コースレコードで堂々のポール・ポジション獲得!Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 |
予選グループ1、ラスト1周勝負でハンター-レイがトップに
夜から朝にかけてデトロイトに雨が降った。しかし、午前10時45分に予選グループ1が走り出す時には路面はドライ・コンディションになっていた。今日もアタックできるのは12分間だ。
グループ1の走行開始直前から少し雨がパラつき、レッド・タイヤでいきなり走り出す者も少なからずいた。しかし、このセッションで最も重要だったのは、カルロス・ムニョス(AJ・フォイト・エンタープライゼス)のクラッシュで出されたレッド・フラッグの後の戦いだった。残り1分38秒でグリーン。アタックできるのは1周だけだった。ピットから全車が新品のレッド・タイヤを装着してダッシュした。
赤旗前のトップはエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)だったが、1周限りの勝負ではライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)の1分15秒2833が最速となった。カストロネヴェスは1分15秒5279で2位。3位はミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)の16秒0371。4位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)の1分16秒1727。5位はコナー・デイリー(AJ・フォイト・エンタープライゼス)の1分16秒1732だった。
グループ2の序盤、ウィル・パワーがハンター-レイのタイムを更新
グループ2では、ほぼ雨の心配はなかったこともあり、過半数がブラック・タイヤ装着で走り出した。ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)はフレッシュ・ブラックでコース・インし、2周目にハンター-レイのベストを上回る1分15秒0321を出した。
パワーはその後もブラックで走り続け、4周目には1分14秒1798を出して2番手以下を突き放し、次の5周目には1分13秒9449を叩き出した。これでPPは確定かと見え
た。しかし、セッションが終盤に入ると好タイムが続々記録された。マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が1分14秒台前半に入った。
佐藤琢磨、レイホールのコース・レコードを更新してトップに!
レイホールに逆転を許すも、再逆転でポール・ポジション獲得
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琢磨が先陣を切った1分13秒台での戦いには、昨日のポール・シッター、レイホールがやはり加わって来た。彼は7周目に1分13秒8105で琢磨からトップを奪った。しかし、琢磨にはまだもう1周残されており、1分13秒6733で逆転! 再びトップに立った。そして、レイホールの最終アタックが1分13秒8392で自己ベストの更新がならなかったことから、琢磨のキャリア6回目のPP獲得が決まった。
以下は会見での琢磨。
佐藤琢磨:インディ500優勝後のメディア・ツアーは本当に疲れました。クタクタでしたよ。しかし、インディカーのPR担当の女性たちがファンタスティックで、ニュー・ヨーク、テキサスと2〜3日で回りましたが、この3晩は十分睡眠時間が取れ、体力は戻って来ています。そして、ヤル気満々です。ご覧の通りアドレナリンが出てます。1週間前と同じぐらいハッピーです。
このPPはチームのおかげです。26号車のスタッフが本当に頑張ってくれています、クルーもエンジニアのギャレット(・マザーセッド)も。昨晩、彼と僕は凄い議論をしました。今朝もまだ怒っていたぐらいでしたが、そうしたことがあったせいでマシンのセッティングを良いものに仕上げることができたんだと思います。
チームメイトのライアン・ハンター-レイにも感謝します。彼はグループ1で見事な走りを見せ、グループ2で走る僕に有用な情報をたくさんくれました。ドライヴァーが実際に感じたことを走行直後にダイレクトで聞くことができた。それは本当に大きな意味がありました。走る前に自分の走りをイメージできるたんですからね。僕らのアタックにとって大きな助けとなったのは間違いありません。例えば、ターン1とターン2は驚いたことに路面があまりデキ上がっていないとか、ターン12とターン13は逆に想像以上にグリップが高まっているなどと教わりました。彼がどんなタイヤの内圧設定で走ったのか、ステアリングの舵角などのテレメトリー・データも参考にできました。
実際に走り出してからも、マシンや路面をアウト・ラップの時点から感じ取り、1周目に入りました。2周目にタイヤがアタック可能な状態になるので、すべての要素が整った次のラップは100パーセント攻めました。全力を出し切りました。マシンの持っている力を全部引き出し、コースも端から端まで1インチも無駄にすることなく使い切りました。壁にぶつかりそうになったシーンも2回ありました。しかし、マシンの状態に本当に満足していたし、自信もありました。アンドレッティ・オートスポートのチームワークのおかげです。
今、私は人生最高の時を過ごしていると感じます。
これだけ難しいサーキットでコース・レコードを樹立できた。とても嬉しいことです。本当にハッピーです。
「インディーで得た自信が今の自分にはある」
インディー(高速オーバル・コース)とデトロイト(ストリート・コース)はまったくキャラクターが異なりますが、インディで得た勢いが今の自分にはあると思います。モータースポーツにおいては、自信というのは重要なファクターです。自分自身を向上させようと頑張るためには、自分の能力を信じる必要があります。自分を支えてくれる人たちにも同じように自信を持ち、一緒に進んで行くんです。マシンに対する信頼、自信も要ります。インディーは時速230mphの世界で、デトロイトは170mph。スピードは違いますが、どちらも壁に囲まれたコースで、走行ラインは1インチでもミスできません。
だから自信は重要なんです。ホンダ、そしてHPDの強さも、もちろんあります。インディでの彼らも素晴らしかったけれど、ストリートでもすごい力を発揮し、しかもコース・レコード樹立までがなりました。ホンダの頑張りには信じられないものがあります。ありがとうホンダ!
「体調維持に気を付けていましたが、声だけはまだ回復していません」
今の気持ちは言葉にできません。インディ500で優勝してから今まで、信じられないような日々が続いています。昼間は11時間ぶっ続けでメディアに対応し、睡眠は3時間半でした。移動のフライトはどれも深夜12時を回ってからでした。信じられないスケジュールで、一瞬足りとも休めませんでした。
チームメイトにも、その他の人々にも、インディー・ウィナーはデトロイトに来た時には疲れている、と聞かされていました。100%の力は発揮できないと。体調を良い状態に保つのが難しいんですね。だから私は、良いコンディションに自分を保つよう十分に気をつけていました。それでも、声だけはまだ回復できていません。
しかし、私は幸せだと感じています。昨日のレースは難しい戦いになっていました。それでも、チームは良いパフォーマンスを発揮していました。午後のレースはチームメイトと並んでフロントローからスタートします。それはデトロイトのようなストリート・レースでは大きな助けになります。
日本に帰れるのはテキサスの後です。会見を開きます。インディ500優勝は東京だけでなく、日本中でビッグニュースとなっています。日本は9・11からの復興中で多くの支援を今も必要としていますから、テキサスの後に帰国することで何かをもたらすことができたらいいと考えています。
今はテキサスよりも前、今日の午後のことをよく考えないといけませんね。レースでは作戦も大事でしょうし、雨も心配です。天気によっては戦い方が複雑になるかもしれません。ミスのないレースを戦いたい。幸運は必要ないけれど、不運には見舞われないようにしたいですね。
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さらに琢磨にQ&A
――久しぶりのポール・ポジションですが、どうですか?
佐藤琢磨:もう最高ですね。やっぱり。しばらくポールから遠ざかってましたけど、ようやく素晴らしいクルマでアタックすることができましたね。アンドレッティ・オートスポートがそういうクルマを作ってくれました。自分が理想とする、すべてを出し切ることができた。それは久しぶりの感覚だったから、本当に最高です。
――ユーズドのレッド・タイヤで走り出しましたね?
佐藤琢磨:最初はそうでした。
――感触を先ずは掴んで…………ということですか?
佐藤琢磨:そうです。ニュー・ブラック・タイヤの方が速いのはわかってたんだけど、僕の感覚というかを掴みたかったのでユーズド・レッドで行きました。
――セッション終盤にあそこまでタイムが縮まって行くことは予測できてたんでしょうか?
佐藤琢磨:いや、してなかった。1分14秒台は出ると思ってたけども、ニュー・タイヤでグリップが凄く上がってったし、全員が新品のレッドを使い出して、やっぱり路面のラバーの乗りが的面に良くなりましたね。だから、感覚としては、グループ1に比べて圧倒的にグリップが上がってましたね。
「今日のアタックでターン1からターン2に行った時の
フロントの入り方はもう忘れられない」
――最後の2周は全力、そしてパーフェクトな走りにできてましたか?
佐藤琢磨:もう何も残ってない。チェッカード・フラッグの時にベスト・タイムだった。2014年のポールポジションもそうだったんだけど、本当に1周ごとにラバーの乗り方が違うんですよね。だから、今日のアタックでのターン1からターン2に行った時のフロントの入り方は、もう忘れらんないね。最高ですね。
――やっぱりレイホールとの戦いになりましたね。
佐藤琢磨:そうですね。グレアムが来るのはわかっていたし、昨日の彼のレースでのスピードはすごかった。素晴らしい仕事を彼とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはしたと思う。それに負けないように、昨日の夜中の12時まで(エンジニアの)ギャレットとずっと話してて、今日の朝も8時から30分ぐらい、もうほとんどケンカに近いぐらいの感じで話したんですよ。でも、それもこれも、やっぱりベストを尽くしたかったので、それがこういう結果になって本当に嬉しい。完全なチーム・エフォートですね。
「ライアンとレースコントロールして戦いたい」
――決勝に向けては?
佐藤琢磨:ここまで来るとクルマをいじるのは怖いので、まぁ、決勝に向けた、昨日の反省点を活かして、どれだけ足りていなかった部分をカバーできるか、ですよね。あと、やっぱりフロント・ロウを取れたのが嬉しいですね。しかも、チームメイトのライアンと並んでのスタート。もちろん、どっちがターン3に先で前に出てるかはわからないけども、願わくば二人でレースをコントロールして、そのままノー・サプライズでしっかりレースを終わりたいですね。
――雨は?
佐藤琢磨:雨はもう降らないで欲しい。以上
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