2013年5月25日土曜日

2013 INDYCAR 佐藤琢磨コメント 第97回インディー500 5月22日メディアデイ ロングインタビュー 後編:「今はハイペースを保ったままでいろんなことが見えてる」

コミュニケーションデイでファンサービスする琢磨 Photo:INDYCAR (Mark Reed)
前編から続く

「すべての面で無理をせず、自然体でいられるチームになってますね」

Jack Amano(以下――):今回でインディー500も4年目。ドライバーとして経験を積み重ねらてこれている。そして、今年走るチームはエンジニアのドンの働き易い環境が整えられている。そこへ琢磨選手はドライバーとして放り込まれて、とても座りが良い状態になってるって感じですか?

佐藤琢磨:そうですね。もちろんこちらが! “ここで新しいことをやるよ”っていっても、リザルトが伴わなければ、やることに対して疑問感とか出てきちゃうと思うんだけど、今年はホントにここまでの4戦、全レースでいいスピードを見せつけて、3戦と4戦では文句のないレース運びもできたし、そういう意味で僕らは今、大きな信頼を得ることができてます。今年、僕はインディーカーで4年目。僕はだいたいスロースターターなんだけど、これまで色々と経験を積んできて、やっとわかったのかよってところもあるかもしれないけど、すべての面で無理をせず、自然体でいられるチームになってますね。それが走りにも現れていて、無理してないし、プッシュする時はもちろんしてるしね。今までだとリスクマネジメントしなくちゃいけないから、すごい頑張って、守んなきゃいけなかったのが、今はそんなことする必要がなくて、ハイペースを保ったまま色んなことが見えてる。

――去年と同じ環境、同じスピードで走ってても、より廻りが、より細かく見えているって感じですか?

佐藤琢磨:気持ち的にはそうですね。フィジカル的にはどうなのかはわからないですけどね。
「去年は良い時と悪いの差がすごかったから、悪い時はそれを
自分の中で認められないんですよね。こんなはずはない! って」


――余裕がある。

佐藤琢磨:そうですね。去年の自分と、今のパッケージの自分、多分同じぐらいのスピードをどこでも出せると思うんですよ。ただ、同じようにレースができるかといったら、できないと思う。それは、僕が去年たくさんの失敗を経験したんだけど、その中で培ったきたことが今年ようやく結果に出始めてるというか……。

――外から見ていて、去年よりも断然落ち着いてる感じがあります。

佐藤琢磨:それはどうなんだろう? あまり意識してないから自分ではわからないんだけど、でも、頑張り過ぎる必要がないっていうか、それがわかってて、クルマも決して毎回ファステストではないかもしれないけど、十分にトップコンテンダーとしていられるパッケージを持っているという自信が余裕で、その余裕がある意味で危機回避だったり、ピットストップの挽回だったりっていうところにポジティブに働いていると思います。

――今になって振り返ると、去年までは例えば、佐藤琢磨の部分で少しのプラスアルファを……というような考えを持ってたんでしょうか?

佐藤琢磨:うん。あとはヤッパリ、フラストレーションですね。去年は良い時と悪いの差がすごかったから、悪い時はそれを自分の中で認められないんですよね。こんなはずはない! って。それはチームも一緒で、だからドライバーをさらにプッシュするし、メカニックもエンジニアも、さらにラディカルにっていうか、大げさなことをやろうとして、それが悪い方向にいってしまうとかがあったんですよね。ある意味、去年はクルマの特性もかなりナイフ・エッジで、スピードはあるけど、非常に許容範囲の狭い、ピーキーなクルマになってたんです。でも、そういう風に作ってしまったのは自分たちで、それを何とかスタビリティを上げて、どんな状況でも走れるマシンにするとストーンとスピードが落ちちゃった。そこらへんに自分たちの中でイライラというか、フラストレーションが溜まってて、じゃぁ自分の腕でカヴァーしようとか、何か他でカヴァーしようとか思うから、うまく行かなかった部分は多少あったと思います。

「日曜日の走行で新たな発見が幾つかありました
それに対する対策が何とかなってれば、絶対にいいと思うんです


――昨日でしたっけ? ドンとカーブデイのセッティングについて話をしていて、明日はかなりうまくいきそう、という感触はあったんでしょうか?

佐藤琢磨:そう。いくと思いますけど、こればっかりはやってみないとわからないですね。いかないって思っている自分は嫌ですから。

――過去には、いかないと思ってて、実際にいかなかったことも当然あるわけですよね?

佐藤琢磨:ダメっぽいなって感じ? それはありました。

――でも、今回に関していえば、明日に向けては良さそうと感じることができている。

佐藤琢磨:そうですね。良さそうっていうか、この間、新たな発見が幾つかあったんですよね、日曜日の走行で。その部分がシッカリと、うまく自分たちの中で理解して、それに対する対策が何とかなってれば、絶対にいいと思うんですよ。

――なるほど……ところで、予選の画像を見たらヘルメットがストレートでかなり揺れてるんですが、ドライビングに影響は?

佐藤琢磨:実はちょっと気になっていました。あれで500マイルを走ったら疲れちゃうんじゃないかなって。シートを低いのを作る予定だったんですが、それが間に合わなかったんです。

――去年より着座位置が高いのは、好みによって……じゃなかったんですね?

佐藤琢磨:はい。間に合わなかったんです。

――シートはあのまま、パッディングなどでヘルメットを安定させるってところですか?

佐藤琢磨:フロントスクリーンをもう少し高くしてコクピット内に入ってくる乱気流を抑える……それぐらいしかできないです。明日、やってみます。

――カーブデイは1時間の走行ですが、たくさん走るんでしょうか、周回数は抑えめでしょうか?

佐藤琢磨:走ると思いますよ、もちろん。だって、限られた時間しかないので、全部パックでの走行になると思いますけど、フルタンク、ニュー・タイヤで出てって、それが尽きるまで走る。それでまだ時間があればもう1回……というように。

――この間の日曜日までで、フルスティントのシミュレーションというか、走行テストはやれてますか?

佐藤琢磨:いや、完全なフルスティントはできてません。フルタンクはやりましたけど。フルスティントそのものを全コンプリートっていうのはできなかったですね。でも、兆候は見えたから。タイヤの温度とか摩耗とかで、それは十分にシミュレートできるから大丈夫だと思います。それよりもトラフィックの中でのバランスが見たいですね。

「パックの中でも連れてってもらえるようにカーブデイをマシンを仕上げます」

――やっぱりトラフィックが、走り足りてない。

佐藤琢磨:はい。自分がこうしたいっていう範囲にマシンは入ってきてますけど、まだドンピシャじゃない。

――ドンピシャ! っていえるほど走り込めるっていうのは、なかなか有り得ないんでしょうね?

佐藤琢磨:ないですね。だからそれこそ、アンドレッティってパックでの走行を最初からやってましたよね? プラクティス2日目から4台、5台でずーっとグルグルグルグル……・。そん中でクルマ作ってきたから、あのチームは本当に強いと思う。もう、あのすごいトラフィックの中でも彼らは踏んでけてるもん。僕はあんなに他のクルマに近づいて走れないし、彼らが近づいていく時のスピードっていうのもすごい。僕らだったら前のクルマとコーナーで同じ速度になっちゃって、ストレートに出てからもう1回加速だから時間がかかっちゃうんだけど、彼らはスピードが緩められないでスーッと追いついてっちゃう。

――連れてって~ってワケにはいかない?

佐藤琢磨:それは、トラフィックの中で速く走れるクルマだったらついていけるけど、トラフィックの後ろでフラフラしちゃうようだと離されちゃう。だから連れてってもらえるように、カーブデイのプラクティスでマシンを仕上げますよ。

以上:カーブ・デイ前日に収録@インディアナポリス・モーター・スピードウェイ

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