2017年7月17日月曜日

2017 INDYCAR レポート 第12戦ホンダ・インディー・トロント Race Day 決勝:ジョセフ・ニューガーデンが今季2勝目


今シーズン2勝目をあげ喜ぶニューガーデン。ランキングでもトップと23ポイント差の4位に浮上 Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
予選7、8、6位が表彰台に! 予選トップ5は何処に?
 

 トロントのウィナーは7番グリッドからスタートしたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。2位は8番手スタートだったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。3位は6番手スタートのジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。この結果だけ聞いたら、どんなレースだったって想像します? 予選トップ5はどうしちゃったのか? って疑問が湧きますよね、きっと。その疑問にお答えします。ポール・シッターだったシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は奮闘はしたけれど5位でのゴールがやっとで、予選2位だったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は9位でした。予選3位だったエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)はその前の8位で、予選4位だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は0周リタイアという結果でした。

スタート後、1コーナーに進入するトップ集団。この直後、カストロネヴェスがインからレイホールとパジェノーを一気にかわしてトップに浮上。ディクソンもパワーの前に出た Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
パワー、不運なクラッシュで0周リタイア
 

 パワーについてだけはスンナリ納得しちゃう人もいるでしょうが、意外にも1周目のターン3入口でスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)にブツケられた感の強かったアクシデントでした。ピットまで戻ったパワーでしたが、右フロントのサスペンションが壊れていたためにリタイア。最下位21位で9ポイントしか稼げませんでした。ポイント・スタンディングはひとつ下がって5位に。トップとのポイント差は53点から64点に広がってしまいました。予選5位だったディクソンの方はというと、アクシデントをどうにか乗り越えて10位でゴールし、ポイント・リーダーの座もどうにか守りました。2番手につけるカストロネヴェスとの差は8点とレース前にも少なかったんですが、これが3点にまで縮まりました。

レースを決定づけた20周すぎのフル・コース・コーション
 

 パワーとディクソン以外の上位陣がまとめて後退させられたのは、20周を終えたところで出されたフル・コース・コーションによってでした。結果的に、今日最も重要なポイントとなったのが、このイエローのタイミングだったわけです。ピット・アウトした直後のトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)がターン1のタイヤ・バリアにクラッシュ。ベテランらしからぬコールド・タイヤでのミスで、これが本当にひどいタイミングでした。このイエローが出される前にピットしていたチームは大きなアドバンテージを喜ぶことになり、ピットしていなかった面々は取り返しのつかないほどの大きな不利を被ってしまったんですから。

地元ヒンチクリフ、またしてもラッキーで息を吹き返す
 

2位のロッシ、3位のヒンチクリフもともに20周目のイエローの前にピットインしたことで一気に流れを手繰り寄せての表彰台 Photo:INDYCAR (Joe Skibinski) クリックして拡大
  ヒンチクリフは“持って”ますね。地元で2年連続3位フィニッシュなんて。予選が6位で決勝は3位と、彼がどちらでも上位の成績を残せたのは、レッド・タイヤ装着でのスタートからのスティントで遅かったから……というところは何とも皮肉。パフォーマンスが低いのがプラスに作用するとは! まだ20周という時点で前を行く4台には大きく引き離され、後ろにはマシンが渋滞を作っていた。「こりゃブラックに早く換えねば」とヒンチがピットしたのは22周目で、イエローが出たのはその次の23周目。絶妙のタイミングでした。
 遅いヒンチの後ろにスタックしているのがイヤで、21周でピットしたのがロッシでした。更に後方のマックス・チルトン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)とライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)もその周にピット。ヒンチと同じ周にピットしたのがアンドレッティでした。彼らのフィニッシュ・ポジションは? チルトンが7位、ハンター-レイが6位、アンドレッティが4位(マルコにも、ごくたまに幸運が味方してくれること、あるんですね)。

レースペースが上がらなかったことが功を奏す皮肉な展開に
 

 優勝したニューガーデンは22周目を終えようというところで、ピット・クローズ直前にピット・ロードに入りました。これがまた、ヒンチクリフ同様に遅かったのが幸いしたケースだったのですよ。なんか、やるせないですよね。カストロネベス、パジェノー、レイホールのトップ3にニューガーデンは少しずつ離され始めていた。カナーンのアクシデントが起き、多くのチームが「ピットしろ!」と叫んだ時、3位走行中だったレイホールはピットの入り口を通過したところだったんです。ニューガーデンは遅れ始めていたからこそピット・ロードに入れたのだから、もう超ラッキーでしたね。ピットで作戦をコールするティム・シンドリック社長が冴えてたんじゃなく、たまたまドンピシャのタイミングだっただけの話、のはずです。

ニューガーデン、結局58周のリード・ラップを保っての圧勝
 

ピットタイミングでリードラップ最後尾となってしまった拓磨と、首位を快走するニューガーデン。琢磨はニューガーデンにパスされることなく、同等のラップタイムで周回していたが、その後イエローが出ることもなく、挽回のチャンスはめぐってこなかった Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
 レースが再開された時、イエロー前にトップを快走していたカストロネヴェスのポジションは14位(!) PPスタートから2位を保っていたパジェノーは15位でした。残りのレースで必要なピット・ストップの回数が同じ、イエローは二度と出ず…………では予選で見事な戦いぶりを見せ、レース序盤も速かった彼らとレイホールが哀れとさえ感じてしまいます。
 ニューガーデンは、すぐ後ろの2番手につけたロッシのスピードが伸びて来なかったので、58周ものリード・ラップを記録して優勝。チーム・ペンスキー入りして2勝目です。ぶっちぎりのトップを走っていた先輩チームメイトのパワーがタイヤ・トラブルで姿を消した、今年の第3戦バーバー・モータースポーツ・パークでの勝利以上にラッキーでした。もちろん、3分の2ほども残されていたレースをミスなくハイ・ペースで走り切ったところはキッチリと評価をすべきなのでしょうけど。

佐藤琢磨、7番手に浮上したところでイエロー
マシンの仕上がりが良かっただけに悔しい結果に

 
 佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)も残念ながら不運組に入ってしまってました。たら・ればが虚しいだけなのはわかってるつもりですが、予選10位からスタートでチルトンをパスし、パワーが消え、ディクソンがピットしたことで7番手に浮上したんですが、ロッシやマルコたちと同じタイミングでピットせず、表彰台に上るチャンスを逃しました。マシンの仕上がりが良かっただけに悔しさ100倍というレース後の琢磨選手でした。
「レース展開にガッカリしています。スタートは良く、幾つかポジションを上げることができました。イエローの後にはターン4でスペンサー・ピゴットが寄せて来て、壁とのサンドイッチにされてしまいました。ドライバーズ・ミーティングでターン3~4では並んでいる相手にスペースを与えろって話があったばかりなのに。接触でタイヤを傷め、ダメージを受けたタイヤによってフロント・ウィングを壊してしまい、ノーズ交換。タイヤもユーズドのレッドしか最後には残っていないこととなり、ゴール前は厳しい戦いになっていました。イエローも出ず、チャンスは巡って来ませんでしたね。マシンが速かっただけに残念です。スピードという点で見れば、トップ・グループに数えられる走りができていたんですから」と琢磨選手は話していました。
 イエローが出たらピットはクローズ……ってルールが良くないってことでしょう。運が結果に影響を与え過ぎちゃってはならない、と思います。
以上

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