2014年8月5日火曜日

2014 INDYCARレポート 第15戦ミッド・オハイオ:「肩の荷が下りたよ」 ミッド・オハイオ優勝後、ディクソン語録

チーム初勝利をカナーン、キンボールから祝福される。右はマイク・ハル Photo:INDYCAR (Bret Kelley) 
「このコースで最後尾スタートだとトップ10入りも難しいと思っていた」
 15戦目にして今シーズン初優勝を挙げたスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)。チームにとってもそれは今季初勝利となった。その感想を尋ねられたディクシーは、「肩の荷が下りたっていうのが一番かな。こんなシーズンの終盤になるまで勝てないなんて自分たちとしては珍しいのでね。複数いるチームメイトのうちのひとりが勝てないってことならわかるけれど4人全員、誰も勝っていなかったから」と話した。

 レース・ウィークエンド最初のプラクティスで3番手。得意のコースとあって最初からディクソンは速かったが、ウェット・コンディションの予選第1セグメントで彼はコース・オフという痛恨のミスを冒した。計測タイムなし。グループ2だったので彼の予選順位は最下位の22位となった。
 「このコースで最後尾スタートだとトップ10入りするのも本当に大変だろうなって考えていた」とディクシーは振り返った。

31周目のピットインの真相は?
 当然のことながら、彼らはトップ・グループとは作戦を違えて戦うこととした。「最初の20~30周で2回ピット・ストップした。これまでにあまり聞いたことがない作戦だ。あのペースでピット・インを繰り返していたら僕らはタイヤがなくなっちゃうところだった。レース中に作戦を更に変えたが、そうしたのはジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)の後ろにスタックしたからだった。ミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)と僕の間にいた彼のペースが上がらなかった。その前のピット・ストップでちょっと時間がかかったため、ジャスティンの後ろを走る結果となった。 “何かしないと、このまま中団に埋もれて終わってしまう” と僕は無線でピットに言った」。
 これが31周目に9号車がピット・インした真相だった。正確には、彼は31周目にこの日3回目のピット・ストップを行った。2周目に多重アクシデントでマシンにダメージを受けていないかをチェックするピット・ストップを行なっていたからだ。
 この31周目のピット・ストップで前にスペースができたディクソンは速いラップを連続してマーク。彼の前から2台がピット・インした後にフルコース・コーションが出された。ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)のスピン&ストップによるものだ。このコーションを利用してほぼ全車がピット・イン。ステイ・アウトしたディクソンは楽々トップに浮上した。コース上で1台もパスをせずに。


マシンの仕上がりの良さがライバルを1ラップ上回る燃費セーブを実現
 もちろん、転がり込んで来たトップを守り抜くのは容易ではなかった。
 「すごい数字を燃費で実現しないと勝てない状況だった。もっとも、燃費セーブは毎度のことだから。速いペースを保つこと、ニュー・タイヤをピットで装着して来たばかりの面々を抑え込んでトップを走り続けること、どちらも大変だったが、かなりの燃費セーブを実現できた」とディクソン。セバスチャン・ブルデイがこのタイミングでブラック・タイヤを採用、トップ・グループを彼の後ろに抑え込んだことも彼にとってプラスに働いた。
 ここでディクソンはイエロー6周含む31周を1タンクで走り、4回目のピット・ストップに向った。ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)のアタックを退けつつも、1ラップ長く走るための燃費セーブに成功したのだ。マシンのハンドリングの良さもそこでは大きな力を発揮していたはずだ。


実は燃費計算をミスしていたガナッシ陣営!
 驚いたのは、実はディクソンたちがミッド・オハイオでの勝利を最後の最後で手放してしまう危険に晒されていたという話だ。
 「残り10周となったところでピットのマイク(・ハル)が“もう燃料セーブは不要”と言って来たんだ。それでもなぜだか僕は“燃費をセーブしつつペースを保て”と自分に言い聞かせ続けていた。するとゴール前1周半ぐらい、自分たちの想定より2周ほど早い段階で燃料ランプが点灯したんだ。あの時に燃費セーブをやめていたら僕らはゴール前1周でガス欠ストップをしちゃうところだった」ともディクソンは話した。ガナッシほどのチームでも燃費計算に狂いが生ずるケースは起こり得るのだ。右に左にコーナリングするロードコースでは、燃料タンク内に設置されているポンプがどこまでうまく燃料を吸い上げられるかがポイント。今回の彼らは自分たちが考えているより吸い上げがうまく行っていなかったということだ。ブルデイに5秒以上の差をつけ、ゆっくりとゴール・ラインを横切ったディクソンだったが、それは余裕からではなく、燃料の残量がギリギリだったからだった。「最終ラップの大半はイエロー・ミクスチャー(フルコース・コーション中に使う燃料セーブ・モード)にして流すように走っていた。かなりヤバイ状況だった。クール・ダウン・ラップもしていたら、おそらくターン6ぐらいで止まっちゃっていたと思う」とディクソンは告白した。
 “大量リードを更に広げる必要ナシ“と燃費セーブを続けたディクソン。幸運を味方につけてトップに立った彼は、“次には思いもかけない不運が襲いかかって来るかもしれない”と、ほぼ本能的に万が一に備えた。多くの勝利を重ねるドライバーたちには、危険を回避したり予知する能力も備わっているということなのだろう。

以上

0 件のコメント:

コメントを投稿