2017年4月29日土曜日

2017 INDYCARレポート R4 デザート・ダイアモンド・ウエスト・ヴァレー・フェニックス・グランプリ Day1 予選:エリオ・カストロネヴェスが2年連続ポール・ポジション

Photo;INDYCAR (Chris Jones)クリックして拡大
2月のテスト以来のシボレー軍団の優位は崩れず
 
 2月の合同テスト=2日間でのベスト・ラップ・タイムはJR・ヒルデブランド(エド・カーペンター・レーシング= ECR)による19秒0401。昨年の予選でエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)が記録した19秒0997のコース・レコードを非公式ながら破った。2番手は彼のチーム・オーナーのエド・カーペンター=19秒1223。3番手がチーム・ペンスキー入りしたばかりのジョセフ・ニューガーデン=19秒1693で、4、5番手はカストロネヴェス、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。
 あれから2ヶ月半以上が経過。各チームともデータ解析を行なってレース・ウィークエンドを迎えたが、シボレー軍団の優位は揺るがなかった。ショート・オーバルでのエアロ・パッケージはシボレーの方がパフォーマンスが高いままということだ。

エド・カーペンター、トラブルで走れず

 合同テストで走行量は十分確保されたということで、フェニックスでのレースは2デイ・イヴェントとしての開催。今年の決勝レース・スタートは午後6時半なので、走行コンディションが似たものになるようにと予選の前の午後4時から6時まで、2時間に渡る長いプラクティスが用意された。
 ここでテストの時と同様にシボレー軍団が速いとわかった。不運にもエド・カーペンターは燃料系トラブルでほとんど走れなかった上、フューエル・セルまでマシンから下ろしての作業を行なったため、予選でのマシンは走るだけで精一杯という悲惨さ。久々のレー、スながら勝てる大きなチャンスだ考えていたはずのカーペンターは最後方21番グリッドからスタートすることになった。

カストロネヴェスが2年連続PP達成
2番手パワーでペンスキーがフロント・ロウ独占


 カーペンターが本来の力を発揮できなければ、ペンスキーが圧倒的優位に立つのは当然。カストロネヴェスが、トップにいたウィル・パワーを上回る2ラップ=37秒7538をマークして2年連続PPとなった。パワーは今季の4戦で3回目のPPを0.1728秒の僅差で逃したが、ペンスキーはフロント・ロウ独占を達成した。
 「予選はとても大変なんだ。それを皆に理解してもらうのは難しい。今日の予選は風が強いコンディションで、僕の豊富な経験を活かすことができた。とても嬉しい。プラクティスは強風だった。時折吹く突風が危険だった。僕は決勝用セッティングを主に行なった。予選用セッティングは僕のエンジニアに任せた。そして、彼が最高のマシンを用意してくれた。風の影響を感じずにアタックできた。予選と決勝は別物とよく言われるが、僕はプラクティスでセッティングをチェックしていることもあって決勝に向けても自信アリだ」とカストロネヴェスは語った。
 パワーは、「プラクティスより予選の方がコンディションは良かったが、ターン2で理想のラインにマシンをキープするのは難しかった。砂がコースに出ていたためだ。マシンのフィーリングは素晴らしかったが、僕より少しだけダウンフォースを削ってアタックしたエリオの方が速かった。明日のレースで頑張りたい」とコメントした。

ヒルデブランド、奮闘して予選3位に

 カストロネヴェスより後にアタックしたニューガーデンには、逆転ポールの可能性が強くあった。チームメイト3人からフィード・バックを受け、マシンをよりコンディションにマッチしたものにできる優位もあった。プラクティスで2番手につける好タイムをマークしていたのは彼だった。しかし、結果は4位。
 ヒルデブランドは奮闘して予選3位。ペンスキーのフロント&セカンド・ロウ独占を阻み、意地を見せた。それも、左手の骨折がまだ完治していない状態で。彼自身と、チームの存在感を強くアピールした。

 今年の予選は風が強く吹く悪コンディションでありながら、好タイムが続々と記録された。その理由の第一は、午後8時からと遅い時間帯の開催だったこと。日中は気温が摂氏30度まで上がっていたフェニックスでは、予選直前のプラクティス中も最高気温が29度に達していたが、完全に太陽が沈んでから急激に冷え込み、風が吹き続けているために肌寒さを感ずるほどのコンディションで予選は行われた。路面の温度はプラクティスより13℃も低い28℃で始まり、風のせいでセッションが進むに連れ、僅かではあったが、更に温度は下がって行った。ホンダとシボレー、両エンジンのパワー・アップも今年のタイム短縮には大いに貢献している。予選8位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)は昨年のフェニックスで勝ったドライバーだが、予選後に「ホンダ・エンジンはパワフルだから、決勝でも上位に進出するチャンスはあると思う。オーヴァーテイクが難しいレースになるが、それはシボレーのマシンに乗っていても、ホンダのマシンに乗っていても大きくは変わらない」とコメント。予選5位となったパジェノーによれば、「シボレーは昨シーズン途中に導入したフロント・ウィングのメイン・プレーンによって空力性能がアップして入る」と話していた。

ホンダ勢トップはカナーン

 ホンダ勢最速はトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)だった。最後のアタッカーとして走った彼には、大気の冷え具合、路面に乗ったタイヤ・ラバーといった小さなアドバンテージの積み重ねもあった。それでも、まずはヴェテラン・ドライバーの走り、そしてチップ・ガナッシ・レーシング・チームズのセッティング能力の高さを評価したい。ガナッシは今年、マシンをシボレーからホンダにスイッチした。ホンダ勢は空力競争開始以来ショート・オーバルで苦戦をして来ているが、ホンダへの移籍後最初のショート・オーバルでホンダ勢最速の座を掴んだ。やはり彼らの底力には凄いものがある。

 カナーンといえば、今回からまたしても新しいエンジニアと組んで入る。新しいといっても、以前に一緒に戦っていた、インディー・ライツ時代からの相棒=エリック・カウディンとのコンビ再結成がなされた。カウディンをチャーリー・キンボールからひっ剥がし、自分の担当にここ2シーズンあてがわれていたトッド・マロイをキンボール陣営へとトレードで出したのだ。ポイントは、このエンジニア・スワップがオフの間ではなく、シーズン開幕から3戦を終えたところで行なわれた点。かなり異例のことだ。パフォーマンスに悪影響が出るのが普通なので。TKとカウディンの場合は旧知の間柄なので、その点は大丈夫という読みなのだろう。そして、コンビ復活1レース目でイキナリ効果発揮(?)ということでもないのだろうが…………。それにしてもTKはよくエンジニアを交代させる。ガナッシ入り直後はダリオ・フランキッティ担当だったクリス・シモンズと組んでいたが、翌年は故ダン・ウェルドンとインディー500を制したマロイをチップ・ガナッシにゲットしてもらった。しかし、そのマロイとは2年で関係解消となった。

 ホンダ勢、ショート・:オーバルでも実力を伸ばしている。それは、カナーンのアタック2周目がカストロネヴェスが去年打ち立てたコース・レコードより速かった点に現れて入る。今年のシボレー勢が大幅に速くなっていることから、アタック2周の合計タイムでカストロネヴェスに0.4640秒の差をつけられたが、差は確実に縮まっている。
 カナーンと同じくアタック2周目にカストロネヴェスの去年のコース・レコードより速く走ったミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がホンダ勢2番手となる予選7位。合同テストでホンダのトップだった彼は、明日のレースでも良い走りが期待できそうだ。

 予選8位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)で、9位はマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)。ポイント・リーダーのセバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング)が10位。

佐藤琢磨は予選18位
「決勝用セッティングはテストで好フィーリング」
 

Photo:INDYCAR (Chris Jones)クリックして拡大
  佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は予選18位。後ろは古巣AJ・フォイト・エンタープライゼスのカルロス・ムニョスとコナー・デイリー、そしてトラブルでまとも走れなかったカーペンターの3人だけだ。アンドレッティ・オートスポートの4人の中でも、ホンダ勢でも最下位だった。
 「ここではテストの時にターン2で大きなクラッシュをしました。去年も予選直前にターン1でクラッシュ。決して嫌いじゃいんですけど、恐怖感は確かにあるし、そこへ持って来て今年は風が強く吹いていて、砂もコースに出てたから、慎重に行きました。チームの中で最初にアタックしたために、情報は提供するばっかりで、一切もらえなかった。エンジニアも慎重なセッティングを施すしかない状況でした。時々めちゃくちゃ強く風が吹くこともあったから、仕方ないと思います。決勝用セッティングはテストで好フィーリングを得て入るので、明日のレースは問題なく速いペースで戦えるでしょう」と琢磨は話していた。
以上

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