2012年6月2日土曜日

2012 INDYCAR ニュース:フォトレポート ファイアストンの新レインタイヤが登場


Photo:Masahiko Amano(Amano e Associati)

ファイアストンは今週末のデトロイトGPから新しいウエットタイヤをIZODインディーカー・シリーズに投入した。過去15年間使われて来たウエットコンディション用タイヤ(もちろん、この間にも改良は続けられて来た)から大きな進歩が遂げられたものだ。
 ジャック・アマノのINDYCARレポート メールマガジン・プレミアムでは、佐藤琢磨コメント番外編としてタイヤの使用感を一言コメントでお届けします。

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント32 R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ 6月1日 Day1 プラクティス2 「クルマの状態は今は非常に厳しいですね。明日に向けてクルマ作りをしていきます」

シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ
6月1日 Day1 プラクティス2
1分15秒9058 22位 15周走行
 
 ウェットコンディションでのプラクティス1でトップタイムを出した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だったが、ドライになったプラクティス2は25台中の22位と低迷した。路面が良くなるのを待ってコースインしたところ、マシンのセットアップが今ひとつであることが判明。セッション終盤にレッドフラッグが出されて走行時間が短縮されたこともマイナスに作用していた。

Jack Amano (以下――):周回数が少なかったですね
 
佐藤琢磨:そうですね。
 
――何か問題があったのですか?
 
佐藤琢磨:いや、問題があったワケじゃないんだけど、チームが、最初はコースが完全にグリーンな状態(タイヤ・ラバーが乗っていない)なので、少しトラックがキレイになるのを待ってから行きたいっていうことでしたね。
 
――では、セッション終盤のレッドフラッグは余計だったっていうところですね?
 
佐藤琢磨:まあそうですね。
 
――もうちょっと走りたかったですよね?
 
佐藤琢磨:はい。もうちょっと走りたかった。
 
――限られた走行の中でのクルマのフィーリングはどうでしたか?
 
佐藤琢磨:今は厳しいですよね、非常に厳しい。だから、結構そのクルマがまとまってない状態です。ディスコネクテッドって言葉を使うんですけど、要するに、ロースピードとハイスピードのコーナーで結構チグハグで、だから、クルマが今はハンドリングとしては非常に厳しい状態。
 
――低速と高速、どっちの方が悪いんですか?
 
佐藤琢磨:いや、両方良くないです。

――では、明日はセッティングをガラリと変更しないとなりませんか?
 
佐藤琢磨:変えたいです。今日、必要なデータが少し取れなかったりとかがあったので、幾つかハードルがあるんですけど、良いデータも取れているはずなので、明日に向けてクルマ作りをしたいです。
 
――このコースは難しいという第一印象でしたが、おもしろさもありますか?
 
佐藤琢磨:うまく走れればね。すごいハイスピードだし、すごいバンピーだし、すごいアンジュレーションでクルマは本当にいろんなところ飛び跳ねてくし、かなりチャレンジングです。

2012 INDYCAR レポート:6月1日 R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ Day1 プラクティス2 ドライコンディションでのプラクティスはウィル・パワーが最速 佐藤琢磨は22番手

R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ
6月1日 Day1 プラクティス2

天候:曇り
気温:16~17℃

パワー、デトロイトのコースに手ごたえ十分
 

 プラクティス1の後に雨は上がり、空は曇ったままながらプラクティス2はドライコンディションで行われた。
 全長2.07マイル、14のコーナーを持つコースに徐々にタイヤラバーが乗って来る中、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が1分12秒8355のベストを記録した。コンクリートウォールに囲まれながら、スピードが全体的に高いのがベル・アイルのコースの特徴。「素晴らしいコースだと思う。良いラップタイムを出したかったら思い切り攻めなくちゃらならいんだからね。シビレるよ」とパワーは語った。ここは自分の能力を信じ、自信に溢れた走りができるドライバーに向いているコース。パワーが得意とするタイプだ。
 2位はジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)だった。さすがは08年のデトロイトウィナーだ。彼のタイムは1分12秒9343と、パワーとの間には0.0988秒しか差がなかった。この二人は、どちらも19周を走行し、どちらもその17周目にベストを記録した。
 「デトロイトは走っていて楽しいコースだ。僕らのマシンのセットアップも良い。オーバーテイクが難しいコースだから、明日の予選は重要だ」とウィルソンは語った。
 今日の3位はライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)、4位はルーキーのシモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)だった。
 

ドライではセッティングが良くなく、琢磨は22位に

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、ウェットでは良かったが、ドライではセッティングが良くないことが判明。走行周回数も15周と少なく、ベストは最初のコースインで記録した9周目の1分15秒90578で、25台中の22位。トップとの間には3秒以上という大きな差があった。
 インディーウィナーのダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)は、1分14秒0573で12位だった。
 ロータス・エンジンで走るのは、HVMレーシングのシモーナ・デ・シルベストロひとりだけ。彼女は8周を走ったところでコース上にストップ。ベストはパワーより7秒6も遅い1分20秒5041だった。

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント31 R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ Day1 プラクティス1「デトロイトのコースはチャレンジング! ストリートというより普通のレーシングコースに近い感覚ですね。ウェットでしたがこのセッションでコースを覚えられました」

シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ
6月1日 Day1
プラクティス1 1分28秒4739 1位 8周走行
 
デトロイトのダウンタウンのすぐ北、ベル・アイルの公園内道路を使ったサーキットは、朝からの雨でウェットコンディションとなっていた。エントリー25台のうちの半分以下しかコースインをしなかったが、佐藤琢磨は8周を走行。6周目に自己ベスト、そして同セッショントップとなる1分28秒4739をマークした。2番手は7周を走ったルーベンス・バリケロ(KVレーシング・テクノロジー)で、0.3692秒差の1分28秒8431だった。

Jack Amano(以下――):佐藤選手はウェットでもプラクティスは走るべきという意見の持ち主ですが、去年までは走らせてもらえないケースが多かったと思います。今日は、たくさんではなかったけれど、走れましたね。
 
佐藤琢磨:チームが僕の言うこと聞いてくれるんですよ。ここを僕が何度もレースで走っていて、今日の午後の天気予報が良くなるという見込みで、明日からがドライだってわかっていたんだったら走らなかったかもしれない。けど、デトロイトは僕にとって初めてのコースだから。チームはここで過去にレースをしているけれども(ベル・アイルでの初インディーカー・レースで優勝したのはボビー・レイホール=レイホール-ホーガン・レーシング)、今年はニューカーだし、明日、明後日の予報もまだハッキリわかってない。晴れるというのと、雨が降る間を行ったり来たりしてるのでね、少なくとも最初のセッションは、僕がコースを覚えるためのものとして、そして、持って来たクルマのイニシャルセットアップの確認が目的でした。
 
――ウェットであっても、走ってみるとみないでは大違いですか?
 
佐藤琢磨:全然違う。全然違う。
 
――雨の中で走ったデトロイト、印象を聞かせてください。
 
佐藤琢磨:チャレンジング! 難しいですね。コースレイアウト自体も、ものすごい狭いんだけど、結構ハイスピード。例えば、セント・ピータースバーグみたくハイスピードのところはワイドで、コーナーは90度で……といかにもストリートなレイアウトじゃないですよね、ここは。普通のレーシングコースに近いですよね、S字セクションもあるし。それなのに、サーフェイスがトロントみたいにアスファルトセクションからコンクリートになって、そのコンクリートがラフなものと滑り易いコンクリートと二種類あって、1周の間に4回ぐらい路面のミュー(摩擦係数)が変わるんですよ。それがやっぱり、結構怖いですね。
 
――ウェットコンディションとはいえ、デトロイトの週末をトップタイムでスタートできたのは、気分的にも良いものなんじゃないですか?
 
佐藤琢磨:悪くないですね。もちろん悪くないし、まあ次のセッションがどういうコンディションのものになるかはわからないけど、多分みんなが走りに出て来て、もっとタイムが上がって来ると思うので、そんなに簡単ではないと思います。でも、少なくとも今のセッションを走ったことでコースは覚えられました。

以上

2012 INDYCAR レポート:6月1日 R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ 雨のプラクティス1 佐藤琢磨がトップタイム

シボレー・デトロイト・ベル・アイル・グランプリ

6月1日
Day1 プラクティス1

天候:曇り ときどき 雨
気温:摂氏16~17℃

 

ウェットで走行したのは11台のみ

 インディー500は終始ドライコンディションだったが、デトロイトは最初から雨。気温も低い。どんよりと低く垂れ込めた雲の下、ウェットコンディションでスタート。今週はずっとこんな感じという予報も出ているが、プラクティス1を走ったのはエントリー25台のうちの11台だけだった。
 こういうケースで走るのは、大抵がヨーロッパ系だ。
レースがドライで行われる可能性が高いと見たら、アメリカ人は走らない。雨の中を走ることを、多くのチームが「無駄なリスク」と捉えているからだ。確かにリスクは高まる。しかし、雨の経験を積むチャンスを無駄にしているようでもったいない。ましてや、今週末は雨の可能性もあるのだから、走っておいて損はないと思うのだが……。さらにもうひとつ。今回はちょうどファイアストンが新しいウェット・タイヤをデビューさせて来たタイミングだった。そのタイヤを試すことも重要だったと考えられる。
 このプラクティスを走ったドライバーたちをタイム順に並べると、
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、ルーベンス・バリケロ(KVレーシング・テクノロジー)、ジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)とF1経験者がトップ3を占めた。彼らよりウェットの練習が必要なはずの面々が全然走らないとは……解せない。4番手以下は、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)、シモーナ・デ・シルベストロ(ロータス・HVMレーシング)、シモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)、セバスチャン・ブルデイ(ドラゴン・レーシング)、チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)、ジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング)。マイク・コンウェイ(AJ・フォイト・エンタープライゼス)とライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はマシンを転がしただけだった。

以上
Jack Amano

2012年6月1日金曜日

2012 INDYCAR レースプレビュー:R6 シボレー・デトロイト・ベル・アイルGP エンジン勢力図は塗り替えられるのか? 自動車産業の都でストリート・ファイト

ホンダ、シボレーの地元でロング・ビーチのリベンジを果たせるか?
 デトロイトでのインディーカー・レースは2008年以来となる。イベント名はシボレー・デトロイト・ベル・アイルGP。2012年IZODインディーカー・シリーズの第6戦だ。
 アメリカ自動車産業の首都デトロイトは、もちろんシボレーの地元だ。その上にレースのタイトル・スポンサーもシボレーと来れば、シボレー・チームとすれば勝たないワケにはいかない。しかし、先週のインディー500ではホンダが勝ったばかり。それも1-2フィニッシュだった。全長2.1マイル、14のコーナーを持つコースでシボレーとホンダのエンジンの力関係は果たしてどうなっているのか、とても楽しみだ。ドライバビリティが大事なコースレイアウトでは、ツインターボのシボレーが依然としてアドバンテージを持っているのだろうか。あるいは、ホンダが優位を手に入れて地元ロング・ビーチで勝てなかったリベンジを果たすのだろうか。


ストリートコースでホンダ新エンジンの燃費に注目!
 開幕からの4レース、ストリート&ロードコースで4連勝を記録したシボレー勢は、ポールポジションも全部獲得。彼らのアドバンテージは明確だった。しかし、オーバルであるとはいえ、インディーではホンダ・エンジンの燃費が急激に良くなっていた。開幕4戦ではシボレーが断然優っていたのに、立場は1戦で完全に入れ替わっていた。ストリートコースのデトロイトでもホンダは燃費での優位を得られるのか? それもまた注目だ。
 IRL主催のデトロイト戦で勝っているのは、トニー・カナーンとジャスティン・ウィルソンだ。CART時代に遡ると、エリオ・カストロネベスが2勝、ダリオ・フランキッティが1勝。チームオーナーの中ではマイケル・アンドレッティとボビー・レイホールが優勝している。


ロータスついに1台に。ドラゴンも今回はブルデイ1台だけのエントリー
 エントリー・リストを見て残念なのは、ロータスがついに1台になってしまった点。HVMレーシングだけ=シモーナ・デ・シルベストロだけといのは寂し過ぎる。このままでは、来シーズンにユーザーチームを確保することすら難しいだろう。今シーズン中にエンジンの競争力を飛躍的に向上させ、対等に戦えるところを見せることがロータスには求められている。
 ロータスを離れシボレー入りしたドラゴン・レーシングは、インディー500では2台を走らせたものの、デトロイトからのシーズンの残りは1台しか走らせないことになった。
 シボレーとしては、フルシーズンを11台で戦う計画だったが、4戦を終えたところでロータスからパンサー/DRRら移籍して来て、供給台数は12台に増えた。その上に、インディー500開催期間中にドラゴンまで受け入れることになって、アンドレッティのスポット参戦2台も含めて16台への供給を行った。
 インディーが終わってもドラゴンはフルシーズン参戦の計画なので、彼らを受け入れるとシボレー勢は14台になる。それだけの台数に万全の体制を整えるのは難しいと判断し、シボレーはドラゴンには1台の供給枠しか与えなかったのだ。
 ドラゴンは苦肉の策として、セバスチャン・ブルデイにストリート&ロードコースを担当させ、キャサリン・レッグがオーバルレースを走ることにした。今週はベル・アイルでのストリート・レースなので、ブルデイの出番だ。


ルカ・フィリッピの参戦は先送りに
 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)にとっては、今回が初めてのデトロイト。ベル・アイルのコースはバンピー&ハイスピード。琢磨とRLLのエンジニアリングスタッフはマシンをいかに仕上げ、ドライバーがどんな走りを見せてくれるのか。楽しみにしたい。なお、RLLはデトロイトから琢磨のチームメイトとしてルカ・フィリッピを走らせる予定だったが、それは先送りとなったようで、今週末のエントリーは25台となっている。

ジャック・アマノのインディーな1日:5月31日 束の間のオフにフィッシングを敢行! 3匹も釣れちゃった

「ほぅ、これがサンフィッシュか・・・」
Photo:Amano e Asssociati
友人に誘われ、会員制の釣り場に

 明日からデトロイト・グランプリだというのに、突然釣りに行くことになった。明日の朝は超早い出発なのに。
 前々から、「釣りにでも行きたいなあ」って思ってた。でもタイミングが合わず、何度も実現しないで来ていた。だから昨日、友達が突然電話で「明日行こう!」と誘って来た時、断れなかった。

会員制だけあって、釣り場は手入れが行き届いてとてもきれい。
この釣り人は今回誘ってくれた友達のジェリー。
Photo:Masahiko Amano\Amano e Associati
 宿泊先から1時間弱のドライブ。誰かさんの敷地内にある池へと向かった。ここは会員制で、釣り用と泳ぎ用、池がふたつあった。畔の雑草はキレイに刈り込まれていて、簡易トイレもあった。こんな商売もあるんだね。釣り用の池はボートを浮かべてもオーケーみたい。
こちらが本日の釣果のサンフィッシュ。
Photo:Masahiko Amano
Amano e Associati
 朝の11時過ぎから4時間少々。ブルーギル、ブラックバス、サンフィッシュが釣れた。サンフィッシュなんて初めて見た。
  高校時代は釣り部に在籍してた。ルアーとかフライとかに中学時代から夢中になって。あの頃に憧れた道具は、全部アメリカ製だった。
 高校卒業の後、釣りはしなくなった。1990年代の初めの頃、ヒロ松下選手に誘われて2回行ったな、インディーとナザレスで。どちらも1匹も釣れなかった。それが今日は3種類を1匹ずつ釣ったんで、大満足。
 明日からまたレースだあ!


リフレッシュできた一日。明日からの4連戦、ガンバリマス!!
Photo:Amano e Associati


 

2012年5月31日木曜日

ジャック・アマノのインディーな1日:5月29日 デトロイト前にオハイオへと移動 その2―インターステイト上での思わぬ出会い――

インディー500直後に因縁のコンビネーションが

  昨日の移動中、インターステイト上で反対車線にホーガンのダークブルーのセマイ・トレーラー・トラック(超大型トレーラートラック)を発見した。
 「あ、ホーガンだ。久しぶりに見たな」なんてぼんやり考えてたら、そいつの引っ張ってたのがターゲットストアのトレーラーだった。
 「へー、ターゲットの仕事もしてんだな」。
 でも、なんかヘンだよな。ホーガンとターゲットってコンビネーション。なんて思ってて、しばらくして「ホーッ!」と驚いた。すごい奇遇じゃないの!?
 ホーガンてのは、故カール・ホーガンの興した運送会社。レイホール-ホーガン・レーシング、ホーガン-ペンスキー・レーシングを経て、独自のホーガン・レーシングを97年にスタートさせた(70年代にはF5000とかCan-Amのチームやってた実績アリ)。シャシーはレイナードで、エンジンはメルセデス・ベンツ。そのドライバーに抜擢されたのがダリオ・フランキッティだった。
 ホーガンとターゲット、両方に関係があるのはダリオだけ。そんなコンビネーションをインディー500のすぐ後に見るとは……ねぇ。

2012 INDYCARレポート:「ゴール前20周が、それまでの180周と全然違っていた」バリケロがINDY500ルーキー最上位

ルーキー最上位はルーベンス・バリケロ

史上2番目に暑いコンディションで行われたインディー500は、ルーキーたちにとってはさぞ難しいものとなっていたことでしょう。前の週のプラクティスまでとは大きく気候が変わって、それも暑い方に振れたので、マシンの安定感が失われちゃったケース、バランスが崩れちゃったパターン、多かったと思う。それでルーキーたちは戸惑い、自信を失ってしまってた、と。

Photo:Naoki Shigenobu

2012年5月30日水曜日

ジャック・アマノのインディーな一日:5月29日 インディアナポリス→クリーブランド 移動しつつも、ついつい考えてしまうのはインディー500のこと

インディーが500終わって、さらにここから4連戦がスタート

340マイルは遠い。しかも、オハイオはスピード
違反の取り締まり盛んだし。
Photo:Masahiko Amano/Amano e Associati
 インディー500が終わったと思ったら、もうすぐにデトロイトGP。今年のスケジュールは過酷だ。その後もテキサス、ミルウォーキー、アイオワと続く。インディーのプラクティス開始から勘定すると7週末連続。ブラジルから9週も日本に帰れない。
しかも、インディーのプラクティス&予選は9日間連続走行で、雨による休みが今年はゼロだった! ルーキーオリエンテーション入れると11日間連続走行になってた。
今日は移動日。デトロイトに備えるためにインディアナポリスを離れた。向かった先はオハイオ州クリーブランド近郊。こっちの方がインディーより少しだけデトロイトに近いのでね。
移動距離は340マイルもあった。

アメリカではガソリンの方が
安いんですよ、軽油より。
市販乗用車でディーゼル
ってほとんど見ない。
円高だから、換算すると
この値段、驚くべき
安さじゃない?
Photo:Masahiko Amano
\Amano e Associati
その道中、まずはスプリント&ミジェットをメインに写真を撮っていたカツエ・グラッドバックさんをインディアナポリス郊外に訪ねて(退院したばっかりなので)、オハイオ州コロンバスの日本の食料品スーパーで買い出しして、インターステイト沿いのアウトレットモールにも寄って……なんてやってたから9時間もかかっちゃった。
移動中、考えるのはインディー500の最終ラップ
 運転しながら何度も考えたのは、やっぱり佐藤琢磨のインディー500のこと。ターン3が風向きの関係でパスが難しいのだったら、ホントのホントの最後の一発勝負まで待つことにして、最終コーナー立ち上がりからゴール・ラインまでで競うって作戦もあったのかな? などなど。
スコット・ディクソンやトニー・カナーンのコメントは、私の心には全然響いて来なかった。ダリオをかばい過ぎ。既得権防衛に必死になってるお役人みたい。カナーンが琢磨の立場だったら、どうしたのかね? ディクソンは先輩チームメイトが相手だったらアタックを遠慮しそうだし。
それにしても、ダリオ・フランキッティの最終ラップの動きは、あれで本当に良かったのかね? 勝つためにベテランが選んだ戦いぶりは、見事狙い通りに彼に勝利をもたらしたワケだけど。

アウトレット・モールという商売は、アメリカではもう随分と前から基本的には下火。クルマが溢れ返って……というところは少ないと思う。ウィークデイの夕方ということもあったんだろうけど、ガラ空きでしたね、このモール。
Photo:Masahiko Amano\Amano e Associati

2012 INDYCAR ニュース:5月29日 アメリカ人も高く評価した佐藤琢磨のチャレンジ――第96回インディアナポリス500 レース後の反応――

「最後の見せ場は佐藤琢磨のアタックだった」と地元紙

 レース翌日、インディアナポリスの地元紙「インディアナポリス・スター」は、佐藤琢磨のファイナル・ラップのアタックに1ページを割いていた。その見出しは、「熱く戦われたレース、最後の見せ場は佐藤のアタックだった」というもので、バスケットボールから野球などなどまで、メインで書いている記者が担当した記事だった。
 新車導入とエンジン競争の再開も影響してか、新記録のリードチェンジが行われた今年のインディー500は、ウィル・パワーの不運、地元インディアナポリス出身のエド・カーペンターが終盤に見せた追い上げ、アンドレッティ家の伝統にならってまたも勝利に手が届かなかった三代目、トニー・カナーンのミラクルリスタート‥‥などなど、多くの要素が盛り込まれた実に内容の濃いレースになっていた。そして、その最後を締めくくったのが、佐藤琢磨の勇猛果敢なチャレンジだった。


琢磨のチャレンジングスピリットにアメリカのファンも興奮
 劇的な幕切れ。勝者と敗者の明暗。暑さの中で白熱した戦いはダリオ・フランキッティをウィナーとすることになったが、イエローフラッグとチェッカーフラッグが同時に振られた後に彼がターン1へと戻ると、大きなブーイングが起こったという。プレスルームでは、インディアナポリス出身で、40年近く取材をしてきているベテランライターが、「あの動きは感心しない。タクが勝っていたレースだ」と僕のところにワザワザ言いに来た。
 レース後のガレージでは、僕らが琢磨の取材をしているのを見つけたファンが集まり、「あのアタックは最高だった」、「勝っていたのはオマエだ!」、「来年こそ勝ってくれ」と次々に声をかけていた。
 琢磨のチャレンジングスピリットは、アメリカのファンを熱くさせた。インディー500、そしてインディーカー・シリーズがあるべき姿に戻るための原動力になる渾身のアタックだった。

INDYCARレポート無料マガジンを発行しました

大興奮のインディー500が終了して、未だ興奮冷めやらないという人はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか? 現地、ジャックからのレポートによると、インディアナポリスでも一夜明けてまだまだ、佐藤琢磨一色のようです。

29日午後に無料版メールマガジンを発行いたしました。こちらは、28日夜までのサイトへのアクセスランキングと休む間のなく開催される次戦、デトロイト グランプリでの記事配信予定をお届けしています。琢磨選手にはインディー500でのアグレッシブさをデトロイトでも期待したいですね!

これまで配信されたメールマガジンのバックナンバーは以下のページで見ることができます。試行錯誤しながらコンテンツを充実させていきたいと思います。
http://www.accessmail.jp/public/bnz.php3?pk=GvdCGIC5
※メールマガジンの発行にあたり、アクセスメール(www.accessmail.jp)のシステムを利用しております。

ご覧になって、気になった方は、ぜひ、ご登録をお願いいたします。

無料版メールマガジンへのご登録はこちらで可能です。
ご登録は下記、登録フォームに受信を希望するメールアドレスを登録してください。
ジャック・アマノのINDYCARレポート メールマガジン(無料版)
メールマガジンへの登録
 
登録完了後しばらくすると確認メールが届きます。

※携帯電話などのメールアドレスで受信登録した方は、gmail.comおよびaccessmail.jpからのメールを受信できるように設定の変更をお願いいたします。

※mobile meのメールアドレス(@mac.com、@me.com)をお使いの場合、メールマガジンが受信できないという現象を確認いたしました。お手数ですが、mobile me以外のメールアドレスでご登録いただくことをお勧めいたします。


メールマガジンへの解除は下記のフォームにご登録のメールアドレスを送信してください。
メールマガジンの解除
 
解除完了後しばらくすると確認メールが届きます。


有料版メールマガジン、『ジャック・アマノのINDYCARレポート メールマガジン・プレミアム』では、取材・執筆直後の記事原稿をジャック・アマノからダイレクトに皆様へお届けしています。
詳細は
http://www.indy-amano.com/2012/05/indycar.html

にてご確認ください。現地からの情報を時差を無視してバンバンお送りする、インディーカー大好きっ子、佐藤琢磨ウォッチャーにはたまらないメールマガジンをお届けします。

2012年5月29日火曜日

2012 INDYCAR ニュース:5月28日 インディー500表彰セレモニーで佐藤琢磨がナイススピーチ

「優勝を狙いに行きました」とキッパリ

 決勝翌日の夜、インディー500は表彰式をスピードウェイ内で行った。
 33位から順に壇に上がり、賞金の小切手を受け取って短いスピーチを行うスタイルだ。
 17位フィニッシャーとして登場した佐藤琢磨は司会者に、「あそこはヤッパリ勝ちに行きましたね」と切り出されると「行きました!」とすぐさま応えた。彼はその理由を、「インディーの表彰台に上れるのはウイナーだけだと知ったので、これは2位、3位じゃダメだって考え、優勝を狙いに行きました」と付け加えた。
 琢磨は賞金の小切手を受け取った後、スポンサーやクルー、チームオーナーのボビーレイホールに対する感謝の辞を述べた。そして、今年から彼のレースエンジニアとして働いているジェリー・ヒューズを特別に名前を挙げて讃えた。F1からやって来たこと、一緒にF1で働いていたことを紹介し、今回のインディー500が彼にとって初めてのオーバルレースだったことも話した。そのような条件で優勝争いができたことは、彼のエンジニアの能力の高さを証明している。もちろん、チームのテクニカル・ディレクターなどがアシストしてこその活躍ではあったが、ドライバーとしては、レースエンジニアが最も身近な、そして重要な存在なのだ。琢磨は壇上で拍手し、会場の人々も、ヒューズの仕事ぶりに対して賞賛の拍手を送っていた。
 短いスピーチの締めは、やはりウィナーへの祝辞だ。琢磨も真剣な表情で、「ダリオ、おめでとう。あなたとレースをするのはとても楽しかった」と讃えた。そして最後に一言。「僕は小柄だけど、もうちょっとスペースが要るんだ」と、笑顔でピーチを終えた。
 琢磨のウィットに富んだ英語のスピーチは会場を笑いの渦に巻き込んだ。ダリオもこれには大笑い。隣りに座っていたダリオ夫人=ハリウッドスターのアシュリー・ジャッドも声を上げて笑っていた。


2012年5月28日月曜日

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント30 第96回インディアナポリス500 5月27日決勝:「ホワイト・フラッグが見えて、4コーナーを立ち上がった時には、もう絶対に勝てたって思った。トラフィックの中でのマシンはブッチギリで良かったと思う。100周を残してあれだけリードをしても、勝てない。それはわかってた。ラストの30周は凄いバトル。最終ラップに行く時に、勝ちに行くって意識を持ってた」

佐藤琢磨が最終ラップのターン1で見せたアタックは、3度目の挑戦となったインディー500で優勝を目指したものだった。まさに、佐藤琢磨ならではの戦いぶりだった。今日、琢磨はアメリカで一気に大勢のファンを獲得した。

Photo:Naoki Shigenobu

Jack AMANO(以下——)最後のリスタートを7番手で迎えた。どんなことを考えてました?

2012 INDYCARレポート:5月27日 第96回インディアナポリス500 決勝/琢磨とレイホール、ドライバー同士だから理解できる攻めの姿勢


Photo:Naoki Shigenobu

佐藤琢磨のドライビングは冴え渡っていた。インディアナポリスでのオーバーテイクの仕方を初年度からマスターしていた、彼ならではのアグレッシブな戦いぶりは、観客席を埋めたアメリカのファンを熱狂させていた。レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのマシン作りも素晴らしかった。レースを通してペースは非常に安定しており、戦闘力はトップレベルの高さにあった。ピットで陣頭指揮を執るボビー・レイホールの作戦も的確だった。ガナッシ勢と敢えて違うピットタイミングを選び、優位に立つシーンさえあった。Taku & Bobby、今年から一緒に戦い始めた彼らだが、そのコンビネーションは急速に深まって行っている。

2012 INDYCARレポート:5月27日 第96回インディアナポリス500 決勝 佐藤琢磨、優勝を懸けたアタックでクラッシュ!

天候:快晴
気温:31~32.5℃


Photo:Naoki Shigenobu

ダリオ・フランキッティ、インディー3回目の勝利

 ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)がインディー500での3勝目を飾り、チップ・ガナッシはオーナーとしての5勝目を挙げた。予選16位だったフランキッティだが、カーブデイのファイナルプラクティスで最速ラップをマークした。マシンのセッティングが良かったためだ。そこをベースとして、彼らは決勝日の暑いコンディションに対する調整でも最も成功を納めていた。さらに、不利と見られていたホンダV6シングル・ターボがパワフルさを発揮した。しかも、ホンダV6は燃費でシボレー勢を完全に凌駕していた。エンジンに関する形勢は、予選時とは完全に逆転していた。
レース終盤に何人かのシボレー勢がトップグループに加わったが、その中で最も速かったエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)は単独スピンで自滅した。その後にマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)がアクシデントを起こした。これらの連続アクシデントがあったことで、トニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)らが上位との差を詰める恩恵を授かった。
しかし、最終的には戦闘力に優るガナッシのフランキッティとスコット・ディクソン、そして佐藤琢磨が優勝を賭けた争いを繰り広げた。

スペシャルインタビュー:インディー500予選ホンダ勢トップを獲得した注目のルーキー、ジョセフ・ニューガーデンってどんなヤツだ?

新車導入、エンジン競争勃発で注目度アップのインディーカー・シリーズは、ルーキーにも恵まれた。中でも、テネシー州出身のジョセフ・ニューガーデンはキャリア上々、実力十分の逸材。インディー500予選でホンダ勢トップの7位=当然、ルーキー最上位=で、期待度がさらに上昇している。ルックスも良く、コメントも明晰、飾らない人柄を持つ彼は、”現代版リック・メアーズ”とでも表現すべき存在だ。

Photo:Naoki Shigenobu