2018年2月2日金曜日

2018 INDYCARレポート 2月2日ロレックス24アット・デイトナ決勝:キャディラック、デイトナ2連覇 

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キャディラックのアクション・エクスプレス・レーシング
周回数と走行距離の新記録を樹立


 大変遅くなりましたが、第56回デイトナ24時間レースのレポートです。
 優勝はアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)のジョン・バルボサ/フィリペ・アルバカーク/クリスチャン・フィッティパルディ組。マシンはキャディラックDPi-V.R。アクシデントが少なくイエローも4回(=1時間16分プラス)しか出されなかったハイスピード・レースをAXRは1-2フィニッシュで制しました。1992年に長谷見昌弘/星野一義/鈴木利男組ニッサンR91CPが打ち立てたレコード=762周を大きく上回る808周という堂々たる新記録を樹立し、走行距離でも1982年にポルシェ・ターボ(ジョン・ポールSr./ジョン・ポールJr./ロルフ・シュトメレン組)の作った2,760.96マイルという記録を塗り替える2,876.48マイルを走破しました。最長距離を走り切ったんですから、今年のレースは勝つのが大変だったと言っていいでしょう。デイトナ総合優勝はAXRチームにとって3回目。そして、キャディラックはデイトナ2連勝となりました。

4メーカー激突のDPiクラス、将来ル・マンのトップカテゴリーの可能性も
 DPiという新カテゴリーは2年目。キャディー、マツダ、ニッサンに加えてアキュラの新規参入があり、4メーカー激突となっています。盛況だった1990年代アタマまでのIMSAキャメルGTシリーズが思い起こされます。あの頃はポルシェ、ジャガー、ニッサン、トヨタ、マツダ、シボレー……と米欧日のメーカーがしのぎを削ってました。
 参戦経費抑制ばかりに気を取られると魅力あるマシンにはなりません。LMP2にオリジナル・ボディーを架装するというIMSAのアイディアは大正解で、対費用効果がとても大きいカテゴリーになりました。今後、出場メーカーがさらに増える可能性も十分考えられます。「DPiはアメリカのチャンピオンシップ用に生み出されたカテゴリーですが、ル・マンでの総合優勝を狙えるものとなるのか?」というのは多くのメーカーにとっての強い関心事項でしょう。そして、今まだ出場をして来ていないメーカーにとって、かなり気になるポイントと思います。マツダがヨーストを引っ張り出した背景には、「DPiはル・マンのトップ・カテゴリーになる」という話に可能性が結構あるということなのかもしれません。ロジャー・ペンスキー御大もル・マンへの興味を最近語ってました。フォードはあと2年はGTで戦う計画になってますが、その後にDPiへと打って出てくるかもしれないですね。現在の彼らは様子見をしてます。出て来るとしたら、やっぱりガナッシとのコンビですかね。それがロジカルと思います。するとチップはインディーカー、NASCARに続いて、ついにスポーツカーのトップ・カテゴリーでもペンスキーと戦うことになる可能性・大です。

4台のキャディー軍団に対するマツダ、ニッサン、アキュラは2台体制
その中からAXRnキャディー2台とアキュラ2台の戦いに

 近年のスポーツカー耐久は、「予選と変わらない全力疾走を24時間続けなければ勝てない」と言われます。今年のデイトナでも多くのマシンによる熾烈なトップ争いがスタートから繰り広げられました。キャディーは去年の3台体制にスピリット・オヴ・デイトナ・レーシング(SDR)が加割って4台体制。これでライバル・メーカーに対する優位を築き、キャディー同士での競争激化でユーザー・チーム群の更なるレベル・アップも狙っているわけです。今回SDRはエンジンのミスファイアで早々のリタイアとなりましたが、序盤にはキャディーが1-2-3-4でレースを引っ張るシーンも見られました。

 マツダ、ニッサン、アキュラは1チームが2台ずつをエントリー。ニッサンはスコット・シャープ率いるエクストリーム・スピード・モータースポーツ(ESM/2016年はホンダと組んでましたが)との参戦で、マツダは今年からポルシェ、アウディとともにル・マンで15勝の実績を誇るヨースト・レーシングとコンビを組む新体制になっています。

 ハイ・ペース・バトルを続ける中から生き残ったのはAXRのキャディー2台と、今回が実戦デビューのチーム・ペンスキーが走らせる2台のアキュラARX-05でした。

レースの明暗を分けたタイヤ・トラブル
 今年のポイントはタイヤ・トラブル。それがあったチームは脱落し、最後まで戦ったのはタイヤ・トラブルがなかったチームでした。トラブルに見舞われたのは、昨年のデイトナ・ウィナーでシリーズ・チャンピオンともなったウェイン・テイラー・レーシング(WTR)のキャディー(ジョーダン・テイラー/レンガー・ファン・ダー・ザンデ/ライアン・ハンター-レイ組)、マツダ、そしてニッサン勢。タイヤの内圧など、セッティングで攻めた結果という見方もありましたが、多くのチームは「コンチネンタルの推奨している範囲内に設定」と噂を否定(どこまで信用していいのかはわかりませんが)。ただ、タイヤが無事だった組は、ただ運が良かったというのではなく、シケインで攻めまくりのラインを走らないとか、縁石に乗ることなども場所によっては避けるなど、タイヤに負担を強いない走りに務めていたようです。

12時間過ぎ、モントーヤ、パジェノーのアキュラがレースを支配
しかしその矢先に電気系トラブルが発生!
残るカストロネヴェス組もアクシデントで後退


 レースが折り返し点(=12時間経過)を迎えた時、アキュラが1、2番手で、キャディーが3、4番手でした。イニシアティブを取るのはキャディラックからアキュラに変わりつつあったんです。ところが、午前4時過ぎ、ファン・パブロ・モントーヤ/デイン・キャメロン/シモン・パジェノー組のアキュラ6号車は電気系トラブルでガレージ行き。こ子でトップとの間に大きな差が生まれてしまいました。

 これでキャディー2台に立ち向かえるのは7号車(エリオ・カストロネベス/リッキー・テイラー/グレアム・レイホール組)のみに。そしてスタートから約16時間が経過しようという時、リスタート直後のバトルでキャディーの31号車(エリック・キュラン/フィリペ・ナスル/マイク・コンウェイ/スチュアート・ミドルトン組。アクシデント時にドライブしていたのはナスル)と接触。衝撃は思いの外大きく、7号車はラジエターを破損して水が漏れ、ガレージに入って修理を受けることになりました。これで唯一残っていたアキュラも勝利を諦めざるを得なくなりました。

 トップ安泰となったAXRキャディー5号車はペースを落として完走モードに。2番手で彼らを追うのはチームメイトの31号車でしたから。彼らはアキュラとのバトルでもタイヤ・トラブルを警戒してか安全マージンを取った走りを続けてましたから。今年はその戦い方がベストだった。そして、ペースを落としても走破距離の新記録が樹立されました。

オーバーヒートに苦しんでいたキャディ
惜しまれるアキュラのアクシデント

 AXRはレース終盤、2台両方がエンジンのオーバーヒートという大きな問題を抱えました。しかし、彼らのリードを脅かす相手はすでにいなくなっていたので、ガレージに戻って水を補給する余裕もありました。ペースを落としてエンジンを労わりながらゴールを目指すこともできたのです。より症状の酷かった31号車は、先行する相手がチームメイトでもあるし、逆転を目指しての無理はせずにゴールすることにフォーカス。レースに「たられば」はありませんが、アキュラ7号車がもっと小さな差のまま走り続けていたら、2台のキャディーはゴールを目前に揃ってストップという結果になっていたかもしれません。アキュラ勢はトラブルを解消してコースに戻りましたが、2台ともレース前半と変わらぬハイ・スピードでゴールまで周回を重ねました。残念ながらガレージでストップしていた時間が長過ぎたため、彼らのゴールは9、10位となりました。

ル・マンの準備として参戦したアロンソ、目覚ましい走りで13位
 F1チャンピオンのフェルナンド・アロンソは、ル・マン出場準備としてエントリーしたデイトナで目覚ましい走りを披露していました。急ごしらえの2カー・チームが用意したマシンは信頼性が低く、ブレーキやクラッチにトラブルが出てしまいました。それでもアロンソは24時間を戦い抜き、13位でゴール。「楽しかったし、自信を持つことにもなった。ポジティブな印象を自分たちのスポーツカー・レースに持つこととなった。予選まではスピード不足だったが、レースでの我々は競争力があった」とアロンソは自分たちのパフォーマンスを採点していました。そしてレースの翌々日、トヨタは今年のル・マン24時間レースでアロンソを起用することを発表しました。F1とバッティングしないレースには可能な限り出場する契約で、デビュー戦はスパ・フランコルシャン6時間になるということです。ル・マンだけではなく、チームの一員としてシーズンを戦う意向なんですね。アロンソが加入したことで、シート喪失の憂き目に遭ったのはアンソニー・デイヴィッドソン。彼はアロンソが出ることのできないレースには出場しますが……。

GTLMクラスはフォードGT同士の争いを
ブリスコー、ディクソン組の67号車が突き放す


 GTLMはフォード・ワークスのチップ・ガナッシ・レーシングがスタート直後に宿敵シボレー・コーヴェットC7.Rをパスしてトップ、2番手に躍り出、そのままゴールまで1−2体制を守り抜いての勝利を飾りました。フォードGT同士による優勝争いは、終盤のピット・ストップでギヤ・セレクションに問題の出たジョーイ・ハンド/ダーク・ミュラー/セバスチャン・ブルデイ組66号車をライアン・ブリスコー/リチャード・ウェストブルック/スコット・ディクソン組67号車が突き放し、約11秒の差で優勝のゴールへと飛び込んだのでした。去年は66号車がウィナー。ル・マンも含めると24時間レース3連勝でしたから、今回は67号車が勝ってすべてが丸く収まったってところだと思います。GTDはランボルギーニが24時間レースでの初優勝! 参戦2年目のアキュラNSX-GT3は惜しくも2位に敗れました。

 ということで、今年のロレックス24アット・デイトナでは、総合優勝のチームにフィッティパルディがいて、GTLM優勝クルーにはブリスコーとディクソンが含まれました。この3人が元&現役インディーカー・ドライバーでした。


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