2015年7月13日月曜日

2015 INDYCARレポート R12 ABCサプライ・ウィスコンシン250 Race Day 決勝:ミルウォーキーを制したのはセバスチャン・ブルデイ

CART時代の2006年、ここミルウォーキーで勝って以来、9年ぶりのオーバル制覇 Photo:INDYCAR (Chris Jones) クリックして拡大
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9年前と同じ圧倒的パフォーマンスでの勝利

 チャンプカーで4年連続チャンピオンとなっているセバスチャン・ブルデイ(KVSHレーシング)は、ミルウォーキーでも当時一度だけだが優勝している。シリーズ最強のニューマン・ハース・レーシングで走っていた彼は、今日と同じように圧倒的パフォーマンスで優勝へと突っ走った。「今日もあの時と同じだった。ミルウォーキーのようなコースでは、時としてマシンが本当に素晴らしいものに仕上がることがある。今日がそれだった。本当にすごいマシンになっていた。今日は一度は展開が自分たちの思いとは逆に進んだかに見えたのだけれど、走りの好さでひっくり返すことができた」とブルデイは語った。「この手のコースではガラリと展開が変わることがよくある。予選で失敗したので、レースに対しての見方も厳しくなっていた。全員をパスして優勝するなんて無理だと思ったからだ。それが信じられないレースになった」。

ライバルより1回少ない4回ピットストップ作戦も奏功

 今日のレース、ブルデイは4回のピットストップで走り切った。他のドライバーたちは5回以上ピットしていた。予選11位だった彼は、最初のスティントで6番手まで浮上し、ピットストップを一度終えた時点で4位まで更に順位を上げた。
 イエローが出ない展開で、2回目もグリーン・ストップを全員が行い、これを終えた時のブルデイはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、ジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)に続く3番手となっていた。



ブルデイはスティントが進むごとに着実に順位を上げていった Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  この後、微妙なタイミングでジェイムズ・ジェイクス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のエンジン・トラブルで最初のイエローが出された。ここで大半のチームがピット・インを選んだが、ブルデイはステイ・アウトした。ブルデイ以外のトップ・グループは全員がピットに向い、ブルデイはトップに立ったが、その後ろは苦しい走りを作戦で挽回しようと考えた面々ばかりだった。
 このイエローは130周目のリスタートでレース再開となったが、ライアン・ブリスコー(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がスタート時の加速中に中団グループで単独スピンし、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)を巻き添えにクラッシュ。これで141周目までレース再開は引き延ばされた。
 ブルデイは102周目のピットストップ以来走り続けていた。その作戦は大失敗とも見えた。しかし、141周目からのレースで彼は後続を決定的に突き放すことに成功。171周目にグリーン・ストップを行なっても、ライバル勢が同じくグリーン・ストップをしたことでレース・リーダーの座に返り咲いた。
 202周目、2番手につけていたライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)がピットに向うと、ブルデイはライバル全員を周回遅れにしてのトップとなった。もちろん、213周目に彼が最後のピットストップをこなすと、ライバルたちと同一ラップに戻った。


ブルディ、ラスト18周からのリスタートで、ライバルを圧倒!

 ブルデイはトップのままレースに戻った。しかし、まだ楽勝を与えては貰えなかった。最後の試練は、もうゴールが間近となった222周目にジャスティン・ウィルソン(アンドレッティ・オートスポート)のエンジンがトラブルを出し、3回目のイエローが出されたことで生み出された。残り周回での大逆転を賭け、多くのチームがイエロー中にフレッシュ・タイヤへの交換を行なったのだ。
 ブルデイはグリーン下で8周しか走っていないタイヤを装着していたので、トップを守るためにもステイ・アウトを選んだ。そして、残り18周でレースはリスタートが切られた。
 

ラスト18周からのリスタートでブルデイはライバル勢を圧倒するラップタイムを連発。追いすがるカストロネヴェスらを突き放した Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  オールド・タイヤで2、3番手につけていたファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)、エド・カーペンター(CFHレーシング)は、フレッシュ・タイヤを武器とするエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)にパスを許した。しかし、トップを行くブルデイだけは群を抜くスピードを持っていた。ブルデイはカストロネヴェスたちを寄せ付けず、2秒以上の差をもって悠々とゴール・ラインを横切った。デトロイトでのレース2(シリーズ第8戦)に続く今シーズン2勝目だ。
  
最後尾スタートのカストロネヴェス、優勝まであと一歩の2位!

 カストロネヴェスは最後尾スタートから2位フィニッシュを飾った。第1スティントで12番手まで浮上して見せたのは、彼のマシンと走りが良かったのと、ピット・ストップの作業時間の短さによってだった。しかし、2番目のスティントでは更なるポジション・アップをほとんど実現できなかった。
 141周目のリスタート後、カストロネヴェスは順位を14番手まで落とした。しかし、170周を過ぎてから行なったピット・ストップの後、カストロネヴェスはスピードを取り戻した。200周目までに4番手まで浮上した彼は、最後のイエロー中にフレッシュ・タイヤを装着すべくピットへ滑り込んだ。2番手を走っていたのに、だ。それは今シーズン初優勝を狙ってのことだった。残念ながら、優勝にはあと一歩届かなかった。ステイ・アウトしたカーペンター、そしてチームメイトのモントーヤをパスすることはできたが、ブルデイだけは抜けなかった。


3位のレイホール「チームがすごい仕事をしてくれた」

 レイホールは3位フィニッシュ。今シーズン5回目の表彰台だ。予選6位だったレイホールは、5回のピット・ストップでゴールまでを走り切った。最後のピット・ストップはイエロー中の225周目だった。このイエローがなかったら、彼はグリーン・ストップが必要となっていた。最後のイエローに救われた感はある。しかし、彼より前のグリッドからスタートした面々が順位を下げて行った中、レイホールだけは上位にポジションを保ち続けた。コーナー・イン側のグリップが低いと言われたアスファルト舗装のセクションを最も大胆に使ってライバルたちをオーバーテイクしていたのが彼でもあった。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは1台体制ながら、エアロ・キットを極めて高いレベルでバランスさせることとと、サスペンション・セッティングによって大きなメカニカル・グリップを確保できているということだ。今日の3位でレイホールはランキングをひとつ上げて3位となった(カストロネヴェスと同ポイントだが、1勝しているのでランキングは上)。しかも、同じく今日ポイント2位に浮上したスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)との差は15点しかない。トップをひた走るモントーヤとの差は69点あるが……。
 「チームがすごい仕事をしてくれた。成功を手にするため、チーム全体が持てる力のすべてを投入し続けて来ている。今日もまさにそうした戦いができていた。最後のピット・ストップでは3つもポジションを稼ぎ、リスタートの後に2つ更にポジションをアップさせた。エリオより自分の方が少し速かったと思う。しかし、パスは難しかった。是非ともパスしたかったけれどね。残るレースでも思い切りプッシュし続けるよ。Hondaの先頭を切って戦っていることも誇りに感じている」とレイホールはコメントした。


ポイントリーダーのモントーヤ、しぶとく4位
PPのニューガーデンは5位フィニッシュ


 4位はしぶとさを発揮し続けているモントーヤ。5位はニューガーデンのものとなった。イエローなどのファクターが絡まなければニューガーデンはポール・トゥ・ウィンも可能と見えていたが……。
 6位はトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)。7位は最終ラップにマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)を抜き返したディクソン。8位はそのアンドレッティで、9位はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)。最後のリスタート時に3番手だったカーペンターは、大きく順位を下げたが、トップ10フィニッシュとなる10位でゴールした。


佐藤琢磨、最初のスティントの苦戦が響き14位

 佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は最後のピット・ストップに10番手で入ったが、右リヤ・タイヤ・チェンジャーがタイヤ装着に失敗。大きくタイム・ロスして15番手まで後退。リスタート後にはカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)しかパスできず、14位でのゴールとなった。スタート直後のマシンが安定感を欠き、第1スティントで大きくポジション・ダウンしたことがとうとう最後まで響いてしまった。1回目のピット・ストップに時間がかかって周回遅れに陥ってしまい、そこから抜出すのに150周以上がかかってしまった。




Photo:INDYCAR (Chris Owens) クリックして拡大
  「長く、厳しいレースとなった。最初のスティントでの苦戦によって1ラップ・ダウンに陥った。リード・ラップに戻るべく奮闘したが、展開がそれを許してくれなかった。ようやくトップと同一ラップに戻った時、もうレースは残り20周を切っていた。みんなが最後のピット・ストップでタイヤを交換したため、そこからのオーバーテイクはほぼ不可能な状況だった」と琢磨は得意とするミルウォーキーで活躍できなかったことを悔しがっていた。
以上

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