2017年6月11日日曜日

2017 INDYCARレポート 第9戦 レインガード・ウォーター・シーラー600 決勝:ウィル・パワーがテキサスのウィナーに

珍しくビクトリーサークルで喜びを爆発させるパワー。序盤にパックの混戦から抜け出す作戦が見事に的中しての勝利だった  Photo:INDYCAR (Chris owens) クリックして拡大
激しいパック・レーシングを制したのはパワー

 ワイルドでしたね。ワイルド過ぎました。
 勝ったパワーはこう言った。

 
 「コースが変わってもパック・レーシングになるのはわかってた。インディカーにもそう言っておいた。僕はパック・レーシングが良いとか悪いとかは言わないよ。でも、ターン1側に2レーン目ができるのは当然。レースが進んでタイヤ・ラバーが乗って来れば、グリップが十分に高まるんだから」。


59周目にトップに立ってから、フィニッシュまで合計180周ラップリードしたパワー。ペンスキーの迅速かつ確実なピット作業が勝利を支えた Photo:INDYCAR (Chris owens) クリックして拡大
「今晩のレースでは何周目でもタイヤは新品のようなグリップを感じられた」

 ダン・ウェルドンを失ったラス・ヴェガスでの大事故でパワーも背中に大きな怪我を負った。彼はパック・レーシングを歓迎していない。しかし、「嫌いだ」、「やるべきじゃない」と強い反対意見を言わない代わりにひとつの提案をした。
 「僕はタイヤ・デグラデーションが好きだ。それがあれば、マシンの側で対策ができる。スティントの半分ぐらいまでとか、最初の10周ぐらいが今日みたいな接近戦になるのはいい。でも、その後はタイヤのグリップが下がって、順位間に差が生まれるべきだと思う。今晩のレースではデグラデーションがなかった。何周目だろうが関係なく、新品タイヤのようなグリップが感じられていた。それがタイトなレース、接近戦を実現させていたと思う」。

レース序盤にトップに立つ作戦が奏功
パジェノーをトレースさせ混戦に巻き込まれることなく快走


 パワーの勝因は、スタートからの積極的な戦いぶりにあった。
 「序盤にトップ近くまで順位を上げる。そこがポイントだった。レースの前にチームの作戦会議でそう話していた。トップに出て、インベタを走り続ければ抜かれにくい。トップに立ってからは、クルーがピットでもトップを保たせてくれた」。
 彼がトップを走るすぐ後ろをシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)が走り続けた。パワーのラインをトレースするようにして走り、後続のアタックを退ける役をパジェノーは引き受けてくれていた。横に並ぶとスピードが下がるため、縦に並んでハイ・ペースを保って逃げる作戦だった。おかげでパワーは随分と楽なレースを戦っていた。

30周ごとにイエローコーションを出し、全車タイヤ交換義務付けに


 8台が犠牲になる多重クラッシュの後、インディーカーは「30周毎にイエローを出し、ピットで4本のタイヤ交換義務付け」というルールを急遽採用した。ブリスターに悩ませれたり、クラッシュしたドライバーもいたからだ。

 レース終盤、優勝争いはパワー、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)、パジェノー、佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)という濃いメンバーで行なわれることになった。

ディクソンとの最後の戦いは実現せず

パワー、ディクソンのトップ争いに佐藤琢磨が加わり、手に汗握る展開となった終盤戦だったが、244周目に発生した佐藤琢磨とディクソンのクラッシュでアンダー・イエローでのフィニッシュを迎えることに。2位は152周目のマルチクラッシュの引き金となったカナーン Photo:INDYCAR (Chris owens) クリックして拡大
 パワーはこう考えていた。
 「心配だったのはディクソンの速さ。一度すごいリスタートでパスされそうになった。その時、最終ラップのゴールラインで逆転される可能性があると思った。それを封じ込めるために何をすべきか、走りながらずっと考えていた。最終ラップの最後がどんな戦いになるのか、楽しみにしていた」とパワー。その戦いは実現しなかった。どんなバトルが繰り広げられたのか、パワーの考え出した手はどんなものだったのか、見たかった気がする。

3本目のラインで勝負に出た佐藤琢磨、クラッシュ  

ピットレーンでのもらい事故で一時はラップダウンに陥った佐藤琢磨だったが終盤には優勝争いに加わる Photo:INDYCAR (Chris owens) クリックして拡大
 「レース中に1回か2回、3ワイドというスポッターの声を聞いたけど、3本目のレーンはなかったと思うよ」ともパワーは話したが、3本目はできていた、最後の最後に。そのグルーブを使ってスリリングなパスを実現していたのが、琢磨だ。ゴールまであと5周、3番手争いをしていた琢磨はグランド・スタンド前のキンクでインの芝生にタイヤを落とし、クラッシュ!
 「またアイツがクラッシュか」という人がいたのも確か。しかし、優勝のチャンスだったんだから、アタックして当たり前。マイケル・アンドレッティをはじめ、チームのスタッフは彼の戦いぶりを賞賛していた。


荒れた展開の中、光ったヴォーティエの走り

 
大外ラインからトップを奪う大胆なドライビングで序盤の主人公となったヴォーティエ。計4回、15ラップをリードし、中盤以降も上位パックの中で戦い続けていたが152周目のマルチクラッシュに巻き込まれてレースを終えた Photo:INDYCAR (Chris owens) クリックして拡大
 今日のレースでは、スポット参戦のトゥリスタン・ヴォーティエ(デイル・コイン・レーシング)がクラッシュに巻き込まれるまでノリノリの活躍だったし、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がピットでスピンしたり、カナーンとぶつかって意見を対立させたり……などと盛りだくさんでした。

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