2017年9月18日月曜日

2017 INDYCARレポート 第17戦 ゴープロ・グランプリ・オブ・ソノマ Race Day 決勝:レースで勝ったのはシモン・パジェノー、しかしタイトルはジョセフ・ニューガーデン

4ストップ作戦での最終戦を制したパジェノー。タイトルは逃したものの、表情がこの勝利の手ごたえを物語る Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
パジェノー、4ストップ作戦を完全に遂行しての勝利
 予選3位だったシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は、スタート直後に新品のレッド・タイヤを履いた先輩チームメイトのエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)にパスを許して4番手に後退したが、11周を終えたところでピット・ロードへ滑り込み、タイヤをブラックからユーズド・レッドへとスイッチした。そこからのパジェノーはユーズド・レッド、フレッシュ・レッドとレッドを3連続投入! 1回多い4ストップ作戦でトップ、そしてゴールを目指した。この作戦は完璧に嵌り、パジェノーは3スティント目にしてチームメイト3人を大きくリードした。


Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
圧巻、パジェノー!ラストピット終えた直後の65周目
レッドのニューガーデンをブラックタイヤで抑えきる


 ニューガーデンが3回目、つまりは最後のストップを行ったのは85周のレースの62周目。当然タイヤは新品のレッドを装着した。その2周後にパジェノーがピット。レッドを3セットすでに使っている彼にはもうブラックしか残されていなかった。しかし、レッドで築き上げたリードが生きて、パジェノーはニューガーデンのギリギリ前にピット・アウトした。ここからの攻防が今日のポイントだった。

ブラックで力走するパジェノー Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 レッドですでに2周を走っていたニューガーデンは、タイヤが性能をフルに発揮するだけの温度に達していた。対するパジェノーは熱の入りにくいブラックで、かつコールド・タイヤ。この状況は完全にニューガーデンが有利と映った。しかし、パジェノーはコースに出るやいなや思い切り攻め、プッシュ・トゥ・パスも使いながらトップを守った。ライン採りも絶妙で、コース前半をクリアしたパジェノー。注目はハード・ブレーキングの必要なヘアピン状のターン7だった。新品レッドのグリップが威力を発揮するコーナーだが、パジェノーはマシンを完璧にコントロール。暴れさせず、ラインも乱さずにインサイドを保った。ニューガーデンはアウトからアプローチしてラインをクロスさせてのパスを試みたが、パジェノーがコーナー出口でも踏ん張り切った。ここをトップでクリアしたことで二人の勝負は決着。パジェノーはリードを広げ、今シーズン2勝目、ソノマでの2年連族優勝を飾った。

2年連続の最終戦勝利、しかしタイトルには13ポイント届かず

 
 ダブル・ポイントのレースをパジェノーは狙っていた通りに制した。しかし、2017年のインディカー・チャンピオンに輝いたのはニューガーデンの方だった。リード・ラップはパジェノーもニューガーデンも41周。こういう場合は上位フィニッシュした者に最多リード・ラップのボーナスは行くが、ニューガーデンは2位フィニッシュで獲得ポイントを642点に伸ばし、パジェノーの合計ポイントは629点となった。ランキング4番手でソノマ入りしていたパジェノーは、13点の差でランキング2位となった。


ワインの産地ソノマのポティウムで、勝利のワインを飲むパジェノー。考えうるベストなレースで優勝してもなおタイトル防衛には13ポイント届かなかった、このワインの味はどんなものだったろうか? Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  「1シーズン戦って13点の差でタイトルを獲れなかった。最終戦で勝つことはできたけれど、満足はできない。やっぱりチャンピオンシップを防衛したかったから。今日のレースでは最大限の力をチーム全体が発揮した。クルーも、エンジニアも、僕もストラテジストも。そうして勝てたということからは大きな達成感が得られた」とパジェノーは語った。

決勝前夜、エンジニアが提案してきた4ストップ
 

リスキーと思われた4ストップ作戦だったが、ドライバーとチームがともに完璧に仕事をこなし、優勝をもぎ取った Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
  4ストップ作戦は序盤のレース展開に対応してのものではなかった。「昨晩エンジニアに伝えられたんだ」とパジェノーがレース後に打ち明けた。サム・シュミット・モータースポーツ時代からコンビを組んでいるベン・ブレッツマンとパジェノーは議論をしたというが、「イエローが出た場合も、そうでない場合も4ストップが有利」と説得され、納得してレースを迎えた。そして、その作戦が効果を発揮するのに必要なアグレッシブ・ドライビングを実現してみせた。
 上位フィニッシュを重ねて最終戦で勝った。しかし、タイトル防衛にはあと一歩届かず。ゲイトウェイでのニューガーデンとの接触がなく優勝できていたら……と悔やまれるところだろう。

ニューガーデン、チャンピオン獲得
「インディカー・ファン全員に感謝する」

 
Photo:INDYCAR (Shawn Gritzmacher) クリックして拡大
  ペンスキー入り初年度のニューガーデンは、キャリア初のタイトル獲得を達成した。26歳のアメリカン・チャンピオン誕生だ。年間4勝なら堂々のチャンピオンだと言える。「まさか今年自分がチャンピオンになれるとは!」と彼は驚き、喜んでいた。「チーム・ペンスキーは本当にすごいチーム。中に入って持っている力を改めて強く感じた。こうしてチャンピオンになれたのは、2号車のクルーたちのおかげでもある。彼らにどんな言葉で感謝の意を伝えていいのかわからない。今日のレースではパジェノーをパスして優勝することを目指していた。そうするのが自然なことだからだ。しかし、ピットからは冷静さを保って愚かなことをしないよう注意された。今日はパジェノーがウィナーだ。彼が最も速かった。タイトル獲得はファンの支えもあってのこと。インディカー・ファン全員に感謝する。世界で最高のファンだ。インディカー・シリーズはのびている。僕らのレースが素晴らしいスポーツであることを人々がわかってくれて来ている。来年もみんながレースを見に来てくれることを期待したい。絶対にガッカリはさせないから」と話した。

チーム・ペンスキーがトップ3を独占
ディクソンは4位となり、ランキング3位に


アスターカップを前に、笑顔を見せる総帥、ロジャー・ペンスキー。チーム・ペンスキーの力を見せつけた最終戦だった Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  3位はパワー。最後は3位キープでスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)のアタックを封じ込める係になっていた。パワーのポイント・スタンディングは最終的に5位となった。
 最終戦はチーム・ペンスキー、そしてシボレーの1-2-3。


辛うじてペンスキー勢の一角を崩したものの、ディクソンはニューガーデンの前に一度も出られなかった Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
  4位はディクソン。カストロネヴェスは5位。ディクソンはランキング3位でシーズンを終えた。カストロネヴェスはその後ろの4位。

佐藤琢磨、アクシデントとトラブルで完走ならず
ポイントランキング8位でシーズンを終える

 
 レースの6位争いはグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が制し、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)はバトルに敗れはしたものの、7位でアンドレッティ・オートスポート勢最上位フィニッシュ。
 佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は6周目にタイヤがパンク。1周遅れに陥った。そして最後はメカニカル・トラブルによりコースサイドにストップ。最終戦も持てる力をレースでフルに発揮することができなかった。琢磨の年間ランキングは自己ベストの8位となった。
以上

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