Photo:INDYCAR (Walter Kurn) |
「うまくリードラップに戻ることができたし
いい戦いができたと思います」
Jack Amano(以下――):大変なレースになりましたが、9位でゴール。頑張った感のあるレースになっていたのでは?佐藤琢磨:そうですね。最初のスタートでは、クラッチに問題があって、まったくグリッドから離れられない状態でした。それで最後尾まで落ちてしまって、その後にはスロー・パンクチャーでタイヤ交換をしてラップダウンになっちゃいました。それを考えれば、うまくリードラップに戻ることもできたし、いい戦いができたと思います。ただ、最後のストラテジーはちょっと……。見てる側としてはエキサイティングだったと思うんですけど、上位陣がピットに入るグループと、入らないグループとに別れましたよね。僕らの計算では、ものすごい燃費セーブをしないとゴールまで走り切るのは無理だっていうことになっていました。それで、最後に給油をもう一度する作戦で “5位、あるいは6位まで行けるのかな?” と思ってたんですが、実際にはそこまでは上がれませんでしたね。
「アクシデントの破片を一生懸命避けましたが
ノーズに当たって、その時点でテレメトリーが飛んじゃいました」
――スタートで大きなアクシデントがありました。琢磨選手のマシンもノーズ部分に何かが引っかかっていましたが、どういう状況だったんですか? かなり危険なスタートとなっていたのでしょうか?
佐藤琢磨:僕自身はスタートで出遅れたことによって、真後ろからアクシデントを見ることができたので、アクシデントのど真ん中を避けることはできました。でも、スタート直後っていうのは、前に多くのクルマがいて、僕らの視線はすごい低いところにあります。その上、その視界がリヤウィングで遮られてしまうので、4ワイドとかになっていると、もう前方は何も見えないですね。で、ホコリもすごいので、破片がパアッて空に上がるまでわからないんです。破片が舞い上がった直後、もうチェーン・リアクションが起こって、バババッてみんなブレーキを踏む。だから、僕の場合でも何とかアクシデントを避けることができたって感じでした。破片を一生懸命に右に、左にと避けましたが、破片が空から降って来て、それをノーズ部分がキャッチしちゃったんです。その時にアンテナが飛んじゃって、テレメトリーもその時点で飛んじゃいましたね。僕らはだから、ブラインド状態で走ることになりました。
(Photo:INDYCAR (Daniel Incandela) |
佐藤琢磨:そうでした。ヒューストンの時みたく破片を踏んじゃったんだと思います。リスタートは良かったんですけどね。かなり順位を上げたんですけど、その次の周にピットに入ることになって、順位を大きく落としました。で、次のリスタートですね、また大きなアクシデントがありました。あの時はひやっとしました。
「リスタート時のアクシデントでは、
黒い大きなものが飛んできてヘッドレストに穴が」
――リスタートのグリーン・フラッグが振られる前のスピードが遅過ぎたように見えていましたが?
佐藤琢磨:そうですね。インディーライツとかでは最終コーナーでリスタートが切られてたのに、インディーカーは、多分レースをおもしろくする目的で、ストレート上の、コントロールラインにとても近いところまでアクセルを踏めないルールになっていました。先頭はそこに来るまで加速を始めちゃいけない。しかも、今のルールではグリーンフラッグが振られるまで列を乱すことができないんです。それでものすごい団子になる。前の方はいいんですけど、10番手以降とかは、スタートに至る直前に前を追いかけるためにスピード差ができちゃっているので、余計にひとつの団子になっちゃう。それで2回目のリスタートでも大きなアクシデントがメインストレート上で起こりましたよね。あの時の僕は他のクルマを抜いてて、4ワイドぐらいになってて、一番内側のピットウォール側に来てて、右は壁、左は他のクルマを抜きかけて並んでたのでね、もうどうしようもない、どこにも動けない状態になってました。その時、目の前から黒い物体が飛んで来て、避けられなかったんですよ。マシンをどこに行かせることもできなかったから。それで首だけカッと動かして避けました。それでも黒い物体は僕のヘルメットにボーンとかすめて、コクピットのヘッドレストのあたりに大きな穴が開きました。もろに当たってたら、どんなことになってたかわからないですね。その物体が何だったのかもわかってないんですが……。あれだけ穴が開いたってことは、かなりのものだったとは思うんですけど。それによってミラーも壊れちゃって、結構ボロボロでしたね、僕らのマシンは。
「最後はカナーンとエキサイティングなバトルができました」
――最初にパンクがあったので、タイヤストラテジーも大変になったと思うんですが、どうでしたか? 最後はレッド・タイヤで良いペースを保っていましたが? あれってユーズド・レッドだったんじゃないですか?
佐藤琢磨:いや、最後はニュー・レッドでした。ブラックでスタートして、すぐに次のブラックに履き替えて、その次がユーズド・レッド、最後がニュー・レッドという順番でタイヤを使いました。それで最後は良いペースを保てたんだけど、後ろにトニー・カナーンが来てました。彼はまだプッシュ・トゥ・パスを残してましたよね。僕はニュー・タイヤで走り出した最初は良かったんだけど、その後にペースが少し落ちた。対するトニーは、安定して速かった。だから、何台か燃料セーブしているクルマが前にいて、それを抜きながらのバトルとなりました。とてもエキサイティングなバトルで、何とかトニーを抑え切ることができました。
「明日、ブランニューのインディーカーをシェイクダウンします
最初の一週間でよい仕事をして、
予選でも思い切りアタックできるようなクルマに仕上げたいです」
――チームとして最近は苦しい状態が続いていますが、この9位フィニッシュは粘り抜いてつかんだものとして、評価できるんじゃないですか?
佐藤琢磨:そうですね。レースとしては力強く戦えたと思います。ただやっぱり、根本的なラップタイム、スピードっていう問題を抱えていて、トップ・グループにはまだ追いついていません。そこは、この後また頑張って、差を縮めて行きたいと思います。
――明日からは、すぐにもうインディー500のプラクティスが始まります。
佐藤琢磨:そうか……。
――休んでる間もありません。切り替えもまた大変と思いますが、どうでしょう?
佐藤琢磨:ホントそうですよね。レースをした次の日にもう “500” が始まるなんて……初めてのことですからね。でも、インディー500はずっと楽しみにしていたものですから。 “500“ は1年間待ってるもので、開幕前から楽しみにしているイヴェントだし、チームが大事に作って来た"ザ・インディーカー”っていうのかな? ブランニューの、新しいインディーカーを明日シェイク・ダウンしますから、それはすごく楽しみです。あとは、今年の2台体制ですね。マーティン・プラウマンの方は、このグランプリを戦ったことで、チームの動きも良くなったと思うので、最初の1週間でキッチリと良い仕事をして、今年は予選で大きなシリーズポイントがもらえるっていうこともあるし、予選でも思いっきりアタックができるようなクルマに仕上げたいです。
以上
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