ロングビーチ2勝目を挙げたコンウェイとエド Photo:INDYCAR (John Cote) |
56周目にアクシデントは起こった。
その時のオーダーは、トップがジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)で、2番手はライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)。3番手はジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)で、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が4番手につけていた。
ポール・ポジションからトップを守り続けていたハンター-レイは、54周目にピット・イン。ブラック・タイヤをチョイスしてコースへと戻った。彼のチームメイトのヒンチクリフも、同じタイミング、同じタイヤ・チョイスでハンター-レイのすぐ後ろでピットアウトした。
ニューガーデンは彼らより1周ピットを遅らせ、作業を終えてダッシュすると、もう本当のギリギリでトップに躍り出た。ターン1を曲がったところですでにハンター-レイはすぐ後ろに迫っていた。ニューガーデンは完全なるコールドタイヤ。ハンター-レイは1周している分だけタイヤの温度は上がっているという状況だった。噴水の周りのターン2~3でもニューガーデンはトップを維持。右直角コーナーのターン4へと向った。
ここで彼はアウトにマシンを振った。そして、そのインにハンター-レイは飛び込んだ。しかし、ニューガーデンはライバルにラインを譲ったのではなかった。アウトから鋭く切り込むラインを採ったのだ。これで2台は接触。スピンしたニューガーデンのマシンはアウト側のコンクリートウォールにヒットし、ハンター-レイもこれに絡んだ。そして、彼のすぐ後ろにピタリとつけていたヒンチクリフも逃げ場がなくなり、トップ3台が一瞬にしてリタイアとなった。
佐藤琢磨、このクラッシュを避けきれず
ハンター-レイのマシンはこの後にエリオ・カストロネヴェス(チーム・ペンスキー)にも接触。ニューガーデンとヒンチクリフのマシンはコースの左側、ハンター-レイのマシンがコース右側を塞ぐ形になり、そのタイミングで現場に到着した佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、その後ろのトニー・カナーン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、ジャック・ホウクスワース(BHA/BBM・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)がクラッシュした。
「ターン4でのオーバーテイクは無理
だからターン4で何か起こるとは考えてもいなかった」
レース後のニューガーデンのコメント。
「ピットをコールド・タイヤで出たら、暖まったタイヤの人たちが一気に背後から迫って来る。こっちとしては抜かれるしかない状況だ。ここで問題なのは、ピットを出たばかりの僕らは、レースをリードする立場になったワケだが、自分のマシンをコントロールするのに手を焼いている状況だった。タイヤがまだあったまってないから。意のままにコントロールするのは本当に難しい状況だった。あのターン4でのアクシデントは、絶対に起こるべきじゃなかった。あのコーナーでは何があったってパスなんかできない。過去にパスなんか一度も実現していない。あそこでのオーバーテイクは無理なんだ。だから僕としては、あそこで壁にぶつかってレースが終わりになるなんて思ってもいなかった。あのアクシデントは、本当に多くのクルーたちのハードワークを無駄にした。あそこでアクシデントが起こったことは残念でならない。自分たちは、あのラップの後半に抜かれ、トップを奪われてしまうだろうことを理解していた。ただ、ターン4で何かが起こるとだけは考えてもいなかった」
「もう少し待つこともできたが、あの時点で
半車身彼の横に並べていたので一気に抜きに行った」
対するハンター-レイのコメント。
「我々のマシンは強力だった。ニューガーデンがピットから出て来た。彼がコールド・タイヤなのはわかっていた。彼はターン1からスピードを乗せて行くのにも苦労しており、ターン3ではホイール・スピンさせた。それで僕としては一気に抜きに行った。彼がドアを閉めて来たのでアクセルを戻したが……。もう少し待つこともできた。自分のミスだったかもしれない。しかし、あの時点で少なくとも半車身は彼の横に並べていたので、僕は仕掛けた。お互いにスペースを与えていたら、2台とも何事もなくあのコーナーを抜けることができていたかもしれない。パスをするか否かの判断を下すのは僕の側だった。わからないけど……。多くの人に僕のミスだったと言われた。瞬間的に僕は判断を下した。彼がホイールスピンした時、自分はタイヤが暖まっているのだから、とパスを仕掛けた。僕はそういうドライバーなんだ。僕は常に思い切り行く。アクシデントに絡んでしまった人々には申し訳ない。アクシデントに巻き込まれなくてもよい人たちまでを、そういう目に遭わせてしまったことに対して心が痛む。DHLとホンダに感謝する。今日の28号車は本当に強力だった。ただた、本当に残念な結果となった。アクシデントをもう一度よく見直すつもりだ。しかし、レーシングドライバーというもは、戦っている中でチャンスを見つけたら、思い切って行く。僕は勝ちたいから勝負に出たんだ」
すぐ後ろからアクシデントを見ていたウィル・パワーのコメント。
「後ろから全部見えていたよ。ハンター-レイがニューガーデンのインへと行ったが、彼はまだ充分にパスできるところまで届いていなかった。僕は少し下がって、何かが起こるのを待っていた。彼らは皆コールド・タイヤだとわかっていたからね」。
もう少し広いコーナーで確実に抜く。それがハンター-レイにとっても、他の多くのドライバーたちにとっても正解だったということだ。
代わってトップに立ったディクソンは燃料が切れ
最後の最後にコンウェイがレースをリード
上位陣が消えて、トップに立ったのはスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)だったが、彼は燃料が不足していた。彼がトップ争いでジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)をクラッシュさせてしまったのは、アウト側から並びかけて来たのに一切気づいていなかったから、とのこと。この事故がなければ優勝はウィルソンだった可能性が高い。ウィルソンはゴールまで走れるだけの燃料を積んでいたという。
ウィルソンが消えて、ディクソンがピットに向って、コンウェイがトップに躍り出た。彼はリスタートでパワーをパスしていた。
パワーは最後の最後で逆転……というシナリオを書いていたが、コンウェイが最後の最後で驚くべきスピードを見せた。フロント・ウィングにダメージを負っているというのに、彼は最終ラップに自己ベストをマークしてパワーにチャンスを与えなかった。
パレードでパワーと言葉を交わす。右はレギュラー2戦目で表彰台を獲得したムニョス Photo:INDYCAR (Chris Owens) |
3位はルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)。予選のQ1で驚速ラップをマーク。その速さがレースでも発揮されていた。母国のヒーロー、ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)に最後までパスを許さなかったところも見事だった。
ルーキー3人がトップ10フィニッシュ
開幕戦に続いてシボレーがレースを制する
4位はそのモントーヤで、5位は序盤にパワーに追突された後退を余儀なくされたシモン・パジェノー(シュミット・ピーターソン・ハミルトン・モータースポーツ)。6位は彼のチームメイト、ロシア人ルーキーのミカイル・アレシンで、7位はしぶとさが今回も発揮されたオリオール・セルヴィア(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。8位はマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)で、9位はセバスチャン・サーヴェドラ(KV/AFSレーシング)。そして、10位はコロンビア人ルーキーのカルロス・ウエルタス(デイル・コイン・レーシング)だった。
ルーキー3人がトップ10フィニッシュ。そして、コロンビア人ドライバーも4人揃ってトップ10フィニッシュというレースとなった。
シボレー・エンジンは開幕から2連勝。ホンダは2戦連続ポールポジションながら、両レースとも取り逃している。
ポイント・トップはパワー=93点。2位はコンウェイ=66点。3位はパジェノー=60点。
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