2012年8月25日土曜日

2012 INDYCAR レポート:R13 ゴープロ・インディー・グランプリ・オブ・ソノマ Day1 プラクティス1 ウィル・パワーがトップタイムをマーク。ランキングを争うハンター-レイ、カストロネベスは出遅れ

 空は真っ青だが、気温はやや低めのコンディション下、1時間15分のプラクティス1が開催され、ソノマで2連勝中のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がトップ・タイムとなる1分18秒6887をマークした。彼は21周を走った。ベストが記録されたのはそのうちの19周目だった。セッション終盤、路面のコンディションは急激に良くなって行ったようだった。セッション終了10分前を切った頃、トップにいたのはセバスチャン・ブルデイ(ドラゴン・レーシング)だったが、チェッカード・フラッグが振られる前にパパパッと5人が上回った。
 パワーは、「マシンは非常に良く、P1で週末をスタートできた」と満足顔だった。彼がタイトルを争う面々との間に明確な差をつけられたことも彼の気分を良くさせていたのだろう。
 2番手はソノマで2回表彰台に上った実績を持っているライアン・ブリスコーだった。3番手タイムはシモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)がマークし、4番手はダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)、5番手にはルーベンス・バリケロ(KVレーシング・テクノロジー)が来た。
 ポイント2位のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は、19番手と大きく出遅れている。ポイント3位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)も16番手だった。
そして、ポイント4位のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)も7番手と、今ひとつの週末スタートとなっている。
 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は19周を走ったが、ベストはそのうちの10周目の1分20秒8900。今回は27台とエントリーが多いが、そのうちの23番手という苦境に立たされている。トップだったパワーとの間には2.2秒以上もの差がある。

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント66 :R13 ゴープロ・インディー・グランプリ・オブ・ソノマ 8月24日 Day1 プラクティス1「新しいコースレイアウトはポジティブ。ただ、それ以外の部分で僕らはよくないです」

R13 ゴープロ・インディー・グランプリ・オブ・ソノマ
カリフォルニア州ソノマ
ソノマ・レースウェイ

3.837㎞×85周

Day1 プラクティス1
1分20秒8900  23位 19周走行


セッティング変更に時間を費やし、セッション終盤走れず

 佐藤琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、事前テストを行って臨んだソノマで厳しい走行初日を過ごした。トップのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がテスト時より速い1分18秒6887というベスト・ラップ・タイムをマークしたのに対し、1分20秒8900がベストと2秒近い差を突きつけられたのだ。
 パワーらトップ5がベストを記録したセッション終盤、琢磨はマシンのセッティング変更を行っていて走行しておらず、その作業を終了してからもアタックラップを重ねることはできなかった。時間が足りなかったのだ。この路面状況がかなり良くなっていたセッション終盤に走り続けていなかったためにトップとのタイム差が大きくなってたのは確かだが、そうした条件を差し引いても、琢磨陣営の置かれている状況は厳しい。


「根本的なバランスに問題を抱えているというか
全然グリップ感がなくて踏んでいけません」

――事前テストの続きという感じで今回も走っているのでしょうが?

佐藤琢磨:もちろんその通り。だけど……おかしいなぁ。KVは調子良くなっちゃいましたね、去年まで2年間ソノマはダメだったのに。

――予想外の苦戦になっているんですね?

佐藤琢磨:そう。でも、なんでだろうねぇ? なんでしょう? ちょっと遅過ぎるね。

――テストでのマシンのフィーリングはどうだったんですか?

佐藤琢磨:テストからあんまり良くなかったんですね。しっくり来てなくて。そういう意味で今日は大きく色々と変更をして試したいっていうところがありました。今日は先週のテストでやり切れなかった部分を持って来て、もうちょっと深く掘り下げてやろうと。それで幾つかセットアップも変えて来たし、今日のセッションの中でも変更を少ししてったんですけど……。ウーン、何か根本的なバランスに問題を抱えてるというか、全然グリップ感がなくて踏んで行けない。

「明日は大ナタ!」

――新しくなったレイアウトっていうのは、走り易いんですか? 難しくなってますか?

佐藤琢磨:あんまり変わらない。ただ、一番奥のターン7? あそこはダブルエイペックスの長いコーナーで、進入で抜くのが難しくて、でも出口はずーっとマシンが横を向いてるんでトラクションをかけづらかった、特にタイヤが劣化してからは。それが新しいレイアウトだと、すごいタイトなヘアピンになって、ほとんどまっすぐブレーキングして、向きを変えてまっすぐ出て来る。オーバーテイクの可能性も増えてると思います。レイアウト変更は非常にポジティブですね。ただ、それ以外の部分で僕らは良くない。

――今日の路面はテストより良くなかったんですか?

佐藤琢磨:いや、テストよりコンディションは良くて、風向きもテスト時より良かった。だから全体的にラップ・タイムは上がってるんですけど、僕らはある意味変わってないから。よろしくないですね。

――厳しい状況下、明日は何を?
佐藤琢磨:大ナタ!

――大きな好転がなされることを期待してます。

2012 INDYCAR レースプレビュー:R13 ゴープロ・インディー・グランプリ・オブ・ソノマ

レイアウト変更したソノマでどんなオーバーテイクシーンが実現するのか?

 お久しぶりです!
 中国・青島でのレースがキャンセルになって、お盆休みみたくなってましたね、インディーカー・シリーズは。
 今週末のレース向け”プレビュー”のお届けが遅くなってしまいました。休みボケしちゃってたからではありません。少々調べもので時間がかかったところへ、現地宿泊先の通信トラブルが重なってしまったんです。お詫び致します。

 さぁ、もう今シーズンも残すところ3レースとなりました。今週末はノーザン・カリフォルニアのソノマ・レースウェイが戦いの舞台です。このサーキット、インフィネオン・レースウェイという名称で近頃は親しまれて来ましたが、その前はシアーズ・ポイント・レースウェイという名前で、スピードウェイ・モータースポーツ・インコーポレーテッド(SMI)が傘下に収めた後、ネーミング・ライツをインフィネオンに販売したのでした。しかし、両社の契約が今年の夏前に切れ、今はソノマ・レースウェイを名乗っています。
 そのレースウェイが、今年はレイアウト変更を行いました。「オーバーテイクが全然起こらないつまらないレース」と言われ続けていた、その汚名を挽回しようと改修がなされました。
 今回のコース変更、一番大きいのは最終コーナーの改良です。エスケープゾーンの一切無いオリジナルのヘアピンコーナーと、大きくエスケープを取った去年までのコーナーとの間に、よりタイトな形状のヘアピン・コーナーを設定しています。去年より200フィートもコーナーは奥へ行ってます。しかも、コーナー入り口がタイトにされたので、ブレーキング競争が激しく行われるはずです。
 最終コーナー前は右へ緩やかに曲がるターン10があって、その前に90度に2回曲がるシケインが設けられているわけですが、そのシケイン出口のコース幅が10~50フィート広げられました。このシケイン自体が、そもそもオーバーテイクポイントとなるよう作られたのですが、去年までだとなかなかパスが見られませんでした。それが、このコース幅拡大によって、パス実現の可能性がアップしそうです。しかも、シケイン脱出スピードが上がって最終コーナーへのアプローチ速度もアップすることから、よりハードなブレーキング競争がそちらで見られるという次第です。

 最終コーナーから見て、コースの真反対にあるターン7にもレイアウト変更があります。こちらもヘアピン形状のコーナーなんですが、ふたつのコーナーで構成されていたのを、ひとつのタイトなものに変えたので、ブレーキング競争、サイド・バイ・サイドでのバトルが見られる期待がされています。
 過去3年間のトップ3を挙げると、去年が優勝=ウィル・パワー、2位=エリオ・カストロネベス、3位=ライアン・ブリスコー(ペンスキーがトップ3スウィープし、ガナッシ勢は4、5位でした)。10年が優勝=パワー、2位=スコット・ディクソン、3位=ダリオ・フランキッティ。09年が優勝=フランキッティ、2位=ライアン・ブリスコー、3位=マイク・コンウェイ。記録からするとソノマではペンスキー優勢‥‥でしょうか?
 佐藤琢磨は一昨年も去年も決勝は18位。予選も16位、17位とソノマでは思い描く通りの走りができていません。しかし、今年の彼らはテストを敢行! 優勝争いへと絡んで行くことを目指しています。

2012年8月22日水曜日

2012 INDYCAR レポート:プッシュ・トゥ・パスの作動はボタンを押してから5秒遅れに

  詳しくお知らせしてませんでしたが、ミッド・オハイオでの第12戦ホンダ・インディー200からプッシュ・トゥ・パス(P2P)のシステム変更がありました。ドライバーがボタンを押してから5秒(以上)後にP2Pが作動するように変更がされたんです。P2Pをディフェンシヴ(防御的)に使うケースが目に余り、それがレースをおもしろくなくしていることは明らか、とインディーカーは考えたわけですね。相手がP2Pのボタンを押したと見て、それに反応して自分も押す、という使い方は思い切りしにくくなったということです。
 インディーカー・シリーズとしては、今シーズンの開幕前からエンジン・マニュファクチャラーとも相談して検討して来た5秒遅れのシステムということですが、これはまぎれも無く”エリオ・ルール”とでも呼ばれるべきものですね。ミッド・オハイオ直前のエドモントンでのレース、優勝争いで佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は果敢なアタックを続けたものの、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がP2Pをプッシュ・トゥ・ディフェンドとして使いまくり、優勝へと逃げ切った。これをインディーカーは「おもしろくない!」、「目的と異なる使用法だ」と捉えたんです。確かに、プッシュ・トゥ・ディフェンドとしての効果が大きいと、見てる側としては興醒めです。
 ところが、5秒遅れの作動は、ドライバーたちに不評でした。
 意見をストレートに言うウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、「ハッキリ言ってバカげてる。5秒後にパワーが出るなんて、使えない」とボロカスでした。その理由は、「そもそもP2Pはスロットルをある程度開けている状態でしか作動しないようになってるから、ボタンを押してからコーナーに入ってアクセルを戻すと、P2Pは自動的に解除されちゃうんだよ」と呆れ顔。「まったく有効性を見いだせなかった」と新ルールを否定していた。
 「防御的に使われていたとしても、エドモントンまでのままのP2Pの方が良かったな」と、優等生的コメントのシモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)でさえ、5秒遅れの作動には反対意見だった。
 佐藤琢磨も予選後、「例えば相手がミスした時、パッとそれに反応して押してもP2Pが効かないってことでしょ? そういう状況でのオーバーテイクが無理になりましたね」と、ルール変更でオーバーテイクのチャンスがある意味潰されてしまう可能性について懸念をしていた。琢磨のこの指摘もうなずける。P2Pというシステム、そしてルールに関して、インディーカーは今後も検討、もしくは改良を重ねて行く必要がありそうだ。