2017年8月21日月曜日

2017 INDYCARレポート 第14戦ABCサプライ500 Race Day 決勝:ウィル・パワー・パワーがポコノ2連勝

パワー、手応え十分な勝利!Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
パワー、ラップダウンに陥りながら、巧みな戦略で劇的逆転勝利
 
 まだレース序盤の66周目、トラブルを抱えたフロント・ウィングを交換したためにラップ・ダウンに陥ったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だったが、116周目に出たイエローのおかげてリード・ラップに復活。更には、順位が後方なのを利用してイエロー中にピット・ストップを繰り返し、燃費セーブの心配から解放された。この作戦は大きな効果があり、大量リードを手に入れた。レース展開を見事に味方につけたパワー陣営は、アクシデントを回避した際に追突されて破損したリヤ・ウィングの効果までも行い、大逆転優勝へと突っ走った。レース終盤にはチームメイトのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)に接近を許したが、豪快かつ巧みなライン採りでアタックのチャンスを与えなかった。



10回ものピットインで、燃料セーブのリスクを回避したパワー。粘り強い戦略が逆転勝利をもたらした Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
喜ぶパワー「すごいレースになった!
絶対に諦めちゃいけないんだよ」
 

 500マイルのレースで10回ものピット・ストップを行いながら、パワーは優勝を飾った。2位ニューガーデンのピット回数は7回。レースを通してトップ・グループで戦い続けたアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は6回しかピット・ストップを行なわなかったが、ゴールは3位止まりとなった。
 パワーがこの勝利を喜んだのは当然のことだ。「すごいレースになった。インディーカーらしい戦いになっていたとも言える。自分たちは後方にいたことで燃料の多くある状況を作ることができた。絶対に諦めちゃいけないんだよ、インディーカーのレースは。特にオーヴァルではね。ラップ・バックして勝つことが可能なんだ。今日は劇的な勝ち方だった。自分でもそう思う。1ラップ・ダウンからの勝利には大いに満足している。そしてポコノでは2連勝。それも嬉しいんだが、去年とまったく違う勝ち方となった点も大きな喜びだ」とパワーは語った。

「上位陣が最後のピットストップに向かったとき
自分は思い切りハードに2ラップを走った」


この勝利はパワーにとって今シーズン3勝目。インディーカー通算では32勝目となり、インディーカー通算勝利数は9位となった Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
  「周回遅れになった時はガックリ来たが、辛抱強く走ることにした。リスタートなどには注意深く対処し、タイミングよくイエローが出るのを待っていた。そして、その通りの展開になった。リード・ラップに戻れた時、”ヨシ、ここからが勝負だ”と考えた。そこからは1台ずつ確実に抜いて行った。上位陣がパラパラと最後のピット・ストップに向かった頃、自分は思い切りハードに2ラップを走った。217マイル台を続けて出した。そこで大きなリードを築くことができた。自分で考えていた以上のリードになった。最後にはジョセフが後ろに来たが、インに入らせなければパスされることはないと思っていた。それは正しかった」とパワーはレースを振り返った。残り4戦でポイント差52点だったパワーだが、今日の勝利で残り3戦で42点の差となった。

ニューガーデン、2位に終わるもポイントリードを拡げて満足


集団走行するペンスキー軍団。チャンピオンシップを直接争っているニューガーデンとカストロネベスの差はこのポコノで18点に広がった Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
 ニューガーデンは先輩チームメイトに脱帽だった。「勝てる可能性があったのだから、2位は悔しい結果。しかし、今日はウィルの方が僅かだけれど速かった。彼に並びかけることができなかった。アウトから抜き切るだけのスピードが自分にはなかった。ポイントを多く稼げた、という点で良い1日だった」。ポイント2位のエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)が7位フィニッシュ、ポイント3位のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)が6位フィニッシュ(チームメイトのシモン・パジェノーが最終スティントで彼をパスするアシストあり)となったことで、ニューガーデンのカストロネヴェスに対するポイント・リードは7点から18点に広がり、ディクソンとの差も8点から22点に広がった。ペンスキー移籍初年度に初タイトル獲得はなるか? 残る3戦が楽しみだ。

ロッシ、最終スティントでペンスキー勢にアタックできず3位

 
 3位フィニッシュしたロッシは、「自分は最終スティントのバトルでチーム・ペンスキーの二人をパスするスピードがなかった。ニューガーデンがパワーを抜けなかったのと同じく、自分はニューガーデンにアタックすることができなかった」と話した。トロントに続く今季2度目の表彰台となったが、彼が勝っていても何の不思議もないレースだった。

劇的逆転勝利に興奮を抑えきれないパワーと、ポイントリードを広げて前進したニューガーデン。ペンスキー2人に今日は脱帽という表情のロッシと、表彰台は三者三様 Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
  ニューガーデンの2位フィニッシュもパワーと同じで、レース中盤の順位が後方だった点を味方につけて達成された。パワーがリード・ラップに復活した120周前後のイエローで、彼もまた燃料補給を行なった。パワーは最後尾だったからピット・ストップを繰り返したが、ニューガーデンは一度のトップ・オフ(少しだけ減った燃料を満タンまで継ぎ足すこと)だけだった。この時の作戦の差が優勝と2位を分けたとも考えられる。マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)がトップを走っていた182〜190周、セカンド・グループでのバトルで奮闘し、ニューガーデンは順位を上げた。ここが今日の勝負どころだった。序盤からトップ・グループを走り続けていたトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)、そしてロッシの前に出ることに成功した。パワーはすでに他の全員と異なる作戦で戦っており、結果的にそれがアドバンテージに繋がった。パワーと同じトップ・オフ作戦を採っていたら、ウィング交換なども必要だったパワーを負かすことができていた可能性が高い。

佐藤琢磨、序盤からアンダーステアに苦しみ13位に終わる

 
ひどいアンダーステアのためポール・スタートの優位を生かせず、琢磨は苦戦を強いられる Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大

 佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)はポール・スタートだったが、1回目のピット・ストップを行うこととなった24周目までに17番手まで順位を下げた。ハンドリングが大きなアンダーステアになっていたからだ。マシン自体に何か問題が発生したのか、チームの作業ミスによるものなのか、グリッドに並んだ時点で琢磨のマシンはセッティングに何かおかしな点ができていたようだ。そうでなければ、あそこまで戦闘力のない戦いにはならないはずだ。チームメイトたちは、琢磨と大きく違わないセッティングとなっていたはずだが、ロッシは終始トップ争いに絡み、44周ものリード・ラップを記録。ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)も最後尾に近い21番グリッドから100ラップでトップにまで上り詰め、12周レースをリードし、最終的に8位でゴールした。琢磨は13位に終わった。
 「何があったのかはわからない。原因を究明するためにマシンをキッチリと調べます。マシンのハンドリングがスタートから大きなアンダーステアになっていて、ウィングを6ターンも立て、リヤ・ウィングの角度もレース中に変えた。最後までレースを戦っているという感じじゃなかった。絶対にリベンジしたいね、ポコノは」と琢磨は語った。

1 件のコメント:

  1. ブルデーが、復帰とのニュースを聞いてうれしく思います‼驚異の回復力にびっくりしてます。ハンターレイも、心配してましたがそれどころかトップに立つほど…強いですね‼琢磨選手、ポールを取っていけるかと思いましたが…予選が残りのアンドレッティのドライバーがイマイチだったから決勝は立場が逆転してしまったのでしょうか?今日は、解説が久しぶりの小倉さんでしたね。小倉さんの解説も、大好きなのでうれしかったです‼ブルデー、早く観たいなぁ…。

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