乱戦を制したハンター‐レイ。「レース中はジャスティンの状況を何も聞いておらず、今は勝利の喜びより彼に対する心配だけ」とウィルソンを気遣った Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大 |
快晴下でスタートしたポコノの500マイル・レースは、序盤から荒れ模様だった。30周目にピット・アウトをした直後のジャック・ホウクスワース(AJ・フォイト・エンタープライゼス)のリヤ・タイヤが外れ、37周目にはセバスチャン・ブルデイ(KVSHレーシング)がクラッシュ。85周目にはチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)とホウクスワースと絡んでクラッシュ……と次々にフルコース・コーションが出された。
チャンピオン争いのさなかのグレアム・レイホール、クラッシュで20位
93周目、前戦ミッド・オハイオでシーズン2勝目を挙げた、ランキング2位のグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が、リスタートで他車2台のサンドイッチとなって、双方に接触した後にクラッシュ! 彼の最終順位は20位となり、リード・ラップもナシだったために10点を加算することしかできなかった。
ピットレーンで並走する佐藤琢磨とレイホール Photo:INDYCAR (Bret Kelley) クリックして拡大 |
ディクソン苦戦の陰でポイントリーダーのモントーヤは着実に浮上
PPスタートのカストロネヴェスは167周目にクラッシュ
レイホールに重ねて不運に襲いかかる中、ポイント・リーダーのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)は、19番手スタートながら5番手にまで大きく順位を上げていた。
ポイント3位のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はマシンが決まり切っておらず、ピリッとした走りが見せられずにいた。ポイント5位のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)もピット・アウト時にスピンを冒したり、ピットからのダッシュがうまく行かなかったりとドタバタして順位を後方に下げていた。その上、ポイント4位で今日ポール・スタートだったエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)が、167周目にクラッシュした。
Photo:INDYCAR (Bret Kelley) |
ハンター‐レイ、シャヴェス、琢磨との争いを制して優勝!
超ロー・ダウンフォースで奮闘していたシャヴェス、逆にダウンフォースを大きくするセッティングに変えて終盤に大きく追い上げて来た琢磨、何度も順位を下げながら着々とパスを重ねてトップ争いへと復活して来ていたハンター-レイ……この勝負を制したのはハンター-レイだった。シャベスは不幸にもゴール目前でエンジン・トラブルに見舞われてピットへ。琢磨はダウンフォースを大きくしたセッティングのため、集団では速いがストレート・スピードが伸びず、1列になる戦いでは不利だった。トップに立つシーンもあった琢磨だったが、最後の最後で6位までポジション・ダウンしてのゴールとなった。マシン・バランスが最も高く取れていたのがハンター-レイだった。
ウィルソン、デブリが頭部に直撃するアクシデント
ルーキーのカラムはトップに躍り出た後の180周目、ターン1で単独クラッシュし、地元での初勝利という夢は叶えられなかった。そして、この事故で飛び散った大きな破片がウィルソンのヘルメットを直撃したらしく、彼は意識を失ったままコースのイン側の壁に突っ込んだ。
13周にも渡る長いフルコース・コーションで、ようやくコクピットから救出されたウィルソンはアレンタウンの病院へとヘリコプターで搬送された。セイフティ・クルーが現場に駆けつけた時、ウィルソンは意識をすでに失っていた。カラムのノーズ・コーンが当たった、その時点で気絶してしまったはずで、意識のないまま壁に突っ込んだ。レース後2時間以上が経ってからインディカーは、「ウィルソンは意識不明で危篤状態」との発表がなされた。
イエローのままゴールとなるのかとも思われたが、セイフティ・クルーのコース清掃は終わり、レースは残り8周でリスタート。しかし、ハンター-レイにパスされた直後にシャベスがエンジンにトラブルを出してオイルを撒いたため、197周でイエローが出され、そのままゴールとなった。ハンター-レイは今季2勝目。2位はジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)のものとなった。
モントーヤは終盤土壇場で3位にポジションを挙げ、表彰台フィニッシュを達成。逆に、琢磨は最後のバトルでポジションを下げ、6位でのゴールとなった。彼らの間の4、5位にはパワー、ムニョスが入った。
ハンター‐レイ、「優勝のうれしさよりも今はジャスティンに対する心配だけ」
優勝したハンター-レイは、「ファンタスティックなレースだった。しかし今の自分にあるのは、ジャスティンに対する心配だけだ。事故直後から彼は大丈夫だと思っていた。何も知らされていなかった。家族のためにも、無事を祈る。オープン・コクピットのインディカーは頭部が露出している。キャノピーのようなもの、少しでも防護できるものを開発すべきだろう。今日の自分はキャリアの中でもベスト・ドライビングと呼べるものを実現できていたと思う。ピット・ストップなどで順位を何度も下げたが、それでもレースが再開されれば次々とパスして上位へと戻って行くことができた。そして優勝を飾ることができた」と語り、「ジャスティンの状況は、レース中は何も聞いていなかった。ゴール時には大喜びをしていたほどだった。彼は事故現場ですでに気を失っていたとマシンを降りてから聞いた。病院に彼を見舞いに行くつもりだ。今日のレースはアクシデントが多かった。リスタートはクレイジーだった。しかし、それは同時に誰にとっても大きなチャンスになっていた。僕はシングル・ファイルになっても1台ずつパスして行けるマシンを手にしていた。いいマシンになっていればパスを重ねて行くことが可能。人工的に作り出したパスなどではなかった。インディーカーならではのバトルになっていたと思う。今年の新しいファイアストン・タイヤは改良されていて、グリップも高くなっており、バトルをエキサイティングなものにしていた。ホンダのエアロ・キットはまだライバルに劣っている。それは予選でのスピードの差を見れば明らかだ。レースにおいても、僕らはパスはできるんだが、前を走り続けるのは大変だった。もちろん、こんなことは言いたくない。ホンダは頑張ってくれている。僕はホンダ・エンジンでインディー500での優勝をしているし、今シーズンだって2勝も挙げることができている。ホンダは燃費ではシボレーに対してアドバンテージを持っている。優れた点もたくさんあるんだ。エンジンの実力は、両社が拮抗している状況だと思う。ただ、僕らはエアロの差を詰めなくてはいけない」と続けた。
佐藤琢磨「優勝を狙えただけに6位は悔しい」
スタートから延々と続いた苦戦。終盤の急激な追い上げ。琢磨の3回目のポコノはエキサイティングな200周となった。ゴールを目前にトップ争いに加わり、レースをリードするところまで行った。しかし、最後の最後の優勝を争うには、あともう少しのマシンの向上が必要だった。
レース序盤、キンボールを追う琢磨 Photo:INDYCAR (Blet Kelley) |
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