo:© 2018 Richard Dole LAT Images クリックして拡大
「プッシュして走って、いいペースを保てていた。夜になってからの優勝争いを楽しみにしていたんだけどね……」とモントーヤ。テイラーも、「スピードがあっただけに悔しい。しかし、近いうちに勝てるはずだ」と話した。

GTLMクラスはワークス・ポルシェが1、3位


GTLMクラスを制した、ポルシェ・チーム・ノースアメリカのパトリック・ピレ/ニック・タンディ/フェデレク・マコウィエッキー Photo:© 2018 Richard Dole LAT Images クリックして拡大
  苛烈バトルのGTLMはワークス・ポルシェの911 RSRが1-3フィニッシュ。BMWが新車M8 GTLMを2位に食い込ませた。4位はフォードGT(チップ・ガナッシ・レーシングのライアン・ブリスコー/リチャード・ウェストブルック/スコット・ディクソン組)で5位はフェラーリ。シボレー・コルヴェットはエースの3号車が1ラップ目にタイヤ・カット……など運にも恵まれてなかった。 
リタイアして食事するグレアム・レイホールはアキュラ・チーム・ペンスキーの黒いポロシャツ姿で、隣りで和んでいるボビー・レイホールはBMWワークス・チームの共同オーナーとして白シャツ着用。どちらもインディカーとは違うブランド、チームで戦ってるわけです。Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
 GTDはランボルギーニ・ウラカン(ポール・ミラー・レーシング)が優勝。チームは違うがデイトナに続く2連勝。2位はフェラーリ488で3位はメルセデス-AMG。4位はアウディR8 LMS。日本車はレクサスRC Fが5位で、4台出場のアキュラNSXはマイケル・シャンク・レーシングの93号車によるクラス7位がベスト・リザルトで、キャサリン・レッグの乗った86号車(こちらもMSR)はクラス8位。
駐車場にいたコアなマツダ・ファン。フロントガラスの日除け=マツダのロゴ入り、窓に立てたマツダの旗、フェンダーに黄ストライプ、スポイラーはオレンジでトリム、マット・ブラックのホイール、HIROSHIMA SPIRITのデカール。濃い。メーカー対決の熱気はこんなところにまで Photo:Masahiko Amano クリックして拡大
以上

1 件のコメント:

  1. 天野さん、おつかれさまです。フォードは、ブリスコーの4位が最高ですか。ブルデーは、上位にならずですか…。残念です。昨シーズンは、フォードの強さが目立っていたように思いますが。ブリスコーのインディカー復活を強く願っています!日本は、また雪が降るみたいです。天野さんも、お体には気をつけてくださいね。レポート楽しみにしてます‼

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