Photo:INDYCAR (Chris Owens) |
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ウェルタス、ルーキー初勝利一番乗りを果たす
カルロス・ウエルタス(デイル・コイン・レーシング)が今シーズン中に勝つとは、正直なところまったく考えていなかった。コロンビア出身のルーキーはデビュー以来、確かに淡々としぶとい走りを続けて来ていた。つい最近23歳になったばかりのドライバーだが、その割に落ち着いた戦いぶりを開幕戦のセント・ピーターズバーグから見せていた。もし今年のルーキーの中に勝利を挙げる者がいるとしたら、その第一候補はカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)で、次がジャック・ホウクスワース(BHA/BBM・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)だと見ていた。まさかインディカー・デビューから僅か9戦で、ウエルタスが初勝利を手に入れるとは……失礼ながら考えもしていなかった。
デイル・コイン、チームの持ち味を発揮したレース戦略
この勝利は、彼の落ち着いた戦いぶりに加えて、デイル・コイン・レーシングがその持ち味をフルに発揮したことで実現された。19番手スタートだったウエルタスは、スタート直後に22番手まで順位を落とした。彼より後ろにいたのは、スタンディグ・スタートでエンジン・ストールをしでかしたグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だけで、ウエルタスはウェット・コンディションのレースでマシンのコントロールに手を焼いていたのだ。
しかし、レースのスタート前にすでに止んでいた雨は、再び強く降り出すことはなく、コースはどんどん乾いて行った。ウエルタスは徐々にペースを上げて行き、1回目のピット・ストップをフルコース・コーション中の30周目に行なったが、まだポジションは18番手のままだった。
不利なポジションで戦う経験を豊富に積んで来ているデイル・コイン・レーシングだけに、今日のようなレースにおける状況判断には長けている。彼らは頻繁に燃料補給を行ない、燃料を多く積んでいることがアドバンテージに繋がることを期待し続け、まさしく彼らが待ち望んでいたレース展開が現実のものになった。
レース序盤をリードした佐藤琢磨、周回遅れのアレシンとクラッシュ
そこには本当に多くの要素が絡んでいた。まず、今日のレースはスタートが全員ウェット・タイヤとなった時点で、1時間50分のタイムド・レースと決まった。次に、ウェット・コンディションの序盤に圧倒的な走りを見せていた佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)が、周回遅れのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のやや無謀なアタックによってクラッシュ。ルカ・フィリッピ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が数少ないチャンスで功を焦ったためにリスタートでクラッシュ。この時に出されたフルコース・コーション中、41周目にデイル・コインはウエルタスをもう一度ピットへと呼び、燃料を継ぎ足した。最初のピット・ストップから11周の間にさらに二度のピット・ストップを彼らは行ったのだった。
60周目にデイル・コインの1-2フォーメイションに
42周目にレースが再開されると、ウエルタスは17番手にひとつポジションを上げ、その後にライバル勢が次々とピット・ストップに向ったことで50周目には9番手にまで順位を上げた。さらに、48周目にはスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)のクラッシュでポール・シッターだったシモン・パジェノー(シュミット・ピーターソン・ハミルトン・モータースポーツ)がダメージを受けた。今日のレースではウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が生彩を欠き、エリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)もトップ・グループで戦うだけのスピードを持っていなかった。
ディクソンのアクシデントで出されたフルコース・コーションでは、トップグループが続々とピット・イン。ここでウエルタスの先輩チームメイトであるジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)がトップに立ち、ウエルタスはその真後ろの2番手にまで一気にポジション・アップを果たした。60周目のことだった。
度重なる幸運にも味方され、ウエルタスがアンダーイエローでチェッカー
2番手には上がった。しかし、燃料が最後まで持つかという不安がウエルタスにはった。彼のすぐ目の前を走るウィルソンは、28周目に一度ピット・ストップを行なっただけだったため、ゴールまで走り切る可能性はほぼゼロと踏んでよかった。勿論、長いフルコース・コーションが出れば話は別だったが……。
また、ウィルソンがピットに向ったとしても、ウエルタスは3番手に来ていたトニー・カナーン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、そのすぐ後ろのファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)という2人の大ヴェテランたちを振り切ることが優勝の条件となっていた。
そんなウエルタスに天が更なる味方をした。74周目にウィルソンがスプラッシュを受けるためにピットへと飛び込んだ後、7位を走る大奮闘を見せていたセバスチャン・サーヴェドラ(KV/AFSレーシング)にライアン・ブリスコー(チップ・ガナッシ・レーシング)が体当たり。今日5回目のフルコース・コーションが発生した。
燃費を考えれば、ここでウエルタスは救われたと言える。しかし、イエローは後続の接近を許す上、ウエルタスの背後に迫ったのは百戦錬磨のモントーヤとカナーン。ヴェテランたちがリスタートで彼をオーバーテイクする可能性も出て来た。
80周目、ウエルタスはキャリア初めてのトップからのリスタートを切ることとなった。ところが、このスタートがなんとキャンセルになった。4番手に浮上していたレイホールがリスタートでの加速を焦り、カナーンに激しく追突。最期列グリッドから表彰台に立てるポジションまで上り詰めて来ていたヴェテランはスピン、ストップを強いられた。コントロール・ラインではイエローフラッグが振られ、リスタートは切られなかった。
この時点で1時間50分が経過していたため、レースは再開されることなく、イエローフラッグとチェッカーフラッグが同時に振られた。ウエルタスは初優勝のゴール・ラインを跨ぐと、拳を空に突き上げて勝利を喜んだ。
2位モントーヤ、3位ムニョス! コロンビア勢が表彰台独占
2位は幼少期のウエルタスの憧れだったモントーヤ。3位でゴールしたのはレイホールだったが、カナーンに対する接触でレース・タイムに30秒を加算され、彼の順位は11位までダウン。そのおかげで3位には、カナーンの隣りの最後尾グリッドからスタートしたムニョスが浮上した。コロンビア人ドライバー3人による表彰台独占が史上初めて達成された。
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4位はブルデイで、5位はヒンチクリフ。6位はホウクスワースで、今週末はルーキーがトップ6に3人も入った。
7位はハンター-レイ、8位はアンドレッティ(本来なら失格になっていても不思議ではないが)。9位はカストロネヴェスで、10位はウィルソンだった。
ポイント・リーダーはパワーで、2番手がカストロネヴェス、3番手がハンター-レイと、トップ3に変動は起こらなかった。しかし、パワーが14位という不本意な成績に終ったのに対し、カストロネヴェスは粘り強さを見せて9位フィニッシュし、ふたりのポイント差は39点から33点に縮まった。そして、ハンター-レイもトップと差を60点から50点に減らすことに成功している。
パジェノーは4位をキープ。そして、5番手にはアンドレッティに代わってモントーヤが浮上して来た。ムニョスは6番手をキープし、アンドレッティは7番手へとふたつ順位を下げた。
以上
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