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ストリートコースでの開幕戦、ウィナーは110周回のレースを意外なタイヤセレクションで走り抜いた。ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)は、新品レッド→ユーズドブラック→新品ブラック→新品ブラックという順番でタイヤを投入。レッドで走ったのは110周のうちの“最初の20周だけ”だった。
2位に敗れたエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は、予選ファイナルまで進んだトップコンテンダー陣営が考える一番オーソドックスな戦略=新品レッド→ユーズドブラック→新品ブラック→ユーズドレッドという順番で、4位フィニッシュしたトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)も11番手スタートながらまったく同一のパターンだった。彼らはレッドで全レース距離のだいたい半分にあたる56周を走った。
トップコンテンダーは三者三様のタイヤチョイスに
おもしろいことに、今年の開幕戦はトップ3のタイヤ戦略が三者三様だった。予選7位だった(=ファイナル進出を惜しくも逃した)マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)は、トップ6とは異なる作戦でチャンスを作ろうと目論見、新品ブラック→新品ブラック→新品ブラック→新品レッドの順で走って3位フィニッシュしたのだった……とファイアストン発表のデータではなっているが、6セットしか供給されていないブラックを本当にマルコ陣営は3セットも決勝向けに残せてたんだろか? 1セットはユーズドだった? との疑いは晴れない。……それはともあれ、マルコ陣営の「最終スティントはフレッシュレッドで」という作戦はおおいにアリだった。ディフェンディングチャンピオンのライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)も使うはずの作戦。RHRは去年、ライバル勢と違うタイヤ作戦を使うケースが多く、成功率は高かった。
佐藤琢磨(AJ・フォイト・エンタープライゼス)は、マルコと同じくフレッシュレッドでゴール前に勝負する作戦だった。RHRは最後のレッドを投入する前にリタイア、琢磨は序盤のフロントウィング破損に、ピットストップでのポジションダウンでレース終盤をトップグループで迎えられず、フレッシュレッドのメリットを好成績に繋げ切れなかったが……。
エリオ陣営の期待より低かったユーズドレッドのパフォーマンス
最初のスタート、それに続くレース序盤は、ポジションアップの一番大きなチャンス。そう考えて新品レッドをスタートに投入するエントラントは多い(=今回のように)。しかし、ヒンチはフレッシュレッドで戦った最初の20周でのハンドリングが悪く、もう彼はユーズドしかレッドは残していないことで、最終スティントをブラックで戦う作戦に出た。
その一方でエリオは、去年までのセオリーどおりに最終スティントをユーズドレッドで戦った。路面もデキ上がっているレース終盤はタイヤへの負担は軽くなり、ユーズドのレッドでもライフに対する不安は小さくなくなるからだ。エンジニアリング能力で秀でるペンスキーは、他チームよりレッドに対する理解度が高いのか、持ちが長くできている。
今回のケース、ヒンチがブラック装着だったことを考えると、リスタートでのアドバンテージは暖まりの早いレッドを履くエリオにあるはずだった。ところが、ブレーキングミスを冒したのは彼の方で、ヒンチは難なくトップを奪い、そこから先のエリオはヒンチに対してアタックらしいアタックをほとんど仕掛けることができずにゴールした。ユーズドレッドのパフォーマンスは、エリオ陣営が期待したより低かったのだ。
勝負どころの終盤でフレッシュレッドは新トレンドとなるか?
今回のヒンチの戦いぶりは、今後、他のチームにも影響を与えるかもしれない。勝負どころの終盤に臨む際、ユーズドレッドではなくフレッシュブラックをチョイスする作戦だ。
しかし、ヒンチと同じチームのマルコは、最終スティントにフレッシュレッドを持ってきて大成功した。フレッシュだったらゴール前の使用はアリ! ということか。だとすると、琢磨のレース終盤のポジションダウンが悔やまれる。トップグループで粘れていたら、上位フィニッシュは十分可能だったということだからだ。
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