2015年5月21日木曜日

2015 INDYCARレポート 第99回インディー500:予選ルールの変更は正しかったのか?


シボレー3台がクラッシュし舞い上がった原因はやはりシボレー・エアロキットにあるのか?
Photo:INDYCAR(Mike Young)
幸か不幸か実現しなかった新エアロキットでの予選

 エアロキットを使ってのインディ500予選を楽しみにしていたが、「エアロは決勝用オンリー」なんていうルール変更がされてしまった。その上に「ターボのブーストも決勝用の低いので」というオマケも付いた。
 予選1日目の土曜日、2台がアタックを完了させ、3台目のアタック中に雨が降り出した。あの時、もう新エアロと予選用ハイ・ブーストでの戦いはすでに始まっていたということだ。雨が降らずに予選が続いてたらどうなっていたんだろう? 

 幸か不幸か予選は中断され、天候が回復しない見込みということで「無かったもの」にされた。この判断はインディーの伝統に背くものだったが、結果的に好判断となった。予選初日が終わった時点では誰も翌日の予選が異なるルールの下で争われることになるなど考えもしなかった。
なぜ、シボレー3台はクラッシュして舞い上がったのか
 予選2日目。新ルールでのアタック……ということでもう一度プラクティスが行われた。すると過去2年連続ポール・ポジション・ウィナーのエド・カーペンター(CFHレーシング)がクラッシュ(!)。 スピンした彼のマシンは後ろ向きになったところで舞い上がり、裏返しに着地した。
エリオ・カスロネヴェス(チーム・ペンスキー)、ジョセフ・ニューガーデン(CFHレーシング)のクラッシュはターン1で、場所こそ違っていたが、宙に大きく浮き上がった点をインディーカーは問題視した。飛び上がったのがルーキーや弱小チームのマシンではなく、ポール・ポジションや優勝を狙える体制のチームとドライバーたちの乗るものばかりだったのだから尚更だ。


一足飛びにルール変更に至った経緯は?
本来シボレーのエアロキットの問題では?


 マシンが観客席に飛び込むような事故が起こってはならない。そこに異論はない。しかし、インディーカーの踏み切ったルール変更とは正しい判断だったのか。そして、彼らが出してきた新ルールは適切だったか?

16日、雨で予選中止後、、予選スケジュールとルールの変更が発表に 
Photo:INDYCAR(Walter Kuhn)
 ルール変更が検討される事態は、シボレーのエアロ・キットによって作られた。彼らの一部のコンポーネントの設計に問題があったから経験豊富なドライバーたちがスピンし、宙に舞い上がった。彼らの装着していた“予選用サイド・ポッド”の設計が悪かったということだろう。一線を越えたアグレッシブなスペックになっていたことでマシンの挙動を不安定にしていたのだ。

すでに対策を施していたチーム・ペンスキーと
ルール変更で不利をこうむったホンダ勢

 
院側だけ決勝用サイドポッドを装着したウィル・パワー車 Photo:(Jim Haines) クリックして拡大
  今考えれば、チーム・ペンスキーが予選に向けてマシン左側(イン側)のみセパレート型サイド・ポッド(決勝用サイド・ポッド)とする左右非対称マシンとしたのは、“予選用サイド・ポッド”が引き起こしていた問題への解決策だったのだ。シリーズ・トップ・レベルのドライビング・スキルを持つドライバーたちをもってしても、「もう少し安定性が欲しい」と感じられるマシンとなっていたということだ。スピードを求めた"誰も知らなかったとっておきの秘策”かと思っていたが、実は苦肉の策だった。ダウンフォース不足を解消し、マシンを安定させるために彼らは大胆な左右非対称マシンで走る道を見つけ出したのだと思われる。
 新ルールはシボレーのミスをカバーし、彼らのライバルであるホンダに対して不利に働くものになった。「ホンダだって飛ぶかもしれない」というのがインディーカーの言い分だったが、ホンダはホイール・ガード上のウィングを装着し、ダウンフォースは増えるがドラッグも増となってスピード確保に苦労していたようだった。
そしてファスト9はなくなり、なぜかバンプアウト合戦だけが行われた
 新ルールでファスト9によるポール・ポジション争奪戦がなくなったのも残念だった。それなのにバンプ・アウト合戦は行われた。そっちこそ不要だったと思う。結局インディーカーは、速い面々がポールを目指してトリム・アウトした場合、またマシンが舞い上がる可能性が産まれるという心配したんだろう。
 インディアナポリス・モーター・スピードウェイでのスピード・アップは、もう来年からも期待はしない方がいい……というコトなんだろうか??
以上



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